きゃばりこさんのーとぶっく

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2019年10月

【山梨大学】「食事の時間がアレルギーに強く影響する」

https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2019/10/20191025pr.pdf

令和元年10月25日

国立大学法人山梨大学 医学部免疫学講座

―食事の時間を見直すことによりアレルギー症状の改善が期待―
研究のポイント
花粉症や喘息、蕁麻疹などのアレルギー疾患で「普段の生活を見直して症状を良くする」という考えは、アレルゲンを回避すること以外はありませんでした。ましてや「食事摂取のタイミング」がアレルギー症状に影響するとは誰も想像していませんでした。本学の医学部免疫学講座 中尾篤人教授、中村勇規准教授らは食事摂取のタイミングがアレルギー反応の強さに大きく影響することをマウス実験によって明らかにしました(日本アレルギー学会英文誌に10月14日にオンライン掲載)。
この結果から、アレルギー患者を適切に診療し症状をコントロールするためには、食事摂取のタイミング(食事の時間や夜食の有無など)を念頭に置く必要があることが示唆されました。薬を増やさなくても、食事の時間を変えるだけで、ひどかったアレルギー症状を良く出来るかもしれません(添付のまとめ図)。
この成果は日常生活(食事)への介入によってアレルギー疾患を予防・治療するという新しい戦略を提唱するとともに食事の思いがけない側面(アレルギー調整作用)も提示しました。

研究の背景(体内時計はアレルギー反応を調節している)
花粉症や喘息、蕁麻疹などのアレルギー疾患は、ある特定の時間帯(特に夜間から明け方)に症状が出現しやすいという特徴があります。例えば花粉症では朝方にくしゃみ、鼻水などがおこりやすく「モーニングアタック」と呼ばれています。
中尾教授、中村准教授らは、以前の研究で、生理活動の24時間性のリズム(睡眠や覚醒、ホルモン分泌など)を司る体内時計がこのようなアレルギー症状の時間による変化に関係していることを発見しました。
アレルギー反応の大部分はマスト細胞と呼ばれる免疫細胞が、スギなどのアレルギー物質(アレルゲン)に反応してヒスタミンなどのくしゃみや鼻水、咳、蕁麻疹などを誘発する化学物質を放出することによって起こります。体内時計は、マスト細胞のアレルゲンに対する感受性を、活動期は鈍く休息期は敏感にしていて、その結果、休息期にアレルゲンに曝露されるとマスト細胞が放出するヒスタミン(アレルギーを引き起こす物質)の量が活動期よりはるかに高くなり、くしゃみや鼻水、咳、蕁麻疹などの反応も休息期(ヒトでは夜間、夜行性のマウスでは日中)に強くなると考えられました(図1
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今回の研究成果(食事のタイミングがアレルギー反応の強さに影響する)
体内時計は、不眠やストレス、運動、食事の時間によって影響を受けることが知られています。例えば、夜食など不規則な時間帯での食事摂取は体内時計のリズムを乱し肥満などを誘発させやすいことがわかっています。
アレルギー反応と体内時計との密接な関係から、中尾教授らは不規則な食事のタイミングは肥満だけでなくアレルギーにも影響するのではないか、と考えました。
そこで、この仮説を確かめるために、マウスを以下の3群に分けて実験を行ないました(図2)。

1)餌を24時間自由に与える(マウスは夜行性なので主に夜間に餌を摂取するが昼間にも少し摂取する)。
2)餌を活動期(夜行性マウスでは夜間)の4時間だけ与える。
3)餌を休息期(夜行性マウスでは日中)に4時間だけ与える。

