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第一のテーゼは"憧憬"!
永野歩は自分とは真逆の、万能の弟のせいで日の当たらない人生を過ごしてきた高校生。初恋のクラスメイト・遥菜に、なけなしの勇気を振り絞り告白したもの の見事に玉砕してしまった。だが、すっかり世を諦めていた彼の前に現れた美貌の上級生・ルーメによると、歩は滅亡する未来の地球を救う"救世主"だとい う! 五人の少女と恋をし、心を通わせ、五つのテーゼを手中にしたとき歩は真の力を発揮する。まず一人目に落とすべくは、――今しがた失恋したばかりの遥菜!? 歩の戦い(恋)が始まる!

このあらすじを読んで、最初はセカイ系の設定を使ったハーレム系ラブコメかと思ったんですが、ハーレム系でもなければ、そもそもラブコメでもなく、普通に恋愛モノでした。

で、内容がどうだったかと聞かれると、薄っぺらかった。というしかないかと。

まずキャラに魅力を感じなかった。
これって恋愛をテーマにした作品だと致命的だと思うんですよね。
まず主人公がネガティブすぎて読んでいてイライラした。これは個人的な見解なんですけど、ネガティブな主人公自体は別にいいと思うんです。アクセル・ワールドのハルユキとか好きですし。
でも人間不信を患わせた主人公なんて見ててもイラつくだけなんですよね。一々「影では僕のことを嘲笑ってるに違いない」とか書かれても、鬱陶しいとしか思えない。

それに加えてヒロインのほうも、天然系のテンプレみたいなキャラなんですけど、これも可愛いと全く思えなかったんですよね(これは僕自身が天然系ヒロインが好きじゃないのも大きいですが)
なんというか「お前らこういうのが好きなんだろ?」って作者が思ってそうなのが伝わってくるんですよね。悪い意味であざとい。

物語の展開も王道で、別に悪い訳じゃなかったんですけど、ちょっと起伏が乏しいかなという気はします。優等生というか模範的というか。

作者の今井楓人さん、(たぶん)新人さんなんですけど、あとがきを見ると「8年前に最初のプロットを出した」とか書いてあるんで、たぶん別名義で活動してたかなにかしてたんでしょう。少なくとも新人賞に応募してきたド新人ではないはず。
で、さらに読んでいくと、驚いたことに、主人公とそれを補佐するヒロインの設定以外は全部(キャラも展開も)同じだっていうじゃないですか。
8年も経てば、当時の高校1年生が社会人になっちゃってますよ?
当然流行りなんかも変わってるわけで、それなのにそのことを鑑みもせず、そのまま出したところで「現在」の読者にウケルわけないじゃないですか。この程度のことすら考えないとなると、作者も編集もあまりにお粗末だと言わざるを得ません。

というか、8年前の時点でプロットを却下された理由が、主人公が救世主ではなく自主規制しなければいけないなにか(おそらく痴漢)だったせいらしいので、そんなものを中高生向けのレーベルで書こうとした作者の考え方に疑問しか浮かばない(しかも作者本人はそれで普通の純愛モノだと考えていたらしい)。
そういうのが書きたいならフランス書院にでも持ち込めばいいのに。
……と思ったけど、HJ文庫でレイパーが主人公の作品がありましたねw これを見る限り、絶対に出せないというわけでもないんでしょうけど、やっぱりモラルとか非実在青少年とか色々問題あるから、出版社としては危ない橋は渡りたくないでしょうしね。


物語本編より、あとがきでの作者の言動のほうが色々と問題があるという、かなり珍しい作品でした。

救世主の命題(テーゼ) (MF文庫J)
救世主の命題(テーゼ) (MF文庫J) [文庫]

レビュー:ぼくだ