2008年05月29日

ベラルーシ人の恋愛 傾向と対策

5e8e260a.JPG今日は授業は二つだけ。
授業は少ないんだけど、他に仕事が山積み。
例えば、ロシア人の翻訳者が日本文学をロシア語に翻訳したものをチェックする仕事。
かなり急がないとまずい。
他に細々とした雑事。
試験問題も作らなきゃ!

さて、今日は皆さんお待ちかね(?)のテーマ、恋愛です。
民族が違えば、恋愛観もかなり異なります。
私もいろんな経験を重ねて、ようやくベラルーシ人の恋愛メンタリティーがわかってきたのです。
それを皆さんに、お話ししましょう。
写真は先日、日本人の方を迎えて学生達とパーティーをしたときに、私が日本人とベラルーシ人の恋愛観のギャップについて話したときに書いた「恋愛フローチャート」です。
よく見えないですね。

まず、言葉の問題があります。
よく「愛があれば、言葉なんて」というセリフをよく聞きますが、私はそうは思いません。
言葉がわかるに越したことはない。
言葉がわかっても、ギャップがあるんだから、言葉がわからなかったら、そのギャップはもっと大きいものになります。
ボランティア活動なんかで、夏の間だけとか短い期間ならまだしも、恋人としてとか奥さんとしてとかなら、言葉は必要なアイテムです。

私の経験を書きましょう。
5年ほど前、私はウクライナ人の恋人がいました。
年齢は19歳(だったかなあ・・・)、私は29歳でした。
あるとき、ロシア語で私が「君が好きだ」と言いました。
すると、彼女は「私はそのフレーズは言えない」と言うじゃありませんか!
「じゃあ、僕達は恋人じゃないの?」と聞くと、「恋人だよ」と答えます。
「恋人なのに『好きだ』っていう言葉が言えないの?」「今はその言葉を言う自信がないから・・・」

さあ、皆さん、わかりましたか?
ここにはロシア語と日本語の大きいズレがあるのです!!!

「好きだ」という言葉は、ロシア語で「Я люблю тебя」(ヤー・リュブリュー・チビャ。以下、「リュブリュー」)。
カタカナで書くとひどいですね、こりゃあ。
これは「私はあなたが好きです」の直訳です。
「любить」は「好き」とか「愛してる」の意味。
私がそのウクライナ娘に言ったのは、そのフレーズです。

ロシア語にはもう一つ似たようなフレーズがあります。
「Ты мне нравишься」(トゥィ・ムニェ・ヌラーヴィッシシャ)。
さあ、これをどう訳すか。
この「нравиться」(以下、「ヌラーヴィッツア」)という動詞は直訳すると「気に入っている」ということになるでしょう。

しかし、この言葉、「好き」という意味にもなります。
例えば、「私はこの料理が好きです」というときや「私はこの町が好きです」というときは「ヌラーヴィッツア」も「リュビーチ」も使えます。
英語で言うと「リュビーチ」は「LOVE」で、「ヌラーヴィッツア」は「LIKE」という感じなんでしょうが、それもまたぴったり来るものではありません。

日本人は誰かと付き合いたいとき、告白しますよね。
お互いに「好きだ」と言い合って、「じゃあ、付き合おう」ということになるわけです。
それと同じ感覚で、日本人がベラルーシ人に「好きだ」、つまり「ヤー・リュブリュー・チビャ」と言ってしまうと、これは確実に失敗します!!!

ベラルーシ人は「リュブリュー」という言葉は、付き合い始めに言うことはまずありません。
最初は「ヌラーヴィッツア」のほう。
私の学生の話では「リュブリュー」をすぐ使うと、「そんな大事な言葉を軽々しく使うなんて、この人、ちょっとおかしいんじゃない?」と思うそうです。
「リュブリュー」を使うのは、お互いによく知り合って、長い間(人によって、その長さは違います)付き合ってから言うものだそうです。
だから、「愛してる」に近いと言ってもいいんじゃないでしょうか。

しかし、日本人にとって「ヌラーヴィッツア」を使うのは、抵抗があります。
だって、「気に入っている」だと、物とか犬とか猫とか、そうゆうレベルに感じませんか?
でも、ベラルーシ人はそうゆう言い方をするのです。

じゃあ、ベラルーシ人は告白するとき、何と言うのか?
彼らは告白しないんです!
する人もいることはいますが、まともな女の子なら簡単に「好き」という男は相手にしないそうです。

私が授業で「日本人は誰かと付き合いたいときは告白して・・・」と説明すると、学生達はみんな非常に驚きます。
特に「付き合おう」というフレーズを言うことはまずないそうです。
「そうゆうスタイルは小・中学校の子供がやるようなレベルですね」と言った学生もいました。

私が「じゃあ、どうやって付き合い始めるの?」と聞くと、「いつの間にか、付き合っていることになっている」のだそうで。
つまり、付き合う前と後の境界線が全くないということになります。
日本人だったら、付き合い始めた日とか、覚えてること多いですよね。
でも、こっちでは、いつから付き合い始めたかということは気にしないんですって。