これらの食事条件でマウスを2週間飼育したあとヒトにおける蕁麻疹反応のモデル(PCA反応)を、それぞれの群で、日中(午前10時)と夜間(午後10時)に引き起こしてみました。なおマウスが摂取した餌の量は3群間でほとんど変わらず体重変化も3群間でほぼ同じでした。
PCA反応の強さは、1)と2)の群では、休息期に強く活動期に弱い反応を示しました。
これは以前に中尾教授らが見出した結果と同じです。一方、興味深いことに3)の群では休息期も活動期も強い反応が見られました。またマスト細胞の体内時計のリズムを調べると3)の群では1)2)の群が示す本来見られる(正常な)リズムとは異なるリズムが刻まれていました。
これらの結果から不規則な食事のタイミングは体内時計のリズムを変えてしまい、その結果、規則的な食事のタイミングをしている時とはアレルギー反応の出方を変えることがわかりました。
具体的には、本来アレルギー症状が出にくい活動期でも症状が強くなってしまいました
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研究の意義
本結果から食事摂取のタイミングは、アレルギー反応の強さや出やすい時間帯を変化させる因子の1つであることが明らかになりました。これは従来のアレルギー診療においては全く考慮されていなかったことです
したがって花粉症や喘息、蕁麻疹などのアレルギー患者を適切に診療し症状をコントロールするためには、食事摂取のタイミング(食事の時間や夜食の有無など)を念頭に置く必要があることが示唆されました。
食事の時間を変えるだけひどかったアレルギー症状を良くすることが出来るかもしれません。
本研究成果は「食事摂取のタイミング」という患者さんの日常生活に介入することでアレルギー症状の改善や治療薬の減量、発作の予防を目指すというアレルギー診療における新しいアイデアを提示します。
また何時に食事を取るかということがアレルギー反応に影響するという「食事」の思いがけない側面も提示しました。中尾教授らは、食事のタイミングを見直すだけでアレルギー症状が緩和できる患者が全体の2割程度はいるのではないかと臨床的な経験から推測しています。現在、患者さんの日常生活情報を臨床に活かす試みは“Apple Watch”に代表される健康デバイスやビッグデータと相性が良く将来発展が期待される医療分野の1つです。中尾教授らは、甲府市や企業と協力して、食事のタイミングとアレルギー(花粉症など)症状との関係を、スマフォアプリなどを用いて、解析する研究を計画中です。
今後このような研究を更に進めることでアレルギー診療の新しい大きな進歩が期待されます。

発表論文:
Nakamura Y, Ishimaru K, Nakao A.
Time-restricted feeding in rest phase alters IgE/mast cell-mediated allergic reaction in mice.
Allergology International. 2019 Oct 14. pii: S1323-8930(19)30160-1.


基本、家庭犬は飼い主より規則正しい生活してるだろうからね…。
秋の花粉症が例年になく酷いのは風呂上りにビールのんでるからかなあ(;´∀`)
身体に悪い物っておいしい><

【NHKニュース】国内11社 胃潰瘍などの治療薬「ラニチジン塩酸塩」自主回収

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191005/k10012113881000.html?utm_int=detail_contents_news-related_002

2019年10月5日 5時06分

胃潰瘍などの治療薬「ラニチジン塩酸塩」に発がん性物質が含まれている可能性があるとして、薬を製造販売する11のメーカーが自主回収を始めました。厚生労働省によりますとこれまでに健康被害の報告は入っていないということです。

ラニチジン塩酸塩は胃や十二指腸潰瘍の治療薬で、厚生労働省によりますと、この薬の成分にNDMAと呼ばれる発がん性物質が含まれている可能性のあることがわかったということです。

このため薬を製造販売する国内の合わせて11社が自主回収を始めました。

11社は、▼武田テバファーマ、▼小林化工、▼沢井製薬、▼鶴原製薬、▼東和薬品、▼ニプロ、▼マイラン製薬、▼日本ジェネリック、▼日医工、▼陽進堂、▼グラクソ・スミスクラインです。

ラニチジン塩酸塩をめぐっては、アメリカやヨーロッパなど海外で発がん性物質が検出されたという報告があり、厚生労働省が先月11社に対して成分の分析を依頼し、その結果、複数の社の原薬からわずかな発がん性物質が検出されたということです。

厚生労働省によりますと、これまでに服用したことによる健康被害の報告は入っていないということです。


ペットのお薬ノート(https://drugmanual.wiki.fc2.com/)にラチニゾンの記載があったので一応めも。
レアケースだけど使用期限切れ後発品フロセミドをラシックスと処方する迂闊な動物病院もあることだし。

