憲法講義室

Herzlich Willkommen zur Webklasse von Koichi Akasaka ここは、九州大学法学研究院准教授、赤坂幸一のページです。 九州大学法学部・法学府および 法科大学院の受講生に対する講義・試験関連情報の提供を主たる目的としています。

【学部・憲法ゼミ】2019年度の演習所属について

 標記の件につきまして、多くのご応募をいただきありがとうございました。多くの第一志望の応募をいただくことになり、可能であれば全員をお受け入れしたいのですが、サブゼミ生・オブザーバーも含めて20名以内というルールになっており、ゼミ選考を行わなくてはなりませんでした。今回ご一緒できなかった方も、次年度にはまたご一緒できる可能性がありますので、来年なおご関心があるようでしたら、ぜひご応募いただければと存じます。
 選考に際しては、ゼミの志望理由書を中心に、真剣に検討させていただきました。次年度は、定員限度の20名(新4年生10名、新3年生10名)で、新たなスタートを切ることになります。2月1日に選考結果が発表されたのち、該当者には、2月上旬を目処に、次年度の演習の進め方についてメイルを差し上げます。
 また3月末~4月初旬にプレゼミを行う予定です。これまでは福岡城跡の舞鶴公園や西公園でお花見をしながら語らうひと時でしたが、伊都キャンパス移転後の最初のプレゼミ、どこの桜を愛でるかは、追々ご相談させていただければ幸いです。それでは、春の麗らかな一日にお会いできるその時を、心待ちにしています。

【学部・憲法1】第11回講義を終えて

 第11回講義ではUNIT05の10頁、古典的代表議会制と現代的な政党国家型議会制との調整のあり方から検討をはじめました。この点、公職選挙法・国会法による失格・退職規定について、よく確認しておいてください。ちなみに、古典的代表議会制の説明に際してバークの保守的な政治思想や「全国民の代表」理念について説明しましたが、明治維新後の自由民権思想華やかなりしとき、元老院副議長佐々木高行の求めに応じて、これに対抗するバークの思想を『政治論略』として紹介し、明治天皇や諸皇族にご進講したのが、かの金子堅太郎です(金子は修猷館出身で、明治維新後に修猷館が廃校の憂き目を見たときに、これを再興するに与って力がありました)。この『政治論略』や、欧州憲法調査中の伊藤の役に立つようにと金子が作成した調査資料「各国憲法異同疑目」により、金子は伊藤博文の目にとまり、また井上毅と交遊するようになったことを機縁に、金子は明治憲法典や付属法制の立案を担当する3人組(井上毅・伊東巳代治・金子堅太郎)の一人となります。福岡市の鳥飼神社のあたりには金子の生誕碑が残っていますので、興味があれば訪れてみてください。
 また、政党の発展段階の項目でご紹介したカール・シュミットの『現代議会主義の精神史的状況』は、昨年、樋口陽一先生の新訳&解題で岩波文庫から出版され、手に取りやすくなりましたので、ぜひ挑戦してみてください。とても面白く読める書物です。
 選挙制度については、多数決制と比例代表制の制度的理念をしっかり理解した上で、我が国の国政レベルの選挙制度がその折衷方式になっていることとその意味について、検討してください。その際、レジュメ22頁注40でご紹介している砂原庸介『民主主義の条件』第3章が特にわかりやすいと思いますので、できれば他の章も一緒に、手にとってみてください。
 次に、事情判決の法理については少し難しいので、注29でご紹介した藤田宙靖『最高裁回想録』の109頁以下などを参照しつつ、本来主観訴訟を念頭に置いた行政事件訴訟法31条1項が、客観訴訟たる選挙関係訴訟で準用を禁じられているにも関わらず、その「精神」が援用されたその意味に着目して、勉強してください。その際にご紹介した中村治朗裁判官については、UNIT0(ガイダンス)でお配りした「術としての裁判」の中に関連の記述がありますので、参考にしていただければ幸いです。
 それでは、次回講義は1月25日(金)となり、この日は、UNIT 01-03を内容とする講演を企画しています。レジュメの背景にある豊かな憲法学の世界を体感していただければ、と願っています。 

