eBookJapan 2016年3月9日号
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マンガの時代を問わない名作達を一歩踏み込んだ視点から紹介する『まんがのソムリエ』、
マンガの歴史や業界の仕組み、またキーパーソンへのインタビューを通して今の時代の「マンガ」を
読み解く『まんがの「しくみ」』。
2タイトルを隔週にてお送りいたします。あわせてお楽しみください!
中野晴行
ライター:
中野晴行

電子コミック売り上げが紙のマンガ誌売り上げをついに上回る!
 
 毎年この時期に取り上げている出版科学研究所の『出版月報』の2月号が刊行された。今年の特集タイトルは「紙コミック&電子コミックの最新動向~コミック市場2015~」。題名通り、昨年までマンガの出版市場のデータだけだったものに、今年からは電子コミック市場が加わったのが特徴だ。
 これは、同研究所の『出版指標年報』が、1969年に児童書からマンガを切り分けた集計を載せて以来の大転換で、マンガ市場の中で、電子コミックのシェアがもはや無視できないところまで来ているという証拠だろう。これをもって「電子コミック元年」と呼んでもいいのかもしれない。
 これまで、電子書籍や電子コミックの市場調査は、インプレス社が3月末基準のデータを7月頃に発表していたが、『出版月報』のデータは12月末が基準。したがって単純にこれまでのデータと比較するのはまずいのだが、2社からデータが出ることは精度を高めるうえではありがたい。

 で、2015年の数字がどうなったかというと……、マンガ出版は雑誌と単行本をあわせて3628億円。前年比91.6%とマイナス基調が続いている。雑誌は1166億円で前年比88.8%。これまで単行本は微増だったが、2015年は2102億円で前年比93.2%と微減に転じている。
 ちなみに、雑誌協会が発表する「印刷証明付発行部数」によれば、2015年の10~12月の平均発行部数は『週刊少年ジャンプ』が232万部(前年同期比28万部減)、『週刊少年マガジン』が108万部(同11万部減)、『週刊少年サンデー』が35万部(同6万部減)と軒並みマイナス。『妖怪ウォッチ』効果で2014年には久々に100万部台に復帰した『コロコロコミック』も89万部へダウン。青年誌も『週刊ヤングジャンプ』が56万部(同2万部減)、ライバルの『ヤングマガジン』が42万部(同7万部減)と下げ幅は小さいもののこちらも苦戦(数字は千部以下を切り捨て)。映像化されたヒット作や話題作が出ても掲載誌の売り上げにつながらないという状態が続いている。

 一方で、電子コミックは単行本形式のものが1149億円で、前年比131.8%増。雑誌形式のものは20億円と市場こそ小さいものの前年比4倍の伸びとなっている。おそらく、無料アプリや無料試し読みも足せば、マンガを電子で読む人は数字に現れた以上に増えているはずだ。
 単純に比較すれば、電子コミック全体の市場規模は1169億円で、紙のマンガ雑誌の売り上げをわすかながら上回っている。4年ほど前から、あちこちで「このままマンガ雑誌の退潮が続けば、まもなく電子コミックがマンガ雑誌の売り上げを抜く」と言っては失笑を買っていたが、ようやく現実になったわけだ。うれしいというよりは、悲しい。
 この数字だけを見て、紙のマンガの読者が電子コミックに奪われている、と解釈する人もいるだろう。しかし、現場の声を取材してみると、電子コミックはこれまでマンガから離れていた読者をマンガに呼び戻しているだけで、紙から電子へという読者のドラスティックな流れは今のところ起きていないようだ。
 これまで、電子化によって紙の売り上げが減少するのは困るという理由から、電子版マンガ雑誌の発行に消極的だった大手出版社が、続々と紙と電子の同時配信(サイマル配信)に踏み切っているのは、「当面は電子と紙は敵対するものではない」と考えているからだろう。
 かつて、音楽コンテンツがレコード盤からCDへ、さらにデジタル配信へと移行していったような大きな動きは今のところないと考えていいのではないか。むしろ、コンビニ版コミックの登場が、書店からコンビニへとマーケットを拡大したように、マンガの市場を広げるチャンスと見たほうがいいだろう。

 ただ、心配なのは、電子コミックで売れる作品が、紙でヒットした旧作に偏っているということ。過去の遺産に頼っている状態では、やがて遺産を食いつぶしたときには、市場がシュリンクする可能性がある。
 また、課金システムが依然として確立されていないことも気になる。大人も子どもも社会人も学生も、誰もが簡単に購読できる仕掛けをつくらない限り、市場拡大が頭打ちになることは見えている。無料アプリばかりが読まれていたのでは困るのである。
 紙の側からすれば、電子コミックによってマンガの魅力を再認識した読者を、紙のマンガに向かわせるような取り組みも必要になってくるだろう。
 いずれにしても、5年なり10年といった長いスパンで考えていかなければ、未来のマンガとマンガ市場はつくりだせない。今の段階で、「時代が変わった」と言ってしまうのは、早すぎる。今は、あくまでも「元年」なのだから。
 
 
プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。 2004年に『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。
近著『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』 は、自身初の電子書籍として出版。
過去記事はこちら
でんしょのはなし 『でんしょのはなし』
鈴木みそ
電子コミックはこれからどうなる!? 最前線の漫画家生存戦略!
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