【杏林製薬】こむら返り

https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/doctorsalon/upload_docs/140558.pdf

2014年4月
ドクターサロン58巻5月号
獨協医科大学越谷病院神経内科教授 宮本智之 (聞き手 山内俊一)

山内 宮本先生、こむら返りというのは私も糖尿病を専攻している関係でしばしば遭遇する訴えなので、なかなか困ることも多いのです。まず神経学的にいって、こむら返りの原因、あるいはメカニズムといったほうがいいのかもしれませんけれども、このあたりはどうなっているのでしょうか。
宮本 こむら返りは不随意に突然起こる有痛性の骨格筋の収縮です。特にふくらはぎ(腓腹部)、太もも(大腿の伸筋・屈筋群)、あるいは足の細かい筋肉(足固有の筋)に多く生じます。生理的なものもあるのですけれども特に運動後とか運動中、あるいは一番多いのは睡眠中に生じることが多いようです。
先生がおっしゃったこむら返りの原因というかメカニズムですけれども、運動ニューロンの過剰な興奮が引き金となって病的な筋収縮が起こると推察されています。そこで過剰な筋収縮が起きて血流が阻害されて筋の虚血を起こしているので、痛みとか、そういうものを伴うということが推察されます。
山内 過剰な筋収縮に伴って血流障害、これは当然電解質異常なども伴いやすいと思われますので、そういったあたりが全般的に来ているのだろうなというところですね。先ほども少しお話がありましたが、運動中に起こりやすいというのは、よくサッカー選手などでも見られますね。ただ、一方で安静睡眠中にも多いという、全く別の環境でも起こりやすいというところがあって、このあたりはわかりにくいところなのでしょうか。
宮本 こむら返りの約7割の方は夜間に経験するといわれていまして、夜間頻回なのはふくらはぎの筋の灌流圧とか、あるいは細胞膜の電解質の移動が横になったときに変化するのではないかという話もあります。
山内 電解質にもいろいろありますが、主因、主犯とみなされている電解質となりますと何なのでしょうか。
宮本 治療の経験からいいますとナトリウムチャンネルをブロック、神経の興奮を抑制するような作用がある薬で抑えられることが知られていますので、ナトリウムチャンネルの異常が神経の興奮を起こしているのではないかと推察されます。その他に自己免疫の病気で全身性のこむら返りを起こすような神経の難病があるのですけれども、そういったものはカリウムチャンネルの異常も指摘されておりまして、そういった特殊な病気もあります。
山内 ナトリウムに関してですがこむら返りを起こしやすい方に特に低ナトリウム血症が目立つという、そこまでのエビデンスはないとみてよいのでしょうか。
宮本 原因の一つには低ナトリウム血症の方で起きやすいということがあるのですけれども、こむら返り自身が種々の疾患で起きまして特に低ナトリウム血症の方々に多いかというと、そうでもないようです。
山内 こむら返りを一度も経験したことがないという方も珍しいと思われますが、高齢者に多いとみてよいのでしょうか。
宮本 特に高齢者では女性に多いともいわれています。65歳以上の約6割の患者さんに夜間こむら返りの経験があるということが報告されております。
山内 経験的には毎日のように起こすというと病的といっていいのかわかりませんが、少し注意したほうがいいなという感じでしょうね。
宮本 そうですね。毎日起こる方は予防が非常に問題になるかと思います。
山内 さて、実際に起こったときの治療の話に移りますが、発作時はむろん非常に痛みが激しいわけですがこれは皆さんストレッチで瞬間に治ることが多いことをよくご存じです。ただ、これはあくまで屈筋群のほうが侵されたときだけで、ストレッチできないような筋肉でも起こることがありますね。
宮本 はい。
山内 こういった場合はどうやったらいいのかということですが。
