グローバル・エイズ・アップデート

世界のHIV/AIDS情報を日本語で配信中!

グローバルファンド

「一度も使われていない」グローバルファンドの人権に関する通報制度:改善に向けた努力

【2018年7月3日 ジュネーブ(スイス)発】途上国の三大感染症対策に資金を拠出する国際機関、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)の内部監査機関である総合監察官事務所 Office of Inspector General (OIG) は、同ファンドが関わっているプログラムにおいて、誰でも人権侵害に対して通報できる報告制度を2015年より開始した。本制度、および報告手順は簡潔で、職種や国籍などに関係なく誰でも使える。報告基準や方法は開始当時と変わらず、ガイドライン、報告手順、およびオンライン入力フォームなどは公開されている。(http://www.ispeakoutnow.org/report-now-en/ )

しかし、開始から3年経過した現在も、同通報制度に対しては、一例の報告もなされていない。今回、制度開始1年後より、その理由について調査がなされていたことを明らかになった。もし、人権侵害が一切ないのであれば報告は一例もなくて当然であるが、この制度が出来た背景を考えると人権侵害は起こっていると考える方が妥当である。

◆啓発活動
本制度について、グローバルファンド事務局の地域・人権・ジェンダー部門 (the Community, Rights and Gender Department)が、各国でグローバルファンドの資金拠出の案件形成や資金受け入れの窓口となる国別調整メカニズム(Country Coordinating Mechanism:CCM)のメンバーや市民団体などに対して、不正や懸念などを解消するための「今、声をあげよう! I Speak Out Now!」というキャンペーンや、非常に簡単で広範囲に伝えられる方法で地方や国レベルのトレーニング、およびWeb上の講座などを実施した。一方、各フォーラムへどれくらいの参加があったのかなどのデータは報告されていない。

◆本制度の周知不足とグローバルファンドへの不信感
市民団体などに所属する42人へのインタビューでは、実に80%以上の団体が、本制度や報告手順、および、どのように機能するのかについて全く知らないと回答した。回答者の中には、グローバルファンドや国別調整メカニズム側のスタッフも含まれていた。

さらに別の要因として、グローバルファンドの機能、どのような事例が人権侵害に該当するのかなどについての認識不足もうかがえた。また、どのプログラムがグローバルファンドから支援なのか分からないとか、グローバルファンドの資金受け入れのために各国が設置している「国別調整メカニズム」などがグローバルファンドの機構の一部として認識されていたなど、機能や部門に対する混同や混乱などが明らかになった。

また、人権侵害に対する救済方法が不十分であるため報告自体に意味がない、外部からの脅迫など報告すべき事案はあったが、グローバルファンドに報告したところで、ファンドがそれに対して行動を起こす権限がないことなど、グローバルファンド自体の課題に対する意見も表明された。

◆改善に向けた推奨と反応
内部監査機関は、以下3点を推奨した。
・グローバルファンドは、引き続き組織内外への本制度について周知を続けること
・国別調整メカニズムなど、地域でグローバルファンドの資金に関わる機関は、引き続き制度の周知と使用推奨に努めること
・より認識を広めるため、現地の言語を使用したウェブ講座や制度などの作成に努めること

これらの提案後、地域・ジェンダー・人権部門は、それぞれの地域部門へ再度制度の周知を呼びかけ、ウェブ講座も今秋より予定された。「報告制度は小規模なものではあるが、グローバルファンドの人権に対する活動にとって非常に重要である。皆さんの理解を向上し、制度を周知することに努める」と締めくくられている。

原題: Secretariat Releases Report on Slow Uptake of Global Fund’s Human Rights Complaints Mechanism
出典:Aidspan
日付:2018/7/3
URL: http://aidspan.org/gfo_article/secretariat-releases-report-slow-uptake-global-fund’s-human-rights-complaints-mechanism

グローバルファンド理事会、危機に見舞われたグローバルファンド拠出非対象国への資金拠出に道を開く

【2018年5月12日ジュネーブ(スイス)発】途上国の三大感染症対策に資金を拠出する国際機関、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)は、5月に開催された第39回理事会において、現在、国民の保健において大きな危機に見舞われdddているベネズエラ・ボリバル共和国や、今後保健上の危機に見舞われる可能性のある、旧来の基準ではグローバルファンドの支援対象外となっている非高所得国に対して、三大感染症による影響を受けそうな事態について例外的に支援を行うことを考慮すべきだと決定した。理事会は、こうした場合に支援する判断基準に当てはまりそうな「投資例」、および供給方法の報告を要求した。報告書は、支援非対象国の健康危機に由来する、三大疾病に対する負の影響が、周辺の対象国への悪影響を及ぼしうる場合、迅速かつ適切な時期に支援を行うことで、将来的なコストや公衆衛生危機を減らし、三大疾病対策の進捗を守ることになるだろうとしている。ただ、追加資金がない場合には、グローバルファンド内の援助能力は制限されることになる。

