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ゲイ、バイセクシャル

ゲイ、バイセクシュアル、男性とセックスをする男性 Men who have sex with menが薬物を使うとき―性的な刺激を求めた使用の弊害に警鐘をならす実践科学の必要性

【2018年6月5日ブリティッシュ・コロンビア薬物使用センター(カナダ)】疫学や行動科学的調査によると、「ゲイ、バイセクシュアルおよびその他の男性とセックスする男性」(gay bisexual and other Men who have Sex with Men : gbMSM)の間で、興奮系の薬物stimulants(コカイン、クリスタル・メタンフェタミンなど)や、鎮静系の薬物depressants(アルコール、ガンマ・ヒドロキシ酸など)を単独、あるいは合わせて使用することが、HIVやその他の性感染もしくは血液を媒介とする感染症(sexually transmitted and blood-borne infections : STBBI)の最大の原因となっている。薬物の使用は、性的な快楽やセックスパートナーとの親密度を最大限にするためであり、「パーティ・アンド・プレイ」Party ‘n Play(or PnP)、「ケムセックス」Chemsexなどと呼ばれている。しかし、HIVに関わる多くのエイズ・サービス組織はこういったセックスにおける薬物使用の害や、個々の性的な傾向については重点を置いてこなかった。このように支援的介入を妨げているのは、以下の5つのギャップである。

ギャップ1:どのような薬物を使用するかは、実際に薬物を体験したゲイ・バイセクシュアルおよび他のMSM(gbMSM)の間でさまざまであること
薬物使用のパターンは非常に変化するため、その時のニーズに対して支援やサービスを素早く提供することが非常に重要である。これまでgbMSMのうちどのグループが薬物を使用する傾向にあるのか調査がされてきている一方で、社会的背景や文化的背景についてはほとんど明らかにされていない。また、HIVや他の性感染症へのリスクが高い特定薬物との関連は認められているものの、どの薬物の組み合わせがリスクを高めたり弱めたりするのかについてはほとんど明らかにされていない。

ギャップ2:ゲイ・バイセクシュアル及びその他のMSM(gbMSM)のライフコースへの視点がとても重要であること
gbMSMにとっての大事なターニングポイントが薬物使用開始時期にどう影響し、どのような経過をたどってきたのか、限られた範囲でしか明らかにされていない。gbMSMの中のサブグループ(路上生活か、セックスワーカーかなど)が使用する薬物のパターンがどのような害を生み出すのかモニタリングすることが必要である。

ギャップ3:ヘルスケア提供者の視点が欠如していること
ヘルスケア提供者が、薬物を使用するgbMSMに対して包括的なヘルスケアを提供することをどのように認識しているのか、提供者の視点についての調査が不足している。ヘルスケア提供者は薬物使用に関するさらなる情報源やトレーニングを必要としているであろうし、薬物使用に至る状況を理解することはよりよい成果につながるだろう。

ギャップ4:いかなる状況においても最適となる「組みあわせ」の介入がわからないこと
スティグマや構造的不公正さが生み出す健康の格差health inequitiesは、我々のアプローチにおいては重大な欠点となり、gbMSMに特異的な合併症を生み出す。このような状況だが、公衆衛生的アプローチやコミュニティ基盤型の介入プログラムでは、クリニックでのケアや暴露前予防投薬Pre-Exposure Prophylaxis, PrEPなど、外部との連携を要する介入を含めた様々なサービスを提供している。

ギャップ5:さまざまな倫理的な課題が解決されていないこと
上記のような介入は倫理的に考慮すべき点が多く、公衆衛生がgbMSMの性生活にまで介入していると非難する議論もあった。gbMSM内のコミュニティの基盤となる原理(性に関するあらゆることを受け入れようとするといった意識など)を、たとえば質の高い対話や相互信頼などいった科学的な原理と統合することは、倫理的問題に真正面から取り組むことになるだろう。

近年、実践科学という学問に資金が向けられてきており、この問題の責任はこの分野における学際的なチームが担う。このチームによってgbMSMのための薬物使用や性に関する保健医療的介入が概観できるようになるだろう。

原題:Investments in implementation science are needed to address the harms associated with the sexualized use of substances among gay, bisexual and other men who have sex with men
出典:Journal of the International AIDS Society
日付:2018/06/05
URL: https://doi.org/10.1002/jia2.25141

ゲイ・バイセクシュアル男性の未検査の養成事例が新たなHIV感染に結びつく

【2018年4月11日】HIV検査と治療のカバー率をどう改善するかが焦点となっているオーストラリアにおいて、過去12年間、ゲイおよびバイセクシュアル男性の未検査のHIV陽性のケースがどの程度、新規感染に影響を及ぼしてきたかについて、ニューサウスウェールズ大学を中心とするチームが調査を行った。

調査方法としては、2004年から2015年の12年間、オーストラリアにおいてゲイおよびバイセクシュアル男性の各段階におけるHIV診断率(「HIVカスケード」と呼ぶ:編集部注)と新規HIV感染の各ステップでの年間の評価を、信頼できる国のデータを使用して実施した。ベイズモデルにより定量的なモデルをカスケードにフィッテングし、未診断群、診断されているが抗レトロウイルス治療(Anti-Retro Viral Therapy:ART)が開始されていない群、ARTが開始されているがウイルス増殖抑制がみられない群、ARTを受けていてウイルス増殖抑制があるという群に関連する係数を推定した。

結果は以下のとおりである。12年間オーストラリアにおいて、HIVに感染したゲイおよびバイセクシュアル男性で、自身のHIVステータスに気づいていない人の割合は14.5%から7.5%へ減少していた。同じ期間、治療を受けていてウイルス増殖が抑制されているゲイおよびバイセクシュアル男性の数と割合がかなり増加しており、ウイルス増殖が抑制されているゲイおよびバイセクシュアル男性は2004年の約3900人(HIV感染GBMのうちの30.2%に相当)から2015年の約1400人(HIV感染GBMのうちの73.7%に相当)と上昇していた。ウイルス増殖抑制にも関わらず、年間の新規感染は期間を通じて約660人から約760人へ増加した。我々の結果は評価するカスケードと伝達係数が不確実であるため広範となっている。それにも関わらず、未診断のゲイおよびバイセクシュアル男性は新規感染へ影響しているようだ。未診断のゲイおよびバイセクシュアル男性群に起因する新規感染の割合は2004年の33%から2015年の59%と約2倍になっている。ほんのわずかの割合(7%未満)だけがウイルス増殖抑制のGBM群に由来する。

研究チームによる調査は結論として、オーストラリアにおけるHIV治療率の上昇はHIV伝播のリスクを減少させることを示している。しかし、感染者の割合と未診断のゲイおよびバイセクシュアル男性からの感染の割合は実質的には増加している。これらの知見はオーストラリアにおけるゲイおよびバイセクシュアル男性のHIV検査と予防の重要性を示している。

*カスケード:診断率、医療機関へ紹介された率、定期受診率・・・診療の段階ごとにその数字がカスケード(階段状の滝)のように落ち込むことにちなんで「HIVケアカスケード」などと使われている

原題:Undiagnosed HIV Infection Among Gay and Bisexual Men Increasingly Contribute to New Infections in Australia
出典:Journal of the International AIDS Society
日付:2018/4/3
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/jia2.25104
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AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
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