2023年06月04日
(282)お手軽の代償
◎ むしろ時間の浪費
コンサルティングの現場や身近なトピックスから
マーケティングのヒントをお届けする『マーケティング小咄』。
今回のテーマは、WEBミーティング。
コロナ禍がもたらした影響の一つに
テレワークの普及が上げられます。
無駄な出社、無意味な訪問、生産性のない会議。
これらが一掃されたのは歓迎すべきことです。
一方で、その手軽さ故に、本来対面で為すべき面談まで
WEB会議で済ませようという悪しき風潮も散見されます。
コンサルティングは対面が基本です。
言葉のやり取りで済ませられるほど単純ではありません。
表情やしぐさ、挙動などから言葉の裏側を探り
行間を埋めるために質問をして問題の本質を探ります。
どれほど高精度の機器を用いたところで
こうした心の機微に関わる情報は映像では伝わりません。
初対面の相手であればなおさらです。
そこに映像があっても、電話相談となんら変わりません。
多くの場合、相談者はご自身が抱える
問題の本質に気付いていません。
それを導き出すことが課題解決の端緒であり
そこから解決策をアドバイスしていきます。
表面的な言葉でのご相談には一般論でお答えする他なく
それが本質的な課題解決に繋がることはまずありません。
同様に、企画のようなクリエイティブな会議も
対面でこそ発想が広がるものです。
WEB上でこじんまり意見交換したところで
スケールの大きな発想は生まれません。
筆者の場合、1年以上のビジネス上の付き合いがあり
お互いに気心が知れた相手であること。
内容が連絡、或いは即答型のシンプルな問い合わせや
意見交換である場合に限りWEBを活用しています。
僅かな労を惜しむあまり本来の目的が達せぬのであれば
むしろWEBミーティングが空しい時間となります。
同様に、セミナーにおいてもWEB受講が主流です。
場所を選ばず受講できるので便利なものです。
筆者も利用することがあります。
必要な部分だけを抜き出して視聴することも。
世の中のセミナーの大半がそうであるような
情報提供型のものであればそれでよいでしょう。
しかしながら、筆者が年に数回開催しているような
実践型セミナーの場合、少し状況が異なります。
筆者の例でいえば、新規事業に実務で関わる方が
実際に進めて戴くための手順を解説しています。
組織の作り方から情報収集、企画の進め方。
事業を始めて最初に為すべきことまで解説します。
そもそも知識として知っておくべき事項というより
現場で実行して戴くべき内容です。
分かりやすくするため、教科書通りではなく
実際の事例なども織り込みつつお話ししています。
実行レベルは保証の限りではありませんが
少なくともどう考え、何をすべきかはお伝えしています。
ところが、これを細切れで視聴したり
部分的に視聴するとどうなるか。
インタビュー映像が意図的に編集され、本来の趣旨と
異なる内容にすり替えられるという事例があります。
意図せずとも、同様なことが起こってしまうのです。
そうなると誤った情報がインプットされてしまいます。
例えば、筆者の主張は「新規事業を一般に考えられて
いるほど難しいものではない」というものです。
然るに、受講後に「新規事業は難しいということを
再認識できました」という感想を戴いた時の無力感。
一体どこを抜き出してご覧になったのか。
或いは「ながら視聴」で何も頭に入らなかったのか。
手間を省いて得をしたつもりで、結局時間を無駄にして
時に誤った情報をインプットする愚、戒めたいものです。
今日の一言: 対面で 初めてわかる こともある
新規事業のご相談、セミナー・執筆のご依頼はお気軽にどうぞ。
AlphaMarketing Corporation
えっ!?
2023年05月04日
(281)成果が出ない
◎ 初めてですか?
