グローバル・エイズ・アップデート

世界のHIV/AIDS情報を日本語で配信中!

研究

(ジンバブウェ)乳児早期HIV診断プログラム、即時検査の導入の臨床効果と費用対効果:モデリング研究

【2019年2月5日ハラレ(ジンバブウェ)発】乳児の早期HIV診断のための新しい即時検査 Point-of-care:POC は、従来の核酸測定法に比べて高い検査費用がかかるが、検査アクセスの増加、結果確認までの時間短縮、抗レトロウイルス治療 Anti-Retroviral Therapy:ART を今よりも早期に開始することができる。本研究は、南部アフリカの内陸国ジンバブウェにおいて乳児早期診断プログラムにPOCを導入するにあたり、臨床上の有益性と費用対効果を検証することを目的とする。

我々は、AIDS合併症予防の費用対効果 The Cost Effectiveness of Preventing AIDS Complications:CEPAC について、従来の測定法に替えて、POCで乳児の早期HIV診断を実施することの臨床上の有益性、費用対効果を調べるモデルを用いた。アウトカムは生存率、平均余命、一人当たりの治療費に対する平均寿命が含まれ、それらはHIV暴露の乳児とHIV感染の乳児とで分けて報告される。我々は全てのHIV暴露乳児についてヘルスケアシステムの観点から、ディスカウントコスト(年間3%)と平均余命を用いて、費用対効果の増分比率を計算した。増分費用対効果費は、年間に救われる命あたり1010ドル(ジンバブエの一人当たりGDP(国内総生産))以下であると判断した。

従来の測定法を乳児早期診断に使用した場合、予測される平均余命はHIV感染乳児で22.7年、HIV暴露乳児で62.5年、コストはHIV暴露乳児一人あたり610ドルであった。POC検査を早期乳児診断に使用した場合、予測される平均余命はHIV感染乳児で25.5年、HIV暴露乳児で62.6年、コストはHIV暴露乳児一人当たり690ドルであった。12週齢時のHIV感染乳児の生存率は、従来の測定法では76.1%でありPOC検査では83.5%であった。POC検査対従来の測定法の費用対効果の増分比率は、命を救うために年間680ドルであった。従来の測定法の特性が一定のままであった場合、POC検査の特異性および感度がそれぞれ92%および65%を超えている限り、この比率は費用対効果の閾値を下回ったままであった。

従来の測定法と比較して、ジンバブウェにおける乳児早期HIV診断のためのPOC検査は、生存率を改善させ、平均余命を伸ばし、またHIV暴露乳児にとって費用対効果の高いものとなるであろう。

原題:Clinical Effect and Cost-Effectiveness of Incorporation of Point-of-care Assays into Early Infant HIV Diagnosis Programmes in Zimbabwe: A Modelling Study
出典 :THE LANCET HIV
日付:2019年2月5日
URL: https://www.thelancet.com/journals/lanhiv/article/PIIS2352-3018(18)30328-X/fulltext

HIV陽性の高齢者はHIVケアの重要な部分

【2018年9月14日】抗ウイルス薬の発展は、HIV陽性者の状況を大きく改善してきた。にもかかわらず、世界に67万人いるとされる50歳以上のHIV陽性者に対する効果的な治療方法は、未だに見つかっていない。高齢のHIV陽性者 Pepople living with HIV : PLWH は、HIV陰性の同世代の人と比べると、様々な症状を起こすリスクが高い。例えば、認知症やうつ、孤独感をはじめ、医学的、社会的に多くの問題を抱える。HIVに感染した事実や性別に基づく固定観念などは社会的不名誉の要因となるが、これらに加え、年齢に基づく差別もPLWHを孤立させる原因となる。限られた予算の中ですべて世代のHIV患者への効果的なケアを提供する一方、PLWHへの効果的な対策を見つけることが、今必要となっている。

