2012年12月25日

ベラルーシはそんなにかわいそうな国ですか?

ご無沙汰しております。
はぐれミーシャです。

今日はカトリックのクリスマス。
国の祝日です。
珍しくうちでのんびりしています。

ちなみに、ベラルーシで一番優勢なのはロシア正教会で、住民の80%ぐらい。
カトリックの信者はそんなに多くないのです。
ロシア正教のクリスマスは1月7日です。

久しぶりのブログ更新。
本当はたくさん書きたいことがたまっているのですが。
例えば、日本旅行のまとめ(←自分のため)とか、普段の仕事のこととか。
でも、今日はちょっと我慢できないことがあったので、書いてみたいと思います。

先週の金曜日のこと。
その日はこのブログの訪問者数が急に跳ね上がりました。
例えば、テレビか何かでベラルーシが取り上げられたりすると、そういうことが起こります。
なので、どんな番組で取り上げられたのかなあと思い、「ベラルーシ」というキーワードに他の言葉を組み合わせて検索してみたんです。

すると、ベラルーシに関して、とんでもないことが書かれているのを目にしたのです。
チェルノブイリ事故で汚染されたベラルーシでは、5人に4人の子どもが何らかの病気に罹った状態で生まれてくる。

えっ? 何これ?
何かの冗談でしょ?

あまりにもびっくりしたので、いろいろ探してみました。
すると、出るわ出るわ。

・市民の寿命は、おそらく15年は縮められた。
・ベラルーシでは今、多くの人々が40代でこの世を去っている。


おいおい! 何なの、これ!?
っていうか、この情報源はどこなの?

夜の授業前の空き時間に見ていました。
しばらくすると、学生たちが入ってきたので、学生たちに話してみました。
学生たちの反応は「бред!!!(読み方はbred)」(←全員ほぼ同時に)
この言葉、直訳すると「たわごと」「荒唐無稽なこと」。

いやあ、あまりのひどさに私も学生たちも絶句しました。
だって、5人のうち4人が病気を持って生まれてくるなんて、そんなこと、あります?

うちの龍二くんはとても健康です。
生まれてきた子どもが病気だというのはあるとは思いますが、新生児の80%が病気というのはありえない数字です。
そのとき教室にいた学生の中に小児がんセンターで研究員をしている女の子がいるのですが、彼女も「ばからしい!」の一言。

ここで言うところの「病気」というのが何を指しているのかわからないですよね。
そういうおおざっぱな書き方というのはいかがなものかと。
ベラルーシ人の子どもはみんな病気なのかと思われてしまいますよ。

日本人の皆さんはどう思いますか?
例えば、福島の子どもたちについて同じようなことを書かれていたら、どう感じるのでしょうか?

でも、福島に限定するのもおかしいですね。
特に何も考えていない日本人からすれば「福島=あぶない」というイメージがあると思います。
しかし、去年ぐらいまでは外国人の間では「日本=あぶない」というイメージでしたから。
どこの大学でも留学生がどんどん自分の国へ帰っていったという話はよく聞きます。
今ではそこまでひどくはないかもしれませんが、私の学生の親御さんからは「今、うちの子どもを日本に留学させて大丈夫でしょうか?」と聞かれることはあります。
外国に住んでいる私から言わせれば、福島に対する風評被害だとか、福島の人への差別なんて、本当にバカらしくてしょうがないです。
福島の事故直後にあったのは日本全体に対する風評被害、「日本はあぶない」というイメージ。
同じ日本人が福島だけを切り離しているのは、日本の外側からみれば「бред」としか言いようがありません。

もう一度聞きます。
もし何の根拠もなく、外国のサイトに「日本では5人に4人の子どもが何らかの病気に罹った状態で生まれてくる」なんて、書かれていたらどう思います?
いい気分はしないはずです。

寿命に関しては、どういうデータを基にして15年という数字を割り出したのでしょうか?
WHOの2012年のデータでは男女では70歳、女性76歳、男性64歳となっています。
いろいろデータがあるので、ベラルーシ国内のデータだと違う数字が出てくる可能性はありますが、近い数字はよく聞きます。

時々聞くのは「ベラルーシの男性の平均寿命は60歳以下」という話。
これは根拠がどこにあるのかわかりませんが、実際にそうだとしてもそんなにはびっくりしないかも。
というのは、自分の周りでも50代で亡くなる人、結構多いんですよ。

