◆あらすじ
バレエ団の事務員が自宅マンションのバルコニーから転落、死亡した。事件は自殺で処理の方向に向かっている。だが、同じマンションに住む元プリマ・バレリーナのもとに一人の刑事がやってきた。彼女には殺人動機はなく、疑わしい点はなにもないはずだ。ところが…。人間の悲哀を描く新しい形のミステリー。

◆感想
本作品はタイトルの物語を含む5編の短編小説、安定の加賀恭一郎シリーズです。

全編に共通するテーマは「嘘」とのことですが、そもそもミステリーって端的に言えば真実を隠すために犯人が一生懸命に嘘をつくものなので、この作品で「嘘」について深く考えさせられることはありませんでした。
むしろ個人的には、殺人や壮大なトリックを施すほどの人間であるなら、もっと奥深い動機があってもよさそうな気がしました。
そのようにやや違和感や疑問を持ちながら読んでいたので、感情移入することができませんでした。やや残念です。

ミステリーと楽しめる要素も少なかった感じがします。序盤から犯人が分かってしまうこと、5編とも似たような状況、夫婦問題に起因する動機、などなど。二時間もののサスペンステレビドラマを見ているかのよう。おまけに探偵の加賀恭一郎は完璧過ぎる推理設定なので、犯人と犯行トリックがすぐに露呈してしまいます。

ボクはあまり短編小説はあまり好みではないので読みませんが、個人的な短編小説の楽しみは、一見別々の物語のように見えるものが最後の物語の終盤で全てが一気に繋がってしまう、というどんでん返し系です。

加賀恭一郎の熱烈ファンであれば、その鮮やかな探偵ぶりに酔いしれることが出来るかもしれません。