神経保護

Statin (HMG-CoA還元酵素阻害薬)

Statin (HMG-CoA還元酵素阻害薬)

Statinの主な効果はコレステロール合成抑制で高脂血症、心筋梗塞、脳血管障害の治療薬だが、副作用が少なく、神経保護効果もあると考えられ、Alzheimer病、Parkinson病にも使われている。Statinの神経保護のメカニズムとして、活性酸素低下、Alzheimer病の原因となるβamyloidやParkinson病の原因となるapoEの低下、血管内皮一酸化窒素合成酵素亢進による脳血流の増加等が考えられている。

Statinの神経保護のメカニズムは必ずしも分かってはいないが、低眼圧緑内障患者にstatinを投与し、統計学的に視野障害抑制効果があるとの報告が提出された。眼圧低下の効果がないことから、緑内障でもstatinに神経保護効果があると考えられている。

PLoS One. 2012;7(1):e29724. Epub 2012 Jan 4.

Cholesterol-lowering drugs and incident open-angle glaucoma: a population-based cohort study.

Marcus MW, Muskens RP, Ramdas WD, Wolfs RC, De Jong PT, Vingerling JR, Hofman A, Stricker BH, Jansonius NM.

カルシウム受容体阻害薬 Ca channel blocker (CCB)

カルシウム受容体阻害薬Ca channel blocker (CCB)

カルシウム受容体阻害薬(CCB)は緑内障視神経症の治療薬となりうるが、現在、緑内障治療や他の慢性神経変性疾患治療には至っていない。

生理的状態では神経の細胞内Ca濃度は100nMと細胞外の1−2mMに比べて非常に低い。このことによって、細胞内外の電気化学勾配が生まれ、様々な遺伝子を抑制及び活性化を調節することができる。これは、神経維持、長期記憶、シナプスの可塑性に必須である。
慢性神経疾患では通常の有効なCaシグナルは抑制され、過剰なCaがアポトーシス・カスケードを引き起こすと考えられている(グルタミン酸excitotoxityに関与)。

CCBは細胞膜でのCaの細胞内流入を低下し、細胞内Ca濃度を低下し、高血圧、狭心症、不整脈などの治療薬であるが、Caによるアポトーシス・カスケードを阻止することによって慢性神経疾患の治療薬として研究されている。緑内障では、このCCBによるCaアポトーシス・カスケードの阻止(神経保護)以外に、眼圧低下、網膜血流増加としても期待されている。

CCBとして、Nifedipine (商品名:アラダート), verapamil, nimodipine, nilvadipine (商品名:ニバジール), lomerizine (商品名:ミグシス、ラナス)が研究されている。

Nifedipine(アダラート): 緑内障による視野障害の改善があるとの報告(北澤)があるが、その後の複数の論文で否定されている。

Nimodipine: 正常眼圧緑内障患者における複数の前向き臨床試験で視野障害が改善するとの報告がなされている。Nimodipineは日本では認可されていない。

nilvadipine(ニバジール):緑内障患者の3年間の臨床試験で視野障害の進行が有意に抑制され、脈絡膜の脈絡膜と視神経の血流が約35%上昇しているとの報告がある(新家)。新家教授の最終講義での演題でもあった。

Lomerizine(ミグシス、テラナス):動物モデルでlomerizineを投与すると、二次要因の物質であるET-1による視神経乳頭の血流低下を抑制できるとの報告がある(Toriu N. et.al)。他のCCBが高血圧の治療薬であるのに対して、lomerizineは片頭痛の治療薬であり、血圧低下の副作用が少ない。

RGCの死では細胞質へのCaの流入が見られるが、実際に重要なのは細胞間の相互作用によってRGCのアポトーシスが誘導されることだと考えられる。その一つとして、緑内障で損傷したRGCからグルタミン酸が過度に流出されるとastrocyteとglia細胞はグルタミン酸を吸収することができなくなる。このexcitotoxityによって、過剰活性化されたNMDA受容体とVGCCからCaイオンが細胞内に流入され、多量なフリーラジカルが産生され、酸化ストレスを引き起こす。


低眼圧緑内障

低眼圧緑内障の機序

緑内障の治療は眼圧低下が基本だ。眼圧を下げることによって、視野障害の進行を抑制できることが統計学的に分かっている。しかし、眼圧が低く、眼圧が正常眼圧よりも低くても視野障害が進行する患者さんが存在する。

緑内障の機序として、以下が考えられている

一次要因:
網膜神経節細胞(RGC)の軸索が視神経乳頭で、押されて損傷を受け、脳で産生されたneurotrophin (NT) の逆行性輸送が阻害され、RGCが死ぬ (アポトーシス)。[RGCは網膜から脳の外側膝状体 (LGN)まで到達している]


