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(インド)エイズ治療新薬「ドルテグラビル」導入の効果

【2018年3月30日】新しいタイプの抗レトロウイルス薬のタイプである「インテクラーゼ阻害剤」の一種、ドルテグラビルDolutegravir(DTG)をベースとした抗レトロウイルス治療antiretroviral therapy(ART)は、欧米ではHIV治療の第一選択薬として推奨されている。DTGは比較的有害事象(副作用など)が少なく、患者の体内でウイルスがDTGへの薬剤耐性を獲得することが少ないといった効果が認められているほか、経済的にも安価で魅力的な薬である。

一方、インドでは非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)の一種であるエファビレンツEfavirenz(EFV)ベースの治療が「標準的なケア」the standard of care(SOC)とされている。そこで、今回インドではガイドラインが、免疫量を図るCD4の数(200を切ると日和見感染症にかかりやすくなる)にかかわらず、すべてのHIV陽性者を治療するという方針に改訂されたことや、インドのジェネリック薬企業でも徐々にDTGのジェネリック薬を製造するところが増えてきていることから、DTGベースの治療の臨床的および経済的効果をこれまでのSOCと比較分析した。

調査の方法としては、まず、個々人の属性やHIVの状態、治療状況に関するデータについて順に翌年の状態を予測するマイクロシミュレーション手法の「AIDSに伴う合併症予防の費用対効果国際モデル」The Cost-Effectiveness of Preventing AIDS Complications-international (CEPAC-I)を用いて、ART未治療の患者について2種類の治療法を比較分析した。この治療法は前述した、インドの標準的な治療ガイドラインに含まれているEFVとテノホビルTDF(正確な物質名はテノフォビル・ジソプロキシルフマル酸塩錠)、3TC(ラミブジン)の3薬の組み合わせと、DTGをベースとしたDTG、TDF、3TCの組み合わせである。まずこれら治療法に関する臨床試験データ、その他のデータソースから、48週目のウイルス量抑制(SOCは82%、DTGは90%)、そして年間のコスト(それぞれ98ドル、102ドル)などを含む多くのデータを投入した。今回のDTGの組み合わせのデータがないため、近い組み合わせのデータがどれくらい信頼できるかの強さを測定するため感度分析を実施した上で、費用対効果に影響すると考えられる範囲の変動幅を明らかにした。さらに、費用対効果の増加率incremental cost-effectiveness ratios(ICERs)について、1年生存させるためにかかる費用がインドの一人あたり国内総生産GDPの半分より少ない治療法を、費用対効果がよいと見做すこととし、2つの治療法を比較した。また、SOCとDTGの2つの治療法の、予算へのインパクトやHIV感染への影響(それぞれ444,000人、916,000人)をそれぞれ比較した(2015年度は1600ドルなので800ドル未満であればよい)。

その結果、まず、5年生存率は、旧来のSOCで76.7%であったのに対して、DTGは83.0%、平均余命はSOCが22.0%に対してDTGは24.8%であった(年3%差し引いた計算によると、それぞれ14.0年、15.5年)。これはHIV感染者によって今後5年間で予測される感染1万3000人が回避できる予測であり、生存中にかかる治療コストの減少率がSOCでは3040ドルに対してDTGは3240ドルであった。さらに、DTGを受ける場合、生存期間のICERが年130ドルとなり、これは2015年度のインド一人あたり国内総生産のうちの10%より低かった。DTGは、条件としてこの3つの薬剤による治療法の年間費用を180ドル未満に維持できれば、ICERをインドの一人あたり国内総生産の50%未満に維持することが可能である。今後2〜5年間、HIV関連の治療に伴う支出の総計については、2つの治療法はほぼ同じであると予測される。

DTGをベースとした治療法は今後、WHOの推奨、および低・中所得国における第一選択薬として受け入れられていくなど期待されている。今回の分析においても、この治療法は費用対効果がよりよいと示されており、データの信頼性も明確であることから、インドにおいても第一選択肢として導入すべきであろう。

●原題:The Cost‐Effectiveness and Budgetary Impact of a Dolutegravir‐Based Regimen as First‐Line Treatment of HIV Infection in India
●出典:Journal of the International AIDS Society
●日付:2018/3/30
●URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jia2.25085

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