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第21回電撃小説大賞《大賞》受賞作。金色の帯が飾る煽り文は

「流れ着いた」孤立無援の浮島。食料も水もないここに、助けは来るのか―」
「ボクは、絶対に生きのびる」

と、かなり重たい物語を想像させます。実際、無人島で工夫を凝らしてサバイバルする危険ながらもワクワクする冒険譚、ではない。船を失い、植物もなければ動物もいない、周りの海には魚もいない、完全に詰んだ状態で、それでも「生きようとする」自分との戦いです。この島でのエピソードはページ数にすれば全体の3分の1にも満たないのですが、読むのにかかった時間は全体の7割だったような気がします。
360度見渡す限り、どこまでも続く、広い海。なのに人間は小さな船やわずかな陸地にしがみついて生きるしかなくて、「開けた閉塞感」という不思議な感覚を味わえました。

中盤以降は、危険だったり不便だったりと苦労が絶えないながらも、それなりに楽しく海を行く旅物語。電撃文庫で旅といえば『キノの旅』が代表作だと思いますが、あちらが陸路ベースなら、こちらは海路。作中で披露される海の旅の常識や先人たちの知恵、船に関する薀蓄なんかはそれだけで読んでいて楽しい。

そこから先の展開は、海が舞台であることや、滅びに瀕した人類という世界観を活かしきれてないかなという感じもします。話としては面白かったけれど、現代の地球を舞台にしてもその話は出来るよね、という。第1章の、孤島での息詰まる漂流記が秀逸だっただけに、その後の「普通の」冒険譚がかすんでしまったのが残念です。

2巻も決定しているとのことで……その気になればいくらでも続けられるような設定ではありますし、この1巻の終わりがどこかに繋がるところまでは、せめて続けてほしいですね。

感想:tararous

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)
鳩見すた
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2015-02-10