PLWHへの治療に関する主な問題は、治療の偏在である。首都など一部の地域に薬や治療の手段が集中する一方、他の地域では治療へのアクセスが不足している。その原因は、資源の不足や患者の貧困、治療を受けることへの社会的不名誉などである。

PLWHへの一次的治療は、身体的なケアと精神的ケアの双方をカバーし、長期的なニーズに応えうるものでなければならないが、その取り組みのひとつとして、自らが高齢者である専門家によるコンサルティングがある。専門家が単独ないしはチームで、その他の医療サービスや地域組織を結びつきアドバイスを行う。この取り組みの強みは、専門家が高齢者のことをきちんと理解できる点である。一方、外部からのアドバイスであるため、治療の実行に関する主導権が握れない点が弱点である。

さらに、代謝性合併症など、併存疾患を抱えるPLWHに対する代謝促進プログラムから生まれた取り組みがある。この取り組みの長所は、筋肉の低下など加齢に伴う疾患を考慮して治療できる点である。一方で、併存疾患の治療に焦点を絞ることで視野が狭まり、心理社会的側面を無視してしまう可能性がある点に注意が必要だ。

当初PLWHへの取り組みは、医学的アプローチの外側で主導されてきたが、今日では医学的プログラムも広まってきている。一部の取り組みでは、特定の地域における高齢世代の集団に焦点を当て、その地域の人口に特有の加齢に伴う問題への手がかりを得るとともに、治療のための正確なPLWHのスクリーニングの実施につながっている。

医学的根拠に基づいたPLWHへの取り組みは必要不可欠であり、各国の政府などは、PLWHへの一次治療の発展を促進する支援を行う義務がある。資源が豊富な地域と少ない地域とのつながりが増えれば、疾患への治療方法などの共有により、より多くのPLWHが健康管理に携われる環境を整えることが可能になるだろう。HIVがグローバルヘルスの一部としてとらえられるべきだと言われているように、HIVへのケアも、グローバルな視点で包括的に行われなければならないのだ。

原題:Older people with HIV are an essential part of the continuum of HIV care
出典:Journal of the International AIDS Society
日付:2018/01/06
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jia2.25188

欧州のHIV陽性移民におけるHIV検査受診と治療へのアクセスに関連する要因

【 2018年7月19 日】欧州におけるHIV陽性者の状況をみると、移民の陽性者が非常に大きな比率を占めている。このため、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン国際保健研究所のイビドゥン・ファコヤ氏を中心とする研究グループは、ヨーロッパにおけるHIV陽性者である移民を対象に、以下の調査を行なった。

‐ どのような人がHIV検査や治療を受けるのか 
‐ HIV検査へのアクセスを阻害する要因や促進する要因はなにか
‐ 現在の治療状況
‐ ヘルスケアに関するニーズ

この調査は、2013年7月〜2015年7月の2年間、9か国(ベルギー、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、スイス、英国)にある57か所のHIV治療を行っているクリニックをフィールドにした横断研究である。対象者は、18歳以上のHIV陽性者で、他国出身者、調査時から過去5年以内にHIV陽性と診断されていることを条件とした。

第一の評価項目は、プライマリケアへのアクセスおよび過去のHIV検査で陰性のデータとした。プライマリケアにアクセスがあるということは、単にHIVクリニックへの通院だけでなく、ヘルスケアサービス全般を受けている指標となり、例えば、ヘルスカードを持っている、主治医への登録があるなどから評価できる。また、過去にHIV陰性であったデータは、HIV予防のチャンスへのアクセスがあったことの指標となり、例えばHIV検査を推奨するメッセージがどの程度対象者に届いているかがわかる。対象者は、性行為が異なると考えられる、(1)女性、(2)異性を性対象とする男性、(3)ゲイ・バイセクシャルの男性、以上3つのグループとした。

