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どうすんのこれ。ほんとどうすんのもう。

というわけで、前巻から1年以内の刊行という、多分2004年(Ⅳの上下)以来の快挙で始まったエピソードⅨ。これ以上早くしろとは言いません、このペースで頼みますよマジで……。

しかし物語の方は、どうしたらいいのか私にはサッパリ見当もつきません。心情的にはサクラに同情するしかない。特に今回は、シティ側(ロンドン、ベルリン、モスクワ、マサチューセッツ)のお偉いさんたちがアホなので、なおさら人類には滅びてもらった方がいいように思えてしまいます。もしここで真昼がいたら……と何度も思いましたが、けど真昼でもどうにも出来なかったからこうなっちゃったんですよね。

この物語の終着点として、まさか本当にサクラの望む未来に至るとは思えないし、思いたくもない。けど、サクラが敗れる姿は、これもまた見たくない。もう一度話し合って手を取り合って……という穏やかな手段をとれればいいのかもしれませんが、双方がそんなことは今更望んでないし。もしも人類を滅ぼすことなく雲を除去する方法が今すぐ見つかったとしても、サクラにはそれを選択する理由がない。

本当にもう、どうしてこうなってしまったのか。流れをたどってみればどれも必然の出来事しかなくて、どこかで間違ったとは思えないのに。かつて、アリスとウィッテンが願った未来は、こんなんじゃなかったはずなんですけどね。

とりあえず今回は、開き直ったのか覚悟を決めたのか、もう誰にも止められないサクラが中心のお話でした。斧語りを俯瞰できる読者という立場であるはずの私でも、サクラが正しいのか間違っているのか、いまだに判断できません。これじゃあ錬と一緒ですわ……うーん。

「考えさせられる」というのは、こういう話にこそ使うのですよ。

あと、よく考えてみたら、確かに今回はサクラがメインのようではあったけれど、実はサクラの心情ってあまり書かれていないように思います。他の人からみたサクラって感じ。途中でヘイズが指摘していたけれど、本当に人類を駆逐したいならわざわざ宣戦布告なんてせず、それこそ当初のようにゲリラなテロ活動してれば勝手に人類は自滅するだろうに。
もちろん、サクラはそんなに頭のいい子ではないので、深く考えていないのかもしれません。イルと対峙した時の語りからして、言っていることがそのまま本心であっても不思議ではない。
ですが、前々巻で彼女が真昼に泣きながら宣言した通り、今もなお「そういう手段」を是とするかというと、それも腑に落ちないんですよね。あの時真昼に誓った言葉は、真昼が居なくなったら撤回される程度のものだったのか?

今の、あからさまなシティと人類への敵対宣言は演技か何かで、もっと深い考えがサクラにあるのかなとも思うわけです。

続きはよ。

感想:tartarous

ウィザーズ・ブレイン (9) 破滅の星 (上) (電撃文庫)
三枝零一
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2014-12-10