2008年09月11日

官職のお話 その4  丞相

書き手:赤龍

ちょっと別の投稿を挟みましたが「官職のお話」シリーズの続きに戻ります
前回はこちら↓
官職のお話 その3  九卿

さて、今回は皆様ご存知「丞相」です。なにせ、三国志のあの二大英雄がこの官で呼ばれるのですから

○丞相(一品)

以前「三公」のお話をした時「後漢の朝臣のトップ。人臣の最高位」と説明しました。たしかに、原則では、常設の官制の最高位です。
しかし、臨時の、非常設の官として、三公以上の権力を持ち、実質的政権のトップとなる官が置かれました。「大将軍」とか「丞相」がそれにあたります。大将軍はまたいつかお話しますね。

もともと、前漢の丞相は三公の一つであり、こうした特殊な地位ではなかったようです。丞相が前漢末に大司徒に改名され、それが光武帝の時「大」の字を取り、司徒に改名された。つまり、本来は「司徒=丞相」のはずなんです。

しかし、これが妙なことになるのが、董卓が政権を握った時。
董卓は、自らの地位を「相国」とし、三公の上に置きます。これまた「相国=丞相」みたいな関係だから、ややこしい。つまり「相国=司徒」であってもいいはずだが、董卓は別枠扱いに。
どうもめんどうな話ですいません。

ちなみに、日本では、これまた非常設の最高位「太政大臣」の唐名を「相国」といいます。この話は以前にもしましたね。「唐名」ってのは、官職をきどって中国風の名称で呼んでみせる雅称。おかげで、「相国」は日本人にもイメージが掴みやすいかもしれないですね。

董卓が死ぬとしばらくは、この臨時の官の「相国」はしばらく空位。
次に出るのが、ご存知「曹丞相」こと曹操です。

建安十三年(208)、河北平定を成し遂げ、江南遠征を控えた曹操は、三公を廃止。代わりに丞相を置き、自らその丞相の地位につきます。
丞相と司徒を並置しないと思えば、関係無い他の二つまでバッサリ廃止。
これは、はっきりいって、自分に権力を集中し、絶対的な位置に置く為の、露骨な改変ですね。名誉職的とはいえ、比肩する地位にある三公を廃止し、朝廷内には、曹操に匹敵する地位にある高官は存在しないことに。
董卓の「相国」から、さらに一歩進んだ権力掌握。

ちなみに、これ以前の曹操は司空。三国志の小説や漫画だと、献帝奉戴のあたりから、曹操のことを「丞相」とよぶことが多いですが、実はこの赤壁の戦いが起きた年以前に、曹操を「丞相」と呼ぶのは間違いなんですね。「曹丞相」より「曹司空」の時期が長かった。



さて、この丞相や、三公、大将軍といったトップクラスの高官には、「府」を開く権限がありました。「府」とは、ミニ政府的な組織。丞相でしたら「丞相府」、大将軍でしたら「大将軍府」
そして、この「府」の役人を自由に任命する権限がありました。

曹操の配下達(特に文官)も、当然この司空府、丞相府に属する者が多く、郭嘉が司空軍祭酒、劉ヨウが丞相主簿、といった感じです。

曹操のように絶大な権力を握ると、当然、司空府、丞相府の存在も、朝廷にあって大きな力を占めることになります。

曹操が死に、曹丕が漢から禅譲を受け魏の世になると、この丞相独裁的な制度は廃止。三公の制度が復活し、丞相は司徒に改める、と旧制に戻ることに。
曹氏の政権奪取の過程の、権力集中が目的である以上、最終目標である皇帝の地位に上れば、こうした存在は不要どころか、危険なものになりかねませんから。
魏に丞相の地位が復活するのは、司馬氏の時になります。魏と同じ過程で国をのっとっていくのです。

さて、ここで蜀に目をむけてみましょう。
蜀は建国当初から丞相の地位を置きました。そう、三国志でもっとも有名な丞相、諸葛亮です。
かの土井晩翠の「星落秋風五丈原」でも「丞相病あつかりき」と、もはや何の断りも無く「丞相」といえば諸葛亮だったんですね。

蜀建国直後は、許靖が同時に司徒になっており、董卓以来の、司徒と丞相は別枠扱いを踏襲しているようです。しかし、許靖の司徒以外、三公任官者が確認できず、曹操と同様の絶対的な地位の丞相だったと思われます。

諸葛亮死後は、蜀に丞相は置かれず、後継者の蒋エン、費イらは、大将軍として政権を運営します。丞相の地位は、偉大なる諸葛亮のための永久欠番なのでしょうか?こうしたことも「丞相といえば諸葛亮」のイメージに拍車をかけます。

呉では、政権のトップが基本的には丞相、ほぼ常設という感じです。初代が孫ショウ、ついで顧雍、歩シツ、陸遜……、と。途中で左丞相、右丞相に分かれたりしますね。
就任者が多いため、特別感というかインパクトが薄く、曹操、諸葛亮みたいな「丞相といえばこの人」というのがないんでしょうね。

 

では、丞相のお話はこれくらいに。次回は「尚書」。うーん、どう説明すればいいか、一番悩むとこだなあ。まいったなあ…



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