2020年03月06日
FALLING
サウンドはシンプルで、RISINGより多少音楽的でという感じで行こうと思います。ドラムもシンプルにいきたいので前述と同じくベーシックを先に打ってしまい、キック決め。同じものを使いたくないので、ボツったものの中からこっちなら使えそうなものをピックアップし改造します。
基本となるリズムなので、キックとクラップ、裏8の役割を持つけどパターンのあるハット、ビートのキモとなるトライアングルに、それと絡むボンゴ・コンガ。これをループしながら骨格のリズムを身体に覚えさせつつ、多少ファンキーでディスコなベースラインを作ります。
このベースの音、ディスコファンクベース的なニュアンスが欲しいので、芯となるゴリッとした音とローエンドを支える丸いファットさが同時に必要で、もう面倒くさいからバラバラに作ってレイヤーしました。芯はFMベースっぽいイメージだったのでFM8あたりから始めたいところですが、これまたインストールしてないのでFLUX(ウェーブテーブル)で代用、サブベースにあたる低域はMassiveでシンプルに。あとで帯域サチュレーションして馴染み調整をするのですが、イメージ的にプリはSans系で軽く歪ませたものでしたが当然使えないので、結局Spectreを使って馴染めばいいや程度で妥協しました。生ジャズベとPSA-1(/Peavyキャビ)の組み合わせとか太くて重くて張りとガリッと感が出来て好きなんですが-。
骨格はドラムとBsだけで行きたいのでこれで成立しちゃうようなフレーズにしながら、エレピの必要性やテックさをどの程度加味するかを考えます。イントロ~ヴァースAのフレーズはどちらでもない音がいいなと思ったので、レイヤーしてフォルマント抜いてまたレイヤーしてオーディオごとベンドして…って遊んでたらナニコレって不思議な音が出来たのでもうそのまま使いました(´・д・)
サビはある程度音楽的に行きたいのでコードワークを考えます。珍しく先に決めてしまうのは、このパートでコール&レスポンスするのでフレーズを色々抜き差しし、エフェクトし易いように各フレーズやリフを録音するためです。鍵盤楽器はもう迷うくらいなら両方使っちゃえとエレピと生を交互に。
大体この感じでいこうと決めたあたりで、そもそも最初にこれを聴かせるのが嫌だなと思い、1サビに行くと見せかけてブリッジになる構成にし、今作ってるパートは大サビとしてコーラス2にしようと思います。
音楽的に遊べるのもここしかないし、オドカシついでに移調と多少調性を分かり難くして和声感を減らして混合スケールのフレーズ重視で構成、爽やかな疾走感の中に不安感出しておきたいなと。それからここまでのところ想定量の演奏感が足りません。FALLINGでは多少の生感と打ち込みの機械感がブレンドした感じが欲しいので、それも遊ぶならここココしかありません。
ヴァースDを見直すにあたり、ベーシックなリフフレーズで和声を適度に限定してアソビを残し、あまり主張しないコール&レスポンスなフレーズを敷いてから曲が持つリズム感のガイドもフィックスしておきます。これに出来るだけ生なピアノ音のクロマチックフレーズを、更にオーディオにして刻んであくまでリフフレーズの一つとして溶け込ませておく。こういうのはループミュージックに飽きさせない音楽性をぶっ込む難しさ(矛盾)ですよね。
ジャジーでカフェハウスな感じになってきたら、オカズになるエモいワウギターとサックスソロも入れて演奏感を増します(結局後で差し替える事になるんですが)。大容量サンプルな生楽器は少なめですがバーチャル楽器系は一通り入ってるので、レアな楽器やバリエーションが必要でなければ大体のものは対応出来る利点はちゃんと活かしていきます。
サックスまではいい感じだったんですが、ギターはやっぱりやりすぎだと感じたのでコーラス(サビ)の方に回ってもらい、後半回に後ろでひっそり演奏感増しの支えに役立てます。
そろそろ構成にかからないといけないタイミングですが、「これボーカル要るんじゃね…」と頭をよぎりました。黒人さんの発音で女性Vo、味があれば上手くなくていい、みたいなイメージです。引っ張り出してきたHDDのライブラリを漁っていたらこれいいじゃん、しかもキーまで同じという、もうこれを使えといわんばかりのがあったのでもうこれでいきます。