資金援助は基本12ヶ月限定、また2017〜2019年の緊急支援用資金2億ドルという枠を超えないようにすべきだとした。なお高所得国や経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)のメンバー国は引き続き除外される。また「危機」の基準として、国連機関などからなる緊急人道支援に関する機関間常設委員会(IASC)の危機レベル3、または世界保健機関(WHO)のグレード2か3と評価された場合とした。また市民団体などと世界保健機関の合同外部評価組織などからの評価も参考にする。グローバルファンド、あるいは市民団体などの技術パートナーと共に対象国の疫学的状況、経済的状況、潜在的な計画実効性などを調査するとした。特別支援を提供するために、グローバルファンドは適切な計画実行の仕組みが責任を持って届けられ、その国の危機へきちんと効果があるか、また現存する資金内で戦略的・経済的・機能的コストをまかなえるかを検討しなくてはならない。

特別支援の場合、危機の独自性や、過去に提携した団体が存在する可能性の低さ、そして緊急性などから、従来の資金提供の手順を踏むことは難しいだろうとされる。特有の政治情勢や危機状況、例えば自国政府が三大感染症を認知していないような場合、市民社会組織CSOや非政府組織NGOなどを主要な資金ルートとして考慮する予定だ。その他、組織の運営・監視能力や、グローバルファンドが対象としている範囲内での活動かなど、考慮するべき6項目が挙げられた。個別のケースは委員会へあげられ、要望や時期に基づいて、現存の支援への影響を含む資金源や妥協案などを詳しく検討されることとなる。

◆失望の表明
報告書は、事務局が未だにベネズエラの件に対して結論を出していないことに明白な失望を表明している。事務局は、委員会が支援非対象国の危機に対してどこまでを支援の範囲とするかなど含む明瞭な判断や指示なしでは、資金を団体に託しても何も結果が出ないなどという状況に陥りかねないとしている。

また事務局は、危機発生国への対応と、疾病の高まん延国などを対象とした質の高い資金未拠出案件との間で、非常に難しい資金調節が求められるだろう。さらに、緊急支援基金では、ほぼ確実に特別支援の必要額には足りないと試算されている。このような事実を鑑みるに、危機国への対応をすることで、本来の支援対象国への使用される資金へ影響を及ぼすだろうと考えられる。この取り組みに対する前向きな決断は、内部調節を承認する委員会側の意欲を引き出すきっかけとなるだろうとしている。また関係者は、この取り組みの承認は、例外的な資金提供への前向きな決断につながるだろうと期待している。事務局は委員会に、特に従来とは違う計画実行の手配、支援非対象国への支援と質の高い資金未拠出案件との調節などに対して、どのように選択するべきかを投票前に熟慮するように要請した。

●原題: Global Fund Board Gives the Secretariat the Green Light to Prepare Proposals for Investing in Non-Eligible Countries in Crisis
●出典:Aidspan
●日付:12 May 2018
●URL: http://www.aidspan.org/node/4614

-----------------------------------------
GAVIワクチン・アライアンスとグローバルファンド、インパクトと効率性のために協力
-----------------------------------------
【2018年6月11日】途上国のワクチン接種プログラムに資金援助を行う国際機関であるGAVIワクチン・アライアンス(以下GAVI、旧:ワクチンと予防接種のための世界同盟GAVI, the Vaccine Alliance)と、三大感染症対策に資金を供給する国際機関であるグローバルファンドは、長年にわたりプログラムレベルで協力してきた。GAVIとグローバルファンドは、保健分野の資金を支援する世界最大規模の機構である。両者は合わせて年間50億ドルを疫病対策のために提供している。グローバルファンドはGAVIよりも多くの国をドナー対象としているが(グローバルファンド:109カ国、GAVI:56カ国)、アフリカの対象国はGAVIと重複している国が多い。そこで、プログラムのインパクトと効率性を高めるべく、GAVIとグローバルファンドは、協力可能な5つの領域を特定した。うち4つ(以下1〜4)はプログラム関連で、1つは運営(5)に関連する。