宮本 確かに大腿の屈筋群あるいは、ふくらはぎの筋収縮によって底屈状態が持続した場合には、その筋肉を伸ばすということが治療になると思うのですけれども、例えば前脛骨筋などの下腿の前のほうの筋肉がこむら返りする場合もあると思うのです。そういった場合はストレッチは非常に難しいのではないかと思います。
山内 そういう場合は結局、そばに薬剤を置いてそれでおさめるというかたちになるのでしょうね。
宮本 対症的に過剰な興奮を抑えるような薬物を用いるしかないのかなと思います。
山内 具体的にはどういった薬剤を用いていらっしゃいますか。
宮本 こむら返り自身にエビデンスの高い薬というのは実際、保険適用上もないと思うのですけれども、ただ、経験的にいろいろな薬が試されています。一つは抗てんかん薬の一種を用いたり、あるいは日本では漢方薬が使えるので経験的に漢方薬を使って急場をしのぐということはされていると思います。
山内 具体的に抗てんかん薬もいろいろありますけれども、よく先生がご使用されるものとしてはどういったものがありますか。
宮本 実際てんかんの患者さんに対して用いる量ではないので少ない量なのですけれども、ただ、副作用もあるので、比較的少ないものを選ぶ。それは患者さんと相談しながらになるのですけれども例えば最近ですと、ガバペンチンという薬を用いることがありますし、あるいはクロナゼパム、カルバマゼピン、フェニトインといって昔からの抗てんかん薬も効果があるといわれています。
山内 それは起きてからということですね。
宮本 こむら返りに対しての予防投与というのは実際多くはされていないと思いますので、先ほど先生がおっしゃったように、毎日起きるような人に関してはそういった予防投与を行うこともあるかもしれませんが時折経験する人に関しては急場をしのぐような頓挫療法というか、そういったことになると思います。
山内 漢方薬としてはどういった薬が使われるのでしょう。
宮本 日本ではそういった治療選択があるので例えば芍薬甘草湯、五苓散が比較的有名で使われていると思います。
山内 これは1回分の頓服で出されるものなのでしょうか。
宮本 そうです。こむら返りが発症したときに芍薬甘草湯を頓服でのむ場合もあるし、頻度の高い人は就寝前に予防投与するというケースもあると思います。
山内 こむら返りは高齢者に多いのですが片一方で有名なのが、妊婦さんがけっこう悩まされるケースもあります。妊婦さんなどですと薬もなかなか、今言ったようなあたりですと使いづらいものも多いのでしょうね。
宮本 そうですね。
山内 安定剤的なものとか筋弛緩薬とか、そういったものはいかがなのでしょう。
宮本 一般の高齢者では安定剤のような薬とか筋弛緩薬を用いる場合もあると思うのですけれども、妊婦さんにはなかなか用いにくいと思います。妊娠を契機に起きる原因としてはマグネシウムとかカルシウムの低下ということが報告されていますので、強いエビデンスはないのですけれども少しマグネシウムを投与すると妊婦さんのこむら返りにはよいという報告もあります。
山内 とりあえず夏場などですと脱水補正といったものもありますから、特に日中を中心にしてスポーツドリンクなどで電解質を補うことも予防的には意味があるのではないかと考えてよいでしょうか。
宮本 おっしゃるとおりだと思います。血液循環量、血漿の循環量も非常に関連しているということがいわれていますので日ごろからそういった脱水予防、夏場もそうですけれども特にこむら返りを繰り返す人は夜間にトイレに行くこともあるかもしれないですけれども、スポーツドリンクなどを飲まれるといいと思います。
山内 夜起こすような方も例えば夏であれ冬であれ、最近室内の暖冷房がきいていますのでああいったものなどで思わぬところで足が非常に冷えてきたとか、そういう機械的な刺激が原因になっていることもありうるとみてよいですね。
宮本 はい。温度管理も非常に重要なことでありまして先生がおっしゃったように、足が冷えてしまうというのも誘因の一つになりますので、温度管理は非常に気にかけていいことだと思います。
山内 ありがとうございました。



きゃばりこさんの発作痛中の左前肢ビビビ(15秒くらいから)もこむら返りなんですかね?
ガバペンも五苓散も飲んでてこうなっちゃったら芍薬甘草湯の出番かっ!?