歌を入れるとなると構成決めがある程度限定されるのでこれはこれで楽です。「ここは一旦落ち着かせるためにもう歌とドラムだけでいいや」とか、「ここは間が保たないから声スタッターでも入れとこーっと」とか。コーラスは先にメロディアスに作ってあったので、歌を乗せてみて良きしっとり感というのか、ソウルな哀愁感が壊れなかったので、裏でカウンターしてるものも含めてリードのラインを全カットして歌に差し替えて前に出しました。多少ボイシングの見直しをしてここはもうこれ以上触らず完成です。
この段階で構成をカッチリ決めるとフィルインの融通が利かなくなったりアイディアがあったときにあとが面倒なので、ザックリ並べたらRISINGに戻ります。
ここからスワップ大会です。こっちで採用したものをあっちで流用する、アッチでボツったものをコッチで捻って使うの繰り返し。トラックのインポートも手軽に出来て便利です、Cubase最高。歌を乗せた事で不都合が出た箇所を直したり、逆にシンプルになるよう変更したりで、もう大枠は見えてきました。
この辺りで新年会があったので、iPhoneのマイクで録音して(これたまにやります、ミックスとか細部に耳が行かないからです)、外に持ち出して冷静に聴きます。やっぱりこうした方がいいなとか、これはアッチでやるべきでは?、ナニソレが足りない、あれを忘れてる、やり過ぎた、などが結構目(耳)に付きますのでそれらを手直し。
アイディアが纏まってきたのでフィルインを作っていきますが、この作業を最後に取ってあるのは前述した様に構成に関わるからという事もありますが、懐かしいオールドさと新しさやトリッキーさを一番調整し易いところだからです。具体的には、物凄くベタなパターンなのにその時代には無い音を使う、ベタな8分連打パターンと見せかけて裏打ちになって裏々強調リバースする、パターン自体ちょっと聴いたことない感じ、生とのハイブリッド…と色々バリエーションが作れます。当時では技術的に無理だった、例えばクラップがフィルターされてレイヤーしてるリムだけが残されてリバーブ深くなるとか、テクノの古典的な8分ディレイからの裏打ちを別の楽器混ぜて複雑にし、纏めてコントロールするとか、急に凄くEDMな音がぶっ込まれて来るとか、逆に808スネアそんな使い方する奴居ないだろ…とか。色々遊びましたのでそういうところも楽しんで貰えたらなーと思います!
ミックス・マスタリング
制作段階で丁寧に進めていたのでミックスで大胆な事は殆どしませんでした。フィルタリングや曲の要素に必要な部分はこの段でするため、そこは流れを考えながら構成決めと同時に進めていきます。いつも使っているフィルタが全部インストールされていなかったので(32bitなものも含む)、今回は標準プラグの他にFabFilterのMicroで代用し、カーブが気に入らない場合はQ3で効きを微調整しました。
マスターもジャンルを考えるとある程度音圧は必要ですが、潰しすぎると欲しい感じにならないのである程度遠慮を。いつも通りM/S処理もしてませんし、トータルコンプも多重アタック多層型でシンプルに、最後にマルチバンドで〆。質感に関しては不満というかどうしても1073を通したかったので、これはハード接続禁止縛りを全うして(面倒だった)Nebulaで自前IR使ってローミッド上げとハイの飽和に使いました。プライオリティが一番高いのは質感なので、「この感じ」に持って行けるまで細かくEQし、MDして2mixを作成。ここからは →iPhoneに入れて持ち運び、気になる箇所をEvernoteにメモ、帰ったら修正だけしてまたバウンス← これを何度も繰り返して完成です。両曲ともに、大人しすぎずEDM的派手さもない、丁度いい感じになったとお思いマス。
ということで如何だったでしょうか。アルマを含めてもUndefined以上に早く完成したトラックですが、そこそこ意図通りに出来ましたので低音増しマシ爆音で楽しんで頂ければ嬉しいです。買って下さいとは言いませんので!Youtubeでだけでもお楽しみ下さい(・̀ω・́) !(動画を作り次第、後日アップします)
■ iTunes
■ beatport
(01:54)
RISING
