テレビ朝日 ”色仕掛け”の代償

 財務省の福田淳一事務次官が起こしたセクハラ疑惑事件では、本人や財務省がボクシングのサンドッバックのごとく、あちらこちらから叩かれています。本ブログでは今さら、セクハラおやじの福田次官を批判しても面白くないので、別のアングルから今回の問題を眺めてみたいと思います。

 

 私がこの問題を耳にした時、最初に抱いた感想は「テレビ朝日もセクハラを受けたとされる女性記者(仮に小池さんとしましょうか)もバカなことをしたものだ。これでテレビ朝日の記者は今後10年以上、取材先からまともに相手にされないだろう」というものでした。

 

 仮にあなたが小池記者から取材を受けたとしましょう。この記者はあなたに断ることもせず、無断で会話を録音し、あろうことか、その記録を自分が属するテレビ朝日でなく、雑誌の週刊新潮に渡してしまいました。

 

こんな記者にあなたはもう一度、会って話を聞かせてやることができますか? あるいは「私は小池の後任です」といって代わりの記者がやってきたとして、安心して彼(あるいは彼女)の取材に応じられるでしょうか? 私ならごめんこうむります。

 

霞が関のエリート官僚でも政治家でも同じこと。だまし討ちで無断録音し、それを雑誌の新潮社に”横流し”したテレビ朝日の取材に誰が応じるものですか。恐らく警戒心は10年たっても消えないでしょう。

 

財務省の記者クラブ(財政研究会と称します)にはテレビ朝日など東京の民間放送局が派遣した女性記者が数人いる、とされます。

 

彼女たちの仕事は誤解を恐れずにいえば、“女性の強み”をいかして高官に近づき、重要な情報を取ってくること。男性の記者には口が堅い事務次官や局長であっても、女性なら口を開くかもしれないという思惑から、テレビ局は女性記者を財務省に派遣しています。

 

これは、口悪くいえば“色仕掛け”。女性記者の側も、青くさい正義感はひとまず忘れて、己に与えられたミッションを実行しようとしていたはずです。

 

 その点ではテレビ朝日の小池記者が、財務省トップの福田次官と何度か二人だけの食事をするまでにいたったのは上々の成果でした。福田次官からセクハラめいた話を頻繁に聞かされるのは嫌であっても、彼女はプロの仕事師として、それを軽く受け流しネタをとり続ければよかった、と思われます。

 

しかし回を重ねると福田次官の下ネタは彼女には段々、耐えがたいものになっていったのかもしれません。

 

でも、そうだとしても打つべき対策は少なからずあったはずです。彼女だって一応は自分をジャーナリストと称していたはすです。そのプライドがあるのなら、まず彼女自身が相手の福田次官本人をたしなめ、抗議するプロセスがあってしかるべきだった、と私は考えます。


今朝、目にしたテレビ番組では小池記者を「弱い女性」として扱い、「よくぞ外部告発した」と称賛していましたが、いやいやとんでもない、ジャーナリストは性差に関係なく、それなりの強さを有しているべき存在です。


テレビ朝日の側に方策はありました。小池記者が福田次官との会合がもう耐えられないというのなら、彼女を財務省から外してやればよかった。春と秋の定期異動に合わせて記者の配置を変更する時に、彼女を財務省担当から他の組織の担当に回してやれば”破綻”は容易に回避できたはずです。


 ところがテレビ朝日は彼女の気持ちをくみ取れず窮状を放置してしまいました。これはテレビ朝日の大チョンボです。

 

ここ数日の報道では、小池記者は録音した音声を証拠として「福田次官のセクハラ事件」を自社(テレビ朝日)で報道しようと上司に訴えた、と伝えられています。

 

もっとも、これはできすぎた話で、彼女がそこまでの覚悟を持っていたとは私には思えません。しかし上司のデスクや部長にはなにがしかの相談をしたことは確かだとも思われます。

 

彼女の上司がどんな対応をしたかは具体的には分かりません。でも、それは財務省への抗議や対決を決意するといった毅然としたものでもなければ、彼女を財務省担当から外して安堵させるといった現実的なものでもなかったのでしょう。

 

こうして彼女は報道記者としては最悪の行動に出てしまいます。新潮社への録音音声の提供です。この種のネタを好み、ライバルの週刊文春との競争も激しい週刊新潮の編集部は「特ダネが労せずして転がり込んできた」と喜んだことでしょう。


テレビ朝日はこの点について「取材活動で得た情報を第三者に渡したことは報道機関として不適切な行為」と反省のポーズを見せてはいます。でも、この悪事はそんなレベルのものではない。「報道機関として自殺行為」と言い直すべきでしょう。


新聞やテレビの記者にはかつて、自社で報道しがたいネタを雑誌に提供してウサをはらす習慣があったと聞きます。ひょっとしたら彼女もそのひそみにならったのかもしれません。事態はもっと深刻で、テレビ朝日の記者は常習的に雑誌社にネタを提供していたのかもしれません。

 

今回の事件の問題のそもそもの発端は“色仕掛け”で情報を安易にとろうとしたテレビ朝日の報道局にあったと思われます。この点を踏まえてみると、テレビ朝日が正義感づらをして財務省に抗議した一件はまことに笑止千万です。

 