コンサルティングの現場や身近なトピックスから
マーケティングのヒントをお届けする『マーケティング小咄』。
今回のテーマは、コンサルティングの成果。
「これまでにコンサルティングサービスを
利用されたことがありますか?」。
初めてご相談いただいた際、必ずお聞きしています。
あるとお答えの場合、何らかのご不満があったはずです。
満足したならば、再度同じサービスを利用されるだろうし
筆者にご相談される可能性はなかったでしょう。
そこで、何がご不満だったのか。
何故上手く行かなかったのかをヒアリングします。
もちろん、一方の言い分に過ぎませんから
必ずしも公平な内容とは限りません。
それでも、経験上、上手く行かなかった原因が
何処にあったのかを、ある程度推測することができます。
主たる原因がコンサルタント側にあったのであれば
殆どの場合、異なる結果に導くことができます。
実際、筆者のクライアントにも
このパターンが多くみられます。
問題は、依頼者側に問題があったと思われるケースです。
筆者の場合、敢えてその点を指摘します。
依頼者にとって耳の痛い指摘を理解した上で
改善されるようであれば、ご依頼を引き受けます。
それが見込めぬ場合、お断りすることもあります。
成果が期待できず、双方の為にならぬからです。
では、成果が期待できない依頼者とはどのような
タイプでしょうか。主要な3つをご紹介しましょう。
1.
お任せタイプ
2.
唯我独尊タイプ
3.
不誠実タイプ
お任せタイプとは、その名の通りコンサルタントに
丸投げしようとする方。
コンサルタントは業務請負業ではないのです。
座して結果が得られるものではありません。
依頼者の意思決定の精度を高め
時間を短縮することが役割です。
主体はあくまでも依頼者であり、自ら考え行動し
意思決定するという自覚が不可欠なのです。
唯我独尊タイプとは、自らの経験や勘を頼りに
アドバイスを無視して勝手な判断を繰り返す方。
或いは改善を要望しながら変化を厭う方。
当方の提案が必ずしも最善とは限りません。
とはいえ、一定の理論に基づき依頼者と
合意形成しながら進めて行くのが常です。
それを無視して独断を繰り返すというのでは
成果を期待できません。
今一つは不誠実タイプ。
これは一見分かりにくいので注意が必要です。
社内情報が十分開示されないばかりか
虚偽の情報が提示されるケースもあります。
特に数値データが不正確であった場合
致命的な判断ミスに繋がりかねません。
コンサルタントは戦友と考え、芳しくないデータも
ありのままに報告戴かねば成果は生まれません。
では、コンサルタントから見た
成果の出る依頼者像とは。
要望した情報をきちんと収集する。
提案を実行に移し、さらなる改善を進める。
ただ受け入れるだけでなく、自身の考えに基づき
議論を重ねて合意形成する。
お互いの信頼関係があって、初めて成果が生まれます。
ぜひ、上手く活用して戴けることを願います。
今日の一言: 信頼が なくして成果 望まれず
新規事業のご相談、セミナー・執筆のご依頼はお気軽にどうぞ。
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実なきもの・・・。
2023年04月04日
(280)間違いだらけの・・・
◎ このようにお考えではありませんか?
コンサルティングの現場や身近なトピックスから
マーケティングのヒントをお届けする『マーケティング小咄』。
今回のテーマは、新規事業の誤解。
「新規事業は難しく、その成功確率は10%程度である」。
「新規事業とは、全く新しい市場を開拓するものである」。
「成功のカギはブルーオーシャン市場を見つけることである」。
これらに一つでも頷いたらご用心ください。
もしあなたが新規事業の担当者であれば、無駄な努力をしたり
或いは誤った方向で企画を進めてしまうかもしれません。
本ブログでも何度となく触れていることですが
広義でとらえれば、何れも陥りやすい誤解なのです。
新規事業の成功率が10%だとすれば
着手する経営者はいないでしょう。
いくつかの複合要因により、新規事業は難しいものという
先入観があるのでしょう。
新規事業を複数ご経験のビジネスパーソンであれば
一笑に付すか、そもそもそのような発想はないでしょう。
新規事業は自社にとっての新しい事業であり
世の中にない革新的なものとは限らないのです。
既存の市場、既存の取引先に新しい付加価値を
提供することも立派な新規事業なのです。
更に、客観的に見てブルーオーシャン市場であっても
自社にとってそれが最適な市場とは限らないのです。
