2006年04月

2006年04月30日

遺産分割(3)

 4月も今日で終わりですね。時間が経つのは早いです。GW中も電話応対しておりますので、何かございましたらお気軽にどうぞ。

 ではでは、前回の続きです。「代償分割」の落とし穴、というところまででした。わかりやすいように、相続人がA・B・C・Dの4人の子どもであり、相続財産が甲土地(1,000万円相当)、4人が平等に財産を相続したい場合を考えてみます。

代償分割とは、ある特定の相続人が個々の遺産を相続する代わりに、相続財産以外の資産を他の相続人に分配する方法でした。今回の具体例では「Aは、甲土地を相続する代わりに、B・C・Dに250万円ずつ支払う」というように分割することです。

 Aが、甲土地を所有し、この250万円×3を手持ちの財産から捻出する場合は特に問題がありません。だけど、Aが一旦甲土地を相続し(所有権移転登記を完了させ)、その後甲土地を売却して、売却代金から250万円×3を分配する場合は、「甲土地の売却」が税法上の「譲渡」にあたるので、譲渡所得税に注意しておく必要があります。

 たとえば、譲渡所得税が約200万円かかる場合、B・C・Dに250万円ずつ支払ってしまっては、Aの手元には250万円−200万円=50万円しか残らないことになります。これでは当初考えていた遺産分割の趣旨にそぐわなくなってしまうので、あらかじめ遺産分割協議時に200万円の譲渡所得税を考慮し、(1,000万円−200万円)÷4=200万円を相続人ひとりあたりが受け取る分配金としたほうがよいでしょう。

 譲渡所得税の詳細については、国税庁の「タックスアンサー」を参照していただければと思います。

 ということで、急に始まった遺産分割シリーズは今回でおしまいです。長い文章をお読みいただき、ありがとうございました。

akikok at 23:11|PermalinkComments(3)TrackBack(0) 相続 

2006年04月23日

遺産分割(2)

 なんだか最近風邪気味です(・_・`)。土日は何をするともなく休んでおりました。三寒四温といいますが、皆様も体調管理にはお気をつけくださいませ。

 さて、前回の続きです。遺産分割には、具体的方法として次の3つが考えられる、というところまででした。

(1)現物分割
(2)代償分割
(3)換価分割

 わかりやすいように、相続人がA・B・C・Dの4人の子どもである場合を考えてみます。

 (1)「現物分割」とは、「甲土地はAが相続し、乙銀行の預金債権はBが相続し……」というように、個々の遺産を特定の相続人が個別に相続する方法です。たとえば、長男夫婦が亡くなったおばあちゃんと同居していたので、その居宅をそのまま長男が相続する、などのように、いちばんシンプルでポピュラーな分割方法だといえます。

 しかし、相続人の間ですんなり話し合いがまとまればよいのですが、ひとつの不動産の所有権をめぐって争いが起きるようなことも考えられます。その場合には(2)や(3)の方法を採って、相続人間で金銭を分配することにより平等な相続を心がけるほうがよいかもしれません。

 (2)「代償分割」とは、「甲土地はAが相続するが、その代わりに、Aは他の相続人に500万円ずつ支払う」というように、ある特定の相続人が個々の遺産を相続する代わりに、相続財産以外の資産を他の相続人に分配する方法です。

 これに対し、(3)「換価分割」とは「甲土地をみんなで相続し、さらにそれを売却して、その売却代金をみんなで分ける」というように、相続財産を換金して、その代金を相続人間で分配する方法です。

 では、「代償分割」と「換価分割」はどのように使い分ければよいのでしょうか。

 「代償分割」の欠点は、甲土地を相続しようとしているAが、他の相続人に対して支払う代償財産がない場合に、この方法を採ることができないということです。たとえば甲土地が1億円相当であり、Aが甲土地を相続する代わりに他の相続人B・C・Dに対してそれぞれ2,500万円ずつ支払わなければならない場合、当然のことながらA自身が7,500万円の預貯金等を有していることが前提となります。

 この点、「換価分割」は、甲土地を1億円の現金に換金してからABCDそれぞれが2,500万円ずつ受け取ることになりますので、Aが手持ちの金銭を心配する必要はありません。しかし、この「換価分割」にも欠点があります。それは、実務上、相続財産の名義変更手続が煩雑になるということです。

 「現物分割」または「代償分割」の方法によって「甲土地はAが相続する」とした場合、相続登記を司法書士に委任する際には、委任状はAが作成したものだけで足ります。しかし、「換価分割」の場合は、甲土地をABCDが法定相続分の4分の1ずつの割合で共同相続しますので、委任状はABCD全員の作成したものが必要になります。さらに、売却による所有権移転登記手続きの際にも同じことがいえます。ABCDから甲土地を購入する買主の側からしてみても、万一、ABCDのうちのだれかひとりでも気が変わって登記手続に協力しなくなったらどうしよう、という心配が残ることになります。なので、場合によってはなかなか買い手が見つからない、という状況が起こる可能性もあります。

 ということで、今回わたしが関わった遺産分割で採られた方法は、「代償分割」の方法でAが甲土地を相続した後、甲土地を売却し、その売却代金を代償財産として他の相続人に分配する、というやり方でした。この方法であれば、Aの手持ちの財産を心配する必要もありませんし、相続登記及び売却による所有権移転登記もAのみが関与すれば足ります。