ドラムですが、FALLINGの方は比較的シンプルにするつもりだったので、こちらは思いっきり凝ってやろうと思いました。先ずはアフリカンでブラジリアン(サンバ)で集団演奏感が欲しいなと。打楽器は流石にCubase純正(GrooveAgentSE)では限界があるので、可能な限り利用しつつ音楽PCからライブラリHDDを引っこ抜いて使えそうなサンプル(特に生音ですね)をどんどんコピーし、BatteryをインストールしていないのでGrooveAgentに只管放り込みます。投げ込んだ端から打ち込んでパターンだけ作って音作りは後回しです。
音加工で最初に手を付けるのはクラップです。所謂ハウスなのでもう909しかないと思いましたが、如何せん素鳴りだとそれだけでハウスであれテクノであれ90年の匂いがするんですよね。現代的なクラップはもっとピッチが高く、ハイも出ていて倍音が上に密集して抜けてくるものが多い。対して909だと太くてゴツくて重くて古い。この印象を切欠に、「っぽいけどちょっと違う」風に聞こえるにはどうすればいいか、ライブラリの違う909をレイヤーして部分抜き取りし、当時ならレイヤーしない(出来ない)ものと合体し、こねくり回しをして録音。ゴーストノート音も必要ですからリバースしたり別の音をレイヤー/スタックしたりして、昔ながらの感じを残しつつそこに耳があまり行かない、大体意図どおりになってきました。
HHは複数どころか相当な数が必要なので(音源の)ライブラリ自体は出来るだけ古いものをセレクトしながらリズムとして聴かせるものと、流れや雰囲気を作ったり歌わせるものとで2郡作り、これでもかとレイヤーしてパターンも役割別にバリエーションを作ります。
さきのパーカスと一緒に鳴らして混ざり具合が大丈夫ならEQというか特性分布のグループ分け作業です。音数が多く相当重ねるのでここでしくじるとあとが面倒です。このアンサンブルを作る過程でどの位置にどうなっていたいかを急いで整理します。置く場所によって、近い遠い、頭の中心、サイドの広さ、位相を弄って変な位置に置くなら尚更必須帯域が出てきてしまうために先に整理しておきます。大体分離できたなというところで空間の音場もセットで作ります。
今回はリバーブを10個以上使ってると思います。昔ながらの安っすいロービットジョリジョリのデジタルリバーブからクリーンでクリアな近代的なもの、リアルIRに至るまで適材適所で使い分けてます。オールドファッションの中にナウなものが混ざると、違和感も相まって凄く立ってくるのでステキ。リバーブで時代感の操作がし易いって偉い人が言ってましたが本当にその通りだと思う。
話が少し逸れますが、プラグインが限定されてることでメーカーリストが十数個しかなくて滅茶苦茶見易くて選びやすいっていう、喜ぶべきなのか我慢が多くて悲しむべきなのかなんとも言えない新鮮な感じでした(´・д・)
とりあえず入れときゃ使えるだろとWAVESやToneBooster、iZotope、FabFilter…と基本的なものばかり。「あれ使いたいな」と思ってもインストールの手間考えると時間も無いし、その時間で打ち込みでもしてる方が建設的だし、「このあたりで代用しておこう」となって、意外と後からあまり足さずに済みました。便利系と代わりが効かない系の幾つかはもう仕方ないですけど、まあ大体なんとかなる。昨今の近代EQやサチュレーターを上手に使えば馴染みも分離もある程度の塊(バスグループなど)で制御可能なので、勢いでザックリ作っていっても大抵のことはあとから修正が利きますよね。ビバ・近代プラグイン。
ブーミーなぶんぶんベース
ディープやダークなテックには欠かせないブオンブオンしたサブ(この場合「サブ」ではなくなるけど)ベース。普通の使い方をするならワンコード感を協調してルートにVやIIIの1〜2音で押し切るか、いっそ音階感を無くしてSE的な音として聴かせるかになりがちですが、ある程度音楽的に聴かせるならピッチ感も必要になります。耳がアタックに行きやすい、がそこを出すと音として雰囲気が台無し、タダでさえ低域すぎてピッチ感が少ないので最初の難関です。この先キックとの被り調整が必要なことは目に見えていたので、先ずは後から触りやすくローに張りと輪郭のあるMassiveを使うことにします。サインやノコギリにドライブと言う意味ではなく、どの程度波形として歪ませるかで輪郭を調整していきます。ここは大雑把でも、素直なサインに近いオシレーター波形である事で帯域限定歪を入れると大体後でどうとでもなります。(今や七色に変化させる道具は山程あるので)
