2015年06月

2015年06月02日

こんにちは。
はぐれミーシャです。
ご無沙汰しております。

ミンスクもだいぶ暖かくなってきました。
でも、時折肌寒い天気になったりと、油断はできません。

先週は翻訳の仕事がポンポンポンと三つも立て続けに入ってきて、結構苦労しました。
水曜日などは朝の6時まで仕事をしていました。
ベラルーシでは締切がタイトな注文が多いので、大変です。

さて。
最近、日本のテレビ番組で、外国で日本語を学ぶ大学生が紹介されていました。
日本語教師の視点から見ると非常に気になることが。
まず、とにかく発音が悪い。
「〜してー、」という風に「、」の前に当たる音節や助詞が全部間延びしているのですが。
例えば、「昨日はー、日本語をー勉強してー、寝ました」という感じです。

文法的にも微妙。
例えば、こんなフレーズが。
「大事にしてるから、誰も取らないようにしています」
「取らない」ではなく、「取られない」じゃないといけないところですね。

しかし。
私たち日本人はそういうところは非常に寛容。
番組のナレーションもその学生を「日本語が堪能な○○さん」と紹介していました。

その大学生が私の学生だったら、徹底的に直してあげたいところです。
でも、あそこまでくせがついちゃうと、直すのは非常に難しいでしょう。

そう。
日本人は外国人の日本語に非常に寛容だと思います。
外国人がちょっと日本語が喋れるだけで、「日本語、ペラペラですね!」「すごいですね!」と言ってくる。
某番組でも外国の空港に到着して、タクシーに乗ろうとしたとき、運転手が片言の日本語で「こんにちは」と言っただけで、「日本語上手ですね!」と言っているのを聞いたことがあります。

私のある学生はあまりにも日本人に褒められるので困ると言っていました。
学生「あそこまでいくと、ほめられると言うよりはむしろバカにされているような気がしてきます」
実際、その学生の日本語はかなりのレベルですが、いくら勉強しても間違いは残るもの。
その学生は日本人にはもっと間違いを直してほしいと言っていました。
確かに、直してもらった方がもっと成長できるでしょうし。



昨年9月、大前研一先生率いる「向研会」の方々がベラルーシを視察に訪れました。
大前研一先生と言えば、経営の世界では皆が知っている大人物。
いらっしゃる数日前に、旅行会社から連絡があり、ご一緒することになりました。

ご一緒すると言っても、通訳ではありませんでした。
視察は全て大前先生ご自身が英語の通訳を行う形で、ロシア語通訳の私は全く出番がなかったのです。
私の仕事はガイド。
市内観光のときにバスの中でベラルーシの話をしたりするのです。

ホテルで向研会の方々をお待ちしている間、先乗りしてきた旅行会社の方にいろいろと指示を受けました。
大前先生のような大物の方々のグループなので、いろいろと気配りが必要だということなのでしょう。

向研会の方々がリトアニアからバスで到着したのは夕方。
部屋に荷物を置いてバスに戻り、すぐにミンスク観光に出発しました。

大型バスの運転手のわきに私は陣取り、私の後ろには大前先生。
正直、私はド緊張していたのですが、いつも通りにやろうと思い、思い切ってベラルーシのことを話したり、ミンスクの町を案内したりしました。

私が話し始めてすぐ、大前先生からいろいろな質問が。
ベラルーシのことや、私の日本語教室のこと。
時折、「マイク」とおっしゃり、私がマイクを渡すと、ベラルーシについてご自身でご説明されていました。
いろいろと気さくに話しかけてくださったので、非常にうれしかったです。

夕食の会場となるレストランに着くと、私は飲み物の注文などを取りに走り回りました。
ところが、しばらくすると、旅行会社のツアーコンダクターの方が私のところへ来て、「ちょっとこちらへお願いします」。
私が「何があるんですか?」と聞くと、「まあまあ、こちらへ」

導かれた先には大前先生が!!!
私を手招きして、「ここに座って。いろいろ話を聞かせて」。
えええ!!! 信じられない!!!
緊張したまま、私は大前先生の質問に答えたり、同じテーブルになった会社の経営者の方々とお話をさせていただきました。
私にとっても非常に勉強になる話ばかりでした。

次の日も視察は続き、最後の夕食。
皆さん「ベラルーシの若い人たちと直接話してみたい」ということで、私の学生9人を夕食に招待してくださいました。
ベラルーシ人の日本語学習者は私や日本人留学生ぐらいしか日本語で話す相手がおらず、このときのように大人数(70人ほど)の日本人に一度に出会うことはありません。
ましてや、経営の仕事をしている日本人の人たちと話すようなチャンスは全くないのです。
私も学生たちも夕食に招待していただいて、本当に幸せでした。

