ヨルダンで開催されている女子サッカーのアジア・カップで日本は豪州と1-1で引き分け、8大会連続のW杯(ワールドカップ)出場が決まりました。日本が入ったB組は豪州、韓国と油断ならない相手がそろい、ハラハラさせられましたが、4強(B組2位)に入って目標を達成したなでしこたちをひとまずは祝福したいと思います。

 

 安心して彼女たちの試合を見ることができなかったわけは今回のアジア・カップの組み分けにあります。次に示したA組、B組の顔ぶれをご覧下さい。

 A組 中国 タイ フィリピン ヨルダン

 B組 日本 豪州 韓国 ベトナム

 

 今大会に参加した4強(日本、豪州、中国、韓国)のうち3チームが何とB組に集まっています。各組から次の準決勝・決勝ステージに行けるのは2チームだけ。マスコミの中にはこの組を「死の組」と称していたところもあったほどです。他方、A組の中で強いチームは中国だけ。中国はゆうゆうと予選リーグを1位で勝ち上がりました。

 

 組み分けにこんな偏りが生じたのは、今回の開催地のヨルダンが前回優勝の日本ともども「第一シード」の扱いを受けたことから始まりました。ヨルダンをA組、日本をB組として残る6チ-ムを強さを考慮しながら抽せんでAとBに割り振るのです。

 

残る強豪は豪州に中国、韓国。A組とB組かどちらかにこの3チームのうち2つが割り振られます。「B組にやってくる強豪は1つだけになるように。そうなれば予選リーグは楽に勝ち上がれる」。こんな願いをふみにじって、日本が属するB組には豪州、韓国がやってきたのでした。

 

実際の戦いも予想通りの接戦が続きました。日本、豪州、韓国の試合はいずれも引き分け(日本0-0韓国、豪州0-0韓国、日本1-1豪州)。結果は関係三カ国との対戦で得点をあげた日本と豪州が準決勝に進出し、得点ゼロに終わった韓国が準決勝進出を逃すというとても際どいものとなりました。

 

ついでにいっておくと今大会には現在の実力は日本より上とみられる北朝鮮は出場していません。


どうしたことかアジア・カップに先立つ予選で同じ組に入った韓国に勝つことができず、本大会出場を逃してしまったようなのです。私は今大会の顔ぶれを事前にチェックした時、北朝鮮の国名がないのに気づき、とても不思議に感じたものでした。つくづく今回のアジアカップは異様な大会だといえるでしょう。

 

しかし、よくよく考えれば組み分けや北朝鮮の不在に目が向かってしまうのは、W杯を制覇した2011年以来、日本女子の実力が徐々に下がっていき、世界的にみれば、もはや強豪ではなく並のチームに成り下がってしまったせいでしょう。

 

現時点でのなでしこの世界ランクは11位。澤穂希らがW杯で米国やドイツを制して優勝した頃の華麗なパス回しや、堅固な守備は今のチームにはあまりみられません。弱くなった日本はリオデジャネイロ五輪への出場も逃してしまいました。

 

そのわけは基本的には当時のチームがあまりに強すぎて若手を登用する機会が薄れ、世代交代が遅れたことにあります。

 

いわゆるアンダー世代では日本女子代表は好成績を上げ続けました。しかし、ヤングなでしことも、リトルなでしことも呼ばれ称賛された彼女たちは実戦の乏しさのせいなのか成長が乏しく、ベテランが抜けた穴を埋めることができなかったのでした。

 

平昌五輪のスピードスケートで大活躍し、金銀銅の「3色メダル」を獲得した高木美帆はかつてサッカーをやっていた時期もあったといいます。ひょっとしたらスーパースターである彼女がスピードスケートに行ってしまったから、女子サッカーは弱体化したのかもしれません。


 あるいは澤とともにかつてのなでしこを牽引した天才キッカー、宮間あやの不在が小さからぬダメージとなっているのかもしれません。W杯の決勝戦の対米国戦で澤の奇跡のような同点弾は宮間の正確なコーナーキックから生まれました。彼女は澤同様、他の選手では代わりがきかない選手です。


 いささかミステリーじみてくるのですが、宮間は岡山湯郷ベルを2017年に退団した後、消息はほとんど伝えられていません。

 優勝をかけたアジア・カップのノックアウトステージは来週に行われます。W杯の出場権を獲得して重圧が去ったなでしこたちの健闘を祈りたいと思います