市場ありきではなく、自社が何を為すべきかという
視点で事業を企画しなければ、成功は覚束ないでしょう。
もし上記のような誤解をしていたからといって
悲観的になる必要はありません。
新規事業を戦略的・継続的に立ち上げている企業は
10%に満たないでしょう。
殆どのビジネスマンが、生涯経験することはないのです。
だから、新規事業は慢性的に人材不足なのです。
新規事業を企画せよと掛け声をかけるトップはもとより
担当役員、上司すら未経験というケースも多々あります。
そんな状況で、何から着手すべきかと戸惑う現場担当者。
ネットや書籍、知人などから情報収集することでしょう。
そこで見聞きするのが冒頭のような尤もらしい誤解です。
確かな指針がなければ、妄信も無理からぬところです。
新規事業を成功させるために必要なことは
誤解を解き、正しい手順を知ることです。
ここでも誤解が生じやすいのですが
新規事業は予期せぬ事態の連続です。
知識として知っていても、実際に活用する場面において
状況に応じやり方を変えねばなりません。
何をするかではなく、どう考えるかということを頭に入れ
実際にやりながら試行錯誤する過程こそ重要なのです。
同業者の事例を教えて欲しいという要望をよく戴きます。
しかし、それを真似たとて同じ結果は得られません。
正しい手順で、適切なレベルで実行すること。
正しい考え方で、試行錯誤することこそ成功のカギです。
もしあなたが新規事業の担当者であり、それを成功に
導きたいのであれば、誤解を払拭することから始めましょう。
正しい手順と適切な考え方を理解した上で実践すること。
知識ではなく、身に着けるべき実践技能なのですから。
= セミナーのご案内 =
『間違いだらけの新規事業2023』
~ もう惑わされない、新規事業の正しい進め方 ~
開催日時: 2023年
5月17日(水) 13:00~17:00
詳細・お申込みはこちら:
https://www.ssk21.co.jp/S0000103.php?gpage=23165
※新規事業を実践して、成功させるためのセミナーです。
WEB受講も可能ですが、会場でのご受講を強くお勧めします。
今日の一言: 実践が なくして知識 役立たず
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実践なき知識は・・・。
2023年03月04日
(279)壁
◎ 停滞案件増加中
コンサルティングの現場や身近なトピックスから
マーケティングのヒントをお届けする『マーケティング小咄』。
今回のテーマは、新規事業。
ウィズ・コロナ、アフター・コロナを見据えて
新規事業の動きが活発化したのが一昨年秋以降。
その流れで、最近の新規ご相談の1/4は
停滞している新規事業に関するもの。
要因のトップ3は
1.
市場ニーズがなかった
2.
ターゲットの絞り込みが不充分だった
3.
自社のキャパシティ不足
1や2のケースでは、市場を変えたり、ターゲットの
再設定により立て直しを図ることもできます。
3は、企業と事業のミスマッチと換言できます。
軌道修正は難しく、撤退をお勧めするケースもあります。
なぜそのような事業に手を出す企業が多いのかというと
市場から発想を進めてしまうからです。
市場トレンドが成長分野であるとかブルーオーシャンなど
隣の芝生が青く見えるが如く魅力的に映るのでしょう。
しかしながら、それは一般的傾向であり
自社にとって優位か否かは別問題です。
自社が目指す方向性や保有リソースと接点がなければ
成功する可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
事業計画だけ見れば、成功間違いなしと
思える案件であっても上手く行かないのはなぜか。
一言で言えば、企業文化の違いなのです。
この壁は、容易には越えられません。
新規事業に精通した企業であれば問題ないでしょう。
しかし、初めての新規事業にはハードルが高過ぎます。
分かりやすい例でいえば、BtoBとBtoCの違いがあります。
互いに相手市場が青い芝生に見えることがあります。
扱っているのが同じ分野の製品であれば
商機があるように思えます。
しかしながら、製品に求められる価値は異なるかもしれません。
例えばBtoBでは耐久性、BtoCではデザイン性というように。
製品以上に重要なことは顧客の違いです。
財源をみれば、前者は会社の財布、後者は自前の財布。
前者の商談相手は、多くの場合意思決定者ではなく
成立までにいくつもの階層があります。
コストや製品価値以上に、トラブル時に業務に支障を
来たさぬためのサービス体制が重視されるかもしれません。