【学部・憲法1】第10回講義を終えて

 第10回講義では、UNIT 05の5頁、拘束的レファレンダムの日本国憲法上の位置付けから検討を再開しました。いわゆる人民主権論に立脚する解釈学説を採る立場と、国民主権論を基調とするそれとの間には、この点を巡って、具体的な解釈論上の帰結に相違が見られます。この点を出題した過去問もmoodleに掲載していますので、レジュメ6頁注6の文献などを手掛かりに、勉強を深化させていただければ幸いです。 
 また、有権者団の直接の国政関与が唯一行われる憲法改正の国民投票は、現在までのところ、まだ一度も行われていません。この点を捉えて(「囚われの聴衆」ならぬ)「囚われの主権者」と呼ぶ見解も存するところですが、 憲法改正手続法に残された問題点、とりわけ最低投票率制度導入の是非や、テレビCMの規制のあり方について指摘するものとして、宍戸常寿「『改憲4項目』はどう進むのか?2020年の新憲法施行は可能なのか?」をご参照ください。前者の問題については、また、坂井豊貴『多数決を疑うーー社会的選択理論とは何か』(岩波新書、2015年)の関連ページ、及び、拙稿「政治空間と法」法セ761号(2018年)もご参照いただければ幸いです。
 また直接民主制の箇所では、2017年6月の大川村議会による村総会の設置表明が注目されます。事の経緯については、各種新聞報道のほか、衆議院議員から平成30年2月7日に提出された質問57号、およびこれに対する答弁書(内閣衆質196第57号)を参照してください。
 最後に、講義でも少し言及しました、答案をはじめとする法的文章の書き方についてですが、過去の出題例および参考答案例で実地に学ぶ他に、井田良・佐渡島沙織・山野目章夫『法を学ぶ人のための文章作法』(有斐閣、2016年)にぜひ目を通してください。今後の各種試験やゼミ報告、論文執筆、将来の職業上の文章スキルの基礎として、多くの知恵が詰まっています。とくにその冒頭に、「まず、読者の皆さんには、ここで言葉や文章に対するイメージを根本的にあらためて、まったくゼロからスタートすることをお願いしたい」(12頁)とあること、および後続箇所に記されているその意味をよく理解するところから出発していただければ、効果的であると思います。
 少し付言しますと、どちらかといえば法学は、数学のような理詰めの方程式的論理によるところが多く、同時にまた、各事案の類型事実を丹念に検討する歴史学的視点に裏打ちされているところがあります。元裁判官の畑郁夫は、「われわれ法律実務家の本業が証拠により事実を確定していくという極めて歴史家に類似した作業を中心としている」ことを指摘していますし(『文化としての法と人間』(学際図書出版、2004年)3-4頁)、法曹関係者への聞き取りで有名な野村二郎の著作にも、「ドイツの学者の本に、法律家になる素質としては、数学が得意であるか、歴史が好きであるか、どちらかが必要だと書いてありました」(『法曹あの頃〔上〕』(日本評論社、1978年)84頁)というエピソードが紹介されているのも、同様の考え方に立ってのものであると思われます。 今典拠を思い出せませんが、倉田卓次裁判官の著作シリーズの中にも、同様の指摘があったように記憶しています。法的思考を背景とする法的文章とはどのようなものかを理解するときの、一つの参考にしていただければ幸いです。

【学部・憲法1】第09回講義を終えて

 第09回講義ではUNIT 04の15頁から検討を再開しました。このうち、砂川事件最高裁判決をめぐっては、最近の資料的研究により、特に「変形型統治行為論」の今日的意義を巡って、あらたな解釈の方向性が示唆されています(嘉多山宗「砂川事件最高裁判決の形成過程と今日的意義ーー入江俊郎の「統治行為論」を分析軸として」判時2385号(2018年)128頁以下)。また、米国側文書から砂川判決にあらたな光を当てたものとして、布川玲子ほか『砂川事件と田中最高裁長官――米解禁文書が明らかにした日本の司法』(日本評論社、2013年)、および吉田敏浩ほか『検証 法治国家崩壊――砂川事件と日米密約交渉』(創元社、2014年)がありますので、ご参考までに。
 また、自衛権の範囲をめぐる解釈問題については、2014年までの政府解釈が、憲法上、いわゆる個別的自衛権の範囲に限られていることを前提に、領海内の米軍施設などに対する防衛をも個別的自衛権の枠内で説明しようとしてきたことに、留意してください。そのため、例えば周辺事態安全確保法において、米軍支援が米軍の武力行使と一体化しないように地理的限定および支援内容の限定をしていたわけですが、2015年に重要影響事態安全確保法に改正されて以降は地理的限定が撤廃され、また、支援業務も拡大されています(米軍への弾薬の提供や米軍戦闘機への空中給油なども「武力行使の一体化には当たらない」とされるようになっています)。ちなみに、従来の内閣法制局見解における「武力行使の一体化」論は、その概念を正確に対外的に説明することが難しく、日本政府による公定訳でも(ittaika with the use of force)と訳されています(なお「駆けつけ警護」は"kaketsuke-keigo"です)。 
 余談ついでにもう一つ。講義では武力攻撃事態法(現在の武力攻撃・存立危機事態法)と自衛隊法76条1項の関係を踏まえつつ、自衛隊の防衛出動に対する文民統制のあり方について検討しましたが(レジュメ18頁)、この点については、横田明美ほか『シン・ゴジラ 政府・自衛隊 事態対処研究』(ホビージャパン、2017年)という異色の書物で楽しく学べるかもしれません。興味のある方は一度手にとってみてください。

