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2014年4月
ドクターサロン58巻5月号
2014年4月
ドクターサロン58巻5月号
獨協医科大学越谷病院神経内科教授 宮本智之 (聞き手 山内俊一)
山内 宮本先生、こむら返りというのは私も糖尿病を専攻している関係でしばしば遭遇する訴えなので、なかなか困ることも多いのです。まず神経学的にいって、こむら返りの原因、あるいはメカニズムといったほうがいいのかもしれませんけれども、このあたりはどうなっているのでしょうか。
宮本 こむら返りは不随意に突然起こる有痛性の骨格筋の収縮です。特にふくらはぎ(腓腹部)、太もも(大腿の伸筋・屈筋群)、あるいは足の細かい筋肉(足固有の筋)に多く生じます。生理的なものもあるのですけれども特に運動後とか運動中、あるいは一番多いのは睡眠中に生じることが多いようです。
先生がおっしゃったこむら返りの原因というかメカニズムですけれども、運動ニューロンの過剰な興奮が引き金となって病的な筋収縮が起こると推察されています。そこで過剰な筋収縮が起きて血流が阻害されて筋の虚血を起こしているので、痛みとか、そういうものを伴うということが推察されます。
山内 過剰な筋収縮に伴って血流障害、これは当然電解質異常なども伴いやすいと思われますので、そういったあたりが全般的に来ているのだろうなというところですね。先ほども少しお話がありましたが、運動中に起こりやすいというのは、よくサッカー選手などでも見られますね。ただ、一方で安静睡眠中にも多いという、全く別の環境でも起こりやすいというところがあって、このあたりはわかりにくいところなのでしょうか。
宮本 こむら返りの約7割の方は夜間に経験するといわれていまして、夜間頻回なのはふくらはぎの筋の灌流圧とか、あるいは細胞膜の電解質の移動が横になったときに変化するのではないかという話もあります。
山内 電解質にもいろいろありますが、主因、主犯とみなされている電解質となりますと何なのでしょうか。
宮本 治療の経験からいいますとナトリウムチャンネルをブロック、神経の興奮を抑制するような作用がある薬で抑えられることが知られていますので、ナトリウムチャンネルの異常が神経の興奮を起こしているのではないかと推察されます。その他に自己免疫の病気で全身性のこむら返りを起こすような神経の難病があるのですけれども、そういったものはカリウムチャンネルの異常も指摘されておりまして、そういった特殊な病気もあります。
山内 ナトリウムに関してですがこむら返りを起こしやすい方に特に低ナトリウム血症が目立つという、そこまでのエビデンスはないとみてよいのでしょうか。
宮本 原因の一つには低ナトリウム血症の方で起きやすいということがあるのですけれども、こむら返り自身が種々の疾患で起きまして特に低ナトリウム血症の方々に多いかというと、そうでもないようです。
山内 こむら返りを一度も経験したことがないという方も珍しいと思われますが、高齢者に多いとみてよいのでしょうか。
宮本 特に高齢者では女性に多いともいわれています。65歳以上の約6割の患者さんに夜間こむら返りの経験があるということが報告されております。
山内 経験的には毎日のように起こすというと病的といっていいのかわかりませんが、少し注意したほうがいいなという感じでしょうね。
宮本 そうですね。毎日起こる方は予防が非常に問題になるかと思います。
山内 さて、実際に起こったときの治療の話に移りますが、発作時はむろん非常に痛みが激しいわけですがこれは皆さんストレッチで瞬間に治ることが多いことをよくご存じです。ただ、これはあくまで屈筋群のほうが侵されたときだけで、ストレッチできないような筋肉でも起こることがありますね。
宮本 はい。
山内 こういった場合はどうやったらいいのかということですが。
宮本 確かに大腿の屈筋群あるいは、ふくらはぎの筋収縮によって底屈状態が持続した場合には、その筋肉を伸ばすということが治療になると思うのですけれども、例えば前脛骨筋などの下腿の前のほうの筋肉がこむら返りする場合もあると思うのです。そういった場合はストレッチは非常に難しいのではないかと思います。
山内 そういう場合は結局、そばに薬剤を置いてそれでおさめるというかたちになるのでしょうね。
宮本 対症的に過剰な興奮を抑えるような薬物を用いるしかないのかなと思います。
