aamall

2008年07月31日

出会い

 それから度々、エレンの修練中に彼女は来るようになった。
 アローニアはエレンの修練が終わるくらいの時間にやってきてはエレンと語り、去っていった。
 修練は、大抵1人で行っているが、彼女の側近や部下の兵士が訪れたりする事も有る。
 そして、「彼」。エレンの双子の弟。レイル。
 エレンと違って戦闘能力は低いものの、知力、調査能力に非常に長け、地上、天界、果ては魔界の事まで彼の知らない事はないという天才。天使としての霊力も抜群に高く、大天使の長であるミカエルの秘蔵っ子とされていた。
 そのレイルが、たまたま修練後にエレンといた時に、アローニアがやってきた。
「あら、アローニア!」
「エレン、ごきげんよう。そちらは…。」
「私の弟よ。レイル。ミカエル様の神殿で働いているの。」
アローニアは、反射的に目を伏せて礼をした。初対面だが、彼と目線を合わせてはならないと、直感が教えていた。
 そんな彼女をレイルはじっと見つめた。
「エレン。こちらは、どこの天使?」
「どこだったっけ?」
「あ、南の方にある神殿ですわ。」
「南?ラファエル様の神殿ですか?それとも宝物殿の方ですか?どちらでもお見かけした事がないですね。つい最近どちらにも伺ったばかりですが。」
「私は、神殿につとめてると言っても外に出ている事も多いので…。」
「そうですか…。」
 アローニアは調べればすぐ分かるような嘘でとっさにごまかしてしまった。
 戦闘能力は高くて魔力は感じ取れるが割と素直で人をあっさり信じてしまうエレンと違って、この男にはどうせ何をいってもごまかしはきかないだろう。実際、明らかに疑いをこめた目で自分を見ている。なら、レイルを騙す事は最初から諦めて、エレンさえ騙しきれればいい。アローニアはそう見てとった。
「何よ、レイル。アローニアを疑うような事を。こんなとこに敵が来れると思う?」
レイルはエレンをちらと見て、軽くため息をついた。
「まあ、エレンはいつも1人だからな。俺の関わる事でもないし。」
 それ以後、度々アローニアはレイルと会うようになった。自分を疑っている事は重々承知していたが、レイルは大天使ラファエルの側近や宝物殿の管理官の天使を1度も連れてきた事はなかった。ミカエルの側近の彼ならそんな事簡単だし、彼らとここで会わされたら1発で自分の嘘が露呈するというのに。
ある日、3人でいる時、エレンが側近に呼ばれて飛び立った事があった。
 アローニアは言った。
「…分かってるんでしょう、私が上級天使じゃないって。何で黙っているのよ。」
「別に?最初に言った通りだよ。エレンには友達なんて今までいなかったんだ。例え天使でなくても、エレンは喜んでるんだよ。それに、もしあいつに何かしたら、その場であいつに消される。そう思うんだな。」
アローニアはため息をついた。
「分かったわよ。ただ、私は彼女を好きじゃないわ。」
「じゃあ、保険はかけとくか。」
言うなり、アローニアはレイルに腰を引き寄せられ、唇を吸いつけられた。
 アローニアは時間が止まったかと思った。
 信じられない。なのに、不思議とアロ−ニアは嫌ではなかった。
ほとんど気絶しそうなまでに唇を吸われ、唇を離された時は全身の力が抜けていた。
レイルは勝ち誇った顔で
「じゃあな。」
といって、去っていった。
「…自分に惚れさせて、計画を止めさせようって…?馬鹿にしないでよね…。」
計画をやめる事はできない。できないが、彼女の目からは涙が溢れていた。
でも、計画は、どうしても止める事は出来ないのだ。

