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オランダ

(オランダ)国際エイズ会議 AIDS 2018で長期的なHIV対策見直される

【2018年7月31日 アムステルダム(オランダ)発】「障壁を破り、橋を架けよう」を会議の主要テーマとする第22回国際エイズ会議が、オランダの首都アムステルダムで2018年7月23〜27日に開催された。本会議において、世界中のエイズ終息に向けた闘い、国連合同エイズ計画UNAIDSによって策定された「90-90-90目標」(HIV陽性者の90%が感染の有無を把握し、その90%が治療につながり、その90%においてウイルス量が検出可能値以下に下がる、という、UNAIDSが提唱している目標)が全く順調に進んでいないことが改めて明らかにされた。

この会議の中で、科学の面、疫学の面、エイズ対策資金の面、そしてコミュニティ主体の議論によってあらわとなった主な問題には以下の6つがある。
(1) 「危険な自己満足」に対抗していかねばならないということ
これまでに抗レトロウイルス治療や、抗レトロウイルス薬を予防内服する「暴露前予防投薬」 Pre-exposure prophylaxis:PrEP の増加など、HIV対策において大きな進捗はあるものの、世界は2020年までに「90-90-90目標」を達成することはできないだろう。
(2)若者たち、特にサハラ以南アフリカの若者におけるリスクの増加
HIVの新規感染のうち40%を思春期の女性および若い女性が占めている。また、世界全体の思春期のHIV陽性者の中で、アフリカ東部および南部の思春期のHIV陽性者の割合は60%を占める。世界全体のその人口うち60%を占めている。HIV治療から取り残されているサハラ以南アフリカに暮らす若い女性における感染率が上昇しているのである。
(3)対策のカギとなる人口集団 key populationにおけるリスクの増加
ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、セックスワーカー、静注注射による薬物使用者、移民、および彼らのセックスパートナーといった、エイズ対策のカギとなる人口集団の多くが、偏見や差別によって予防や治療にアクセスすることができずにいる。HIV新規感染数のうち47%がそれに該当するといわれている。
(4)東ヨーロッパ及び中央アジアにおけるホットスポット
東ヨーロッパと中央アジアにおいてHIV新規感染率の上昇割合は、2010〜2017年にかけて29%に達した。そのうちの3分の1が静注注射による薬物使用者である。
(5) 予防への取組みを今以上に加速させる必要性
2017年、約180万人が新たにHIVに感染した。2030年までに年間のHIV新規感染者数を200,000人にまで減らすという、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の目標からかけ離れている。そのため、イノベーション、予防ツールへの投資、および予防アプローチの迅速な拡大が不可欠だ。
(6)HIVにおける資金拠出の減少
2020年までに「90-90-90目標」を達成するには、260億ドルが必要である。現在、エイズ対策費として活用可能な資金額は200億ドルであり、これにはグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)やPEPFAR(大統領エイズ救済緊急計画)などによる資金拠出がふくまれている。60億ドルの不足分が満たされなければ、何百万人もの予防可能なHIV新規感染と死を引き起こしてしまうだろう。

原題:International AIDS Conference 2018 reframes the HIV response for the long term
出展:aidspan
日付:2018/07/31
URL: http://www.aidspan.org/gfo_article/international-aids-conference-2018-reframes-hiv-response-long-term

(オランダ)現代の労働におけるHIVに関わるスティグマと差別 =世界HIV陽性者ネットワーク、報告書を発表

【2018年7月25日 アムステルダム(オランダ)発】世界のHIV陽性者団体のネットワークである「世界HIV陽性者ネットワーク」 GLOBAL NETWORK OF PEOPLE LIVING WITH HIV:GNP+ は、国際労働機関 International Labour Organization:ILO と共同で「労働の世界におけるHIVに関わるスティグマと差別:HIVスティグマインデックスとともに生きる人々からの発見」という報告書を、オランダの首都アムステルダムで開催された第22回国際エイズ会議において発表した。本報告書は世界13か国の10万人以上を対象とした調査結果を基にしている。

本報告書はHIVと職場環境の差別に関する最新のデータを提供しており、次のことが明らかになった。
・ HIV陽性者のうち、かなりの割合が定職につけていない。雇用されていない人の割合は、ウガンダの7%からホンジュラスの61%まで幅広い。
・ 調査対象13か国中、10か国で調査対象者の30%以上が失業状態であった。
・ 特にHIV陽性者の若者の失業率が高く、11%(韓国)から61%(ギリシャ)までの幅があるが、特に、東ティモールでは50%、フィジーでは56%、ギリシャでは61%、ホンジュラスでは60%を記録している。
・ 全調査対象国で、HIV陽性のトランスジェンダーの失業率は高いままだった。
・ 多くの人がHIV感染が理由で失業していることが判明した。雇用主や従業員からの差別が失業の原因とする者の割合は、フィジーの13%から東ティモールの100%までを記録し、また、中米諸国はベリーズ(86%)、ニカラグア(67%)、ギリシャ(80%)、コスタリカ(53%)と高率であった。