個人消費者は、限定的なサービスや値引きにより反応し
感情への刺激に左右されやすい傾向にあります。
ざっと見ただけでもこれほどの違いがあります。
仮に頭で理解できても、行動に落とし込むのは困難です。
特に、一般的にメーカーの方は製品に視点が偏りがちです。
より重要なのは製品より市場(顧客)です。
その意味ではBtoCからBtoB市場への参入の方が
逆の場合よりは成功しやすい傾向にあります。
とはいえ、やはり初めての新規事業のテーマとしては
あまりお勧めできるものではありません。
上手く行かないからといって、方針転換を
図ることも容易ではないのです。
未然に防ぐためには、自社リソースを起点とすること。
信頼できる専門家に、初めに相談することです。
今日の一言: モノよりも 市場が大事 新規事業
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2023年02月02日
(278)意識を変えねば
◎ 躓きの始まり
コンサルティングの現場や身近なトピックスから
マーケティングのヒントをお届けする『マーケティング小咄』。
今回のテーマは、事業規模。
日本を代表する大手メーカーを経て独立したS社長。
技術者としての深い知識と経験、幅広い人脈が強み。
賛同する多彩な技術者を集め、ユニークな
モノづくり会社を始めたのが十数年前。
ニッチな企業ニーズに応えつつ、何とか経営が
軌道に乗ったものの、全く満足できぬご様子。
当初想定していた事業規模とは2桁違うとの思いは
大企業勤務時代の感覚がそのままでした。
それまでの受注生産から、自社規格の製品を作り
在庫しなければ規模の拡大は望めぬと思い至りました。
販売の仕組みが確立していないにもかかわらず
多額の資金調達をして在庫を抱えることに。
結局、在庫品と共に生産技術一切を売却する
道筋を描いたのがお付き合いの始まりでした。
ご自身の得意分野において、身の丈に合った規模での
事業を確立し、徐々に拡大することをご提案しました。
事業売却益の過半を債務返済に充て
残った資金を原資として再出発することに。
そんな社長が久々にご相談にいらしたのは
それから1年後のことでした。
新しい事業案件のご相談でした。自社の事業や
自身のご経歴とは全く畑違いの事業分野です。
モノづくりに関して熱く語り、一気に飛躍できると
事業規模の大きさについて力説されました。
良いものを作れば売れるはずだという思い込み。
そこには具体的な販売戦略は一切ありません。
いくつも併記されたプランのうち、比較的現業に
近い事業に絞り込んでの展開をご提案しました。
◎ 小さく始めて大きく育てよ
次にいらしたのは、それから半年余りを経た頃。
前回のことは無かったかのように新しい案件のご相談。
以前の案件はどうなったのか伺うと
結局、開発段階で躓き中止したとのこと。
今回ご相談の案件も、全く畑違いの事業分野。
つい最近知り合ったばかりの方との共同事業とのこと。
事業のポイントとなる部分を質問すると
すぐにボロが出るようなスカスカな計画です。
それからも、1~2年毎にいらしては
同じようなご相談をされていきます。
かつては10名ほどの優秀な技術者が在籍した
オフィスには、今や事務のアルバイトを含め2名。
去って行った社員の中には、取り組んでいた
ニッチ分野に特化して独立した方もいらっしゃいます。
安定的な顧客を獲得して順調に拡大し
今や10名を超える社員を抱えているとのこと。
かつて筆者が語った「絞り込むこと」の重要性を
社長の傍らで聴き、実践した結果だと言います。
この話は、中小企業に限ったことではありません。
大企業においても同じことです。
例えば、100億円の新規事業を構想しようとしても
なかなか事業の種は見つからないでしょう。
先ず10億円規模のコア事業を構想し、それを
100億円規模に育てるのはいかがでしょう。
或いは、100億円規模の漠然とした事業を絞り込んで
10億円レベルに集約して構想してはいかがでしょうか。
より現実的かつ具体的な事業計画が描けるはずです。
当然ながら、成功の確率も飛躍的に向上します。
さて件のS社長、来週お見えになるそうです。
ビジネスで大けがをしたことがないことがご自慢です。
むしろ、小さな成功こそ大切だと思うのですが。
今度こそ、現実的な計画で実現して戴きたいものです。
今日の一言: 作るるより 売るが難し 新規事業
新規事業のご相談、セミナー・執筆のご依頼はお気軽にどうぞ。
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