境界線がないから、問題も起こります。
日本人って、相手にとって自分がいったい何者なのか、はっきりさせたがりますよね。
「恋人」なのか、「友達」なのか。
そこがはっきりしないと不安ですよね。
でも、こちらでは言葉でもって「君のこと、『僕の彼女』って言ってもいいんだよね?」とか、確認することはありません。
例えば、男は女のことを「彼女」と思っているのに、女は男のことを「ただの友達」と思っていることもよくあるようです。

「恋人である」と言葉にしませんから、責任や義務が発生しない。
日本だったら「彼女or彼がいたら、浮気しない」というのは、一応常識ですよね。
でも、ベラルーシでは、日本の基準で考えれば「付き合ってる」と言ってもいいような関係であっても、相手のことを「ただの友達」と認識していたら、他の相手とデートをしても一向に構わないという考え方の人は多いです。
だからと言って、ベラルーシ人が軽いと言いたいわけじゃないんですよ。

うちのある女子学生の意見を御紹介しましょう。
「日本人がどうしてすぐ『好き』と言うのか理解できない。だって、相手のことをたいして知らないのに『好き』になるのはおかしいでしょう? その人を知っているから『好き』になるんですよね。『好き』と言って付き合い始めて、付き合ってみて自分に合わなかったら嫌いになるのって、本当に『好き』じゃなかったってことですよね」
この意見は正しいと思います。
まあ、友達として長く付き合ってきて、それで「好き」というのなら、相手をよく知っていて言うわけですから、いいでしょうけど。
たいして知らない相手に「好き」というのは、食べたことのない食べ物を見ただけで、食べる前から「おいしい」とか言うようなものです(こうゆうときは「おいしそう」と言わなければなりませんね)。
付き合ってみなければ、その人がどんな人か、本当に自分にあっている人かはわからない。
だから、付き合ってみて、それで愛を感じたら「好き」、つまり「リュブリュー」と言うのだそうです。

だから、ベラルーシ人のように、とりあえず付き合ってみて、そこに愛があるかどうか、愛が生れるかどうかは後で考えるというのは、ある意味、理にかなっているとも言えます。
ある意味、「愛」という言葉を軽々しく使わず、真剣に考えてるとも言えます。
でもねえ、自分の彼女がですよ、こっちが「好きだ」って言ってるのに、彼女が「うーん、どうかなあ・・・」なんて言ってきたら、へこみますって。
そのウクライナ娘のときは、かなりショックでしたね。
彼女なのに、「好き」と言えない。
究極の矛盾。

「好き」と「気に入ってる」、「リュブリュー」と「ヌラーヴィッツア」。
これらの言葉にギャップがあることに気付いたのはだいぶ後になってからでした。
このことを理解するまで、どんなに失敗を重ねてきたことか・・・

うちの奥さんのときは、それを理解した上で付き合ってたので、大丈夫でした。
まあ、私たち夫婦のことはいずれまた・・・

akiravich at 03:30コメント(16)トラックバック(0) 
ベラルーシ人 

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コメント一覧

1. Posted by pinguin   2009年04月17日 23:30
他の記事も興味深く読ませていただきました。というのは、夫の恋人がベラルーシ女性なのです・・・。
20歳近く年下の留学生です。私は娘達を連れてすでに日本に戻っていますが、夫は欧州に海外駐在中、彼女は夫の滞在国の隣国にいるため、出張と偽り度々会いに行ってます。
何度かその女性とは連絡を取りましたが、「家族がいることなど私には関係ない、私たちの間には愛があるから」との返事でした・・・。
私も中欧に8年滞在、現地の人と密接にお付き合いしながら過ごしました。夫のこともありますが、時には肯きながら楽しく読ませていただいております。今後も楽しみにしています。

2. Posted by akiravich   2009年04月18日 00:56
コメント、ありがとうございます。
私のブログが何かお役に立てばいいなあと願っております。
何か御質問などございましたら、遠慮なくお寄せください。
これからもよろしくお願いいたします。
3. Posted by Eire   2010年08月20日 10:28
はじめまして、タイはバンコクで日本語教師をしているEireと申します。実は私のクラスに、ベラルーシの生徒がいまして、興味を持ったのでこちらのブログにお邪魔しました。タイで西洋人、しかもベラルーシの生徒に会うなんてすごく稀なことなのですが(しかも彼かなり日本語がうまいです)、これも何かのご縁なんでしょうね。
ほかの記事も楽しく読ませていただきました。また遊びにきますね!
4. Posted by akiravich   2010年08月22日 01:31
Eireさん、はじめまして!

同業の方からコメントがいただけるのはうれしいです!