こんなこと書くと、また誰か「チェルノブイリの影響だ」なんていう人が出てくるんだろうなあ。
何でもチェルノブイリのせいにする人、ベラルーシにはそんなにいませんよ。
一般のベラルーシ人に「どうしてベラルーシ人男性の平均寿命は短いの?」と聞くと、たいていの人は「お酒のせいでしょ」と言います。
私もそう思います。
本当によく飲むし、食べるし。

ベラルーシでは心臓の疾患で亡くなる人が多いです。
これまた「チェルノブイリの影響だ」なんて人が出てきそうだなあ。
確かに、放射性物質が心臓に影響する、という話はあるようですが、それだけではないはずです。
私は医者じゃありませんが、心臓の病気を引き起こす要因はたくさんあるはずです。

こんな話になったのでついでに書くと、ベラルーシは自殺が多いです。
ベラルーシ国内ではそういう話が出てくることは一切ありませんが、インターネットで出てくるデータだと世界トップクラス。

こんなこと書くと、「チェルノブイリの心的外傷が・・・」なんて言う人が出てくるんだろうなあ。
人が自殺する理由って、いろいろあると思うんですが、チェルノブイリの事故から26年経った今、チェルノブイリを理由にして自殺する人がいるのか、非常に疑問があります。

インターネットでこんなのも見ました。
家を失ったこと及び、放射線障害の恐怖から人々は心的外傷を受けた事が報告されている。死ぬ運命にあると信じている彼らの多くが、過度の飲酒と喫煙をしている。
あのー、たぶんこの世に生きている人間全員が死ぬ運命にあると思うんですけど。
心的外傷に関してはそうかもしれませんが、それによって飲酒と喫煙をしているわけではありません。
学生たちに言ったら、みんな爆笑。
「ただ単にベラルーシ人はお酒が好きだから」「チェルノブイリの事故があろうがなかろうが、ベラルーシ人はお酒を飲み続けるだろう」
私も同感です。

あともう一つ
ベラルーシは、子供の生存率が49.7とか9%になってる。
ここで言う「生存率」が何を意味しているのかがよくわからないです。
新生児のこと?
でも、これを真に受けたら、半分の子どもが死んでしまうっていうことですか?
ありえなーい!!!

一言言わせてください。
他のリスクを全く無視して、全てをチェルノブイリ、または放射能に結びつける傾向は非常に危険だと思います。
日本人の中にそういう方がいらっしゃるように思います。
何がチェルノブイリの影響で、何が他のものの影響なのかを見極めることが大事なのではないでしょうか。

実際、わからないことはとても多いんですよ。
前にも書きましたが、私の個人教室の学生で小児がんセンターで研究員をやっている女の子がいます。
彼女は分子生物学が専門で、遺伝子がどうこうとか、DNAがどうこう、という研究をしています。
彼女も血液関係の病気について「放射性物質が影響している可能性はあるけど、まだまだ証明されていないことが多いんです」と言っていました。

ベラルーシ南東部のゴメリという町にある放射線生物学研究所でも「低線量被爆の人体への影響というのはまだわからないことが多い」と言っていました。
それは長期的に調査していかないといけないからで、「正しく研究するには、26年では短すぎる」とのことでした。
その研究所は別にチェルノブイリに特化した機関ではなく、自然界にあるあらゆる有害なものを研究対象としていると言っていました。

汚染地域に住んでいるからと言って、すぐに病気になるとは限りません。
元気に暮らしている方もたくさんいらっしゃいます。
そして、非汚染地域に住んでいる方でも病気で亡くなる方はたくさんいらっしゃいます。

ただ、汚染地域に住んでいることによって、病気のリスクが高まるということはあるのでしょう。
私は医者じゃないですし、研究者でもありませんから正確なことはわかりませんが、リスクが高まる可能性があるということに関しては賛成です。
実際、病気によっては汚染地域における発病率が高いものもありますし。

こういう状況になると、極端なことを言う人が多くなると思うのです。
「解明されていること」と「解明されていないこと」ははっきりと区別するべきだと思います。
そして、全ての情報の中から「信じるに足るもの」と「信じるに値しないもの」を見極めることも重要だと思います。

偉そうなことを書いていますが、私にとってもそれは非常に難しいことです。
というか、ほとんど不可能に近いです。
でも、本当のことを知ろうとする努力は常に続けているつもりです。

ベラルーシに関しては「滅亡しつつある国」のような書き方をしているのもインターネットで見たことがあります。
っていうか、みんな生きてるし!
子どもたち、元気に外で遊んでるし!