(1)材料および装置/データ
(2)リスク/監査
(3)保健システム
(4)持続可能性/保健分野の資金提供
(5)本部オペレーション

プログラムの協力(1〜4)には、(1)知識、情報と得られた教訓の共有、(2)グローバルと国レベルでの政策による権利擁護を連携、(3)プログラム関連の方針を提携、(4)共同投資、の4つの領域が含まれる。知識、情報と得られた教訓の共有について、GAVIとグローバルファンドはお互いの年次ミーティングに出席するなどして、定期的に情報、最良の方法と専門知識を共有している。政策の優先順位に関して、GAVIとグローバルファンドは似通っている。両者は、持続可能性を掲げつつ、政治課題の中でも保健分野の優先順位が高くあるよう、国際会談が進行するよう尽力する。G7とG20サミットで世界的な健康問題が議題となるよう働きかけている。

GAVIとグローバルファンドは、プログラム方針を提携できる機会を模索するよう心がけ、提携を通して取引コストを低減、互いの働きかけを強化、最も理想的な方略を実施しているか確認している。近年、GAVIとグローバルファンドは国レベルの取り組みと投資の連携をさらに推進し、提携して、国境なき医師団が使っている患者登録リポジトリ(電子データ貯蔵庫)である「DHS2」を含むデータシステムの強化に努めている。さらに、2018年3月にグローバルファンド事務局が、ジュネーブ郊外にある「グローバル・ヘルス・キャンパス」という建物に移転した。6月末にはGAVIも同じ建物に移転し、物理的にも近くなったことから、協力関係のさらなる強化が期待される。

原題:Gavi and the Global Fund: Collaborating for impact and efficiency
出典:aidspan
日付:2018/06/11
URL:http://www.aidspan.org/node/4635

グローバルファンド、人権やジェンダー平等の視点では前進

【2018年6月12日】途上国の三大感染症対策に資金を供給する国際機関、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)の第39回理事会は東欧・マケドニアの首都スコピエでこの5月に開催されたが、そこでは、同機関の2017〜2022年の戦略目標の進捗状況等について討議された。戦略目標において、「第3の目標」として指定された「人権の保護とジェンダーの平等推進」については、どのような討議がなされたのだろうか。解説していこう。

A)女性のためのプログラムの拡大
「コミュニティ・権利およびジェンダー」Community, Rights and Gender CRG戦略イニシアティブのもと、優先度の高い13か国に対して、思春期の少女や若い女性のHIV発生削減の取組に充てられてきた。このイニシアティブは、南部アフリカエイズ信託基金 SafAIDS、東アフリカ諸国エイズ・サービス組織ネットワーク連合 EANNASOにより実施されている。このうち、11ヶ国において1億ドル以上の支援が行われた。課題は技術支援の不足であったが、主要な関係者が一堂に会して、思春期の少女や若い女性の課題に関する研究グループが組織され、調整や実施の課題に関する洗い出しが行われた。グローバルファンドは包括的なモニタリング・評価の計画を打ち出し、主要な技術パートナーとともに、次なる目標の設定に向けたデータの洗い出しなどを実施している。

B)年齢とジェンダーによる不平等の是正
グローバルファンドは、結核の治療などへのアクセスに関して、ジェンダーに基づく障害を分析するための枠組を構築してきた。世界規模での傾向やプログラム支援に関する調査は2019年の第1四半期に完了する見込みとなっている。課題は、結核のプログラムを計画する際にジェンダーの調査がきちんと行われていないことである。グローバルファンドは、地域パートナーを通じて重要性の発信を行う予定である。

C)人権推進への障害を取り除くプログラムの拡充
主要な課題は中所得国以上の所得の国にある。中所得国では、HIVの予算のうち19%が、HIV感染が集中している「カギとなる人口集団」key populationsに対して使われたが、人権問題への障壁の除去に充てられたのはわずかに2%であった。また上位中所得国6か国については、鍵となる人口集団に関する報告が5か国からあったのに対し、人権問題に関する報告がなされたのは3か国のみであった。人権問題への取組みの遅れの原因は、人権問題の取り組みに資金を充てる政策方針がないところからきていると考えられる。今回の基礎調査の結果は、人権問題への取り組みに資金を充てることを促進するための効果的な政策を議論するために使われる予定だ。

D)人権問題に関わる政策の集約
現在、人権問題への包括的な政策、人権に関する申し立ての手続き、人権に関わる危機へのアプローチの3つ取り組みの実行に向けた調整が行われており、2018年の第2四半期に完了する見込みである。