GNP+のプログラム・マネージャーであるサシャ・ヴォルジナ氏Sasha Volgina は、「この報告書によって、HIV陽性者の職場におけるスティグマ・差別の問題は根深いことが判明した。保健医療と労働のアクセスは密接に関連しており、HIVの流行を止めてHIV陽性者すべての福利を保障するためには、職場環境におけるHIVスティグマを優先的に終わらせる必要がある」と述べた。

さらにILOのHIV/AIDS対策責任者を務めるシャウナ・オルニー氏 Shauna Olney は、「長年にわたる活動にもかかわらず、スティグマ・差別が続いているのは悲しいことである。職場環境で彼らへのスティグマ・差別をなくす一層の努力が求められている。彼らは働く権利があり、誰もそれを否定することはできない。HIV/AIDSと労働の世界に関するILO勧告(No.200) では、すべての利害関係者に労働環境における人権の保護と職場におけるスティグマ・差別を根絶するための必要な手段の確保のためにガイドラインを制定している」と述べている。

原題:Report: HIV Stigma and Discrimination in the World of Work
出典:The Global Network of People Living with HIV (GNP+)
日付:2018/7/25
URL:https://www.gnpplus.net/hiv-stigma-and-discrimination-in-the-world-of-work/

(オランダ)国際エイズ会議が開催されるアムステルダム:エイズ対策の促進者としての歴史

【2018年7月23日〜27日 アムステルダム(オランダ)発】 2018年7月に第22回国際エイズ会議がオランダの首都アムステルダムで開催される。しかし、なぜアムステルダムでの開催なのだろうか。これには、アムステルダムのエイズとのかかわりの歴史が大きく作用している。

アムステルダムはこれまで常にエイズ終息に向けた闘いを強力に推進してきた。まず、1980年代にHIV/AIDSが初めて公衆衛生上の脅威として出現した時、オランダは大きな試練に正面から立ち向かった。そしてエビデンスに基づいた科学的研究に取組み、他の国では排除されてスティグマの対象となった人々と共に闘ってきたのである。実際に、アムステルダムは1992年に第8回国際エイズ会議の開催都市となった。国際エイズ会議は現在、エイズ対策及び公衆保健上の任務としての人権アプローチの啓発における最大のプラットフォームとなっているが、国際エイズ会議がこのような形で発展する契機となったのがこの第8回国際エイズ会議であった。また、HIV陽性の女性の世界的ネットワークである「国際女性HIV陽性者コミュニティ」The International Community of Women Living with HIV/AIDS, ICWが設立されたのもこの第8回の会議である。

さらに、アムステルダムは、薬物を静脈注射によって使用する人々において、注射針の回し打ちによる血液感染を防止する有効な手段である「注射針交換プログラム」を世界で初めて導入した都市のひとつである。それだけでなく、アムステルダムはこれまでも常にHIVの研究におけるグローバルなハブとして機能してきた。例えば、「アムステルダムHIV感染とエイズにおけるコホート研究」や、予防的に抗レトロウイルス薬を飲む「暴露前予防内服」 Pre-exposure prophylaxis (PrEP) を毎日行うか間欠的に行うかを比較する進行中の臨床試験などが例として挙げられる。後者は、HIV感染ゼロを目指すアムステルダムの研究団体であるH-TEAM(HIV Transmission Elimination Amsterdam)のプロジェクトの一部でもある。

さらに、アムステルダムは、現在、国際的に展開されている「90-90-90目標」(HIV陽性者の90%が感染の有無を自覚し、その90%が治療につながり、その90%においてウイルス量が検出可能値以下に下がるという、国連合同エイズ計画 UNAIDSが提唱している目標)の迅速な実施(Fast Track)を積極的に展開する「ファスト・トラック・シティ」を宣言している。これは、世界が2030年までのエイズ流行の終息という野心的な目標を達成するために行っている取り組みについて、アムステルダムが率先して実施していくということを約束している都市であることを意味する。

国際エイズ会議のアムステルダムでの開催には、2018年、HIV/AIDS流行に繰り返しコミットメントを見せ、実践的に取組んでいる都市であるアムステルダムに、国際社会が戻ってくるという象徴的な意味がある。実際にこれまでのアムステルダムのHIV流行終息のための歴史的な努力は成功してきたことが証明されている。過去5年間で市内のHIV新規感染は半減した。また、アムステルダム市内のHIV陽性者の94%が自分の感染の有無を知っており、そのうち83%以上の人がウイルスの抑制を成し遂げている。

国際エイズ会議を主催する国際エイズ学会 International AIDS Society (IAS) の会長であるクリス・ベイラー氏 Chris Beyrer は、は、「政府が人権尊重への強力なコミットメントと共同し、傑出した科学を支援してエビデンスに基づくHIV対策プログラムに取組むと何が起こるのか。オランダはそれを示す素晴らしい例だろう」とアムステルダムの努力を絶賛した。ベイラー氏は、「私たちは、国際エイズ会議をこのようなエイズ流行との闘いにコミットしてきた都市で開催できることを大変嬉しく思っている」と述べた。

原題:Why Amsterdam for AIDS 2018
出展:c2018 I amsterdam
日付:2018/07/27
URL:https://www.iamsterdam.com/en/business/meetings/aids-2018/why-amsterdam
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AJF代表・林達雄著作。治療薬アクセス問題を患者の側から描き、真の国際協力とは何かを問う、HIV/AIDS関係者必読の一冊
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