花田心作

Shinsaku Hanada

 鷺の絵は塗師で神人の松屋家が所持した彩色画です。派手な彩色画に地味な表装がしてありました。この表装は侘茶の開祖村田珠光が指示しました。鷺の絵は松屋家から島津家へ渡り、消失して現存していません。

重箱の隅に伊勢海老鎮座せり

A lobster
enshrined to the corner
of the food box

メモ
 伊勢海老はspiny lobsterですがspinyは省略しました。重箱はfood boxにしましたが紙の箱と思われるかも知れません。

青蜥蜴大地の飢ゑてゐたりけり

A blue lizard
and the earth
are hungry

メモ
 原句では青蜥蜴と大地の間に「切れ」がありましたが、翻訳はandで繋ぎました。earthは地球の他に大地の意味があるようです。

花筵花もろともに巻き込みぬ

A fallen sakura
involved
in the sakura carpet

メモ
 花筵はsakura carpetにしました。緋毛氈と間違われる可能性があります。

 八角釜は本能寺の変を起こした智将明智光秀が所持した茶釜です。織田信長から下賜された茶釜で上から眺めると八角形をした茶釜です。信長を尊敬していた光秀は八角釜披露の茶会を催しました…。

殻ぬちに宇宙のありて寒卵

A cosmos
is inside
the winter egg

メモ
 宇宙はuniverseやspaceもありますがcosmosにしました。isとwasは迷いましたがwasにしました。ぬち(内側)はinsideにしました。殻は省略しました。
 isに修正しました。 

 手取釜は粟田口善法が所持した茶釜です。飯を炊くのも茶を沸かすのもこの茶釜一つで行いました。家に鍵を掛けない主義の人でした。侘茶の開祖村田珠光をして「ココロノキレイナル者ナリ」と言わしめた人でした。伝説の侘数寄の一人です。

 姥口釜は姥の口のような形をした茶釜です。北陸方面を攻略した褒美として織田信長から柴田勝家に下賜された茶釜です。信長が父織田信秀より引き継いだ茶釜でした。茶器の収集家であった信長は名残惜しみの和歌を詠みつつこの茶釜を勝家に与えました。後には勝家を滅ぼした豊臣秀吉が所有しました。

 平蜘蛛釜は悪逆非道の武将、松永久秀が所持していた茶釜です。平蜘蛛が鋳付けられてあり、湯が沸くと平蜘蛛が這いまわるように見えた異形の茶釜です。織田信長に謀反をした際、信長側からこの茶釜と引き換えに助命するとの提示がありましたが久秀は拒否しました。籠城の天守閣でこの茶釜に火薬を詰めて首にぶら下げて久秀もろとも爆散して消失しました。現存しているとの説もあります。

あらぶるるたましひしづめ冬籠

My angry soul
calmed down
in the winter room

メモ
 荒ぶるる魂は怒れる魂angry soulにしました。鎮めは鎮静するcalm downにしました。冬籠はin the winter roomにしましたが、俳句によって変わるかも知れません。

種なしのととのひすぎし黒葡萄

It was seedless
it was too complete
it was the black grape

メモ
 原句が収斂して行く叙法なので翻訳もそれを模倣しました。completeは「整う」という意味もあるようです。

妖精の靴のかたちのすみれかな

A violet
like
the fairy's shoe

メモ
 靴は両方揃っている場合はshoes(複数形)ですが、片方の場合はshoe(単数形)です。likeを使用して「かたち」と「かな」は省略しました。

コンピュータてふ箱庭の中歩く

I am walking
in the miniature garden
as the computer

メモ
 箱庭はminiature gardenです。昔のサイバースペースは閉鎖的でした。

寒卵むらさきふかき影を置く

A winter egg 
is putting 
the deep purple shadow

メモ
 寒卵の寒は冬の一時期なのでcold winter eggでしょうか。しかし長いので単純にwinter eggで良いと思います。

桜漬白磁の碗にひらきけり

Sakura pickles bloomed
in the teabowl
of white porcelain

メモ
 桜漬の英語が良く分かりませんでした。仮にsakura picklesにしました。「開く」はopenでは無く「咲く」bloomを使用しました。私は aとtheの使い分けを熟知しておりません。aは未知の物、theは既知の物と漠然と認識しているだけです。この使い分けは適当です。

あまたある藁塚のみな相似形

Straw mounds
are
similar figures

メモ
 私の翻訳は自動翻訳を使用しています。自動翻訳の精度は今一ですが参考になります。藁塚に相当する英語が分かりませんでした。藁塚はstraw moundにしました。moundは盛り上がった物を意味するようです。「あまた」と「みな」は省略しました。藁塚と相似形が複数形(s)なので必要無いと判断しました。

image


あまたある藁塚のみな相似形

夕闇にしろく泡立ち河鹿の瀬

葉にとまりたるまま蝶の凍てにけり

桜漬白磁の碗にひらきけり

卓上にいろとりどりの秋果あり

寒卵むらさきふかき影を置く

ころがりてとまる栄螺の多角形

コンピュータてふ箱庭の中歩く

ういらうを切り分けてをり花の雨

凍蝶の風に耐へゐていつくしき

淡雪といふ名の菓子やさくら冷

花は葉に我もブログをリニューアル

忽然とあらはれて消ゆ曼珠沙華

残像のあざやかなりし曼珠沙華

妖精の靴のかたちのすみれかな

ゆくさきに幸せありと花あかり

終章となりて一気に花ふぶき

青あらし心の中も吹き抜けて

種なしのととのひすぎし黒葡萄

あらぶるるたましひしづめ冬籠

瀬がしらにさぐりを入れて囮鮎

花時の人のながれにしたがへり

花筏組み直しては崩れけり

図書館の四角四面に風ひかる

パソコンにディスク呑まれて冬暖か

ふるさとのみなうちとけて牡丹鍋

まぼろしのごとくゆらめく夕焚火

殻ぬちに宇宙のありて寒卵

花筵花もろともに巻き込みぬ

青蜥蜴大地の飢ゑてゐたりけり

水中花部屋の明るくなりにけり

荒磯に釣れて鱸のいぶし銀

こほろぎのたかぶつてゐる闇の艶

重箱の隅に伊勢海老鎮座せり

底冷は地下の魔王の息吹とも

もりあをがへる光と風の交錯す

怪獣の卵のごとき苦瓜や

いぼむしり花の背後に待ち構へ

ときどきは浮かびて冬の金魚かな

箱河豚を飼ふ水槽も四角形

さざなみの押し寄せてゐる薄氷

銀河系めきたる海雲啜りけり

春愁の部屋片付けてゐたりけり

さくら色に染まりし街やさくら時

人みなのしづかにあゆむ花のかげ

亡き人に見送る人に花明り

落ちてゐる光のかけら木下闇

水替へて目高の数のあきらかに

水饅頭光もろとも食ひにけり

咲ききつて牡丹の芯のゆるぎなし

水中花生命体のごとく置く

鷹降りて羚羊の背を掴みたり

鋤焼にへろへろの葱ありにけり

つづく

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