E)鍵となる人口への効果的な取り組みへの支援
焦点となっているのは、結核とマラリアの影響を受ける地域への支援である。現在は、国レベルで行われている取り組みを地域レベルにまで落とし込むことが重要と位置づけられた。グローバルファンドも、市民社会の参加を支援するために政策や実施の一部を見直した。

F)分野横断的な考察
2017年末に多くの財政支援要請が提出されたが、同じ2017年の最終四半期には、実際の訓練が実施されることはなかった。しかし、その間に支援へのアクセスに関する人権問題の解決に向けたワークショップが立ち上げられ、2018年1月に実施された。このことは前進と考えられる。
最後に、HIVプログラムの実施や投資計画に関する作業が技術パートナーにより行われている。彼らは、今回グローバルファンドの報告で提言された提案を効果的に実行に移すための重要な役割を果たすだろう。

*過去の関連記事:グローバルファンド、1500万ドルをコミュニティ、ジェンダー関係の戦略投資に拠出決定(2016年11月29日)

原題:Global Fund makes steady progress on Human Rights and Gender Equity, amid implementation challenges
出典:Aidspan
日付:2018/06/12
URL:http://www.aidspan.org/node/4639

グローバルファンド、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の結核・マラリア案件の更新には進まず、しかし引き続き資金拠出対象国として位置づけ

【2018年5月12日ナイロビ(ケニア)発】途上国の三大感染症対策に資金を供給する国際機関である「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(グローバルファンド)は、5月9日から10日にかけて、東ヨーロッパ・マケドニアの首都スコピエで理事会を開催した。この理事会において、2月に事務局レベルで行った、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の案件を更新しない決定について討議した。討議結果として、理事会はその決定内容を変更することはしなかった。2月に行われた、案件の更新を行わない決定の理由は、DPRKにおけるグローバルファンドからの拠出金の活用におけるリスク・マネジメントの問題や、拠出金が有効に活用されるかどうかにおいて不安があるということであった。

5月10日、グローバルファンドはウェブサイトに見解を公表した。その中で、理事会は「DRPKにおいて結核やマラリアに影響を受けている人々について、引き続き懸念を表明する」と述べている。また、理事会は、更新をしないことによるグローバルファンド資金の拠出停止は、漸次行うとともに、2018年における結核・マラリア対策として、蚊帳と十分な結核の治療薬を提供し、現在の拠出金が有効な間に患者が治療を完了できるようにすると述べた。

理事会は、引き続きDPRKの人々の健康をサポートしていくし、また、DPRKはグローバルファンドの資金拠出の対象となりうる elivible国としてとどまり続ける、と述べている。

原題: Global Fund Board Discusses Decision Not to Proceed With Grants to the DPRK, But Makes No Changes
出典:Aidspan
日付:2018/05/12
URL:http://www.aidspan.org/gfo_article/global-fund-board-discusses-decision-not-proceed-grants-dprk-makes-no-changes

グローバルファンド、保健分野国際機関のジェンダー平等促進政策の評価で高い水準をマーク

【2018年4月3日】国際機関のジェンダーに対する取り組みを評価する独立したイニシアティブである「国際保健50/50」Global Health 50/50が発表した調査結果によると、グローバルファンドはジェンダー平等を推進する取り組みにおいて、世界の保健機関の上位9位に選出された。調査対象となった140の国際機関のうち、ジェンダー平等の理念をプログラムや戦略に盛り込んでいたのはわずか40%であった。

調査では、6つの項目によって各機関のジェンダー平等推進への取り組みが評価対象だった。
1. ジェンダー平等の公約についての公式声明
2. 企業理念におけるジェンダーの定義と国際基準との一貫性
3. ジェンダー平等政策の実施状況
4. 男女別に集計されたデータの公表
5. 職場におけるジェンダー平等を推進する方針と実行
6. 機関運営や上層部の人事におけるジェンダー比率

グローバルファンドは、「機関運営や上層部の人事におけるジェンダー比率」以外の項目で高評価を得た。また、トランスジェンダーの人びとのニーズに対応している数少ない機関の1つだった。

グローバルファンドのほかに上位にランクインした機関には、GAVIワクチンアライアンス(旧:ワクチンと予防接種のための世界同盟The Global Alliance for Vaccines and Immunization:GAVI)、国連合同エイズ計画 UNAIDS、セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナルSave the Children InternationalやBRAC(バングラディシュ復興支援委員会Bangladesh Rural Advancement Committee: BRAC)が含まれる。全体的にみると、国際的な保健機関の職員の半数以上(67%)が女性であるにも関わらず、意思決定権は男性の手に委ねられることがわかった。

