改憲論議の狙いは (2)


 
新潟日報7月16日付3面に「将来的には9条改憲」の見出しがありました。安倍首相が長崎のTV局のインタビュ―で発言したとのことです。基本的人権の尊重と同じく、現憲法の柱の一つである恒久平和主義についての発言を、選挙直前からこれまでのキー局のTV党首討論会で発言せず、わざわざ地方TV局の、それも批判される恐れの少ないインタビュー形式で発言するなど、全く政権党の党首とは思えません。これは裏返せば公に討論したくない改憲案を持っているということです。

同じく16日付の東京新聞「こちら特報部」では「平和憲法に真っ向背反」の見出しで、石破幹事長のBS番組での発言(421日放映)を取り上げています。9条を「改正」して自衛隊を「国防軍」にし、「国防軍に審判所を置く」(自民党の改憲案9条5項)とあります。石破幹事長は自衛隊法で隊員が上官の命令に従わない場合懲役7年が刑の上限であることが不服のようで、「出動せよ」と言われたときにいやだと言えないように「従わなければその国の最高刑に死刑がある国なら死刑、無期懲役なら無期懲役~」と発言しています。「そんな目に遭うくらいなら、出動命令に従(うほうがマシだと隊員が思うように)~」とも発言。さらにこうした重罰を課すために審判所が必要でしかも「公開の法廷ではない」とつけ加えた、とのことです。(2013年7月19日)


改憲論議の狙いは (3)

 
春先に比べ、すっかり「憲法96条改定」という声を聞かなくなりました。代わって安倍首相が声高に叫び始めたのは「集団的自衛権」行使の容認です。内閣法制局長官の首をすげ替え、従来の政府
解釈でも認めなかったこの「集団的自衛権の行使」を容認させようというのです。

全体として、どうも「あれがだめならこれ」的なやり方、場当たり的に思えます。8月12日「憲法改正は私の歴史的使命」と山口県で述べたそうですが、何かやり方が安っぽいので「歴史的使命」という言葉が軽く感じられます。

最終的に明文改憲を目的としつつ、改憲手続きのハードルを下げようという96条の改定には、9条改憲派の学者からも批判を浴びた末、今度は「集団的自衛権は固有の権利であるが、憲法9条にはそぐわない」という従来の解釈を変更するというのです。そうすると、これまでの政府の解釈は何だったのかという問題が出てきます。

 明文改憲(9条)→96条改定→解釈変更とそんなに急ぐ理由は何でしょうか。米軍と一体となって「紛争」に参加したい、としか思えません。「自衛隊を守ってくれる友軍が攻撃されても黙っていていいのか」というのがその理由ですが、想定している場所は日本の領空領海ではありません。領空領海内ならば、個別的自衛権で十分なはずですし、安保条約第5条でもその記述(日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃…)があります。にもかかわらず、「集団的自衛権」の解釈を変更しようというのは、海外で米軍とともに戦争をしようということではないでしょうか。

(2013年9月23日)