私が心配しているのは福島が同じような状況にならないかということです。
根拠のない話、不安をあおるだけの話が広がってしまうような状況にならないかということ。
すでにそういう状況になりつつあるような印象があるのですが・・・

インターネットでベラルーシに関することを読んで、熱くなってしまいました。
あまりにもひどい内容だったので・・・


P.S.
私は1月に日本へ行きます。
非常に短期間の滞在です。
福島にも参ります。
福島の方々の前でお話しする機会を設けてもらえそうで、非常に楽しみです。
実際にベラルーシに住んで感じること、チェルノブイリに関することで私が知っていることをいろいろお話できればと思っています。

akiravich at 14:27コメント(10)トラックバック(0) 
チェルノブイリ 

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コメント一覧

1. Posted by mrsplz   2012年12月25日 15:07
初めてふブログを読まさせて頂きました。インターネットに書かれている事は違う事の方が多いと思います。大げさに変な事を書かれていますしあてにならない事や色々な事などあまりにも変だと思います。今はネット社会になっている事で大変です。ネットの事はあまり気になさらずお体や体調に気を付けて下さい。応援しています。
2. Posted by Akiravich   2012年12月25日 15:21
mrsplzさん、コメントありがとうございます!!!

確かにネットでは大げさなことや変なことが書かれていることが多いですよね。
わかっていながら、ちょっと熱くなって書いてしまいました。
気にしないようにします。

今後ともよろしくお願いいたします!
3. Posted by 奈良の通りすがり   2012年12月25日 16:52
ご無沙汰しております。
私は仕事上、マーケティングで統計を扱っているのですが、その中でいつも強く感じるのが「統計数値は制作者が見せたいように加工できる」ということです。
人間は弱いもので、意識無意識関わらず、自分が見たいと期待する事象しか認識しません。しかも伝聞となると尚のこと、様々な意図が入り込みます。
日本の一部では、原発を廃止したいがために「新たな原発事故と露骨な人的被害で一度思い知るべきだ」と、過激な期待する発言をする者まで出始めています。これでは本末転倒です。

一方で、限りなく意図が入らない現実は、その場にいる人々しか知り得ません。
その点で、Akiravichさんによる現地発のコメントは非常に貴重な物だと思っています。
お忙しいとは思いますが、引き続き、この貴重な声と現実を我々に届けて頂けましたら嬉しいです。

来夏もどうやら東欧方面に行くことになりそうなので、念願のベラルーシも計画に組み込んでみようかと思案中です。みなさんの元気な姿をぜひ拝見したく思っています。
その際は何卒よろしくお願い申し上げます。
極寒でしょうが、お体ご自愛下さいね。
4. Posted by CSO   2012年12月25日 23:39
本屋で立ち読みしていたら、ベラ放射能汚染研究所所長が福島を訪れて測定したところあまりの放射能汚染の酷さに絶句した、という記事を見ました。この雑誌は左翼らしく、南京大虐殺の明らかに捏造記事を載せていました。 日本のマスコミは低脳、悪質なのものも多いので、相手にしないのが良識、というのもあるでしょう。
5. Posted by Akiravich   2012年12月26日 06:37
奈良の通りすがりさん、こんにちは。

日本で起こっていること、いろんな人の意図や思惑が絡んでいる感じがします。
それはベラルーシも同じことなのですが。

私がブログを書いている理由の一つがベラルーシ人の目線から見たベラルーシがどんなものなのかを日本の皆さんに伝えたいということがあります。
これからもがんばって、情報を発信していきたいと思います!
6. Posted by Akiravich   2012年12月26日 06:39
CSOさん、こんにちは。

実はベラルーシにもパニック系というか煽り系の人がいます。
私はあまり好きではないので、彼らの言うことは全く気にしないようにしています。
7. Posted by 柚子   2012年12月27日 23:54
こんばんは、
福島県福島市に住んでいます。
ずっと拝見していましたが、コメントするのはたぶん初めてです。

ベラルーシの「惨状」をでっち上げている人がいるんです。
それも立派な肩書の方が・・・

たとえば
菅谷昭・松本市長は1/29国立市他 あちこちで「福島で中絶増加」と発言 
もう公式謝罪が「公人」としての最低の務めだ(追記多数あり)
http://shinobuyamaneko.blog81.fc2.com/blog-entry-94.html


