2013年09月
2013年09月30日
大判カメラにハマる
今月はブログ書き込みが少ない。家人が健診でひっかかり検査入院したり、入試の時期で休日出勤が続いたのも原因だが、ついにフィルムカメラの究極、大判カメラに手を出したのが最大の原因だ。
大判カメラは6月に写真塾(風景写真 大津塾)で手ほどきをうけた
こンとき大津師匠から「買うとき相談乗ってあげるよ」と言われた。早速、こういう書籍なぞ買って、夜ごと研究にふけると(本業の研究活動はおろそかなのだが・・)、ふーむ、これはカメラ、いや「写真機」の原点だ
欲しいなぁ・・と思い始めたのは、このような写真を撮ると
北海道 占冠村にて クリックすると大きな画面
手前から奥まで、ビシャーッとピントが合わない。使っている中判カメラ、マミヤ7のレンズにも当然のごとく、被写界深度の目盛りが付いている。これは最も広角の43ミリレンズだが、これだと最小絞りにすると1メートルから無限遠までピントが合う筈。しかし実際には明らかに像が甘い。それとも絞りすぎて回折現象が起きて画質が劣化しているのだろうか
無論、フィルムサイズを小さくするとか、デジカメ(これも影像素子が小さい)にするとピント面で有利になるが、これらを使う気は毛頭無い。
先月末、恩師の喜寿祝いに大阪行ったとき、時間があったので船場にある中・大判カメラ店にふらりと寄ったら大判カメラが置いてあった。それも意外な価格で
大津塾で使わさせてもらって、その描写が気に入ったフジノンの400ミリレンズも、あった
帰宅して師匠に相談したら、それは「買い」じゃないかと。おりしも、バイク事故の慰謝料などが入ってきた。大学では私を顧問にして写真同好会が出来つつある。このカメラで学生達に写真の原点を教えることもできる。次々と経済的裏付けと言い訳(どっちもこじつけ)が出来上がり、ついに電話注文。翌日に大きな箱に入って届いた
購入した店は「鈴木特殊カメラ」。店長の丁寧かつ真摯な応対も購入理由のひとつ
買ったのは、カメラ本体がトヨフィールド45A、キモとなるジャバラは新品交換済み。レンズは是非持っておきたいフジノンの望遠レンズ400ミリと、マミヤ7持ち出さないとき使う広角の65ミリ(シュナイダーのスーパーアンギュロンという勇ましい名前)。早速、残暑のなか横浜の三渓園へ
フジノン400ミリを付けると、こんなにジャバラを伸ばす必要あり
1枚撮るのに手続きが沢山あるが、それが楽し。事故で自分のバイク保険からも保険金が出たのも相まって、も少しレンズ揃えよっと・・ヤフオクみると信じられないほどの安価で結構出てる。これはゲットした1本。フジノン90ミリ
シャッターリングのメッキが剥げていた。写真館かどこかで長く使われていたのかな
レンズはいずれも、カメラ本体に取り付けるためボードが付いている。これの事実上の標準はリンホフというドイツのカメラメーカーの規格だが、我がトヨフィールドに付けようとするとボートのサイズが小さいのでアダプターを介する必要がある。これでは装着のたび面倒なので、トヨフィールドに合う大きさのレンズボードを作ることにした。買ったら1枚5千円くらいはするもの。
しばしば一緒に飲みにゆく、近所の町工場のおっちゃんに相談したら、こんな機械で2ミリ厚のアルミ板を切ってくれた
0.1ミリ単位の設定で簡単に切れてゆく。すごいなぁ
次に、まんなかにボール盤でレンズが通る穴をあけてもらう
ここからは私の作業。まず、下塗りして
次にツヤ消しの黒を塗装。4回くらい塗り重ねたかな。将来のレンズ増加を見越し何枚も量産
じゃボードを交換しましょ。大判カメラのレンズは、どれもボードに付くシャッター部分から前後に分離することができる
こんなレンチ(千円くらいでヨドバシカメラで売っている)でいったんレンズを外す
左から前玉、シャッターと絞り(ここがボードに付く)、そして後玉。通常、前玉とシャッター部は分離させない。向こうにある大きい板がトヨフィールド用に自作した板。小さいほうが標準となっているリンホフ規格ボード
自作した板に慎重に締めつけてゆく
絞り羽根とシャッター羽根が直接、見える
後玉を付けて、作業完了。こんなふうに、自分がいろいろすることが出来るのも楽しみのひとつかな。大判カメラのレンズは大小の差こそあれ、このにように中間がくびれた、つづみみたいな形状をしている。
