憲法講義室

Herzlich Willkommen zur Webklasse von Koichi Akasaka ここは、九州大学法学研究院准教授、赤坂幸一のページです。 九州大学法学部・法学府および 法科大学院の受講生に対する講義・試験関連情報の提供を主たる目的としています。

【基礎憲法Ⅰ】第15回講義を終えて

 最終の第15回講義では、【地方自治】の一部まで扱いました。違憲確認訴訟や宣言判決請求訴訟については、何回も指摘しましたように、事件性の要件との関係で、その制度的本質から説き起こせることが必要になります。抽象的違憲審査許容説をはじめ、憲法部を創設する提案まで、最近の笹田栄治「統治構造において司法権が果たすべき役割⑴--違憲審査活性化の複眼的検討」判時2369号(2018年)3頁以下が大変勉強になるともいますので、ご参考までに。とくに現在の最高裁は、特定の法分野に限定されないオールラウンド型の判断を求められますので、それが違憲審査の活性化にとっての大きな障害の一つになっているとも言われます。河村又介が憲法裁判所をイメージして最高裁判事に転じた後、民事法や刑事法などの詳細な判断まで求められる現実に辟易したというのは有名な話で、そのため、裁判体において職業裁判官が構造的に優位するシステムになっている、というわけです。
 次に、憲法判断回避の準則とその限界については、実際の裁判所の判例を読む際の「コツ」を示してもいますので、正確に理解するよう心がけてください。裁判所が当事者の主張のすべてを取り上げるわけではありませんし、学術上の争いに決着をつける場でもありません。他方で、その影響力の大きさ如何によっては、空知太神社事件判決のように、必ずしも憲法判断に立ち入る必要がなくても、あえて最高裁としての判断を示す場合もあります。この点を、憲法判断回避準則や合憲限定解釈の原則とも整合的に説明できるように、基礎的な理解を固めておいてください。
 最後に、定期試験の範囲については、前回のフォローアップで既に示しているほか、諸般の事情により【地方自治】は試験範囲から除外しますので、ご注意ください。それでは、健闘をお祈りしています。

【学部ゼミ】第12回演習を終えて

 第12回ゼミでは、2015年の改正個人情報保護法を受けた2017年の次世代医療基盤法を素材にして、医療における個人情報保護の問題について取り扱いました。一方で個人情報の保護の問題と、他方で医療データを活用した最先端医療の開発やビッグデータを活用した薬剤の開発など、個人情報の利活用の問題とは、時に鋭い利益対立の状況を生み出します。しかも国際特許の問題が絡むため、個人情報の保護のみを重視するわけにもいかず(回りまわって個人の医療費の増大を招くおそれがあります)、両者をいかに調整するか、またそもそも保護されるべき「個人情報」の内実をどのように決定するのか、という問題が注目を集めています(なおジュリスト最新号(1255号)に次世代医療基盤法の解説がありますので、参考にしてください)。
 前者については、個人の識別可能性を排除したうえで、いかにして医療ビッグデータの分析・活用を促進するかが課題でしたが、最近の研究の進展により、情報通信研究機構(NICT)などの研究グループが個人情報を暗号化したままデータを選別して解析できる技術を開発したことで、この面での課題の一つが克服されつつあります(「情報機構 医療情報を暗号のまま解析」)。
 後者については、議会制定法による秩序形成のネットワーク化を通じて、個人情報保護委員会や認定個人情報保護団体、事業者などが匿名加工情報や違法な第三者提供の具体的内容について形成するための枠組みが設定されていることに注意が必要です。専門知識を秩序形成プロセスに以下に取り込むか、がポイントで、この主題について詳しくは、山本龍彦「医療分野におけるビッグデータの活用と法律問題」同『プライヴァシーの権利を考える』(2017年)193頁以下を参照してください。
 それでは、台風の余波によるゼミの補講が終われば夏休み、試験後の晴れ晴れとした(?)みなさんにお目にかかれることを楽しみにしています。