ストレッチは無理だから虚血って痛いのなら温めればいいのかな?
でもホリホリして自分でまぎらわせてるようだし、それがストレッチ的なことになっているのか?
確かに床を引っ掻く時、前肢裏側の筋に体重がかかって伸ばせてるよね。

【BBC】ベルギーの車いすパラリンピック選手、40歳で安楽死

https://www.bbc.com/japanese/50150446

2019年10月23日

ベルギーの車いす陸上女子選手で、パラリンピックメダリストのマリーケ・フェルフールトさんが22日、安楽死を選んで死去した。40歳だった。

フェルフールトさんは、パラリンピックの2012年ロンドン大会で金メダル(T52・100m)と銀メダル(T52・200m)を獲得。
2016年リオデジャネイロ大会でも、銀メダル(T51/52・400m)と銅メダル(T51/52・100m)に輝いた。
フェルフールトさんは、筋力が次第に衰える進行性の脊髄(せきずい)の病気に苦しんでいた。治療は不可能とされていた。両脚に絶え間ない痛みと発作、しびれが起こり、眠ることすら難しい状態だった。

2008年に書類にサイン
安楽死はベルギーで法律によって認められている。フェルフールトさんは2008年、将来的に医師が生命を終了させることを認める書類にサインした。フェルフールトさんの故郷、ベルギーのディースト市は、フェルフールトさんが「22日夕、自らの選択に応じた」と声明を出した。
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「休むことができる」
フェルフールトさんは2016年、BBCラジオ5ライブの長時間にわたるインタビューで、「すごく、すごく気分が悪くなったり、てんかんの発作が起きたりします。痛みのあまり泣き叫びます。ものすごい量の鎮痛剤と精神安定剤、モルヒネが必要になります」と、聞き手のエレノア・オルドロイドに語っていた。
「たくさんの人から、どうしたらあんなにすごい結果を出せて、痛みと薬による筋肉の衰えを感じながら笑顔でいられるのかと聞かれます。私には、スポーツと車いすの競争が、薬のようなものなんです」

フェルフールトさんはリオ大会後、安楽死の書類にサインしたことについて、「これで休息できる感じ。もうたくさんだと思ったら、私にはこの書類がある」とBBCに話していた。
ディーストでは23日から、市役所に追悼の記帳所を用意するという。

【ツムラ】脳神経外科領域と漢方医学

http://medical.radionikkei.jp/tsumura/final/pdf/111019.pdf

2011年10月19日放送
領域別入門漢方医学シリーズ「脳神経外科領域と漢方医学」
八戸市立市民病院 救命救急センター 脳神経外科部長 川村 強

(5)脳卒中・脳腫瘍の入院管理と漢方
脳神経外科領域と漢方医学ということでお話してまいりましたが、最終回として脳卒中・脳腫瘍患者の入院管理と漢方についてお話をします。
 3 回目の「透析時不均衡症候群と漢方」のところでもお話したように、私は五苓散を「第三の抗浮腫剤」と位置づけています。当初、私は五苓散は「経口の浸透圧利尿剤」なのではないかと考えていました。
しかし、熊本大学の礒濱先生のアクアポリンの研究から浸透圧利尿剤とは異なった機序で抗浮腫作用をもつことがわかりました。
浸透圧利尿剤は血管内の血液の浸透圧を上げることによって、すでに脳組織に存在している浮腫部分から浸透圧勾配差を利用して水分子を血管内に引き戻し抗浮腫作用を表します。この時の水分子の移動は、アクアポリンを通して行われているものと考えられます。
一方、五苓散は浸透圧勾配差によって生じるアクアポリンを通しての水分子の移動を阻害します。つまり脳組織に病変が生じた場合、血管内皮から脳組織に水が移動するのを阻害することになる訳で、新たに脳浮腫が生じてくるのを抑制する方向に働きます。
まとめると
「浸透圧利尿剤は、既に存在する脳浮腫を改善させる」
「五苓散は新規に脳浮腫が生じるのを防ぐ働きをもつ」
と言うことができ、両者は互いに補い合う関係になる訳です。