ついでにレンズについて。人指し指がかかっているツマミは、絞り。その右側にある丸いノブはシャッターチャージで、これを倒すことで中のゼンマイが巻かれシャッターがセットされる。手前にあるリングでシャッター速度をセットする。親指がかかっているのは、シャッターを強制的に開くためのレバーで、これを操作することで構図やピント合わせをする。これら機構は電子的な部分が一切無いし、カメラの他の部分とまったく連動しない
このレンズは最も良く使っているニッコール135ミリ。真新しいのたが、これも安価で入手。ニコンのは操作が逆だから一瞬戸惑う
このように、大判カメラはボードを取り替えることで、どのメーカーの、どんな古いレンズでも使うことができる
さて実際の撮影状況を。
カメラ本体、レンズ数本、フィルムホルダー、露出計、ルーペなど、大判カメラは持って出る品物が多く、重い。カメラバッグまではカネがまわらなかったので、いまは大型のトートバッグに一切入れている。でも足場悪いところに行くので、背負子(これだけ新品投資)にくくりつけて移動している。この背負子、登山メーカー(エバニュー)のものなので背負い心地はすこぶる良好。手前の三脚は、もっと小型でもいいのだが、ある理由で大型のを持つ
一緒に35ミリの一眼レフを下げて歩く。実はこれ、フィルム入れていない。何に使うかというと、撮影ポイントを決め構図を検討するため。レンズは28-200のズームで、ヤフオクでジャンクとして出ていたのを1500円で入手。少々カビが生えているようだが、こんな用途には全然問題なし。ズーム付きデジカメでも使えるが液晶画面が見にくいのと、いちいち電源を入れるのがうっとおしい
ジャンクの強み、レンズのズームリングに直接、手持ちレンズの焦点距離をフィルムサイズ別に油性ペンで書き込んだ。構図をあらかた決めたら、どのレンズを選べばよいか一目瞭然
三脚をたてて、もういちど構図と使用するレンズをチェック
ではセット開始。まずカメラ本体を三脚に付ける
開閉ボタンを押し、ぐいっと前を開き、次に鳥居と呼ばれるフレームを起こす。ここでジャバラが伸びてくる
決めておいたレンズを取り出し
カメラに装着。ここ、頼りない装着機構だが、実質これで充分なのね
カメラらしくなってきた
構図とピントはレンズの反対側からみる。レンズから入った光は、このピントグラスというガラス面で像を結ぶ。このガラスは撮影時にフィルムに置き換わるので、つまるところフィルム面で直接構図をみたりピントを合わせることになる。すべてが電気仕掛けのデジカメ、いや間接的に構図やピントをみる多くの他のカメラに比べ、この当たり前のようなシンプルさが、却って撮影者の安心と信頼を生むのではないか
ただピントグラスは4×5インチのフィルムに合わせた大きさなので、それより小さなフィルムだと、まわりが目障りになる。そこでピントグラスに自作の6×7用マスクを入れる
さて構図の決定だ。ピントフードと呼ばれるフードを開ける
実はあまり良く見えない
より光を遮り、見やすくするため手持ちルーペを使い、こんなマスクを自作した
しかし王道はどうやら、布(冠布・・かんぷ、と呼ぶそうな)をかぶるようだ。小生、冠布買える余裕がない。そこでカメラ本体のアクセサリーシューに、こんなもの取り付け(ニコンの専用ストロボシューかな)
「イケア」で見つけた黒いフェイスタオルのヒモをココにひっかける
かぶっているところを自分撮り。ふーむ、あやしい
こうして、じっくりと構図を考える。小生は自由雲台が好きなのだが、このカメラに限っては縦横ナナメ、どの方向も細かな調整をしたい。そこで師匠から教えてもらった、このマンフロット製のギア雲台を奮発。これだと微妙な調整が効く。しかしこの雲台、大変重い。軽い小型三脚だと、明らかにアタマでっかちになって不安定だ。大型三脚を持つ理由がここにある
今回の撮影は、手前から遠くまで画面に写り込む。ここはすべてにピントが合った状態(パンフォーカス)にしよう。そのためにレンズとフィルム面の平行を崩す、「あおり」という操作をする。ピント合わせには、このルーペを使っている。実はこのルーペ、ポジフィルムを見るものを流用している
