2005年01月25日

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 出張で長野県大町市へ。作家の丸山健二さんをご自宅に訪ね、取材するという目的だ。

 「あずさ」に乗って松本を経由し、ローカル線で、という経路。ちょっとした旅気分が味わえた。

 丸山さんといえば、綿矢りさ、金原ひとみが芥川賞を受賞したとき、それまでの最年少記録を持っていた丸山さんが「37年間最年少受賞者といわれ続けて、うんざりした」とコメントしていた。いかにも、あの『夏の流れ』『正午なり』『ときめきに死す』の作者だなあ、と思った覚えがある。

 今回の取材は、「日本カメラ」次号の巻頭ニュースコラムのためのもので、丸山さんの写真集『荒野の庭』(求龍堂)についてお話をうかがうため。丸山さんは、この十数年ほど、小説を執筆するかたわら、日に数時間を庭造りに費やしているという。すでに2冊の自作の庭の写真集が出ている。しかし、『荒野の庭』には、これまでの丸山さんの庭についての本にはなかった力強さがある。丸山さんの小説世界に通底する求道的な厳しさと、盛りの花が持っているまろやかな色気が好対照となっている。

 事前に、丸山さんの最近の作品を数作読んだのだが、なかでは自伝的長編エッセー『生者へ』(新潮社)が面白かった。文学を愛する父を憎んで育った著者が初めて書いた小説で芥川賞を取ってしまった皮肉。二十代で東京の生活と文壇に見切りをつけて長野に戻り、地方の人間関係と馴れ合うことを拒絶しつつ、行動派作家としてバイクやジープに夢中になった壮年時代。そして、現在、作家として文学への挑戦を続けながら、庭造りに精を出す日々。厳しくもカッコイイ自伝である。

 そして、丸山さんの著書の中にある厳しい求道精神や、俗なる者への拒絶を読むと、ご本人はさぞや偏屈でとっつきにくい人かと、やや恐れつつご自宅を訪ねたのだが、杞憂に終わった。こちらのつたない質問にも丁寧に答えてくださった上に、小説について、写真について、ざっくばらんにお話してくださった。その場で電話をかけて、動物写真家の前川貴行さんをご紹介くださったことには、感激してしまった。

 というわけで、実に楽しい時間をすごさせていただいた。しかし、人あたりのいい、あのにこやかなお顔で、『生者へ』のような反逆の精神をお持ちだと思うと、なんとも不思議な気分になる。

 中島らもさんが、『なれずもの』の対談のなかで「荒魂」と「和魂」というお話をしていたけれど、今日は、丸山さんの「和魂」に触れる機会だったということなのだろう。

*お知らせ
 『荒野の庭』刊行記念写真展が東京新宿の紀伊國屋画廊(紀伊國屋書店新宿本店3F)で2月10日(木)から15日(火)まで開かれる。2月12日(土)には丸山さんのサイン会もある。上記リンク先参照のこと。

(08:29)

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1. 丸山 健二  [ PukiWiki/TrackBack 0.1 ]   2005年04月06日 00:03
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2. 丸山健二  [ PukiWiki/TrackBack 0.1 ]   2005年04月11日 17:20
丸山 健二 † 【まるやま けんじ】 長野県生まれ 1943- 丸山 健二 『夏の流れ』 『穴と海』 『アラフラ海』 『イヌワシのように』 『ミッドナイト・サン 新北欧紀行』 『さらば、山のカモメよ』 『ときめきに死す』 『高倉健 独白 写真...
3. 丸山 健二  [ PukiWiki/TrackBack 0.1 ]   2005年04月12日 19:09
丸山健二 † 【まるやま けんじ】 長野県生まれ 1943/12/23- 丸山健二 『夏の流れ』 『穴と海』 『アラフラ海』 『イヌワシのように』 『ミッドナイト・サン 新北欧紀行』 『さらば、山のカモメよ』 『ときめきに死す』 『高倉健 独白 写...
4. [Ogura]丸山健二  [ memo ]   2005年05月31日 19:23
-■丸山健二さんにインタビュー --マルケンにインタビューされた方のブログを2chのスレで発見しました。いいなぁ。マルケンの庭が見てみたい。
5. 今日もいい日で  [ はろーあっぷこむ ]   2006年03月07日 22:33
こんにちは。興味深く読ませていただきました。それにとても奇麗な画面ですね。とても勉強になりました。また読ませていただきたいと思います。

この記事へのコメント

1. Posted by 水無月(名張市)   2005年02月28日 10:37
 丸山健二の写真集の全てを観てきています。『風の使途・・・』『世界暴走・・・』の世界各地を当時若かりしカメラマンと一緒に撮影し、文章を書いたものの多くがそれであります。そして、作庭ものである『安曇野の白い庭』『夕庭』『ひもとく花』。今回の続編である『荒野の庭』は、次回の新作小説を待つ気分で拝見していました。
 しかし、わたしは『夏の流れ 丸山健二初期作品集』の文体の小説を期待して写真集を観ていました。丸山氏が敬愛する、室町時代の大和絵「日月山水屏風」をモチーフ等をした大長編小説を書いてほしいと熱望しながら・・・。中期の『月に泣く』のようなものをスケールアップしたものでもよいかなぁと思いながら・・・。
2. Posted by タカザワ   2005年03月04日 08:57
水無月さま
コメントありがとうございます。
不勉強で、丸山さんに指摘されるまで写真集を出されていたとは知りませんでした。最初の写真集を出した顛末もうかがいましたが、オリンパスOMシリーズのCMに出ていらしたとか?
『荒野の庭』は『ひもとく花』とは一味も二味も違って、「ガーデニング」の域を越えてドラマチックでしたね。初々しさも感じたし。
3. Posted by ぎゃおす   2006年03月18日 23:43
オレが丸山に引導を渡す。
4. Posted by ハージェスト   2007年04月22日 07:19
かつてエッセイ「流れて撃つ」で
自らカメラも担当してアメリカを語った丸山氏。

自宅の庭造りに夢中という話を聞いた時、
まさか盆栽いじりするほど老け込んだワケでは?
と一瞬、驚いたのですが、
今回、プロのカメラマンを使用したもの、
そしてデジカメ?で再挑戦した2種類のエッセイ。
庭とか植物は門外漢の私なので、
時間をかけて味わいたいと思います。

丸山氏自身、もう小説以外の仕事には
なるべく手を出したくない意向のようでしたが、
いつも痛快であり、手厳しい辛口な発言は
読み手の期待感を一切無視し続けても
光り続けるでしょう。

5. Posted by hitomi   2007年11月14日 21:11
はじめまして、丸山さんの庭の本と作業に圧倒されました。有難うございます。

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