【学部ゼミ】第12回演習を終えて

 第12回演習では、国立大学法人化に関わる憲法問題について検討しました。報告ではとりわけ、2003年の国立大学法人化法による「中期目標→中期計画→大学認証評価」及び「中期目標→自主的ビジョン・戦略・KPI→重点支援」という2つの結果管理型スキームによる大学統制が大学の自治にいかなる影響を及ぼすのか、という観点からの問題が提起され、主に財務自律権の確保という憲法上の要請からの問題点が指摘されました。
 なお、後者の重点支援枠は、先般の政府決定で、現在の約300億円(運営費交付金の1%)から、新規700億円を加えた1,000億円(同10%)に増額されることとなり、この新規分については、従来のKPIのような自主的設定指標ではなく、何らかの客観的な指標に基づいた新たな重点支援が行われることになりました。第1期の国立大学法人評価が、関係者総動員で書類作成に没頭した割にはわずか16億円分にしか反映されず徒労感のみが残ったことは記憶に新しいですが、その枠組みを存置させたまま、かつKPIに基づく重点指標枠を残したまま、いわば3層目の新たな重点支援枠が突如設けられたわけで、国立大学法人の関係者は今後、五月雨式に出された種々の評価スキームへの対応に一層苦しむことになるでしょう。ちなみに、第2層のKPIに基づく重点支援は、別途、法科大学院の加算プログラム(運営費交付金を一旦吸い上げた上での再分配プログラム)にも次年度から導入されますので、主要な法学系学部・大学院では、いわば4層での評価に日々追われ続ける、ということになります。個人的な体験でも、KPI指標の策定や書類作成をめぐって実に多くの時間を奪われたというのが実感です。
 なお、報告では触れられませんでしたが、国立大学法人の「大学の自治」をめぐっては、2014年の教育基本法及び国立大学法人法の改正による学長権限の拡大と、教授会審議事項の限定(教育課程編成や教員人事が教授会の必要的審議事項から外され、学長が「教授会の意見を聴く必要があると定めた場合」にのみ、教授会の審議事項になることになりました)、及び教授会の決定権の剥奪(法規上は、学位授与や学生身分に関する「審査」及び「意見表明」しかできないことになりました)が重要です。2003年の国立大学法人化の背後にあった行政改革及び経営の理念を、制度面でより一層貫徹することを目的とする改正で、各学部・学府内部の教育課程編成や、教員人事のあり方の面でも、学長選考過程や経営協議会で学外者が大きな影響力をもつ従来のシステムが拡大適用された、ということになります。
 この点については、松田浩「大学の『自治』と『決定』ーー学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」法教413号(2015年)49頁以下、及び齊藤芳浩「大学の自治制度の後退ーー学校教育法『改正』の政策的観点からの検討」『変革期における法学・政治学のフロンティア』(日本評論社、2017年)3頁以下をご参照ください。とくに後者の、学長権限を強化し教授会権限を削減する(=決定権を剥奪し(「審議権」に限定し)かつ審議事項を限定する)ための立法事実が不明確であり、またプロジェクト型組織の新設や学部改編などには関わらない、各組織内部の人事・教育課程の編成などを審議事項から外す点で問題があることを指摘するくだりは、いずれの立場に立つにせよ、味読に値するものと思われました。

【学部ゼミ】第11回演習を終えて

 第11回ゼミでは、議会の立法過程だけに着目しているのではわからない、新たな秩序形成のあり方につき、仮想通貨をめぐるルール形成を素材としたテーマ報告が行われました。中央集権型の法定通貨とは異なる分散型の、換言すればP2P型の制度であることを一つの特質とする仮想通貨に関し(ただし仮想通貨には様々なタイプがあります)、それが投機的な資産運用の対象となり、また一部には通貨として決済手段にも用いられることから、その適正な運用のためにどのような形で公的規律を設けるべきか、が問題となっています。
 この点に関するルール形成は現在進行中で、グローバルに行われていますが、わが国の場合は、資産としての側面に着目した金融商品取引法による規制と、決済手段としての側面に着目した資金決済法による規制とがそれに当たり、Innovationと公的規制のあり方や、そもそも発行主体が存在せず直接の公的規制が困難なケースにおける秩序担保のあり方について、大変興味深い問題を提起しています。諸外国でも、10年ほど前から特に盛んに論じられているテーマでもあり、今後の動向が注目されます。
 なお、ゼミの時にご紹介しましたように、翌年の通常国会では、仮想通貨に関する新規制が導入され、そもそも通貨としての機能をあまり持たない点に着目して「暗号資産」と改称した上で、匿名性の高い暗号資産の取り扱いの禁止や、資産流出時の顧客への弁済原資の確保、またギャンブル性の高い証拠金取引に登録制や証拠金倍率への制限導入など、新たな公的規制が導入される予定です。これらは資金決済法・金融商品取引法による他律的規制ですが、これらの規制がイノベーションを損なわないように、また技術革新に早期かつ柔軟に対応できるように、ソフトな自主規制との組み合わせをどう確保するのか、公法学の観点からも興味深い素材だと思われました。 