例え自分が消されたとしても。

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2008年07月24日

1.償い

「私はあなたを守ります。どんなに時が経って、どんな姿になったとしても…。それが私の償いだから…、」


 ここは天界の果てにある門の前。通常、天界は神と天使と、許された人間しか入る事は出来ない。
だが、この門の前までは悪魔も来る事ができる。
「どうして殺さないの?私はあなたの敵よ。悪魔は全て殺す、それがあなたの仕事でしょう?」
「…。」
 悪魔の娘、アローニアは目の前にいる天使からの裁きを待っていた。
 それだけの事をしたのだ。
 目の前にいる天使、エレンは上級天使で、人間界と天界に来ようとする悪魔を滅するのが仕事だ。それも、
18にして天使の兵をいくつも率い、一瞬で100匹の悪魔を消すと言われた天才。
 彼女を倒せば凄い武勲が手に入り、魔界では終世英雄と詠われるだろう。
だが、彼女は別に名誉が欲しくて彼女に近づいた訳ではなかった。彼女も魔王の側近の中で最強を誇り、エレンと互角に戦えるくらいの実力を持っていたが、そんな武勲が欲しければ最初から彼女と直接戦えば良かった。
アローニアの目的はただ1つ、彼女を傷つけたかった。
自分の義姉でありながら、大勢の部下に愛され、大した努力もしていないのに奇跡のような実力を持ち、天界で伝説と言われていた杖(ロッド)を武器に持ち、「彼」にまで愛されていて、戦いの日々の中でいつも笑っている彼女に、溢れんばかりの涙を流させてやりたかった。
 それを見られたら死んでもいいと思う程、彼女に憎しみを持っていた。
 アローニアは邪気を消して羽の色を真っ白くし、天使のように変身する事が可能だった。そして、その姿であれば普通はできない所業だが、悪魔とはいえ堕天使とのハーフである彼女には可能だった。
さすがのエレンにも、見破れない程完璧だった。いや、流石に彼女の上司である大天使、ガブリエルにはすぐバレるだろうし、多分「彼」にはバレていただろうが、そこはエレンのまだ未熟な点だった。

 アローニアは天界に出かけ、神殿の側で毎日の修練中のエレンに話しかけた。
「上級天使、悪魔討伐隊第1兵団のエレンですわね?」
この辺りでは見かけない顔の天使だと思ったが、エレンは笑いかけた。
「ええ。あなたは?」
「申し遅れました。私、上級天使のアローニアと申します。修練中に申し訳ございません。」
「いいのよ。疲れたから少し休もうかと思ってたから。」
エレンは振り回していたロッドを下げた。
「で、何かしら?」
「いえ、先日天界の前で天使を待ち伏せして殺そうとした悪魔を討伐された話をお聞きして、ぜひお話を伺いたいと思いまして。」
「ああ、あれ?全くふざけてるわよね。大した悪魔でもなかったからあの天使がやられる前にすぐに消せたけど。」
 その悪魔は彼女の信頼していた仲間の1人で、アローニア程ではないにしろ相当な上級悪魔だった。むしろエレンクラスでなければ討伐は不可能と言える程の悪魔だった。
「ほんとに悪魔って卑怯で残虐よね。この世から全ての悪魔が消えればいいのに。」
いかに寛大であるかが大事な天使と違って、いかに残虐であるかが評価のポイントになる悪魔にとってこれはむしろ最高の褒め言葉だった。ただ、最後の言葉はアローニアには許し難かった。
 ただ、エレンが悪魔を憎む理由も誰もが知っていた。上級天使であった自分の母親が自分を産んで間もなくエレンを捨てて悪魔と通じてしまったのだった。
 母親は天界を追われた。行き場のなかった赤ん坊のエレンはその圧倒的な潜在能力を買われ、天界の戦力対象としてガブリエルに拾われた。エレンにとっては師であり上司であるガブリエルが母親がわりであった。
「でも、悪魔を消すのに躊躇とかされた事は有りませんの?」
エレンはびっくりした顔で叫んだ。
「ある訳ないじゃない!それに、悪魔は消されたら浄化されて人間になるのよ?私たちは彼らにとってもいい事をしているのよ。」
アローニアは作り笑顔で笑った。
「ねえ、あなたはどこの所属なの?見かけない顔だけど。」
「私は兵士ではありませんもの。少し遠くの神殿に勤めてますの。」
「へえー。ねえ、じゃああまりこちらには来ないの?」
「ええ。」
「じゃあ、また来たら教えて。私いつもここで修練してるから。」
その時、エレンを呼ぶ声がした。
「あ、ごめんなさい。じゃあ、またね。」
「ええ、また。」
エレンは声のする方に飛び立った。




alice500 at 22:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!
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