また、以下に調査結果の概要を示す。
・国際的に認められた基準に沿ってジェンダー平等について定義している機関は三分の一以下だった。
・プログラムや戦略の資料にジェンダーについて言及していたのは、わずか40%だった。
・三分の二の機関は、プログラム評価のデータを男女別に分析していない。
・機関上層部の男女比が平等であったのは、たったの20%だった。

原題:Global Fund gets high marks in study of efforts of global health organizations to promote gender equality
出典:Aidspan
日付:2018/4/3
URL:http://www.aidspan.org/gfo_article/global-fund-gets-high-marks-study-efforts-global-health-organizations-promote-gender

ネパールのグローバルファンド案件、セーブ・ザ・チルドレンが受注

【2018年4月24日ジュネーブ(スイス)発】グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)理事会に対する、ネパールからのHIV、結核、マラリア対策への資金要請は、同資金の主要受領団体 Principal Recipient (PR) を国際NGOであるセーブ・ザ・チルドレンに拠出する、という方向で、案件承認委員会 Grant Approval Committeeと技術審査パネルTechnical Review Panel から承認された。

ネパールは世界で最も貧しい国の一つで、国民の1/3が貧困ライン以下の生活をしている。ネパールの南部地域、インドとの国境周辺でマラリアが流行しており、炭鉱、森林労働者などの移動労働者が特にハイリスクで、感染者のおよそ半分を占めている。しかしネパールはマラリアの根絶に力を入れており、2026年までにマラリアをなくすという目標を掲げている。

結核は10万人中約150人の罹患率で治療はその76%、治療成功率は92%である。今回の支援では、グローバルファンドは特に鍵となる人口集団である囚人やスラム街の住民などに介入するよう要請した。

HIVの流行はいわゆる「鍵となる人口集団」Key populations に集中しており、2016年には薬物使用者で8.5%、男性とセックスをする男性(MSM)やトランスジェンダーで8.2%などとなっている。しかし、いわゆる「低リスク」と言われている一般女性の夫からの感染、また移動労働者などの新規感染数は減少している。

ネパールは2017〜2019年分としてグローバルファンドからマラリア、結核、HIV対策費として合計で4230万ドルの支援を得ており、受け取り先はセーブ・ザ・チルドレンとなっている。またネパールは、それぞれの疾病に対する優先的資金手当の要望として合計2290万ドルを申請した。技術審査パネルはHIVには満額、結核とマラリアには8割程度の支援額が妥当だとみなした。

◆特筆すべき強み
3つの資金要請を検討したところ、全て技術的に堅実で、それぞれ戦略的に考えられていた。
マラリアは、鍵となる人口集団である移民や難民、ヒンズー教の月経中や産後の女性に焦点を当てており、マラリアをなくすための基礎となる準備に必要なものである。結核は、疫学を基礎とし地理的に結核が流行している地域に焦点を当てており、国家計画にもきちんと沿っている。HIVも国家計画や健康セクターの計画に沿っており、また母子感染の根絶のための抗レトロウイルス薬の国内供給の増加や、移動労働者など鍵となる人口集団への対策など、疫学的に必要とされているところへきちんと対応できている。

◆問題と行動
技術審査パネルは、資金が拠出されるまでに解決されるべき問題点をあげた。
HIV、結核、マラリア共通の問題として、経済状況が不安定な中で国内投資をいかに確保するかが挙げられ、特にマラリアに関しては、効率的・効果的・公平な健康ケアシステムをいかに強化するか、長期的な公共経済管理システム計画を作成するよう推奨した。
また効率を上げるため、三大感染症の対策助成金でいかに相乗効果を狙えるかを検討するよう、研修や技術支援などで継続的に技術移転が行われるよう要請した。
それぞれに特化した問題としては、マラリアは移動労働者へ対策としてインドと政治的にいかに協力するかという点、またジェンダー的な視点、つまりセックスワーカーなど女性の移動労働者への対策が欠如している点が指摘された。結核は、検査から治療、治療成功率に至る治療の流れにおける推測データが不十分だと指摘された。HIVは、国家計画には鍵となる人口集団として記されている女性のセックスワーカーに対する対策の欠如が指摘された。

◆「マッチングファンド」
技術審査パネルはすべての活動において、例えば医療従事者を対象に差別や偏見をなくす研修をするなど、人権の面における障害を排除するよう要請した。そのためにグローバルファンドは、拠出額と同額を政府側からも出すよう要請するものであり「マッチングファンド」と呼ばれる方法で130万ドルの拠出を予定している。