二次要因:
 創傷したRGCから、グルタミン酸、endothelin, TNFαが放出され、gliosisが起きる。(gliosis: 損傷したCNSで起こるastrocyteの増生)[グルタミン酸、endothelin、TNFαはRGCの死に関与していると考えられている。]
 視神経乳頭における虚血、低酸素によって、astrocyteからグルタミン酸、endothelin-1 (ET-1)、TNFαが放出され、神経変性を引き起こす。

眼圧が低下し、一次要因が解除されても、残存したRGCが死のプロセスから解除されず、さらに視野障害が進行する症例がある。この症例では二次要因の物質は創傷されたRGCから放出されるだけではなく、他の原因によって持続的に放出されるためだと考えられる。このRGCのアポトーシスを持続的に引き起こす二次要因として、フリーラジカル、グルタミン酸excitotoxity、栄養素の消失が考えられている。


グルタミン酸excitotoxity
Excitotoxity: グルタミン酸、アスパラギン酸が受容体に過剰刺激を行い、神経毒性、神経変性を引き起こす。

グルタミン酸は脳内及び網膜での主要な興奮性神経伝達物質で、脳内には興奮性神経伝達物質として、グルタミン酸、アスパラギン酸が、抑制性神経伝達物質としてGABA、グリシン、タウリンがある。グルタミン酸は血液脳関門によって遮断され、脳内で作られる。グルタミン酸合成の一つがグルタミン-グルタミン酸サイクルで、グルタミン酸がグリア細胞(astrocyte)に取り込まれ、グルタミンに変換され、グルタミンがneuronに再吸収されneuron内でグルタミン酸に再転換され、synapse junctionに放出される。グルタミン酸はPost-synapse膜にあるグルタミン酸受容体に結合する。グルタミン酸受容体はイオンチャンネル型と代謝調節型の二種類に分けられる。イオンチャンネル型受容体はligand依存型チャンネルで、グルタミン酸と類似なagonistが結合するとCaとNaイオンを通過させる。代謝調節型受容体はG蛋白共役受容体でligand結合と細胞内情報伝達を連結させ、cAMP、細胞内Caなどの二次メッセンジャーに伝達される。

Excitotoxicityはイオンチャンネル型によって起こる。イオンチャンネル型には選択的agonistによってNMDA受容体、AMPA受容体、カイニン酸受容体等のsubtypeがある。このうち、NMDA受容体の活性化はシナプス可塑性に重要で、記憶と学習で重要な役割を果たしているが、過剰刺激では細胞内Caが上昇し、神経損傷を引き起こす。

グルタミン酸は網膜で光受容体→双極細胞→RGCの経路で主要な神経伝達物質であるが、グルタミン酸が異常に上昇すると網膜損傷の原因となる。グルタミン酸ナトリウムを摂取したマウスで「inner retinal neuron」の消失がみられ、これが、緑内障でグルタミン酸excitotoxicityがみられるとの仮説の基礎になっている。

グルタミン酸excitotoxicityは脳外傷、脳梗塞、癲癇、Huntington病、ALS、AIDS痴呆症でも見られる。細胞内Ca上昇がグルタミン酸excitotoxicityを引き起こす主要なメカニズムだと考えられている。生理的にはNMDA受容体が活性化されるとCaが細胞内に流入され、細胞膜、細胞内、ミトコンドリアにあるCaポンプによって、細胞外に流出され恒常性が保たれている。


神経保護(neuroprotection)

神経を保護する神経保護物質が研究されているが、多くは前臨床段階で神経保護を示す結果が得られていない。臨床試験で有効性があるとされたのはALSに対するriluzole、Alzheimer病に対するmemantine (NMDA受容体antagonist)、低眼圧緑内障に対するbrimonidine (商品名:アイファガン、交感神経α2 agonist)の3つに過ぎない。


Brimonidine(商品名:アイファガン)(交感神経α2 agonist)
虚血性視神経障害患者に対するbrimonidine投与群と非投与群間に有意差はなかった。しかし、低眼圧緑内障でbrimonidine投与群はチモプトール投与群に比べ、視野障害の進行抑制が認められた。
α2 受容体は虹彩、網様体に存在しており、brimonidineは房水産生を抑制することによって眼圧低下を引き起こす。これ以外に、グルタミン酸excitotoxity、酸化ストレス、低酸化を受けているマウスのRGCの生存率を向上する効果があり、神経保護効果があると考えられている。

Brimonidine以外に、緑内障における神経保護効果として
・Ca channel blocker、
・抗exitotoxicity、
・neurotrophin、
・endothelin antagonist、
・TNF antagonist、
・Sigma-1受容体angatonist
が期待されている。

これらのうち、Ca channel blocker、抗exitotoxicity、及び、最近神経保護があるのではないかとされている、statin (HMG-CoA還元酵素阻害薬)について別項。

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