調査の結果、2,093名(女性658名、異性を性対象とする男性446名、ゲイ・バイセクシャルの男性989名)が対象となった。過去のHIV検査陰性の割合は、それぞれ、46.7%、43.4%、82%であった。多変量解析により、これまでの検査受診に関しては、女性であれば移住後に産後ケアを受けていること、異性を性対象とする男性であれば永住権があること、ゲイ・バイセクシャルの男性ではゲイであることが明らであること、以上に関連がみられた。プライマリケアへのアクセスに関しては3つのグループすべてにおいて高く(83%以上)、移住先の居住国との関連がみられた。診断に至るまでにはヘルスサービスが利用できるにも関わらず、女性および異性を性対象とする男性は、診断が遅いことが共通していた(それぞれ60.8%、67.1%)。また、すべての対象グループにおいて、抗ウイルス治療を受けている人々の約4分の3が、ウイルス量50コピー/mL未満という、限界検出量未満であった。

ヨーロッパにおける移民は、その多くがHIV検査を過去に受けているものの、その後陽性となっていた。このことはHIVを予防できるチャンスを見逃していたことを示している。産後ケア体制、性に関連する健康であるセクシャル・ヘルスがさらに拡大されること、また、暴露前予防投薬 Pre-exposure prophylaxis:PrEP へのアクセスや予防的治療などのチャンスが検査の機会にリンクされるべきであろう。

原題:HIV Testing History and Access to Treatment among Migrants Living with HIV in Europe
日付:2018/07/19
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jia2.25123

(南アフリカ)髭剃り機の刃によるHIV感染のリスク

【2018年5月3日】南アフリカの研究者らは、血液などで汚染された髭剃り機の刃による肝炎、およびHIV感染のリスクを明らかにした。髭剃り機の刃部分の血液、および血液由来ウイルスの汚染によりB型肝炎がヒトからヒトへ感染する危険性を示した。ケープタウン大学のザンダイル・スペンゲーン博士 Zandile Spenganeは、小規模な研究ではHIVは検出されなかったが感染のリスクを示すべきだと述べた。

本研究では、航空地図により南アフリカ共和国の3群区から50店舗の理髪店を抽出した。研究対象の理髪店にて、理髪師による使用済み刃の洗浄方法を記録した。また、理髪店から使用済みの刃をサンプルとして回収、分析した。

本研究の結果、顧客の78%が清潔な刃によるサービスを求めていることがわかった。また、回収されたサンプル分析の結果、HBB(血液タンパク感染)陽性が42%、B型肝炎陽性が8%、HIV陽性はみられなかった。

ザンダイル・スペンゲーン博士 Zandile Spenganeは、「顧客がHIV 感染者なのか、B型肝炎に罹患しているかどうかはわからない。大量のサンプルを用いた研究では、より良い質の高い結果が得られる可能性がある」と述べた。

原題:Africa:That Clean Shave Haircut Could Get You Infected With HIV-Research
出典:allAfrica
日付:2018/5/3
URL: http://allafrica.com/stories/201805030115.html

(ブラジル)未治療のHIV陽性者における薬剤耐性の課題

【2018年3月5日】ブラジルでは、48万人以上の人々が抗ウイルス治療を受けている。これについて、2013年から2015年の間のブラジルにおけるHIV治療の普及率と、その期間にHIV陽性と診断されたにもかかわらず治療を受けていない人々の薬剤耐性の特徴についての調査が行われた。以下がその方法と結果である。続きを読む

胎盤がHIVを持つ母子、母子感染の問題を解決する可能性がある

【2018年2月6日】世界の大部分では、出産後、胎盤は破棄され、新生児と母親のケアに重点がおかれる。しかし研究者らは、胎盤に多くの重要な細胞が含まれており、研究によって新生児の発達に関する重要な知見を得ることができるのではないかと考え始めている。続きを読む
おすすめ(AJF関係者の本)
AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
Categories
Archives
発行者:AJF

アフリカ日本協議会

  • ライブドアブログ