【学部ゼミ】第10回演習を終えて

 第10回演習では、「EUの環境政策にみる規制手法の多様性」と題するテーマ報告が行われました。もともと国際的なルール形成が重要になる環境規制という領域では、各国家レベルだけでの規制、あるいは上命下達の権力的規制手法だけでは、効果的な規制を行うことが難しく、多様なアクターを視野に入れながら、その秩序形成プロセスのあり方を検討することが必要になります。
 このような観点からすれば、EUの第5次環境行動計画以降のshared responsibilityの理念に裏打ちされた柔軟な対話型の補完的規律手法(強権的な「規制」を補完するソフトな秩序形成のあり方)や、同じくEUの「持続可能な発展戦略」に含まれる「政策手段の多様化とガバナンスのソフト化」という視点は、環境法政策の領域においていかなる規律手法が妥当なのか、という問題についても、一定の示唆を与えるものではないか、と思われます。近年注目が集まっている共同規制(Co-regulation)が、IT領域のみならず、他の政策領域でも、違った形で現れているものと言え、各領域での特質や、その逆に共通項の析出を通じて、このような新たな規制手法に対する理解が深まれば、貴重な貢献になるのではないか、と思割れました。
 次回もテーマ報告2件が続きますので、積極的なご参加と、それを可能ならしめるための着実な予習を、よろしくお願いします。 

【学部・憲法1】第08回講義を終えて

 平和主義の理念のUNITについては、近年の平和安全保障法制の整備もあり、検討すべき事項が多く残されています。またガラス細工のような政府解釈(内閣法制局の解釈)の蓄積の上に、軍事力の拡大に対して一定の統制がなされてきたことも確かで、防衛のための実力を憲法上どのように位置付け、かつどのようにその統制を図るかは、今後も重要な問題であり続けています。その意味では、集団的自衛権が文言上はごくごく限定的に容認されたということそれ自体よりも(今までも、わが国としては個別的自衛権の行使であり、他国から見れば集団的自衛権の行使に当たる、というようなグレーゾーンはありました)、国家の存立上欠かすことのできない防衛力、しかし自己拡大の本能を持つ防衛力をいかに統制するか、という統治システムの問題こそが重要になります。講義レジュメでは、個別法制の詳細につき、通常の教科書よりも立ち入った解説をしていますが、moodle掲載の関連資料とともに、そのような観点から読み解いていただければ幸いです。
 その上で、武力行使の一体化禁止原則については、大森政輔『20世紀末の霞ヶ関・永田町』(日本加除出版、2005年)の関連ページが、また平和安全保障法制の整備に含まれる要検討事項については、同「大森政輔先生に聞く」Ichiben bulletin 513(2015年)20頁以下、および浦田一郎『集団的自衛権限定容認とは何か』(日本評論社、2016年)が、有益な情報を提供してくれると思います。
 また、復習に際しては、とくに戦力概念に着目しつつ、自衛隊の合憲性について裁判所がいかに述べているかという点を、重点的に学習するようにしてください(UNIT 04レジュメ12-14頁)。また、のちの学習項目とも関連しますが、統治行為論の意義については、司法権の行使の可否に関わる以上、たとえその概念を維持するとしても極めて限定的に解すべきだと考えられます。 裁判所および憲法訴訟の項目で学ぶことになりますので、あらかじめ注意して学習を進めておいてください。
 最後に、講義後のご質問と関連して、近年では自由主義に立脚した「法律の留保」概念のみならず、民主制の観点から議会の権限放棄を戒める議会留保(ないし本質性留保)の概念が提唱されています。ガイダンスでお話ししたように、最近ではさらに、グルーバル化や専門技術化、知識形成の動態化(Wissensgenerierung)を受けて、本質的事項はむしろ政省令以下の命令や自主規制で定められるという「逆転型本質性留保」なる考え方も見られますが、法学セミナー753号掲載の「議会留保」という論考で簡単な解説をしていますので、そのような概念の当否も含めて検討してみてください。 
 それでは、次回は日米安全保障条約について概観したのちに、UNIT 05に入ります。引き続き予習のほど、よろしくお願いします。 
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