あおりはレンズ面またはフィルム面のどちらを操作してもいいようだが、今回はレンズ面を操作する。これは極端な例だが、こんなふうに、手前の地面から奥までピントを合わせようとすると、レンズは下を向く
冠布をかぶり、ピントグラスをルーペで見ながら画面手前と奥のピントを見て、レンズの向きを少し変え
こうすると全体のピントがズレるので、全体のピントを再調整
これを数回くり返し、画面の隅から隅までピントが合ったところで、操作部を全部ロックする。実際、レンズの傾きは、このように僅か。でもこれでピントは手前から奥までビシャーッと合う。構図を考える段階からここまで操作していると、まさに「一写入魂」の思いが強くなってくる。あ、そうそう。みえてる画面は上下左右が反対。しかしすぐに慣れた
今回、撮りたい被写体は、海岸で夕陽が当たり紅く輝く岩場。山だったら「モルゲンロート」と言われる現象だが、それを海岸でフィルムに刻んでおきたい。待つことしばし。ここ三浦半島の岬は、釣りの名所でもある
紅くなってきたぞ
フィルムを入れてあるホルダーを取り出す。中判のロールフィルムは、印画紙の縦横比に近い6×7センチのものと、印刷物の縦横比に近い6×9センチのものの、両方が準備できる。今日は6×7センチのほうを持ってきた。他に、大判カメラの真骨頂、4×5インチ(手に持っているほう)も持ってきた
6×7センチのロールフィルムが入ったホルダーをカメラに装着する。ここでピントグラスは役目を終え、撮影画像は見れなくなっている
スポット露出計を用い、主役の被写体など数点をピンポイントで測り、露出を決める。大津塾のおかげで、失敗は少なくなった
決めた露出(絞りとシャッター速度)をレンズにセット。あおりを効かしているので、大きく絞る必要がない。そのぶん、画質は少しでも向上する筈
確認のため、シャッターチャージレバーを操作し数回シャッターを切る。この時点ではフィルムには写っていない
フィルムホルダーの遮光ふたを引く。これでフィルムの露光面がレンズにさらされる。このあと、シャッターを開くとフィルムに露光されることになる
もういちど、露出を確かめ、レンズの設定も確かめ、そして被写体の状態(余計なモノが写り込むことはないか、特に自分の影や、移動する物体など)を確かめてから、いよいよシャッターを切る
2枚上の写真と似ているが、フィルムホルダーの遮光ふたが出ている
1枚撮ったら、遮光ふたを戻し、すぐにフィルムを巻き上げる。巻き上げとシャッターチャージが連動していないので、こうしないと二重写しの危険が出るからだ。それぞれの部分が連動していない、このカメラならではの操作。すべてが撮影者の責任にかかってくる。しかしこのシンプルさが、メカトラブルの確率を大きく下げていることになると思う
意図的に連続撮影する場合は、遮光ふたを戻さずに巻き上げ→シャッターの操作を繰り返す。沈む夕陽に光線が変わるの追いながら、同じ構図、同じレンズで1本撮り終えた
折角だから4×5インチの大きなフィルムで1枚撮っておく。フィルムが大きくなると、同じ構図(画角)でもレンズの焦点距離が長くなる。135ミリから180ミリに交換
急いでピント、そしてレンズのあおりを再調整し、4×5インチのシートフィルムホルダーを入れ、露出を測り遮光マスクを外し撮影。4×5は1枚ずつ現像に出せるので無駄がない
一枚撮るたび、データを記録しておく。大判カメラにしてから、これを再開した
秋の夕暮れはつるべ落とし。バイクに戻ったときはすっかり暗くなっていた。背負子ごと積む。運転が慎重になっている
今日は昼すぎに家を出て1時間ほど走り、一カ所だけで撮って帰る。このカメラを使いだしてから、写真を撮る姿勢が明らかに変わってきた。機動性が悪いが故に、1枚を大切に撮る。絵画を描くように、じっくり、被写体と対話する。よい瞬間は一瞬しかないと思う。
現像からあがってきたフィルムをみる。4×5は、ほぼ葉書のサイズ。これをみると中判6×7も小さくみえる。まして、手前の35ミリサイズは・・
三浦半島の剣崎の夕刻。手前から先までピントを合わせることができるようになった
クリックすると大きな画面
実はこの写真、左のほうに海と船が写り込んでしまった。海岸という雰囲気を消したかったのに。きちんと見ていなかったのだ。もう少しカメラを低く構え、船に気をつけるべき。だから今回、またやってきた。