大方音が定まったところでキックとの絡みですね。ブーミーで大事なローエンドと、サブベースのブオブオ具合のおいしいところは同じで当たるに決まっています。SC組んで引っ込ませる事も大切ですが、あとから応用が利かないのと『常にローが停滞して鳴っている落ち着き感』が出ないのため、こういうときは被っても大丈夫な状態を作ります。今回は中低域を歪ませるため、その下の120Hz以下近辺の帯域を摘まんで位相を回転します。今回ですとBluecatのMB-7で抜き出して15度単位で回転して様子を伺います。抜けてきたら今度はベースが音として思った感じになるまで、その上の大事なローミッド域を抜き取ってサイコアコースティック方向で聴覚的に輪郭を調整して誤魔化します。滑らか過ぎても引っ込んでも駄目、張りが出すぎたり左右での前後差がゆがんでも駄目。イイカンジになったらキックとの兼ね合いが良きところで折り合いを見つけます。この上でキックからSCをかけて、音長(レガート感)として被る個所が出てくる様、あえて多少被る方向で緩めていき、常に低域が鳴ってる状態を作ります。こうすると平和的解決でお互いがキッチリ出したいローを出しつつ被らない様に作れ、また布団に挟まれた様な暖かくて緩やかなローの圧迫感と、キックのパンチ感を共存させて同時に残せます。
もう基本となる世界観は出来上がってるので(イントロでこの部分を聴かせる事で『この感じで行きますよー』を出せる)、次はピアノリフで「あくまでハウスですよ」をアピールします。M1からNexusな現代的パキパキ音まで何がいいのか色々考えた結果、悩むくらいならなんでもいいという結論に至り(スピード優先)、Cubase付属のHalionSonicSEピアノをハードコンプして終わりです。
続いてジャンルバランスを取るためのテックなリフです。ProphetやJupiterが欲しいところなのでPro53くらいから試していきたい感覚ですが、インストールもしてないし、ここでもHalionにRetrologue、Prologueと付属品で勝負します(今回至る所で使ってます)。太めの腰や銅に輪郭が出るレイヤーを組めれば用は足りるので、バスに回してフィルターの管理だけしておきます。実際は和声でレイヤーせず音階ごとに分散してます、これでヌケも良くなるので。結局HalionSonicのGM音源も使い、フレーズが決まったら録音、これで後から扱いも簡単です。
全体を鳴らして気になる帯域被りだけ簡単にEQし、カウベルシーケンスで’90テック感。この手のフレーズは懐かしさのあまりちょっとテンション上がりました。今やハイテク道具のお陰であまりにも簡単に意図通りに作れるので、昔の苦労が嘘みたいでちょっと笑えました。あの頃の苦労はなんだったのかと…。
音場の整理と打楽器とのバランスを取ったら、サビのフレーズとの絡みが見たいのでそこも先に作ります。アホっぽい感じで行きたいので音もある程度安い方がいいよね、って事でまたHalionSonicSEの登場です。ペットとボーン重ねてRetrologueレイヤーしてもう既にイイカンジだったのでパッパラパッパラ。掛け合いはGM音源がベースじゃ流石に奏法が付いてこないので、そこだけそれっぽいサンプルフレーズに差し替えます。このフレーズ、例えば90年辺りの49ersやTechnotronicだったら多分アナログシンセでやるところなんですよね。そこまでチープだとパンチに欠け、AlexGaudino初期だったら安っい生音、なので間を取ってみた感じです。楽器が何で構成されてる何管かなんてどうでもいいところですから、ハイのエッジとアタックだけサンプルで出てれば銅鳴りはアナログシンセで充分です。ブラス編成でさえ厚みが足りないときは良く使う手法です、単音のしょっぱいフレーズなら何ら問題ないですねぇ。
フレーズの抜き差しが必要なので生アンサンブルにせず、シンセとの掛け合いです。ここはレトロ感があっていいな、と思ったので古めのサウンドを幾つか試して和声感を出しつつピッチモジュレーションさせたりしてディスコと言いますか少し黒さも付加しておきます。
もう結構理想の音になってるのでここまで凄く時短的で助かります。オドカシ音や裏鳴りするフレーズをちょこちょこッと足して、そろそろ構成を決めないといけないところで一旦RISINGから離れてFALLINGに取り掛かります。
(まだつづく!)