五苓散は浸透圧利尿剤のように、電解質バランスを崩しません。また、浸透圧利尿剤やステロイド剤のように、脱水や高血糖を招くことはありません。こうした性質を利用して、脳血管障害と脳腫瘍における脳浮腫の改善を試みることができます。
まず、脳血管障害の脳浮腫に対する五苓散ですが、このシリーズの脳出血の透析管理のところで紹介しましたが単純に抗浮腫剤として利用できますすでに浸透圧利尿剤は充分量用いている、血腫除去術や外減圧術を行う程ではない、しかしもう少し脳浮腫を改善させたい、という場合に追加してみて下さい。
当科では更に高度な浮腫の場合は食事と関係なく、五苓散 2.5g2包を8時間ごとに投与しその脳浮腫に対し良好な感触を得ています。
次に脳腫瘍による脳浮腫ですが原発性・転移性に関わらず、浸透圧利尿剤よりもステロイド剤が有効とされています。しかしステロイド剤は浸透圧利尿剤と同様、高血糖を惹起するため既往症として糖尿病があるような患者には使いにくいという側面があります。こうした場合は、柴苓湯を試してみて下さい。柴苓湯は五苓散に小柴胡湯を加えた処方です。そして、小柴胡湯にはステロイド剤と同じような作用があります。
つまり柴苓湯には五苓散のアクアポリン阻害作用と小柴胡湯のステロイド様作用があり、糖尿病の患者には有効であると考えられます。すでに数例の使用経験がありますが、ステロイド剤の減量効果を期待できる印象を持っています。
(略)
 次に、遷延性意識障害の患者でよく問題となるのは,誤嚥性肺炎を繰り返すことです。抗生剤を投与すると解熱するが、中止するとふたたび発熱してくることがよくあります。
半夏厚朴湯には嚥下反射や咳反射の反応時間短縮効果が知られており、この性質を利用して誤嚥を防ぐ試みがなされています。特に脳幹部病変による球麻痺や、両側大脳病変に伴う仮性球麻痺を生じ得るような患者には是非使ってみて下さい。
(略)
三つ目は、脳幹部梗塞後の吃逆です。咽頭部刺激や迷走神経刺激、抗精神病薬や抗てんかん薬などを使っても止まらない場合があります。こうした場合に効果があるのが半夏厚朴湯です。微温湯に溶かして経管から投与してみて下さい。1時間以内に止まることが多いようです。
ここで一つお話しておきたいのですが、同じ半夏厚朴湯でも誤嚥性肺炎に対しては脳幹機能を促進させる方向に、吃逆に対してはその抑制方向に作用しています。
漢方薬が生体を中庸に近づける力をもっている典型的な例といえましょう。
ここで、吃逆が半夏厚朴湯で消失した例を紹介します。症例は 40 歳代の男性です。めまいとふらつきを主訴に近医耳鼻科から当院に紹介されました。MRI で延髄梗塞を認めたため、神経内科で脳梗塞の治療を開始しました。入院 4 日目から吃逆が出現。咽頭部刺激や眼球圧迫、頸動脈マッサージを試みましたが効果はありませんでした。そこでフェノバール内服を開始しましたがやはり効果はなく、更にリボトリールに変更しましたが著効しませんでした。吃逆は断続的に起こり、特に深夜帯に集中するため不眠にも悩まされADL が著しく低下し、リハビリもうまくいかないという結果になりました。
入院12日目に相談を受け、半夏厚朴湯の投与を指示しました。そうすると服用2時間ほどで吃逆は消失。
数時間でまた吃逆は始まりますが半夏厚朴湯ですぐに消失を繰り返し、結局入院15日目には完全に吃逆は消失しました。それと同時に、嚥下障害も軽快しております。
(略)
入院管理には脳神経外科疾患とは直接関係のない一般的な問題点がまだまだたくさんありますが、私が実際に困って漢方薬を用いた症状を中心にお話してまいりました。皆様の今後の臨床に少しでもお役に立てればと思います。尚、今回お話した中で服用方法が特筆されていないものは、全て 7.5g3分服で食前投与となります。