山内 具体的にはどういった薬剤を用いていらっしゃいますか。
宮本 こむら返り自身にエビデンスの高い薬というのは実際、保険適用上もないと思うのですけれども、ただ、経験的にいろいろな薬が試されています。一つは抗てんかん薬の一種を用いたり、あるいは日本では漢方薬が使えるので経験的に漢方薬を使って急場をしのぐということはされていると思います。
山内 具体的に抗てんかん薬もいろいろありますけれども、よく先生がご使用されるものとしてはどういったものがありますか。
宮本 実際てんかんの患者さんに対して用いる量ではないので少ない量なのですけれども、ただ、副作用もあるので、比較的少ないものを選ぶ。それは患者さんと相談しながらになるのですけれども例えば最近ですと、ガバペンチンという薬を用いることがありますし、あるいはクロナゼパム、カルバマゼピン、フェニトインといって昔からの抗てんかん薬も効果があるといわれています。
山内 それは起きてからということですね。
宮本 こむら返りに対しての予防投与というのは実際多くはされていないと思いますので、先ほど先生がおっしゃったように、毎日起きるような人に関してはそういった予防投与を行うこともあるかもしれませんが時折経験する人に関しては急場をしのぐような頓挫療法というか、そういったことになると思います。
山内 漢方薬としてはどういった薬が使われるのでしょう。
宮本 日本ではそういった治療選択があるので例えば芍薬甘草湯、五苓散が比較的有名で使われていると思います。
山内 これは1回分の頓服で出されるものなのでしょうか。
宮本 そうです。こむら返りが発症したときに芍薬甘草湯を頓服でのむ場合もあるし、頻度の高い人は就寝前に予防投与するというケースもあると思います。
山内 こむら返りは高齢者に多いのですが片一方で有名なのが、妊婦さんがけっこう悩まされるケースもあります。妊婦さんなどですと薬もなかなか、今言ったようなあたりですと使いづらいものも多いのでしょうね。
宮本 そうですね。
山内 安定剤的なものとか筋弛緩薬とか、そういったものはいかがなのでしょう。
宮本 一般の高齢者では安定剤のような薬とか筋弛緩薬を用いる場合もあると思うのですけれども、妊婦さんにはなかなか用いにくいと思います。妊娠を契機に起きる原因としてはマグネシウムとかカルシウムの低下ということが報告されていますので、強いエビデンスはないのですけれども少しマグネシウムを投与すると妊婦さんのこむら返りにはよいという報告もあります。
山内 とりあえず夏場などですと脱水補正といったものもありますから、特に日中を中心にしてスポーツドリンクなどで電解質を補うことも予防的には意味があるのではないかと考えてよいでしょうか。
宮本 おっしゃるとおりだと思います。血液循環量、血漿の循環量も非常に関連しているということがいわれていますので日ごろからそういった脱水予防、夏場もそうですけれども特にこむら返りを繰り返す人は夜間にトイレに行くこともあるかもしれないですけれども、スポーツドリンクなどを飲まれるといいと思います。
山内 夜起こすような方も例えば夏であれ冬であれ、最近室内の暖冷房がきいていますのでああいったものなどで思わぬところで足が非常に冷えてきたとか、そういう機械的な刺激が原因になっていることもありうるとみてよいですね。
宮本 はい。温度管理も非常に重要なことでありまして先生がおっしゃったように、足が冷えてしまうというのも誘因の一つになりますので、温度管理は非常に気にかけていいことだと思います。
山内 ありがとうございました。
きゃばりこさんの発作痛中の左前肢ビビビ(15秒くらいから)もこむら返りなんですかね?
ガバペンも五苓散も飲んでてこうなっちゃったら芍薬甘草湯の出番かっ!?
ストレッチは無理だから虚血って痛いのなら温めればいいのかな?
でもホリホリして自分でまぎらわせてるようだし、それがストレッチ的なことになっているのか?
確かに床を引っ掻く時、前肢裏側の筋に体重がかかって伸ばせてるよね。
きゃばりこさんの発作痛中の左前肢ビビビ(15秒くらいから)もこむら返りなんですかね?
ガバペンも五苓散も飲んでてこうなっちゃったら芍薬甘草湯の出番かっ!?
ストレッチは無理だから虚血って痛いのなら温めればいいのかな?
でもホリホリして自分でまぎらわせてるようだし、それがストレッチ的なことになっているのか?
確かに床を引っ掻く時、前肢裏側の筋に体重がかかって伸ばせてるよね。