大判カメラ、不便きわまりないが、しかし撮影者の意図でどうにでもなる。この魅力をしばし味わっている
大判カメラは6月に写真塾(風景写真 大津塾)で手ほどきをうけた
こンとき大津師匠から「買うとき相談乗ってあげるよ」と言われた。早速、こういう書籍なぞ買って、夜ごと研究にふけると(本業の研究活動はおろそかなのだが・・)、ふーむ、これはカメラ、いや「写真機」の原点だ
欲しいなぁ・・と思い始めたのは、このような写真を撮ると
北海道 占冠村にて クリックすると大きな画面
手前から奥まで、ビシャーッとピントが合わない。使っている中判カメラ、マミヤ7のレンズにも当然のごとく、被写界深度の目盛りが付いている。これは最も広角の43ミリレンズだが、これだと最小絞りにすると1メートルから無限遠までピントが合う筈。しかし実際には明らかに像が甘い。それとも絞りすぎて回折現象が起きて画質が劣化しているのだろうか
無論、フィルムサイズを小さくするとか、デジカメ(これも影像素子が小さい)にするとピント面で有利になるが、これらを使う気は毛頭無い。
先月末、恩師の喜寿祝いに大阪行ったとき、時間があったので船場にある中・大判カメラ店にふらりと寄ったら大判カメラが置いてあった。それも意外な価格で
大津塾で使わさせてもらって、その描写が気に入ったフジノンの400ミリレンズも、あった
帰宅して師匠に相談したら、それは「買い」じゃないかと。おりしも、バイク事故の慰謝料などが入ってきた。大学では私を顧問にして写真同好会が出来つつある。このカメラで学生達に写真の原点を教えることもできる。次々と経済的裏付けと言い訳(どっちもこじつけ)が出来上がり、ついに電話注文。翌日に大きな箱に入って届いた
購入した店は「鈴木特殊カメラ」。店長の丁寧かつ真摯な応対も購入理由のひとつ
買ったのは、カメラ本体がトヨフィールド45A、キモとなるジャバラは新品交換済み。レンズは是非持っておきたいフジノンの望遠レンズ400ミリと、マミヤ7持ち出さないとき使う広角の65ミリ(シュナイダーのスーパーアンギュロンという勇ましい名前)。早速、残暑のなか横浜の三渓園へ
フジノン400ミリを付けると、こんなにジャバラを伸ばす必要あり
1枚撮るのに手続きが沢山あるが、それが楽し。事故で自分のバイク保険からも保険金が出たのも相まって、も少しレンズ揃えよっと・・ヤフオクみると信じられないほどの安価で結構出てる。これはゲットした1本。フジノン90ミリ
シャッターリングのメッキが剥げていた。写真館かどこかで長く使われていたのかな
レンズはいずれも、カメラ本体に取り付けるためボードが付いている。これの事実上の標準はリンホフというドイツのカメラメーカーの規格だが、我がトヨフィールドに付けようとするとボートのサイズが小さいのでアダプターを介する必要がある。これでは装着のたび面倒なので、トヨフィールドに合う大きさのレンズボードを作ることにした。買ったら1枚5千円くらいはするもの。
しばしば一緒に飲みにゆく、近所の町工場のおっちゃんに相談したら、こんな機械で2ミリ厚のアルミ板を切ってくれた
0.1ミリ単位の設定で簡単に切れてゆく。すごいなぁ
次に、まんなかにボール盤でレンズが通る穴をあけてもらう
ここからは私の作業。まず、下塗りして
次にツヤ消しの黒を塗装。4回くらい塗り重ねたかな。将来のレンズ増加を見越し何枚も量産
じゃボードを交換しましょ。大判カメラのレンズは、どれもボードに付くシャッター部分から前後に分離することができる
こんなレンチ(千円くらいでヨドバシカメラで売っている)でいったんレンズを外す
左から前玉、シャッターと絞り(ここがボードに付く)、そして後玉。通常、前玉とシャッター部は分離させない。向こうにある大きい板がトヨフィールド用に自作した板。小さいほうが標準となっているリンホフ規格ボード
自作した板に慎重に締めつけてゆく
絞り羽根とシャッター羽根が直接、見える
後玉を付けて、作業完了。こんなふうに、自分がいろいろすることが出来るのも楽しみのひとつかな。大判カメラのレンズは大小の差こそあれ、このにように中間がくびれた、つづみみたいな形状をしている。