財務省が負った傷は大きいが、テレビ朝日が受けた傷も深い。ましてこのテレビ局は前代未聞のセクハラ音源を一度は記者が手にしながら、それを“特ダネ”として報じる蛮勇も発揮できませんでした。

 

女性記者とテレビ朝日の”合作”ともいえる安易な告発の代償は、両者にとってて限りなく重いものとなるでしょう。

祝なでしこ アジアカップ優勝

  女子サッカーのアジア・カップで決勝に進出した日本は豪州に1-0で勝ち、2大会連続で優勝を果たしました。

 シュートの数は日本5、豪州22。後半に日本が放ったシュートは1本きりでしたが、それが得点につながったのはとてもラッキーでした。

 終始、攻められっぱなしだったのは不
です。それでも、よく守り切ったと、今回は評価しておきましょう。ひところよりは守備力をあげ、確実に強くなっていますから。

祝なでしこ 8大会連続W杯へ

 ヨルダンで開催されている女子サッカーのアジア・カップで日本は豪州と1-1で引き分け、8大会連続のW杯(ワールドカップ)出場が決まりました。日本が入ったB組は豪州、韓国と油断ならない相手がそろい、ハラハラさせられましたが、4強(B組2位)に入って目標を達成したなでしこたちをひとまずは祝福したいと思います。

 

 安心して彼女たちの試合を見ることができなかったわけは今回のアジア・カップの組み分けにあります。次に示したA組、B組の顔ぶれをご覧下さい。

 A組 中国 タイ フィリピン ヨルダン

 B組 日本 豪州 韓国 ベトナム

 

 今大会に参加した4強(日本、豪州、中国、韓国)のうち3チームが何とB組に集まっています。各組から次の準決勝・決勝ステージに行けるのは2チームだけ。マスコミの中にはこの組を「死の組」と称していたところもあったほどです。他方、A組の中で強いチームは中国だけ。中国はゆうゆうと予選リーグを1位で勝ち上がりました。

 

 組み分けにこんな偏りが生じたのは、今回の開催地のヨルダンが前回優勝の日本ともども「第一シード」の扱いを受けたことから始まりました。ヨルダンをA組、日本をB組として残る6チ-ムを強さを考慮しながら抽せんでAとBに割り振るのです。

 

残る強豪は豪州に中国、韓国。A組とB組かどちらかにこの3チームのうち2つが割り振られます。「B組にやってくる強豪は1つだけになるように。そうなれば予選リーグは楽に勝ち上がれる」。こんな願いをふみにじって、日本が属するB組には豪州、韓国がやってきたのでした。

 

実際の戦いも予想通りの接戦が続きました。日本、豪州、韓国の試合はいずれも引き分け(日本0-0韓国、豪州0-0韓国、日本1-1豪州)。結果は関係三カ国との対戦で得点をあげた日本と豪州が準決勝に進出し、得点ゼロに終わった韓国が準決勝進出を逃すというとても際どいものとなりました。

 

ついでにいっておくと今大会には現在の実力は日本より上とみられる北朝鮮は出場していません。


どうしたことかアジア・カップに先立つ予選で同じ組に入った韓国に勝つことができず、本大会出場を逃してしまったようなのです。私は今大会の顔ぶれを事前にチェックした時、北朝鮮の国名がないのに気づき、とても不思議に感じたものでした。つくづく今回のアジアカップは異様な大会だといえるでしょう。

 

しかし、よくよく考えれば組み分けや北朝鮮の不在に目が向かってしまうのは、W杯を制覇した2011年以来、日本女子の実力が徐々に下がっていき、世界的にみれば、もはや強豪ではなく並のチームに成り下がってしまったせいでしょう。

 

現時点でのなでしこの世界ランクは11位。澤穂希らがW杯で米国やドイツを制して優勝した頃の華麗なパス回しや、堅固な守備は今のチームにはあまりみられません。弱くなった日本はリオデジャネイロ五輪への出場も逃してしまいました。

 

そのわけは基本的には当時のチームがあまりに強すぎて若手を登用する機会が薄れ、世代交代が遅れたことにあります。

 

いわゆるアンダー世代では日本女子代表は好成績を上げ続けました。しかし、ヤングなでしことも、リトルなでしことも呼ばれ称賛された彼女たちは実戦の乏しさのせいなのか成長が乏しく、ベテランが抜けた穴を埋めることができなかったのでした。

 

平昌五輪のスピードスケートで大活躍し、金銀銅の「3色メダル」を獲得した高木美帆はかつてサッカーをやっていた時期もあったといいます。ひょっとしたらスーパースターである彼女がスピードスケートに行ってしまったから、女子サッカーは弱体化したのかもしれません。


 あるいは澤とともにかつてのなでしこを牽引した天才キッカー、宮間あやの不在が小さからぬダメージとなっているのかもしれません。W杯の決勝戦の対米国戦で澤の奇跡のような同点弾は宮間の正確なコーナーキックから生まれました。彼女は澤同様、他の選手では代わりがきかない選手です。


 いささかミステリーじみてくるのですが、宮間は岡山湯郷ベルを2017年に退団した後、消息はほとんど伝えられていません。

 優勝をかけたアジア・カップのノックアウトステージは来週に行われます。W杯の出場権を獲得して重圧が去ったなでしこたちの健闘を祈りたいと思います

プロフィール

あきなか