テーブルを挟んで大前先生の向かいに座ったリディアちゃん。
あまりにも緊張しているので、「大丈夫?」と聞いたら、「私、大学で大前先生の本を読んで勉強したんです」。
彼女は大学で経済・経営を学び、今の仕事もその方面。
彼女にとっては神様のような人が目の前にいるわけですから、無理もありません。

後日談ですが、夕食に招待されたアリョーナちゃん。
その日、彼女がうちへ帰った時、父親に「今日は誰に会ったんだい?」と聞かれ、「大前研一先生」と答えると、父親は「えええ!!! 本当か!!!」と腰を抜かさんばかりにびっくり仰天。
彼女のお父さんも大前先生の本を読んだことがあり、とても尊敬しているのだそうです。

夕食ではそれぞれのテーブルに学生が座って、多くの方々と交流させていただきました。
私は旅行会社の人たちと打ち合わせをしたりしていたのですが、参加者の方々が私のところへ来て、お話をしたり、名刺をくださったりしました。

そのとき、数人の方にこんなことを言われたのです。
「先生の学生の日本語はきれいですね」
中には「今どきの若い日本人なんかより、ずっと日本語がきれいですよ」と言って下さる方も。

「上手ですね」ではなく、「きれいですね」。
私はうれしくて、涙が出そうでした。
というのは、これこそが私が求め続けてきた道だったからです。

ただ日本語で話すだけだったら、ぶっちゃけ誰でもできると思うのです。
片言で「コンニチハ」と言っても、日本人には褒められてしまいますし。
日本人は外国人の日本語に関しては「通じればOK」という感覚でいる人が多いのではないかと思います。

しかし、それではダメだと思うのですよ。
外国人だからタメ口が許されるなんてことはないと思うのです。

私は学生たちに正しい日本語を話すように指導してきました。
間違いがあれば、ドンドン直します。
日本語教育では「正確さ」よりも「流暢さ」を求める傾向が強く、多少間違いがあってもたくさん話すことが良しとされることが多いのです。

私はその流れには常々反対してきました。
「通じればいい」、それだけでいいのであれば、教師はいらない。
流暢なのは結構だけど、日本語が正しいに越したことはない。
勉強を始めて1、2年の学生にたくさんしゃべることを求めるのは、生まれたての赤ちゃんに演説を求めるようなものだと私は思っています。

「先生の学生は日本語が上手ですね」と言われることはよくありますが、「日本語がきれいですね」と言われて、私はこれまでの仕事が報われた感じがしました。
自分がやってきたことは間違っていなかった、と。

夕食の最後の方に、大前先生は学生と出会った感想やベラルーシの印象などを語られました。
その中で「この学生さんたちに『日本人作家で誰が一番好きですか?』と聞いたら、みんな『太宰治です』って答えるんですよ。先生(←私に向かって)、もうちょっと明るい文学作品を読ませてやってください」。
太宰治はドストエフスキーが生まれたこのロシア語圏のメンタリティーに合っているのか、私の学生の中には太宰が好きだという学生が多いのです。
今度はもうちょっと楽しいのも読ませてみます。

そして、大前先生は学生全員を前に呼び、学生たちをほめてくださいました。
しかし、ただほめてくださっただけではありませんでした。
「一つだけ注意してもらいたいことがあります。自分の名前をはっきり言うこと!」。

確かに。
ベラルーシ人の学生は自分の名前をロシア語の発音そのままで言ってしまうことが多く、日本人の耳には早口に聞こえます。
それに、ロシア語の名前自体に慣れていないと、いきなり聞いても認識できないということがあるのです。
私も大前先生に言われて初めて気づきました。
これからは学生ともども気をつけます!

その日の夕食は学生たちにとって、かけがえのない思い出になりました。
今でも、学生たちとはあの日の話をすることがあります。
みんな「あの時は楽しかったです!」と。
大前先生、私や学生たちに貴重な機会を作ってくださり、本当にありがとうございました!!!



私はこれからも学生たちが正しい日本語が話せるように教えていきたいと思います。
そして、その学生たちがベラルーシと日本の懸け橋となるような人物になることを期待しています。
学生たちと一緒にがんばっていきます!!!

akiravich at 11:34コメント(9)トラックバック(0) 
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