ついでにレンズについて。人指し指がかかっているツマミは、絞り。その右側にある丸いノブはシャッターチャージで、これを倒すことで中のゼンマイが巻かれシャッターがセットされる。手前にあるリングでシャッター速度をセットする。親指がかかっているのは、シャッターを強制的に開くためのレバーで、これを操作することで構図やピント合わせをする。これら機構は電子的な部分が一切無いし、カメラの他の部分とまったく連動しない
このレンズは最も良く使っているニッコール135ミリ。真新しいのたが、これも安価で入手。ニコンのは操作が逆だから一瞬戸惑う
このように、大判カメラはボードを取り替えることで、どのメーカーの、どんな古いレンズでも使うことができる
さて実際の撮影状況を。
カメラ本体、レンズ数本、フィルムホルダー、露出計、ルーペなど、大判カメラは持って出る品物が多く、重い。カメラバッグまではカネがまわらなかったので、いまは大型のトートバッグに一切入れている。でも足場悪いところに行くので、背負子(これだけ新品投資)にくくりつけて移動している。この背負子、登山メーカー(エバニュー)のものなので背負い心地はすこぶる良好。手前の三脚は、もっと小型でもいいのだが、ある理由で大型のを持つ
一緒に35ミリの一眼レフを下げて歩く。実はこれ、フィルム入れていない。何に使うかというと、撮影ポイントを決め構図を検討するため。レンズは28-200のズームで、ヤフオクでジャンクとして出ていたのを1500円で入手。少々カビが生えているようだが、こんな用途には全然問題なし。ズーム付きデジカメでも使えるが液晶画面が見にくいのと、いちいち電源を入れるのがうっとおしい
ジャンクの強み、レンズのズームリングに直接、手持ちレンズの焦点距離をフィルムサイズ別に油性ペンで書き込んだ。構図をあらかた決めたら、どのレンズを選べばよいか一目瞭然
三脚をたてて、もういちど構図と使用するレンズをチェック
ではセット開始。まずカメラ本体を三脚に付ける
開閉ボタンを押し、ぐいっと前を開き、次に鳥居と呼ばれるフレームを起こす。ここでジャバラが伸びてくる
決めておいたレンズを取り出し
カメラに装着。ここ、頼りない装着機構だが、実質これで充分なのね
カメラらしくなってきた
構図とピントはレンズの反対側からみる。レンズから入った光は、このピントグラスというガラス面で像を結ぶ。このガラスは撮影時にフィルムに置き換わるので、つまるところフィルム面で直接構図をみたりピントを合わせることになる。すべてが電気仕掛けのデジカメ、いや間接的に構図やピントをみる多くの他のカメラに比べ、この当たり前のようなシンプルさが、却って撮影者の安心と信頼を生むのではないか
ただピントグラスは4×5インチのフィルムに合わせた大きさなので、それより小さなフィルムだと、まわりが目障りになる。そこでピントグラスに自作の6×7用マスクを入れる
さて構図の決定だ。ピントフードと呼ばれるフードを開ける
実はあまり良く見えない
より光を遮り、見やすくするため手持ちルーペを使い、こんなマスクを自作した
しかし王道はどうやら、布(冠布・・かんぷ、と呼ぶそうな)をかぶるようだ。小生、冠布買える余裕がない。そこでカメラ本体のアクセサリーシューに、こんなもの取り付け(ニコンの専用ストロボシューかな)
「イケア」で見つけた黒いフェイスタオルのヒモをココにひっかける
かぶっているところを自分撮り。ふーむ、あやしい
こうして、じっくりと構図を考える。小生は自由雲台が好きなのだが、このカメラに限っては縦横ナナメ、どの方向も細かな調整をしたい。そこで師匠から教えてもらった、このマンフロット製のギア雲台を奮発。これだと微妙な調整が効く。しかしこの雲台、大変重い。軽い小型三脚だと、明らかにアタマでっかちになって不安定だ。大型三脚を持つ理由がここにある
今回の撮影は、手前から遠くまで画面に写り込む。ここはすべてにピントが合った状態(パンフォーカス)にしよう。そのためにレンズとフィルム面の平行を崩す、「あおり」という操作をする。ピント合わせには、このルーペを使っている。実はこのルーペ、ポジフィルムを見るものを流用している
あおりはレンズ面またはフィルム面のどちらを操作してもいいようだが、今回はレンズ面を操作する。これは極端な例だが、こんなふうに、手前の地面から奥までピントを合わせようとすると、レンズは下を向く
