2012年06月27日

映画「孤独なツバメたち〜デカセギの子どもに生まれて」

lonely_swallow



1990年代日本の製造業は労働者不足のため、
ブラジルの日系人が日本に呼び寄せられ、彼らは各地の工場で働くようになった。
一時は、日本全国に30万人の日系ブラジルが出稼ぎに来ていたという。

浜松もブラジル日系人が多く働く町になった。
彼らはブラジルから子どもを呼び寄せたり、
浜松で子どもを生んだ。
子どもはブラジル国籍なので、日本の義務教育も保障されていない。
やがて、その子どもの多くは中卒か中学中退で、働きはじめた。

2008年秋、リーマンショックで工場は彼らを解雇した。
以降、安定した職につけない。
ブラジルと日本の2つの故郷で、運命に翻弄される
5人の日系4世の若者のドキュメンタリー映画である。

浜松で育った彼らは同じ仲間とダンスに興じたり、
恋人ができたり、強い仲間意識で結ばれ、
お互いに支え合って、たくましく生きていた。

しかし、リーマンショック後、浜松に残りたくても、仕事がみつからず、
ブラジル国籍のままでは、不法滞在者として生きることになってしまう。

映画は、リーマンショック前の夏、
TV取材から撮影が始まり、
2年半かけて5人の若者を追い続け映画化した。

やがて、ブラジルに帰還した4人を追いかける。
ブラジルでも居場所がみつからない若者や、
ブラジルで働き、夜学校に通う若者(女性)や、
貧しい現地の若者にダンスを教えることで、
ブラジルでの居場所を見出そうとする若者の姿を
いきいきと描く。

日本に残った1人は、浜松で働き税金も払って来たのに、
ハローワークに履歴書何通も出しても、なしのつぶて。
結局、不法滞在の烙印を押された、と涙ながら訴え、
浜松から姿を消す。

この映画は、苦況にある5人の若者が
必死で生きようとする力強さを描いている。

同時に、労働者が足りなくなると、海外から調達し、
不況になると、かんたんに強制送還するもうひとつのの実態が
浮かび上がってくる。

映画では、その点を批判的に描いているわけではない。
けれども、そういう過酷な環境も想像させる。
いま、アメリカやEUなど先進国では、
法的に外国人労働者を規制したり、
本国に帰れという声も強くなっている。

グローバル経済は、一度不況になると本国でも海外でも、
貧しい若者はあっという間に働く場を失い、
彼らの夢や希望も根こそぎ奪う過酷な顔を持っている。

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