 ただし、この方法にもひとつ大きな落とし穴があります。でも長くなってきましたので、この続きはまたまた次回に書きます。

akikok at 23:31|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 相続 

2006年04月16日

遺産分割(1)

 4月も半ばだというのになかなか暖かくなりませんね……。春生まれのわたしはほのぼのとした春らしい気候が大好きなのですが、今年はこのまま初夏に突入してしまうのではないかと心配です。

 さて、4か月にわたりお手伝いをさせていただいてきた相続手続がもうすぐ終わるので、今日から3回に分けて遺産分割についてご紹介したいと思います。

 その前に前提知識ですが、相続が開始した場合、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続の承認又は放棄をしなければならない。」(民法第915条1項)とされています。つまり、自分が相続人になり、何らかの財産を相続することになった、ということを知った時から3か月以内に、次のいずれかの方法を選択することになります。

(1)単純承認
(2)限定承認
(3)相続放棄

 「限定承認」「相続放棄」は、その旨を家庭裁判所に申述する必要がありますが、「単純承認」については、何もしないで3か月を経過すると自動的に承認をしたものとみなされます(それぞれの詳しい説明はホームページのほうに掲載してあるのでこちらでは割愛します)。

 そして、「単純承認」を選択した場合、相続人は次のいずれかの方法で遺産を相続することになります。

(1)遺言による指定分割
(2)法定相続分による相続
(3)協議分割・審判分割

 (1)遺言が残っている場合は遺言の内容が最優先されますので、遺言執行者によって、その指定された方法に従って相続手続がなされます。遺言がない場合、(2)民法第900条に規定された法定相続分によって相続するか(割合での相続)、(3)共同相続人間の話し合いによって自由に遺産を分割するか(話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判による分割)、いずれかの方法を選ぶことになります。

 遺産が現金や預金だけでしたら割合で相続することも簡単ですので(2)の法定相続分による方法でも問題ありませんが、不動産等がある場合は、各相続人が持分を相続して共有状態にするよりも、「甲土地はAが相続する」というような遺産分割を行ったほうが現実的でしょう。

 さてさて、遺産分割を行うことにした場合、実務上、次の3つの方法が考えられます。

(1)現物分割
(2)代償分割
(3)換価分割

 長くなってしまうので、この続きはまた次回に書きたいと思います。

akikok at 22:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 相続 

2006年04月02日

審判書

 早いもので、今年も4月に入りました。卒業、入学……と、別れと出会いの季節ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 当事務所も、先月、ひとつのご縁に恵まれました。3月23日付で審判書が送達され、第三者後見人(行政書士)として、現在施設にご入居されているAさんの成年後見人に選任されました。

 Aさんに関する過去のブログは以下のとおりです。

(1)初めての訪問
(2)賠償責任保険
(3)2回目の訪問

 初めてAさんのお会いしたときは施設にご入居されて間もない頃だったのでなんだか不安げな様子でしたが、2月末に伺ったときは施設の生活にも慣れてご自分の趣味に励まれているようでした。年齢を重ねても重ねなくても、毎日楽しい気持ちで過ごすことがいちばんだと思うので、本当に良かったです。

 さて、今後の流れですが、異議申立て期間が2週間あり、それを過ぎると審判が確定します。その後、家庭裁判所から法務局のほうに登記が嘱託されます。登記が完了すると、財産目録等を作成し、家庭裁判所に提出することになります。これが成年後見人としての最初のお仕事です。わたしは法人後見人の担当者として少し前から業務を開始していますが、自分の名前で行うのは初めてなので、一段と気合が入ります。

 行政書士の仕事は本当に様々で、わたしも専門は民事法務と謳っているものの、外国人の在留手続、自動車登録、古物営業の許可申請……等々、いろいろな仕事を受任させていただいております。これらの仕事をしていて思うのは、お客様の目的がはっきりしているというか、たとえば「行政庁の許可を取る」という「結果」に対して報酬を支払ってくださるわけです。でも、成年後見のお仕事はまったく異なるのではないかと思います。

 後見人といっても、法的に代理権があるというだけで、家族のようにいつもいっしょにいるわけではありません。月に1〜2回程度、預金の引出し等を兼ねて施設に伺うのが一般的だと思います。

 先日、Cさんの件で、法人後見人の担当者としてご本人に面会に伺ったときに、「わたしはCさんのために何ができるかなぁ?」と考えました。お互いのことをほとんど何も知りません。でも、わたし(の所属している法人)は、Cさんの今後の人生にとって非常に重要な役割を担っているわけです。

 わたしは、これはご縁だなぁと思いました。人と人との出会いのかたちは、クラスメートとして、会社の上司と部下、同僚として、恋人として……といろいろあるわけですが、後見人と被後見人というのもひとつの出会いのかたちだと思います。

 平均寿命が短かった時代、認知症高齢者が少なかった時代は、そもそも成年後見制度自体がありませんでしたし、こういうかたちの出会いは存在しませんでした。でも、これからは第三者後見人が増えてくると思いますし、新しい人間関係のかたちなのかなぁと思います。

 わたし自身が被後見人の方にできることは限られていますが、これもひとつのご縁です。だからできる限りのことをしたいと思いますし、何よりも良い人間関係をつくっていければなぁと思います。

akikok at 19:02|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 成年後見