◆資金状況、共同出資と持続性
保健省は今回、国内予算額を大幅に増やし、グローバルファンドなど外部組織からの拠出金を減らしつつも、合計予算を増額することに成功した。次の予算期間までに三大感染症それぞれにおいて今までの2〜3倍となるような大幅な投資の増額が求められている。特に結核やHIVにおいては初期治療薬の予算を全てカバーするよう確約している。
またグローバルファンドと保健省は、鍵となる人口集団への対策の継続を目的にNGOなどからの資金提供を仰げるよう協力している。

●原題: Nepal’s Funding Requests to the Global Fund Yield Three Grants to be Managed by an International NGO
●出典:Aidspan
●日付:24 Apr 2018
●URL: http://www.aidspan.org/gfo_article/nepal’s-funding-requests-global-fund-yield-three-grants-be-managed-international-ngo

グローバルファンドの朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)からの撤退で 同国の結核・マラリア問題はどうなる?

【2018年4月12日 ワシントンポスト】グローバルファンドは、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)に対する結核・マラリア対策への支援を6月末までで一旦停止すると発表した。グローバルファンドは、2010年から2017年の間に、結核に6,900万ドル超を、マラリアに約3400万ドルの支援を行った。DPRKをめぐって今何が起こっているのだろうか。

1.グローバルファンドがDPRKへの支援を止めた理由
本当の理由は明確でないが、グローバルファンドは、「ゼロ・キャッシュ・ポリシー」、つまり仲介業者による現金取引の禁止の遵守への懸念だと発表しており、DPRK国内での支援物資の正確な運搬記録をとる必要があると述べている。しかし、現在のところ問題は見つかっていない。グローバルファンドは、DPRKが核実験を行っていた昨年の状況でも支援を続けており、このタイミングでの支援停止は予想外との声が一部団体から出ている。

2.グローバルファンドのDPRKへ支援規模
グローバルファンドのDPRKへの支援は、他の国に対するものと比べると規模は小さい。しかし北朝鮮の立場からすると、同基金の支援を失うことが感染症防止に与える影響は大きい。

3.結核・マラリアはDPRKにおいて深刻か
答えはイエスだ。特に結核は深刻である。北朝鮮は、WHOが定める「結核が深刻な30か国」に入っており、感染率はサブサハラアフリカ以外の国の中で最も高い水準にある。

マラリアについては、現在の感染率はピークだった2013年から減ってはいる。しかしWHOによれば、DPRKの人口の40%は現在も感染のリスクにさらされている。DPRKでの結核・マラリアの深刻化は、近隣諸国にとっても脅威となりうる。中国政府は、DPRKの結核の波及、つまり中国での感染拡大と東アジア地域の不安定化への懸念を示している。

4.グローバルファンドの支援停止により何が起こるか
支援停止は、DPRK国内での感染拡大のリスクを高めるのみならず、保健拡大の流れにも影響を与えかねない。グローバルファンドはこれまで、米国とDPRKの関係が悪化した中でも同国への支援を行ってきた。

しかし、DPRKをめぐる問題は国際関係と切り離せないのかもしれない。DPRK政府は、今回の支援停止措置が米国との外交関係悪化と同時期だったことに対し、グローバルファンドが米国の外交手段として使われたと批判している。

いずれにしても、DPRKに対する米国の経済制裁が同国の保健分野に与える影響は大きいだろう。事実、2016年に韓国がDPRKに対して経済制裁をした際、分野に例外を設けなかったため結核の薬の供給が滞った。今回も、当時と同様のことが起きると考えられる。経済措置は病人を標的にしている訳ではない。しかし外交関係と人道的問題の利害関係の衝突が起こったとき、命が危険にさらされるのは市民なのだ。

原題:North Korea has a big tuberculosis problem. It’s about getting worse.
出典:The Washington Post
日付:2018/4/12
URL: https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2018/04/12/north-korea-has-a-big-tuberculosis-problem-its-about-to-get-worse/?noredirect=on&utm_term=.1e16e56c7285

(ナイジェリア)ラゴスにおける67,763人のHIV陽性者の治療ケア 世界初のグローバルファンド資金受入責任機関となった地方行政の成果

【2018年5月5日】ナイジェリアのラゴス州は、HIV陽性者で治療を受けている人が、昨年の6万4千人に対して、今年5月4日には6万7,763人となったと発表した。州の保健局長であるジャイド・イドリス医師 Dr. Jide Idrisは、現在展開中のラゴス州における事業報告書において、州のマラリア・HIV・結核プログラムは成果をあげていると発表した。