ほそく。
目黒動物医療センターによる、わんこOK漢方。
https://www.meguro-ah.com/med_oriental.html

当医療センターにおいて主に用いている漢方薬
1 桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)
使用目標は、中枢性や末梢性の神経障害がある場合に用います。
効能又は効果は、腰痛、座骨神経痛、頸椎神経異常、関節痛。
2 大柴胡湯(タイサイコトウ)
使用目標は、状態が良く、胸部痛、便秘がある場合に用います。
効能又は効果は、便秘気味で、上腹部の張り、鼓膜障害、頸部の痛み、胆石症、胆嚢炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、胃酸過多、急性胃腸カタル、嘔吐、食欲不振、肛門周りの炎症、糖尿病、ストレス性の神経異常。
3 十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)
使用目標は、比較的状態が良く、散発性あるいは、びまん性の発疹で覆われ、滲出液の少ない皮膚疾患に用います。効能又は効果は、化膿性皮膚疾患および急性皮膚疾患の初期、急性湿疹、指間炎。
4 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
使用目標は、比較的状態が良く、胸部痛のある場合に用います。
効能又は効果は、色々な急性熱性病、肺炎、気管支炎、胸膜炎などの補助療法、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、産後回復不全。慢性肝炎における肝機能障害の改善。使用上の注意は、間質性肺炎が生じる場合がある。定期的レントゲン検査が必要。肝硬変、肝がん、肝機能障害がある場合は注意。インターフェロン投与中の場合には注意。血小板低下がある場合は注意。
5 八味地黄丸(ハチミジオウガン)
使用目標は、高齢動物に頻用され、腰部および後肢の脱力・痛みなどの神経異常があり、排尿異常がある場合に用いられます。効能又は効果は、元気消失があり、尿量減少または頻尿、口渇のある腎炎、糖尿病、座骨神経痛、腰痛、膀胱カタル、高血圧、前立腺肥大。
6 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
使用目標は、熱性疾患では、急性期を経てなお頭頸部痛、関節痛、食欲不振などある場合に用います。
慢性疾患では、胸部の痛み、腹部の痛みを生じる場合に用います。効能又は効果は、全身の痛み、頭頸部痛、吐き気のある肺炎などの熱性疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆嚢炎・胆石・肝機能障害・膵炎などの腹部痛。
7 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
使用目標は、比較的状態が良く、上腹部の膨満感、蠕動運動亢進があり、嘔吐、下痢などある場合に用います。効能又は効果は、急性・慢性胃腸カタル、発酵性下痢、消化不良、神経性胃炎、口内炎、神経症。
8 五苓散(ゴレイサン)
使用目標は、口渇ならびに尿量減少の場合に用います。効能又は効果は、浮腫、ネフローゼ、急性胃腸カタル、下痢、嘔吐、三半規管異常、胃内停水、頭頸部痛、尿毒症、熱中症、糖尿病。
9 黄連解毒湯(オウレンゲトクトウ)
使用目標は、興奮気味で、精神不安、分離不安症などの精神神経症状がある場合に用います。
効能又は効果は、吐血、下血、高血圧、心悸亢進、皮膚のかゆみ、胃炎。
10 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
使用目標は、あまり良くない状態で、神経的疾患があり咽頭に炎症がある場合に用います。
効能又は効果は、不安神経症、神経性胃炎、咳、咽頭・喉頭部分の炎症、神経性食道狭窄症。
11 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
使用目標は、喘鳴、呼吸困難、鼻症状を生じる場合に用います。効能又は効果は、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支炎。使用上の注意は、胃腸が弱い動物、中齢以上の動物へは長期投与は注意。
12 防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)
使用目標は、元気消失と浮腫など全身性の循環不全がある場合に用います。効能又は効果は、尿量減少で後肢に浮腫をきたす、腎炎、ネフローゼ、陰嚢水腫、肥満、関節炎、筋炎、浮腫、皮膚病。
