
ガンガン石とはなんと素朴で原始的な呼称であろうか。
この石は雨乞い石とかそれに近い意味の呼び方ではなく「ガンガン」という擬音で呼ばれている。
それはまるで子供がつけたような名前である。
大貫の田畑が日照りで乾いた日が続いて人々が困り果てるとき、この石がガンガンと鳴ると不思議に雨が降った。
それは一度や二度のことはではなく忘れたときにしばしばやってくる干ばつの時にこの石がガンガンとなって雨を降らした。
ガンガン石は大貫の西の丘陵から大貫の田園地帯に突き出た位置にある。
古くから五ヶ瀬、大瀬の二本の川に挟まれたこの地域は肥沃な中洲であっただろう。
貧弱な堤は洪水でしばしば崩れ大量の土砂で埋まったことだろう。
また灌漑技術は未発達で、日照りが続くと稲は容易く枯れただろう。
そんな時代に稲作に挑んだ人々のこの石が持つ得たいの知れない霊験は神にも似た尊いものだったのかも知れない。
やがて、灌漑を含めた農業技術が発達して干ばつの被害が軽くなるにつれて次第にこの石の役割は終っていった。
しかし、かってのこの石の霊験に対する人々の尊崇の念は遺った。
普通、石がぶつかる音は「ゴツンゴツン」と表す。
しかし、この石は「ガンガン」。
「ゴツンゴツン」とは比較的新しい時代の擬音であり、ガンガン石が現役の頃には使われていない擬音だったのかも知れないが、「ゴツンゴツン石」より断然「ガンガン石」である。
藁より重いガンガン石を頼りに稲作に励んでいた昔の大貫の人々を想う。
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