2023年05月18日

ザ・シンガー

ELVIS
(1979-US:TVM:C-119m.)
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製作総指揮:ディック・クラーク
製作:アンソニー・ローレンス
監督:ジョン・カーペンター 
脚本:アンソニー・ローレンス
撮影:ドナルド・M・モーガン
音楽:ジョー・レンゼッティ
歌:ロニー・マクドウェル
出演:カート・ラッセル、シェリー・ウィンタース、パット・ヒングル、シーズン・ヒューブリー、ロバート・グレイ、メロディ・アンダーソン

カート・ラッセルがやるのか、エルビスを、なんじゃそんなもん、しかも監督がジョン・カーペンター、なんで?げ、TV映画か!
なんて馬鹿にして観に行かなかったもんね。だいたい、この時のカート・ラッセルなんて、私たちはディズニー映画の健全な子供か青年、のイメージしかなかったもんね。『パニック・イン・テキサスタワー』なんて観て、ああ、子役から大成しなくてこんなのしかできなくなったんだな、くらいにしか思ってなかった。なんで今頃?しかもエルビスを演じる主役?でしたもんね。
が、実はディズニー子役の前に『ヤング・ヤング・パレード』でデビューしていたなんて!エルビスに縁が有ったんですね!
で、そろそろ観ようかな、なんて思うと今度はメディアもなかなか探しにくくなっていて。
やぁ、なんとプリシラはシーズン・ヒューブリーが演じるんですか!意外!清楚なイメージしか無かったもんね。『ロリ・マドンナ戦争』とか。日本では実は誰でも知っている顔なんですが(資生堂のコマーシャル”ボンジュール、お目目さん”)。しかもカート・ラッセルの奥さんですよね(この作品が縁で結婚、出来過ぎ!)。笑ったのはビング・ラッセル(カート・ラッセルのお父さん)が劇中でエルビスの父バーノン・プレスリーを演じています。まぁ、誰もが気になるトム・パーカー大佐は誰が演じるかと思ったらパット・ヒングル。それよりも驚いたのはエルビスの高校時代の彼女はメロディ・アンダーソン。『フラッシュ・ゴードン』とかの寸前なので初々しい。
さて、物語は、誰が作っても、こう展開してこう焦点を当てて、になるしかないので早いもん勝ちか。そうなるとこれはなかなかタイムリーな企画だったようだ。いろんな賞にもノミネートされてカート・ラッセル復活作品となったんだね。ジョン・カーペンターと縁ができたのがのちのキャリアにはよろしかったようで。ジョン・カーペンターも『要塞警察』(76)は佳作だなぁと感心したけど、それまでの『ダーク・スター』(74)にしたって続く『ハロウィン』(78)、『ザ・フォッグ』(80)にしても「音楽をちゃんと自分でやるのは偉いけど、なんでみんなそんな騒ぐんだ。全然怖くないじゃないか」くらいにしか感じられなかった。この後の『ニューヨーク1997』(81)で、ああ、またカート・ラッセル、こんなタフガイ路線でやったんだ、と少し感心。そしてその次の『遊星からの物体X』(82)でぶっ飛んだもんね。こうして並べてみてもこれがダントツの大傑作になりました。カート・ラッセルもこれがあったから生き残れたんですね。しかし、これの後が『クリスティーン』(83)ってガラガラ崩れてあとはもう語らなくても良い作品ばかりになってしまった。この作品は監督としてはあまり個性は無かったな、と思う。
そして、考え込むのだ。カート・ラッセルのエルビス扮装も動きもものすごく頑張ってると思う。歌を吹き替えたロニー・マクドウェルもエルビスそっくりです。
でも、みんなで寄ってたかってそっくりさんショーをやるのが正解なのか。そりゃ、そっくりじゃなかったら叩かれるだけだし。ここが、こういう実録物の難しい瀬戸際なのだ。オリジナリティーを重要視するのか、似てる事を重要視するのか。この作品ではほぼ何も考えないで後者を選んでいる。じゃあ、いくらそこでカート・ラッセルのパフォーマンスが優れていたとしても、所詮はまたエルビスの本物を思い出して見たくなるだけなのだ。なぜ、見たくなる?それは、今見たのものが本物のエルビスじゃないから。だとしたら、なぜ、これを観る必要があるのか?先日、『エルビス』(2022)を観た時もこれに陥った気がする。でもやっぱりこういうものに観客が引き寄せられていくのは「ケミカル」なんでしょうね。エルビスのケミカルに反応する観客が吸い寄せられるんでしょう。エルビスは、それが、まず有る。
この作品は他にもシェリー・ウィンタースがエルビス母グラディスを主役を食わないように手加減して演じています。ナタリー・ウッド役のコがなんか少し似ていてよろしい。そう言えばエルビスとナタリー・ウッドは短期間の交際が有って『ウエストサイド物語』もエルビスが出る予定だったんですってね(大佐が反対して実現せず)。

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まぁ、パフォーマンス場面を除けば、平坦なTV映画らしいだるさだったと思う。黙ってられたら絶対にジョン・カーペンター監督作品とはわかりません。日本劇場公開は『ザ・シンガー』なんてエルビス色は薄められて。エルビス、じゃあ食っていけない、そんな国なのさ。
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