(まだつづく!)
(01:53)
ご無沙汰しております、まくがふぃんです。このところ忙しく、終わったらまた忙しく…が延々続いてしまい音楽をする時間まで手が回らず( ´・д・) 今後も当分変わりません… 今回は正月休みの合間を見て一気に作ってしまいました。
ハウスをリファイン。
テクノブームの再来と同時に昔ながらのハウス(?)がここ暫く再燃しています。仕上がりの音質だけ多少は現代してますが、90年にタイムスリップしたかの様な往年のサウンドが流行っています。今更なあ…という思いがあるものの、このところヘビーなロックに浸っていたので久々にEDM的なものを作ろうかなあ、と思ったら簡単にやりたいことは纏まってしました。
90年代のハウスやガラージュへのオマージュとリスペクト、それでいてディープでテック、サウンドはところどころ21世紀、こうすれば差別化が図れて何かよくわからないものが出来そうだと思いました。言語化すると、「(元曲ナシに)あたかも古いものを下地にし、リマスターとダブミックスしてブラッシュアップしたようなもの」って感じでしょうか。
そもそも創世記・黎明期ってテクノもハウスも、アメリカに渡ってからは同じジャンルでしたので、そこを手がかりにクロスオーバーの糸口が見つかります。ディープ・ミニマル方向へ傾けば自ずとテック感が強くなる、ブラックでメロディアスになればガラージュなどに、アッパーでおバカになればイタロに。フレーズ感もサウンドも、一旦この顔を見せてこのまま行くと思わせて、忘れた頃に別のスタイルや時代感の違う音が唐突に出てきたり、時間軸以外にも重なってちゃ駄目な時代感がミスマッチにならなければそれだけで面白いなと。
今回の縛りですが、
・事務用PCで完結する
・ → 自ずと使えるプラグインが減るため(インストール面倒)出来るだけCubaseの純正使う
・iphoneの純正イヤホン(EarPods、AirPods)しか使わない
・出来るだけ古いシンセやサウンドを使って違和感なく混ぜていきたい
大体こんな感じでしょうか。正月休みといっても家族行事目白押しで空き時間も限られてなにしろ時間がないというのもあり、DAWを触ってない時間を考える時間に当て、触れる時間に一気に制作、というスタイルです。
どうせキモはドラム
テクノを筆頭に、結局EDMの心臓部はドラムです。打楽器選びをする前に基本として909、808、LINN、R8、RXシリーズなど昔(今も?)世話になったものをベースに敷いておきたい。当然ここで一番問題になるのがキックを筆頭に時代感です。
最近の流行りのキックを聴いてると、同じ909でも卓に突っ込んで堅くて歪んでいる昔ながらのスタイルに戻りつつあることが伺えます。その理由はこのところのテクノのリバイバルからの影響かと思いますが、自分的にはナイなと思いました。だからといって「THE EDM!」みたいなタイトでクリアなものも厳しいし、古ければパンチも無く古さが際立つのでやはり厳しい。
取りかかるにあたり、909ほど使い倒され、ロングランを続ける音源は無いと思うし、ここではマスト。原点回帰しつつ909の新しい使い方とまでは行かないけど、今までやったことのない感じにならないかなと思い、とりあえず24Bit/48kの出来るだけ綺麗な録音の素音、自前ライブラリを立ち上げてこねくり回すことにしました。コンプゲートとリムレイヤーでアタックを出して、倍音増やして、密度濃くして、ローエンドは808やタム重ねてサイコアコースティックで太さ出して…と大体形が見えました。FALLINGの方のキックがそれなんですが、より現代的になるようなアタックが強く(Drawmer1960感)銅が抜けて太さがあるバージョンと2つ作りました、これが後にRISINGの方で使うキックになります。
テクノなんて正にそうですが、リズムパターンそのものより、ピッチの整合性と楽器としてどう使うかの方が大事、ってエライ人が言ってました。前者に関しては結構シビアに組み、そこが上手くいくとシーケンスリフ楽器として使えるとも言えます。
