2008年09月06日

官職のお話 その3  九卿

書き手:赤龍

官職のお話シリーズ第三回です。前回は中央政府のそのまた中心に位置する「三公九卿」のうち、臣下の最高位である「三公」についてお話しました。今回は「九卿」です。
官職のお話 その2  三公

○九卿 (三品)

三公が国政のトップとすると、九卿は各省庁の大臣クラスという感じです。九卿というくらいですから、九つの役所があり、九卿はそのトップですね。では、それぞれの説明を、ちくま訳巻末の「三国職官表」を参考にして

太常…礼儀・祭祀及び天子の行なう行事を司る
光禄勲…宮殿の門戸宿衛を司り、殿中侍衛の士をとりしきる
衛尉…宮門の衛士、宮中の巡察を司る
太僕…車馬を司る
廷尉…裁判を司る
大鴻臚…諸侯及び四方の帰順した蛮族を司る
宗正…皇室親族関係を司る
大司農…金銭や穀物などを司る
少府…宮中の諸々の仕事を司る



三国志の本を読んでも、あんまり聞き覚えの無い名ばかりですよね。
三公と同様、九卿もしだいに名誉職化していく傾向があります。そのため、三国志の有名人でも、パッと思い浮かぶ人があんまりいないですね(苦笑)

軍事力が朝廷から危険視された董卓。それに対して、中央に召し出し、少府に任官するという命がくだったことがあります。中央の名誉職に栄転し、軍権を奪い取るという狙いです。これは、董卓が屁理屈をゴネて断り、失敗に終わりました。

また、馬騰が朝廷に召し出された時は、衛尉に任じられました。こちらは素直に従ったものの、軍は依然子の馬超が握ったままですが。
余談ですが、北方謙三の小説では「馬騰など、ただの衛尉(護衛官)だという」と、衛尉をちょっと低めの雰囲気にとってるようですね。現代軍隊の尉官のイメージにあわせたのでしょうか?

董卓によって遷都させられた長安の朝廷では、九卿は相当悲惨な目にあってます(それ以外の朝臣達もですが)
董卓死後、長安に攻め込んだ李カクらの軍により、太常チュウ払、太僕魯旭、大鴻臚周奐が死亡
洛陽に戻ろうとする献帝に、李カクが攻撃を仕掛け、光禄勲泉、衛尉士孫瑞、廷尉宣播、その他多くの朝臣が死亡
翌月、再び李カクの攻撃で、少府田フン、大司農張義らが死亡
名誉職化したとはいえ、国家の重臣がこうも立て続けに命を落とす。李カク政権時の混乱で、いかに朝廷が悲惨な有様だったかがうかがえます。

各省庁の中に、様々な部署があるように、九卿の下にも様々な官が置かれています。
例えば、太常の下に、歴史の記録を司る太史令(六品)。
光禄勲の下に、宿衛を司る近衛武官的性格の虎ホン中郎将、羽林中郎将などの諸中郎将(各四品)、黄巾討伐時の曹操の官で知られる騎都尉(六品)
少府の下に、医者を司る太医令(七品)。曹操に反乱を起こした吉本(演義だと吉平)が有名ですね。共謀者の耿紀は少府。


ついでに、九卿クラスの官品の高官をいくつか紹介しときましょう

執金吾(三品)
宮中の宮外の警備を担当。
後漢初代皇帝光武帝のまだ若き頃、都を巡回する執金吾のきらびやかな一団を見て「官につくなら執金吾になりたいものだ」と歎息した話は有名です。これが執金吾どころか、皇帝陛下になるのだから、運命とはわからないものです。始皇帝の行列を見て「男と生まれたからには、あれくらいなりたいものだ」と言った高祖劉邦と比べると、対照的な光武帝の生真面目な常識人像がうかがえて面白いですね。
三国志では、丁原や賈クが任官してます

大長秋(三品)
皇后に仕える。役職上、宦官が任用されました。曹操の祖父曹騰がこれに就いています。

太子太傅(三品)
皇太子の補佐、補導。守り役的存在ですね。役職柄、儒者や学者として名高い人物が選ばれることが多いように思えます。呉のカン沢が太子太傅、薛綜が次官である太子少傅(三品)に任じられています

では、次回はかの諸葛孔明の通称ともいうべき「丞相」です



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この記事へのコメント

1. Posted by 飛燕   2008年09月07日 19:34
お疲れ様です。
官職の話はもっと聞きたいですね〜。大学で多分貴族関係を専攻することになりそうなんで。

概説書とかそれなりに読んだんですけど、どうもいまいち三公・九卿の形骸化や外朝・内朝とかっていう概念て理解しにくいですよね。そのうえ概説書は日本語も難しいですし。
赤龍さんは口語体(って言うんですか?)なんで、概説書よりもわかりやすかったです。
2. Posted by 赤龍   2008年09月08日 01:47
貴族関係をご専攻ですか。
「六朝貴族制についての云々」とかいう論文読む感じでしょうか?

概説書だと、川勝義雄さんの『魏晋南北朝』とか、もろにそんなテーマですが「郷村共同体」だの「土着豪族の開発領主化」だの並べられるとパニックなりそうな(笑)結構難しめの本ですよね。

でもまあ、私なんかの駄文よりも、研究家さんの本読んだほうがずっとためになるんで(笑)、ぜひ頑張ってください

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