イドリス医師は、抗マラリア経口薬を6万4千回分、また抗マラリア経口薬に耐性を持ったマラリア原虫に対しても有効であるアルテスネイト注射を1万本、州全体に配布したと報告した。

さらに、その成果について以下のように述べている。

「このプログラムは州内の6万7863人のHIV陽性者に対して実施されており、そのうち1,989人は、2017年12月にグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)Global Fundの支援を受けた3つの行政区(イコロドゥIkorodu、オショディ−イソロOshodi-Isoro、エペEpe)の住民だ。今回の成果で、この州へのグローバルファンドによるHIV征圧プログラムが18か月の延長期間を得ることができた。さらに、このプログラムによって、112万5,939人に対してカウンセリングやHIV検査、およびその結果を提供することができた。現在ラゴス州は、「サービス提供者主導の検査・カウンセリング」(Provider-Initiated Testing and Counselling:PITC)、および妊娠中の女性に対してオプションBプラス(Option B+*)への拡大と、州が管轄する一次から三次医療施設において検査やプログラムを開始している」

イドリス医師はさらに、ラゴス州は抗ウイルス治療(Anti-Retro Viral Therapy:ART)が可能な医療機関が44か所から65か所に拡大したこと、さらに、母子感染予防プログラム(Prevention of Mother to Child Transmission:PMTCT)が展開されている施設において、提供するサービスをオプションBからオプションBプラスにグレードアップすることで、プログラムの質を10%改善したと述べた。
イドリス医師によると、ラゴス州政府は2017年に地方行政としては世界で初めて、グローバルファンドの資金受入責任機関(Principal Recipient:PR)となり、HIV予防・治療・ケアやサポートなど包括的なプログラムを、前述の3つの行政区にある70の医療施設において展開しているという。この資金の目的は、第一に、HIVの新規感染者を減らし、HIV感染者やその影響を受ける人々の生活の質を改善し、1万337人のHIV感染者(People living with HIV:PLWHIV、うち3,876人が子供)に資金をあてることだ。

そして第二に、これら3つの行政区において、2017年までに質の高い結核・HIVに対する予防・診断・治療サービスを提供すること、そして2020年までに必要な人へのARTの適用が少なくとも80%まで引き上げることを指標とした、HIV蔓延のコントロールである。
* Option B+:新たに簡素化された抗レトロウイルス薬の治療法

原題:Nigeria: 67, 763 HIV Positive Persons on Treatment Care in Lagos
出典:Leadership (Abuja)
日付:2018/5/5
URL: http://allafrica.com/stories/201805050111.html

(スイス)グローバルファンド、# Me Tooを契機に、セクシュアル・ハラスメントに関する規定を見直しへ

【2018年4月 3日】ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの「ジェンダーと国際保健センター」のプロジェクトである「国際保健50/50プロジェクト」が刊行した国際保健におけるジェンダー平等に関する報告書「国際保健50/50報告書」において、グローバルファンドは、ジェンダーの問題を政策やプログラムに組み込んだことで好評価を得た。一方、この報告書で比較的高評価を得た国連合同エイズ計画 UNAIDS、赤十字やオックスファムなどは、シニアスタッフによる性的違法行為に関する調査の対象となった。

UNAIDSとグローバルファンドはともに、ジェンダーに対するポリシーがあるか否かという観点から、同報告書で9位以内の高い成績を得た機関である。しかし、UNAIDSはルイス・ローレス(Luis Loures)副事務局長が性的暴行の廉で告発されたにもかかわらず、その申し立てへの対応が不適切であったことから非難の的となっている。

UNAIDSのようなハイスコアの組織が、職場でのセクシュアル・ハラスメントへの対応が不適切とみなされるような状況において、グローバルファンドはどのようにセクシュアル・ハラスメントの問題に対応しているのだろうか。この記事では、グローバルファンドのセクシュアル・ハラスメント政策および処罰の手順について調べた。

現在のポリシー
グローバルファンドには、セクシュアル・ハラスメントを含むハラスメントやいじめの防止のために作成された従業員用ハンドブックと従業員行動規範がある。また、従業員行動規範、理事行動規範ではいかなる種類のハラスメントや差別も禁じているが、セクシュアル・ハラスメントについては詳細な記載がない。