【公法総合演習】第2回担当分を終えて

 先日の公法総合演習(赤坂の第2回担当分)では、いわゆる補助金の不助成問題について検討しました。直接のモデルにしたのは石川県のMICE助成金不交付問題ですが、MICE助成金に限らず、設例にあげたような福岡観光コンベンションビューロー(公益財団法人)を通じた福岡市の国内コンベンション開催助成金など、給付の領域においては、このような利益の不供与(不「給付」)が不利益の供与(「規制」)でないがゆえに表現内容に着目したものであっても許されるか否か、という問題が関心を集めています(参照、蟻川恒正「表現『不助成』事案の起案⑴」法教417号(2015年))。
 こういった問題群を、その問題構制に着目して大別すれば、
1)集会の物理的な「場」の提供
 ・指定的パブリック・フォーラムの適切管理義務(泉佐野市民会館事件)
 ・市庁舎前広場における集会が許可されなかったケース(市庁舎前広場集会拒否事件)
 ・集会時の公園使用に市の後援が要件とされたケース(民商まつり事件)
2)表現の「場」の提供
 ・公民館だよりへの投稿掲載が拒否されたケース(「9条俳句訴訟」)
3)集会・表現・研究などの「環境」の提供(例:補助金の交付)に関わるケース
 ・まちづくり推進協議会の公報紙に対する補助金打ち切り(加賀市広報紙事件:蟻川前掲論文⑵~⑸.ただし政府言論の法理に関わる特殊ケース)
 ・公的な研究助成金の打ち切りと学問の自由(例:『判例から考える憲法』133頁以下)
などがあり、コンベンション開催助成金の不交付は3)に分類されるケースです。
 もっとも、給付の論理を自由権規制の文脈に転化する意味をもつパブリック・フォーラムの法理が妥当する領域と異なり、このようなケースでは、比例原則や平等原則との関係で給付裁量の憲法的統制を問題化することができるにとどまるのではないか、と思われます(榊原秀訓『地方自治体の補助金にみる政治的中立性』(自治体研究社、2018年)27頁・40頁)。
 また、今回の設例はいわゆる当事者対立型の問題設定ではなく、アドヴァイス付与型の設定をしてみました。こういった出題形式が今後も維持されるかどうかは分かりませんが、従来の人格分裂的な回答方式に比すれば、採点側の困難は増すものの、回答者の法的な理解力を端的に問うことができる方式で、また統治機構論上の論点も聞きやすくなるというメリットもありますので、平素より備えをしておいていただければと存じます。
 それでは、今後とも着実に学修を進めていただければと存じます。ご健闘とご成功をお祈りしています。

【基礎憲法Ⅰ】第14回講義を終えて

 第14回講義では【裁判所Ⅱ】のⅣ「司法権の限界」以降の問題について扱いました。いくつか捕捉ですが、第1に、経済政策等の政治部門の広い裁量に委ねられた領域における体系的整合性・首尾一貫性の審査については、【裁判所Ⅲ】の末尾「憲法判断における『事実』」に関連する記載が出てきますので、講義中に解説した点と併せて、目を通しておいて下さい。この点、比例性の審査における立法事実の審査の問題も含め、赤坂幸一「立法事実と立法資料:司法判断の理由付け」法セミ759号(2018年4月号)86-91頁、及び櫻井智章「京都府風俗案内所規制条例最高裁判決[平成28.12.15]」判時2353号(2018年)154-159頁を参照してください。
 第2に、富山大学事件で問題となった単位認定行為は、(1)事件性の要件のレベルで扱うのか、それとも法律上の争訟と捉えた上で、(2)問題はありますが部分社会論の文脈で検討するのか、(3)教育裁量の問題として扱うのか、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて検討しておいてください。
 第3に、講義ではゆっくりと触れる機会がありませんでしたが、苫米地事件で衆議院の解散行為との関係で判例が用いた統治行為論には何らの留保も付されていないところ、対外関係(日米安保条約)において最高裁が用いた同理論には明確な留保が付されており、そのアンバランスが指摘されているところです。この点につき、小島和司・憲法概説492頁が参考になると思います。
 第4に、【裁判所Ⅲ】の冒頭で触れた付随的違憲審査制の問題については、注5の宣言判決請求訴訟が興味深い事例を提供しています。第13回講義のフォローアップで触れた点も踏まえて、再度考察を深めておいてください。【Q6】についても、結局は事件性の要件の理解に帰着する問題ですので、この点に関しても、前回のフォローアップを参照してください。
 最後に、違憲審査制の制度構想については、判例時報の最新号(2369号)に掲載されている笹田栄司「統治構造において司法権が果たすべき役割(1)違憲審査活性化の複眼的思考」が大変参考になりますので、余力の範囲で手に取ってみてください。
 なお、期末試験の範囲は、中間試験以降の範囲を主としつつも、全範囲が対象になります(そもそも統治機構の総論部分と各論部分を分けて扱うことはできませんし、憲法史もいろいろな局面で関わってきます)。大変ですけれども、この機会に統治機構論の総復習をしてしまいましょう。それでは、次回の最終講義でお目にかかれることを楽しみにしています。

