木曜日の夜に、「オツルミズいきますか?」と、連絡が入る。
週末は予定が2つも入っているのでムリです。残念でした。またこんど。ぜひよろしく。
って、答えよ…
。。。。。
いや。
ここで断ったらたぶん、一生オツルミズのチャンスは回ってこない。 
「また今度」はないのだ。
山屋休業中の間もずっと気になっていたオツルミズ。
。。。。。
うーん
。。。
よし。
一生に一度の不義理をして、予定ぜんぶキャンセルしてオツルミズ行こう。
オツルミズは他と違うのだ。

と、変心するのに10秒かかったかどうか…。
予定していた相手に謝り倒して、オツルミズの方には、行きますと、返事する。
不義理した皆さんごめんなさい。
あなたよりオツルミズが大事だったんです!

今回は4人パーティだそうな。
4人もいれば心強い。
が、リーダーHらの氏によれば、二人は体力、クライミングは問題ないが、経験は少ない人だと。
引っ張り上げてもらう、ってワケにもいかないらしい。。

道の駅 雪あかりで前夜集合して、登山口へ向かう。
水無川右岸の道は途中で通行止めになるが、左岸のサイクリングロードを伝って越後三山自然公園の駐車場まで入れた。
ツイてたな。

林道を10分も歩くと、オツルミズの神楽滝が見えてくる。
今日はあれを登るのだ。
6月に来た時は絶望的に見えたが、今日は登るのだ。
出合いの橋を過ぎた所から、神楽滝の巻き道にはいるが、結構悪い。
ところどころクサリが下がっていたり、ロープが下がっていたりするが、これがないと行けないくらい、悪いです…

神楽滝下に出ると、前の2人パーティが登攀中。こちらもロープを出して身支度する。
まだ上が抜けきっていないので、セカンドがビレーしている下あたりまで、ロープを引きずって上ってみる。
ここはビレーが無くてもいける傾斜です。
小テラスにラッペルリングの付いたペツルボルトがあって、ここに全員集合して登攀開始。
5mぐらいでボルトがあるが、その先は確かな支点は取れない。
スタンス、ホールドは大まかだが、ほぼ濡れていて、グレードはIII〜III+位だがプレッシャーがかかる。
中段から落ち口の方へ抜けるラインも見えるが、右寄りのブッシュへ逃げる。
しかし灌木帯に届いた途端にロープ一杯になり、なんとも頼りない木で後続を引き上げることになる。
くわばらくわばら。落ちんといてちょ。

滝上は、すぐ深い釜を持つ5m滝を右から小さく巻き。
その後も釜と小滝が連続する。
泳ぐような釜もあり、全身ずぶ濡れになるが、標高が低いせいか、それほど寒くないのが幸い。
水温も思ったよりは高い。
が、その分思ったよりヌメる。
滝を5、6本登ると、高さ20メートルぐらいありそうな雪の塔が現れて、その先が激狭ゴルジュの入り口。
幅1mの割れ目の中に滝が3段か4段。
右岸の岩場から巻いてゴルジュ一式高巻きしている記録が多いらしいが、リーダーはそんな気はさらさらないらしく、どんどん突入して行く。