処罰手順
ハラスメントの被害者は人事部、倫理部門、オンブズマン、福利厚生部門を通じて是正を求めることができる。いじめやハラスメントの申し立てを行った従業員は解決に向けて公式、および非公式の会合を持ち、ハラスメントの目撃者も同じチャネルを利用することができる。

処罰の決定
従業員ハンドブックはハラスメントを違法行為とし、そのような行為は、書面での警告、給与の停止、解雇または即時解雇といった様々な方法で罰せられる。解雇もしくは即時解雇の場合は、最終決定のために事務局長へ上がる。

権利に関する規定を策定することは、安全な文化を保証することにもつながる。グローバルファンドのセス・ファイソン(Seth Faison)広報責任者は、「規定はセクシュアル・ハラスメント防止に必要な要素であるが、最終的な解決は、行動を起こし、加害者に責任をとらせる文化のもとにある」と述べている。

既定のレビュー計画
本年2月にピーター・サンズ(Peter Sands)次期事務局長はグローバルファンドスタッフに対して、倫理部門と人事部長とともに現有の規約を見直し、状況に合わせてアップデートされ改善されているか検討することを発表した。この見直しにはスタッフとの討論会を含み、従業員ハンドブックと従業員行動規範の改定に繋がる。この見直しはグローバルファンドの行動規範にセクシュアル・ハラスメントに関する規定が組み入れられる契機となるだろう。

原題:#MeToo Prompts Global Fund Review of Harassment Policies
出典 aidspan
日付:2018年4月3日
URL: http://www.aidspan.org/gfo_article/metoo-prompts-global-fund-review-harassment-policies

(スイス)グローバルファンド、ハイネケンとの連携を停止

【2018年3月29日】3月29日、グローバルファンドは、大手ビール会社ハイネケンのキャンペーンガールに対する性的虐待や健康被害を理由に、連携を停止ことを発表した。この発表の約1週間前、オランダ人ジャーナリストのオリヴィエ・ファン=ベーメン氏Olivier van Beemenの取材により、「ハイネケンはキャンペーンガールを宣伝に起用してアフリカの10カ国でビールを販売しており、彼女らは仕事場で望まない親密な関係を迫られたり、虐待や売春行為の被害に遭っていたりしている」という記事が、オランダの新聞「NRC」のウェブサイトに掲載された。グローバルファンドのハイネケンとの関係の停止決定はこれをベースにしたものである。

一方、ハイネケンのキャンペーンガールに対する待遇が問題視されたのは、今回が初めてではない。2007年、ハイネケンは100以上の国で15,000人ものキャンペーンガールを起用していた。ある調査報告では、70のビール宣伝のマーケットにおける、キャンペーンガールの性的虐待、十分な賃金が支払われていないこと、飲酒や露出の多いユニフォーム着用の強制が浮き彫りとなった。しかも、キャンペーンガールの扱いに関する問題は以前より問題視されていたが、ハイネケンはこれまで労働環境の改善を怠ってきた。

<周囲の反応>
ハイネケンとの連携に関するグローバルファンドの対応に対しては、厳しい批判がいくつか挙がっている。2018年1月、グローバルファンドとハイネケンは、ともに感染症と闘うための連携を発表した。グローバルファンドは、公衆保健運動の活動家たちの多くから、アルコールという人々の健康を害する製品から利益を得ている会社との連携に対して非難を受けていた。

グローバルファンドのハイネケンとの連携について、グローバルファンドに抗議文を提出した3つのNGOの一つで、アルコールや薬物の害を減らすための運動をしている「よきテンプル騎士団主義者の国際機構」IOGT International (International Organization of Good Templars)のクリスティーナ・スパーコヴァ氏 Kristina Sperkovaは、今回の発表について、「停止では関係の解消を意味しない」と述べている。スパーコヴァ氏はさらに、この事態は、グローバルファンドがアルコール業界で大企業のハイネケンとの連携を結ぶにあたり、十分な調査を行っていなかった失態を表している、とも指摘した。グローバルファンドは、エビデンスに基づいたHIV・エイズ、結核とマラリア対策を理念として掲げているが、今回の事態やその対処の方法について、疑念は解消されていない。

●原題:Global Fund suspends partnership with Heineken
●出典:Aidspan
●日付:2018/03/29
●URL:http://www.aidspan.org/gfo_article/global-fund-suspends-partnership-heineken-0
おすすめ(AJF関係者の本)
AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
Categories
Archives
発行者:AJF

アフリカ日本協議会

  • ライブドアブログ