冠布をかぶり、ピントグラスをルーペで見ながら画面手前と奥のピントを見て、レンズの向きを少し変え
こうすると全体のピントがズレるので、全体のピントを再調整
これを数回くり返し、画面の隅から隅までピントが合ったところで、操作部を全部ロックする。実際、レンズの傾きは、このように僅か。でもこれでピントは手前から奥までビシャーッと合う。構図を考える段階からここまで操作していると、まさに「一写入魂」の思いが強くなってくる。あ、そうそう。みえてる画面は上下左右が反対。しかしすぐに慣れた
今回、撮りたい被写体は、海岸で夕陽が当たり紅く輝く岩場。山だったら「モルゲンロート」と言われる現象だが、それを海岸でフィルムに刻んでおきたい。待つことしばし。ここ三浦半島の岬は、釣りの名所でもある
紅くなってきたぞ
フィルムを入れてあるホルダーを取り出す。中判のロールフィルムは、印画紙の縦横比に近い6×7センチのものと、印刷物の縦横比に近い6×9センチのものの、両方が準備できる。今日は6×7センチのほうを持ってきた。他に、大判カメラの真骨頂、4×5インチ(手に持っているほう)も持ってきた
6×7センチのロールフィルムが入ったホルダーをカメラに装着する。ここでピントグラスは役目を終え、撮影画像は見れなくなっている
スポット露出計を用い、主役の被写体など数点をピンポイントで測り、露出を決める。大津塾のおかげで、失敗は少なくなった
決めた露出(絞りとシャッター速度)をレンズにセット。あおりを効かしているので、大きく絞る必要がない。そのぶん、画質は少しでも向上する筈
確認のため、シャッターチャージレバーを操作し数回シャッターを切る。この時点ではフィルムには写っていない
フィルムホルダーの遮光ふたを引く。これでフィルムの露光面がレンズにさらされる。このあと、シャッターを開くとフィルムに露光されることになる
もういちど、露出を確かめ、レンズの設定も確かめ、そして被写体の状態(余計なモノが写り込むことはないか、特に自分の影や、移動する物体など)を確かめてから、いよいよシャッターを切る
2枚上の写真と似ているが、フィルムホルダーの遮光ふたが出ている
1枚撮ったら、遮光ふたを戻し、すぐにフィルムを巻き上げる。巻き上げとシャッターチャージが連動していないので、こうしないと二重写しの危険が出るからだ。それぞれの部分が連動していない、このカメラならではの操作。すべてが撮影者の責任にかかってくる。しかしこのシンプルさが、メカトラブルの確率を大きく下げていることになると思う
意図的に連続撮影する場合は、遮光ふたを戻さずに巻き上げ→シャッターの操作を繰り返す。沈む夕陽に光線が変わるの追いながら、同じ構図、同じレンズで1本撮り終えた
折角だから4×5インチの大きなフィルムで1枚撮っておく。フィルムが大きくなると、同じ構図(画角)でもレンズの焦点距離が長くなる。135ミリから180ミリに交換
急いでピント、そしてレンズのあおりを再調整し、4×5インチのシートフィルムホルダーを入れ、露出を測り遮光マスクを外し撮影。4×5は1枚ずつ現像に出せるので無駄がない
一枚撮るたび、データを記録しておく。大判カメラにしてから、これを再開した
秋の夕暮れはつるべ落とし。バイクに戻ったときはすっかり暗くなっていた。背負子ごと積む。運転が慎重になっている
今日は昼すぎに家を出て1時間ほど走り、一カ所だけで撮って帰る。このカメラを使いだしてから、写真を撮る姿勢が明らかに変わってきた。機動性が悪いが故に、1枚を大切に撮る。絵画を描くように、じっくり、被写体と対話する。よい瞬間は一瞬しかないと思う。
現像からあがってきたフィルムをみる。4×5は、ほぼ葉書のサイズ。これをみると中判6×7も小さくみえる。まして、手前の35ミリサイズは・・
三浦半島の剣崎の夕刻。手前から先までピントを合わせることができるようになった
クリックすると大きな画面
実はこの写真、左のほうに海と船が写り込んでしまった。海岸という雰囲気を消したかったのに。きちんと見ていなかったのだ。もう少しカメラを低く構え、船に気をつけるべき。だから今回、またやってきた。
大判カメラ、不便きわまりないが、しかし撮影者の意図でどうにでもなる。この魅力をしばし味わっている