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170711 ノストラダムスは『料理研究家』なのか

これはいただいた質問ではない。

このあいだ、久しぶりにウィキペディアの日本語版『ノストラダムス』を見たときに気になったところがあったのだ。

職業の欄に『医師』、『占星術師』、『詩人』の次が『料理研究家』となっていたことだ。

強い違和感があった。

いくつもあったとされているノストラダムスの職業だが、重要な順番に並べたときに、果たして『料理研究家』という肩書きは四番目にくるものなのだろうか?

しかも、これだとノストラダムス、つまりミシェル・ド・ノートルダムの最初の公式な職業である薬剤師や、薬草の採取製造販売店経営には触れていない。

さらに言えば、ノストラダムス(ペンネームだぞ)の業績を大きくひっくるめた『著述業』という職種にはしないで、いきなり『料理研究家』としている。

このことに対して、なにかしらの意図的なもの、あまりよくない企みのようなものを感じざるを得ないのだ。

ちなみに、ウィキペディアのフランス語版のノストラダムスのページを見ると、ノストラダムス(nostradamus)の所属・分類(domain)の欄には、『Astrologie 占星術師,』『medecine 医師』『herboristerie エルボリストリー 植物(薬草)販売店の三つだけが書かれている。

『料理研究家』というノストラダムスの肩書きは日本語版特有のものでしかないということだ。

たしかに(ウィキペディア日本語版にも書かれているとおりで)、ノストラダムスは(ミカエル)ノストラダムスのペンネームでジャムの本を出版している。それは事実だ。

それは『化粧品とジャム論』という本である。二部構成で、第一部が化粧品の製造方法、第二部が菓子類のレシピとなっている。

日本語版の執筆者も間違えているが、化粧品の製造方法を書いたというか書けたのは、ノストラダムスが医師だからではない。薬剤師(としての営業)資格を持っていたからだ。

もっとも、『化粧品とジャム論』という本の中で、ノストラダムスが記したその化粧品とは、今ではほとんどが毒物・劇薬扱いに指定されているものや、黒魔術もどきのものを原材料として使って作られているものばかりなのだが。

ノストラダムスが料理について書いた本とはこの『化粧品とジャム論』一冊のみである。

しかも、料理についてはその半分でしかないではないか。さらに言うならば料理といってもお菓子の類だけだ。

だから、日本語版のノストラダムスの項目の執筆者たちが、ノストラダムスの職業に『料理研究家』を付け足しているというだけでしょう。

フランス語版にはない肩書きだから『付け足し』なのだ。

ノストラダムスはフランス人であり、その著作のほとんどがフランス語で書かれたものだ。ノストラダムスの研究に必要なものはほとんどがフランス国内に残されたものである。

だから私たち日本語を使用する日本人が日本語のウィキペディアのページを立ち上げたり追加執筆する場合は、本国のものと大きく乖離するような記述は避けるべきであり、それを見つけたら速やかに削除されるべきなのではないだろうか。

繰り返す。ノストラダムスの職種の欄に料理研究家としてあるのはウィキペディアの日本語版のみである。

これは意味や意義のあることなのかと、改めて問い正したい。
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※フランス語版ウィキペディア『』より。『Domaine』に書かれている職業が『Astrologie 占星術師,』『medecine 医師』『herboristerie 薬草販売店』となってあるのがわかる。herboristerieというのはスペルをみれば一目で、herboはハーブのことだ。で『ハーブのお店』のことだとわかるはずだ。
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