【法律外書講読】第12回講義を終えて

 第12回講義では東ドイツ時代の国法学及び行政法学について検討しました。訳文についての詳細なチェックは、別途お送りするレジュメをご参照ください。講義の際に出てきたホーネッカーの旧宅の話や、マヤコウスキー・リンク、また壁の建設が西側諸国にとっても一定の緩和要素をもたらし、表向きはともかく実際には歓迎されていたことなどは、次のリンク先にある諸エントリーで解説していますので、一読をお願いします。また、西ドイツとの基本条約の締結との関係で言及のあった二重亡命者ヴィリー・ブラントについては、次のエントリーを参照してください。
 あとは、前期に行った翻訳の完成版を作成し、今後の研究の基盤とできるようにする作業をしましょう。お忙しい中恐縮ですが、ご対応のほど、よろしくお願いします。

【基礎憲法Ⅰ】第13回講義を終えて

 本日の第13回講義では【裁判所Ⅱ】の【Q9】までを扱いました。とくに事件・争訟性の要件は、司法権の理解の根幹に関わりますので、正確に把握するように努めてください。従来の通説は同要件と裁判所法3条1項の法律上の争訟とを無造作に同一内容として把握してきた嫌いがありますが、事件性の要件の意義を問い直す試みや、司法権の形式的意義に着目した新たな司法権理解が主流化していることについては、講義レジュメで解説した通りです。
 また、憲法76条1項の解釈論として、事件性の要件を①争訟の主観的権利性の要件と、②争訟の具体性・成熟性の要件とに分けて考えることが有益ですが、これについては1年前の本講義のフォローアップですでに詳細に解説していますので、そちらをご参照ください。
 次に、事件性の要件との関係で、法令の解釈・効力に関する抽象的な争いについて、裁判所が宣言的判決をすることができないかどうか、という問題についても検討しました。これについては東京高判平成28・9・7(LEX/DB 25543799)及びその判例解説が参考になりますが、この点、文献案内を含め、こちらの解説を参考にしてください。なお、警察予備隊違憲訴訟・上告審判決については、その判決文の表現が憲法裁判所許容説の一つの根拠とされたこともありますので、各自の教科書等で確認しておいてください。
 裁量統制の手法としての明白性の審査(ないし社会観念審査)および判断過程統制、および、それらを包摂する論証過程の統制と、その審査密度の設定パラメータについては、こちらで詳しく解説していますので、参考にして頂ければ幸いです。
 最後に、小テストは、次回に【裁判所Ⅱ】の範囲を、次々回(最終回)に【裁判所Ⅲ】及び【地方自治】の範囲を扱いますので、準備をよろしくお願いします。また、試験は7月31日(火)2限の予定ですので、併せて計画的な準備をお願いします。
 それでは、残された講義もあと2回、次回の講義でお目にかかれることを楽しみにしています。