ベラルーシ人の学生ですか!?
誰でしょう・・・
ベラルーシの日本語界は狭い世界で、たいていの人とは顔見知りなので・・・

これからもよろしくお願いいたします!
5. Posted by 通りすがり   2010年08月27日 13:29

ベラルーシの最近の天気知りたくて、何故かここに来てしまいました。

ベラルーシって面白いですね。

日本もどちらかと言うとハッキリ言わないで始まって、結婚するときになってハッキリしてくると思うのですが。

日本の場合、何となく一緒にいると何となく付き合っていることになって、何となく周りもそう言う態度になって、何となく付き合っているようになる。

ベラルーシは西欧とは随分違うんですね。どちらかと言うと日本に似ているのではと思ってしまいました。

西欧はしっかり始まりがあります。

「付き合いましょう」って何て言うのか分からなくて付き合えなかったという例があるぐらいです。

相手の女性も付き合ってって言う言葉を待っています(多分)。
言葉なしには何も始まりません。

ヨーロッパでも大部違うところが面白いです。
6. Posted by akiravich   2010年08月27日 14:27
通りすがりさん、こんにちは。

それは知りませんでした。
ヨーロッパではきちんと言うんですね。
これはスラブ人のメンタリティーなのでしょうか・・・それとも、ベラルーシ人だけなのでしょうか・・・
面白いところです。

7. Posted by 通りすがり   2010年08月31日 09:20
フランス人に聞いてみたところ、
フランスでは高校生までは言うけど、その後は言わないそうです。

大人になると黙ったままでも、
何となく一緒になっていくようです。

そう言われてみるとドイツもそうかなって言う気がしてきました。

やはり言葉でなくキスが始まりですかね。

うーむ、中々難しい問題です。
8. Posted by tomtom   2010年09月02日 19:59
言葉で伝えるべきなのか、どうか。好きっていう言葉の解釈も違いますよね…私も最近1年前に知り合ったロシア人女性にふられました。日本だとわりかし、短期間で相手を好きになるととりあえず付き合ってみたりしますが、向こうではどうも友達の期間を重要視するような気がします
9. Posted by OK   2010年10月29日 06:39
日本人の男です。

ベラルーシについて調べていたらこちらに辿り着きました。
大変興味深く読ませていただきました。

というのも、ひょんなことからベラルーシの女性と知り合い、好意を持ったからです。
そして、つい先日に二人で飲みに行き、帰りに彼女を寮まで送ったのですが、別れ際にむこうからキスをされました。
あれはなんだったのだろうと思いまして…
ベラルーシの人にとってキスはどのような意味があるのでしょうか?

ちなみにですが、一瞬のフレンチです。
10. Posted by akiravich   2010年11月01日 15:54
OKさん、はじめまして。

うーん、何とも言えませんね。
人によります。
人によっては「キスは特に深い意味はない」という人もいますし、「ちょっと好きならキスする」という人もいますし、「本当に好きな人としかキスはしない」という人もいます。

一つ言えるのは日本人よりもスキンシップには慣れているということぐらいですね。
11. Posted by SeireiK   2011年12月02日 23:52
どうもはじめまして。「ロシア語で「知っている」って何ていったっけ…ガバリューは話す…リュブリューだっけ?」と検索して何故かここに辿り着きました(しかもそれを調べるきっかけがツイッターでベラルーシの方をフォローしたから、という奇遇さ)。

丁度この前「彼に「私のどこが好き?」と聞くと冷められる理由が判明」という話を読みまして、こちらの話と合わせて大変興味深く読ませて頂きました。

http://news.nicovideo.jp/watch/nw152856?marquee

また改めてこちらの他の記事をゆっくり読ませて頂こうかと思います。ではでは。
12. Posted by Akiravich   2011年12月13日 12:01
SeireiKさん、はじめまして!

「私のどこが好き」と聞くのって、ダメなんですかね?
私は冷めないんですが・・・
人によっては冷めてしまうかもしれませんね。

これからもよろしくお願いいたします!
13. Posted by YOKOTA   2012年04月15日 00:17
こんにちは、日本人 男です。最近ロシア語のテキストを開きました。気に入っていると、好きだのニュアンスが日本とこんなに違うなんて驚きです。
例文ではヌラビィーツアは車とか、服とかが多いです。
GWまたビテブスクに行ってみます。
14. Posted by Akiravich   2012年04月25日 06:02
YOKOTAさん、はじめまして!

ビテプスクに行くんですか?
いい町ですよね。
私は大好きです!

またコメント、よろしくお願いします!
15. Posted by こうたろう   2015年08月12日 02:00
リュヴリュと言われたのは何年も付き合った後ですが、愛されていたのだと泣きました。
16. Posted by Akiravich   2015年08月17日 03:50
こうたろうさん

リュブリュというのは愛が深い証拠ですね。
本当にベラルーシの人はなかなか言わないので・・・

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山形県出身。
2000年からベラルーシ共和国の首都、ミンスク在住。ベラルーシ国立大学文学部・日本語教師。目指すのはベラルーシの金八(略してベラ金)。
愛する妻ベロニカちゃんと愛する龍二くん(5歳)とのベラルーシ生活!
日本の皆さまにベラルーシ一般国民目線のベラルーシを御紹介!

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