関西国際空港が台風21号による高潮で“水浸し”となり、痛々しい打撃を受けのは9月4日のことでした。地下室に設置した変電設備が水でダメージを受け、空港のもろもろの施設に電気を送れなくなってしまったのでした。

 

 似たような事件は過去にもありました。2011年3月、東京電力の福島第一原子力発電所は、三陸沖の地震によって発生した津波によって、地下に置いた非常電源が破損し炉心溶融(メルトダウン)とへといたりました。

 

大阪湾を埋め立てて作った関西国際空港は地盤沈下が宿命の空港です。ならば高波や高潮を警戒して変電設備は、水が届かない高台や建物の上部あるいは屋上に置いておけばよいものを、水没の可能性が高い危険な地下に設置していたのはいささか驚きでした。

 

不可解なことに東電の福島第一原発の事故が起きた後も、関空は変電設備の場所を変えていません。電源を喪失するというトラブルがどんな深刻な事故を引き起こすかを“目撃”したにもかかわらず、関空関係者は無策だったのでしょうか。

 

変電設備の移設は、恐らく長期間の工事となり、巨額の費用が必要になるし、空港が営業を中断することにもなるのでしょう。しかし、かといって安全を軽視するやり口はとてもほめられたものではありません。いや社会や国民や利用者をなめているといってもいいでしょう。

 

視点を少し広げてみると、水への備えがおぼつかないのは関西国際空港だけではありません。例えば写真でお見せする次の高層マンション。エントランスを出るとそこにはもう神戸港が広がっている高級臨海マンションです。

神戸港高層マンション

 

でも、よくよく考えればこの種のマンションはかなり問題含みです。塩分を多く含む雨風にさらされて建物は傷みやすいと考えられます。近未来に発生が確実視されるが南海トラフ巨大地震では、この一帯は高さ4メートルほどの津波の襲来も想定されています。

 

(ここから先は少し推測もまじえますが)他の多くのマンションと同様、このマンションも、電力会社から電気の供給を受け、各部屋に送るための受変電設備は建物の地下、もしくは一階に設置している可能性が濃厚です。ならば、巨大地震による高波、あるいは津波が襲来した時は、関西国際空港と同じような目にあう恐れを否定できません。

 

目の前がすぐ海といったケースは希有な例なのかも知れません。しかし海抜の低い場所に建設されたマンションにまで広げれば、その数は少なからぬことはまちがいありません。海に近い場所にはホテルもオフィスビルも飲食店だってあります。

 

関空の次に電源喪失事故に遭うのは私やあなたなのかも知れません。

 

意外にも関空は最悪の事態は免れて 台風による被害前の4割ほどの運航がもう始まっているといいます。もう少しすると鉄道も動き始めるようです。でも状況の好転が、“水浸し”による電源喪失事故への反省・警戒を薄めやしないか。へそ曲がりの私はそんな気がしてなりません。