13 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
使用目標は、一般に貧血傾向があり、浮腫、腹痛などある場合に用います。効能又は効果は、貧血、元気消失、ホルモン異常、甲状腺機能亢進症、慢性腎炎、心臓弁膜症。
14 桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
使用目標は、やせていて、神経過敏または精神不安がある場合に用います。
効能又は効果は、尿漏れ、神経衰弱、心悸亢進。
15 加味逍遙散(カミショウヨウサン)
使用目標は、元気消失、精神不安、などの精神神経症状がある場合に用います。
効能又は効果は、元気消失、ホルモン異常、甲状腺機能亢進症。
16 麻黄湯(マオウトウ)
使用目標は、熱性疾患の初期で、頭頸部痛、発熱、腰痛、四肢の関節痛などがありに用います。
効能又は効果は、風邪症状(初期)、関節リウマチ、喘息。使用上の注意は、長期投薬は控える。(特に高齢動物)心疾患、高血圧がある場合は注意。降圧剤、交感神経作動薬との併用は注意。
17 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
使用目標は、興奮、下腹部に抵抗・圧痛がある場合に用います。
効能又は効果は、子宮ならびにその付属器の炎症、子宮内膜炎、性ホルモン異常、甲状腺機能亢進症、腹膜炎、打撲、睾丸炎、肛門周りの炎症。使用上の注意は、分娩促進作用あるので妊娠中は注意。
18 麦門冬湯(バクモンドウトウ)
使用目標は、激しい咳、発作性の咳が頻発する場合に用います。
効能又は効果は、湿性の咳、気管支炎、気管支ぜんそく。
19 人参湯(ニンジントウ)
使用目標は、食欲不振、胃内容物停滞、下痢など胃腸機能が低下している場合に用います。
効能又は効果は、急性・慢性胃腸カタル、胃アトニー症、胃拡張、萎縮腎。
20 猪苓湯(チョレイトウ)
使用目標は、頻尿、残尿感、排尿痛、血尿などの排尿障害がある場合に用います。
効能又は効果は、尿道炎、腎炎、腎結石、排尿痛、血尿、腰から尾側の浮腫、下痢。
21 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
使用目標は、病後、術後あるいは慢性疾患などで元気消失している場合に用います。
効能又は効果は、病後の体力低下、元気消失、食欲不振、貧血。
22 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
使用目標は、元気消失、食欲不振がある場合に用います。
効能又は効果は、熱中症、病後の体力低下、食欲不振、肛門周りの炎症、脱肛、子宮疾患、陰茎疾患。
23 六君子湯(リックンシトウ)
使用目標は、胃腸機能が低下して、食欲不振、胃運動低下がある場合に用います。
効能又は効果は、胃炎、胃アトニー、消化不良、食欲不振、腹部痛、嘔吐。
24 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)
使用目標は、咳が強く、口渇、全身に熱感などがあり、喘鳴、呼吸困難がある場合に用います。
効能又は効果は、喘息、気管支ぜんそく。
25 防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
使用目標は、便秘があり、腹部膨満のある場合に用います。
効能又は効果は、高血圧の随症(心拍数増加、頸部痛、興奮)、肥満、浮腫、便秘。
26 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
使用目標は、急な筋肉(後肢)の痙攣性疼痛ならびに腹部疝痛がある場合に用います。
効能又は効果は、急激に起こる筋肉のけいれんを伴う疼痛。
使用上の注意は、低カリウムを起こす場合に注意。偽アルドステロン症が起こる場合に注意。
27 抑肝散(ヨッカンサン)
使用目標は、ストレスなどの心身障害、頭部神経障害などある場合に用います。
効能又は効果は、興奮、分離不安症、沈鬱で元気がない、痴呆症。
28 葛根湯(カッコントウ)
使用目標は、比較的状態は良く、炎症性あるいは疼痛性疾患の初期、あるいは慢性期の急性増悪期に用います。効能又は効果は、発熱していない風邪、熱感を持つ疾患初期、炎症疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、頸部痛、神経痛。使用上の注意は、血圧上昇作用。狭心症、十二指腸潰瘍ある場合は注意。(特に高齢動物)高血圧、前立腺肥大がある場合は注意。胃腸の弱い動物、神経過敏がある場合は注意。
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