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確かこの滝でいったんゴルジュ抜け
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抜けると15m滝。右壁から登るが、悪い。
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滝上は、次の、裏がエグれたような15m滝の、釜の縁みたいなところ。
滝は絶望的で、左岸のカンテ上をさらに50m一杯伸ばして、さらにブッシュに掴まりながら尾根上を進む。
すぐ小さな壁に行き当たって、越せば越せるが、行くと沢からどんどん離れてしまう。
左へ下り気味に巻くと、木の根に残置スリングがあって、20mの懸垂で沢に戻る。
これで滝2,3本巻いたはず。
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その上でもう一本か二本滝を越えると、沢は広がって、サナギ滝が間近に迫る。
とは言え、滝が途切れることはなく、右向きの15m、幅広の30mと続く。
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ほとんど連続しているので、サナギ滝の下部のようにも見える。
と言うか、ここまで沢全体が滝と言えば滝、ゴルジュと言えばずっとゴルジュです。
30mを左の沢状の草付きから巻くと、サナギ滝下に出る。
4段?5段?200m。
たしかにすごい景色です。
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ここまで、6時間ぐらいかかっている。
リーダーに引っ張ってもらってとにかく上がって来たが、体力的にもきつくなってきた。
取り付いてから、常に緊張と、フルパワーのクライミング。 と、藪。
巻きも厳しい。
癒されるところは一個もない。
しかしサナギ滝を越えてさらに上の大滝も越えないと、良い泊り場がなく、明日の下山もおぼつかない。まあとにかく行くしかないのだ。 
右岸の踏み跡から藪に入って、踏み跡を辿る。
が、草付から岩場に入ったあたりで、どうもロープ無しでは突っ込めない斜面に行き当たる。
右へ巻くか、真っすぐ登るか。
どっちにしてもロープが欲しい。
左に寄って上がりすぎているようで、ルートがちょっと違う気がする。
ハーケンを打ってロープを出す準備をしていると、後ろからそろそろ時間切れの声がかかる。。
確かにもう3時近くて、ここを越えても大滝まではまだまだ時間がかかる。
戻るなら、ブッシュで懸垂支点が取れるここが戻り時。 
滝下には泊まれるスペースはある。
ここは滝下まで戻って、わずかな平地で泊まるしかないか。
すれば、明日は撤退しかない。…
残念だが、今回はここまでです。
ハーケンを打ち直して、スリングとカラビナを残置して撤退開始。
クライムダウンの後25mの懸垂、その後藪を戻って滝下に戻った時にはもう完全に夕方で、急いで流木を集めて宴会準備。
明日どうやって撤退するかも心配だが、とにかく今日はここで一休みできる。
酒もたっぷりある(!)
意外と湿った木にやっと点火して火が起きると、濡れた服も乾いてようやくリラックスムード。
天気は相変わらずパッとしないが、雨にはならないはずなのだ。
酒が回って腹もくちくなると、思い思いに寝具にくるまって、適当にごろ寝する。
空は晴れたが、少し風が出る。
時々滝の飛沫が飛んでくる。
夜半、月が出て明るくなると、すげーところで寝転がってんなーと実感する。
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行けなかったけど、これはこれで良いな・・。

翌朝またちょっと雨がパラついたりもするが、天気は心配なさそうです。
ゴルジュを下るのはとても無理そうなので、いきなり右岸の藪に入り、ずっと藪の中を巻き下りる。
一部踏み跡があるようにも見えるが、すぐ消えて、足元の悪い藪の中を下りトラバース。
帰りも緊張が続く。

途中から懸垂下降も交えて直下降して、ゴルジュ入口の雪渓の真上にでる。
この辺が沢ヤの感覚か。
なかなか真似できない。
でも最後の懸垂の着地点は、その雪渓と岩場の間のシユルンドで、片足岩片足雪でロープ回収せんとならん。。
ぜんぜん癒しの空間じゃないなー。
もう15mほど、雪と岩の隙間をクライムダウンして、ようやく川原に降り立つ。
終わったわけではないがひと安心。
そのあとは、またずぶ濡れになって小滝群を下り、神楽滝を2ピッチ懸垂下降して、悪〜い巻き道を戻って、出合いの林道に降り立つ。
下りも気の抜けるところは、ぜんぜん無い。
オツルミズは、やっぱり、というか思った以上にスゴいとこでした。
ずっと続く緊張感は、沢と言うよりマルチピッチの岩壁に取り付いた感覚。 
一泊で抜けるのはけっこうしんどい。
かなりなリスクを負わなければならない。
個人的には、夏の間重荷で歩いていなかったせいで、体力的にも厳しかった。
まあ力が足りなかったです。

次の機会があれば、体調ピークの状態で行かねば。
夏もサボらず、鍛えとかんとなー。