【法律外書講読】第11回講義を終えて

 第11回講義ではヴァイマル共和制下における介入主義的な国家活動の展開と、それに平仄を合わせた行政法の対象領域の拡大について検討しました。
 ヴィーアッカーが説いたような「古典的な私法に対する社会法の侵入」は、裏から見れば公法部門の拡大・拡散現象でもあったわけですが、これがヴァイマル期における憲法裁判の未発展を背景に、行政法の拡散化を招いた点については、グズィ『ヴァマール憲法 全体像と現実』(風行社、2002年)の関連個所をご参照ください。また、産業社会における行政法の新たな発展(法治国家の変容)を捉えたフォルストホフについては、近年、注目すべき学説史研究が刊行されています。Florian Meinel, Der Jurist in der industriellen Gesellschaft. Ernst Forsthoff und seine Zeit, Berlin: Akademie Verlag 2011です。600ページ近い大著ですが、着実な記述は読みやすく、余力があれば取り組んでみてください。
 次に、経済行政法の泰斗シュタインについては無数の文献が刊行されており(「ローレンツ・フォン・シュタイン日本語文献目録」を参照)、その全体像を把握するのは容易ではありませんが、明治憲法制定との関係では、まずもって、瀧井一博『ドイツ国家学と明治国制ーーシュタイン国家学の軌跡』(ミネルヴァ書房、1999年)に取り組むべきでしょう。清水伸『独墺に於ける伊藤博文の憲法調査』(岩波書店、1939年)も重要な基本文献ですので、上記の書籍に続けて手に取ってみてください(値打ち本ですが、現在では国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでフリーアクセスが可能です(こちら))。
 テクストに言及のあったラーテナウは、AFGの創設者エミール・ラーテナウの長男で、英仏独語を自在に操り、マックス・シェーラーとも親交のある文人政治家でした。ソヴィエトとの間にラパロ条約を締結したことから極右テロ組織所属の青年ザロモンに暗殺され、共和国時代にドイツ帝国議会議事堂の正面玄関が開いたのは、このラーテナウの国葬の時だけであったと言われます(以上については平井正『ベルリン1918-1922』(せりか書房、1980年)355頁以下、同『ベルリン1923-1927』(せりか書房、1981年)165頁以下を参照してください)。なお、ヴァイマル共和国史に関する邦訳文献の紹介が朝日新聞2013年8月18日の書評欄に掲載されていますので、図書館HPから過去新聞記事検索をしてみてください。
 講義の途中で言及のあった平泉澄については、ミネルヴァ書房から伝記が出版されています。戦後における戦前の断罪の風潮の中で、教職を退き、故郷の平泉寺に蟄居しましたが、その廉潔な学識を評価する人々も多く、最高裁判事時代の団藤重光もわざわざ視察のさなかに平泉寺に立ち寄っています。また、同じく講義で言及のあった牧野英一の介入型国家観、すなわち、国家は賢明に技術化(民主的正統化)された法律を通して人間を包容し、人間は法律を通して国家に同化すべきだとする議論については、拙稿「萍憲法研究会の憲法論議」で少し触れたことがありますので、併せてご参照いただければ幸いです。大正デモクラシー期以降の法学の一つの典型的なあり方が、よく伝わってくると思います(この点については、さらに、伊藤孝夫「大正期の知識人と法学(1)・(2)完」法学論叢128巻2号・128巻3号を参照してください)。
 それでは、次週の演習で前期は終了となりますので、担当回の修正版の作成など、よろしくお願いいたします。

【基礎憲法Ⅰ】第12回講義を終えて

 フォローアップが遅くなりましたが、先週の第12回講義では【裁判所Ⅰ】のⅡ「公開裁判原則」から、【裁判所Ⅱ】のⅡ「司法権の範囲」までを扱いました。82条1項の主観的権利保障説と、客観的な公開制度保障説とは、うまく対比させて学習するようにしてください。また、公開すべき事件の範囲をめぐる訴訟事件公開説(判例)の立場は、訴訟事件については対審・公開・判決、非訟事件については非公開・非対審・決定という「デジタル型の訴訟・非訟二分論」を生み出したとも評されますが、インカメラ審理の問題も含めて、拙稿「裁判を受ける権利」月報司法書士2015年5月号30-37頁に、レジュメより詳しい解説がありますので、参考にしてみてください。
 また、訴訟・非訟二分論については、最3決平成20・5・8判時2011号116頁に付せられた那須反対意見が極めて説得的な論理を展開していますが、この点についても、上掲「裁判を受ける権利」の33頁以下に解説を載せていますので、参考にして頂ければ幸いです(なお、練習問題を作成していたように記憶していましたが、どうも勘違いであったようです、申し訳ありません)。
 また、レジュメ末尾の各種事件については、司法の独立性が問題となった実際例ということで、コア・カリキュラムでも基礎的な学修項目に指定されていますので、講義ではすべてに言及することができませんでしたが、一通り目を通しておいてください。なお、東大事件における分離公判問題や青法協の問題については、私がインタビュアーの一人を務めた大森政輔氏のオーラル・ヒストリー(大森政輔『法の番人として生きる』(岩波書店、2018年))が刊行されましたので、前期の講義が終わったら、関心に応じて、手に取ってみてください。
 最後に、【裁判所Ⅱ】で触れた、内閣総理大臣の異議の制度については、山本隆司教授の「書斎の窓」誌での述懐が興味深く、お時間が許せばこちらから閲覧してみてください。
 それでは、講義もあと数回、最後までどうぞよろしくお願い申し上げます。
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