パターンは割とシンプルでいいのでベースとなるパターンを先に組みます。4on4に裏と裏々拍でどう聴かせるかがハウスの醍醐味ですから909だけで一旦サクッとベーシックを組みます。どれだけハードコンプをかけてもハットは踊ってないと嫌なので、裏8の聴かせ方を決めたらライドを使って流れる感じを出したり、RX7やLINNで強弱がついたパターン、FMのFB金属っぽいトライアングル(実際はウェーブテーブルです)、と足していきます。数千円のマイクの前でパチカ振ってシェイカー代わりに、あと何したかなあ… 凄い勢いでなんか色々やりました(・̀ω・́)よく覚えてないけど。
ドラムを打つ前に各サウンドをリファインする簡単な実験をしています。単体マシン毎に適当なパターンを組んで、素音と簡単な加工を施して聞き比べし、どういう方向で変化させたら今でも使えるかっていうアタリをつけるためです。ピッチ変更、ハイやローの倍音増加、フォルマント変更と付加…手間のかかり過ぎない範囲で色々やってみました。特にLINNが驚くべき変化を遂げて(曲中ガンガン使ってるので聴いてみて下さいネ)、元倍音が綺麗だからなんでしょうけど、レイヤーしても加工してもいい音します、アイシテル。
参考までにトリートメントしただけの素音パターンと、2Mixに多少現代的なEFXしたものを残しておいたので聴き比べてみてください。(パターンはお約束、MJの「Thriller」。クラップも原曲と同じ808を足してます)
素音
多少加工
909一辺倒ではなく、この子も改めて評価されるべきだと思います、LINNドラアイシテル。
先ほどの基本パターンを作った時点でもう頭の中で曲調が2パターン鳴ってました。「ラウンジ的なハウスをベースにテック寄りに行ったもの」、「テック・ディープをベースにオーバーグラウンドハウスへ傾倒してるもの」の二種類です。どちらがいいか考え始めたときに価値が同等だったので、熟慮するのも時間の無駄だからもう2バージョン作ってしまえ、となりました。(所要時間のことはもう考えないことにしました、気に入らなきゃ没ればいいので)
FALLINGとRISINGの差別化
ちょっと頭を使う時間です。2バージョン作るとなると安直に「原曲とリミックス」てことになりますが、今回はこれが対になってるような、どちらが原曲でもいいイーブンの状態が理想です。どちらも別の見せ場や良さがあって2つの顔が楽しめる、そんな感じの物です。
バージョン1は「ハウスをベースにテック寄りに向かったもの」です。比較的シンプルで走ってるドラム(我慢できずに結果的にそこそこ増えますが!)、ブラックを感じるフレージングや和声にテクノの手法をぶっ込んで多少ミニマルかカフェハウス感を匂わせておいて、コーラスと言いますかサビってやつですね、これをしっかりメロディアスに聴かせて、当時ならやらない手法でフレージング(今回の場合はコール&レスポンスですね)する。
対してバージョン2は「テックとディープ感をベースに別の形でハウスへ傾倒してるもの」なので、ダークでディープでテクノしてる感じで聴かせておいて、フレーズはテックハウスでバランスを取ってサビは多少おバカさとフィエスタ感でアッパーに、事前に聴かせておいた感じを忘れさせて大胆な曲調変化で差異をつける、と。
要するに「空元気からの落ちてく感じ」と、「どん底からハッピーに向かっていく感じ」ってことだな、というイメージが出来たら副題がFALLINGとRISINGに決まっていました。
コンセプトが纏まった時点でオケの50%くらいは頭で鳴り始めたので、8割程度鳴るようになるまで考える時間。なんとなくバージョン2(RISING)から作りたい気分だったので、『最初はサブベースぶんぶんでドラムはトライバルに始まって、ワンコードピアノリフでこんな感じで…。テクノリフからのミニマル構成と思わせておいておバカフレーズで裏切って…脳筋フレーズかぁ…イタロハウス…あーもうこれリードはラッパしかないなぁ…初期49ers的なやつをもっと馬鹿っぽく…アッパーであっても出来るだけワンコード感強いハウスっぽく…』って流れでサクッと9割くらいはオケが頭で鳴ったのですぐ取り掛かります。
(つづく!)
(01:46)