この方はベラルーシで医療支援された方なのに・・・
ベラルーシでは妊婦健診で異常があれば強制中絶とか、
子どもの先天異常が増えているとか
データの裏付けのない話を日本中で講演しておられます。
福島もそうなる・・・みたいなほうへ話を持っていくために。
市の広報誌にもそんな話を書いてるし・・・

信夫山ネコさんがこのエントリを書かれたころ、
「この市長さんの言ってること、ホントですか?」って
はぐれミーシャさんに聞いてみようかな、と思ったりしたのですが、
いくらなんでも失礼だよね、と思いやめたのでした。


一方、こういう人もいます。いろんな意味で結構な有名人。

上杉隆 氏についての検証
チェルノブイリ(現ウクライナ)の人口
http://www34.atwiki.jp/ddic54/pages/34.html
甲状腺に放射能を溜めこんで、その後10年20年して発ガンして、
だからチェルノブイリのいま、近くのキエフ含めて、
20歳から25歳の人口がゼロに近いんです。みんな死んでしまって。

ひどいです。
主義だかビジネスだかのために
ベラルーシやチェルノブイリや福島を利用する人がたくさんたくさんいるのです。
私にとっては放射性物質よりずーーーーっとストレスの種です。

8. Posted by 柚子   2012年12月28日 21:30

連投失礼します。
昨日、ネットで見られるようになりましたので・・・
学生さんたちにも見せてあげてくださいませ。

福島の地元ローカルテレビ局、TUFの
福島市視察団のルポです。

シリーズ「TUFルポルタージュ」
http://www.youtube.com/playlist?list=PLaqSqi9eoedMYtxh8hoKs5pdM0L54pkNB
・『私の見たベラルーシ、そして福島へ』


ミーシャさんにもベラルーシの皆様にも
本当にお世話になったのですね。
ありがとうございました。

ベラルーシは美人さんが多いですね。

9. Posted by Akiravich   2013年01月02日 06:52
柚子さま、コメントありがとうございます。

私は専門家ではないので、何ともいえないのですが、私が小児がんセンターなどで聞いている話では、現在のベラルーシでは先天異常は他の国と同じぐらいの率でしか見られないと聞いています。
強制中絶というのは聞いたことがありません・・・

20〜25歳の人がほとんどいないという話はすごいですね。
例えば、他の世代に比べて少ないと言うのなら話はわかりますが、ゼロに近いと言うのは普通に考えてもありえない話だと思うのですが・・・

ご存知かとは思いますが、TUFの番組に映っているベラルーシの学生はみんな私の学生です。
みんなに見せたら、非常に喜んでいました。

質問などございましたら、遠慮なく。
私が答えられるようなことであればお答えしますので。
10. Posted by 柚子   2013年01月04日 21:02
こんばんは、
お返事ありがとうございました。

ミーシャさんが前の記事に書かれた
↓に、とても共感しました。

++++++

でもね・・・
みんな、生きてますよ!
ちゃんと生きてますよ!
何がかわいそうなもんか!



ここに挙げた町、全ての町にベラルーシ人が生きています。
生きています。
そして、生きていきます。

+++++


そして、TUFのルポのまとめのことば
「チェルノブイリ事故を乗り越えたという
強いプライドを持っているベラルーシ」

今、明るく生きて、
福島に心を寄せてくださるベラルーシの皆さんは、
私の希望です。
私自身が「乗り越えた」と言えるまで
生きていられるかどうかはわかりませんが
息子や孫たちの世代が明るく生きる未来のために、
できることをしようと思います。

ベラルーシが、チェルノブイリが、
そして福島がかわいそうでないと都合の悪い人には
いつか「ほーらごらん」と言ってやりたいです。

お願い、
「強制中絶」の件、
「ウソ・大げさ・まぎらわしい」のたぐいなのでしたら・・・
もしミーシャさんが日本でお話されることがありましたら、
できましたら・・・
本当のベラルーシの事情を話してくださいませ。
ベラルーシ、福島、どちらをも傷つける失礼な話ですから。
(ネコさんのブログにあったように
福島では中絶も先天性の異常も増加していません)


震災後知ったのは
現地に行った人のいう事だから正しい
とはかぎらないこと。
これからも、ふだん着の、生きているベラルーシ情報、
発信してください。よろしくお願いします。

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