2013年07月08日

「医療にたかるな」が投げかける課題

 友人が貸してくれた「医療にたかるな」(村上智彦著 新潮新書)を読む。

 高齢社会の日本で、医療費の増大は今後も避けられない。
 高齢者の仲間入りし、医療利用者である私もそのことを感じている。
 
医療にたかるな

 しかし、赤字が増大する医療費をどう抑えればいいのか、
 まで突っ込んで考えることは、何となく先延ばしにしてきたと思う。

 病院関係者、医師会、製薬会社、厚労省、政治家などは、
 みな日本の医療費の赤字増大の要因を理解しているにもかかわらず、
 誰も根本的な問題として向き合い、どうすべきかを先延ばしにして来た。

 本書の著者村上医師は、その例証として夕張市の破綻を挙げている。
 夕張市の破綻は、今後高齢化がさらに進む
 日本における問題の先取りケースと。

 村上医師の批判は、高齢者やその家族など患者にも向けられている。
 不摂生な生活を続け、健康診断を受けず、ぎりぎりまで医者に行かない。
 そして、設備が立派な病院で検査を受け、
 たくさんの薬をもらえることが、治療に効果があると
 錯覚していると。

 村上医師は、最近まで破綻後の夕張市で地域医療に立ち上がり、
 その改革に奮闘した実績を持つ。
 その村上医師が本書で提案する赤字医療制度の改革は、
 まず地域住民の健康意識、健康診断の受診、過剰受診、過剰検査、過剰投薬の
 抑制=病気の予防から始めること。

 そして、この取り組みを
 地域住民任せにせず、病院や行政、住民が協力した
 「公」という考え方による医療制度の抜本的な改革である。

 また、海外との比較で日本の医療制度は世界でも高い水準にあることを
 例証し、この制度を維持していくためにも、
 医療赤字を無くすことが不可欠とあつく語る。
 このデータは、自分が「井の中の蛙」で知らず知らずに
 バイヤスがかかった視点になってしまっているを
 示している。
 
 もうひとつ、村上医師は高齢者を対象とする医療は、
 今後多くは在宅医療の方向であり、
 また、医療と介護が緊密な連携で行われるべきであると。

 この点も私も同感である。
 問題は、その受け皿づくりである。
 村上医師も、そうかんたんには受け皿ができるとは
 言っていない。
 
 しかし、赤字で医療制度が崩壊するのを避けるなら、
 いままでのように、関係者が自分の既得利益を守り
 改革を先延ばしていることは
 できないはずであるという。
 
 私は家族に、長年精神科に通う妹(いま71歳)がいて、
 精神科意外の内科関係にも通院してきた。
 そこで、過剰投薬になっている状態を何とか改善したいと
 妹と病院に同行して、医師に相談してきた。
 しかし、薬の減量は、妹の精神的不安が強く、
 なかなか進まない状況が続いていた。

 しかし、精神科医師の粘り強いアドバイスもあって、
 近年、向精神薬だけでなく、内科の投薬も
 少しずつ減量に向かっている。
 また、最近1ヵ月は精神科の医師が妹に早朝散歩を勧めてくれて、
 本人も熱心に取り組み始め、不安感が少しずつだが、
 減少気味で、とても助かっている。
 
 妹のような持病を抱える患者や私のような高齢者は、
 不調や健康不安を医療でなんとかしたいと思うのは
 ある程度はやむを得ない。
 
 しかし、よく考えてみれば、
 不調なら早期の診察を受け、
 定期的健診を受けているのであれば、
 多少の不調や不具合や不安は何とか受容し、
 まあ、食事が摂れ好きなことをし、
 おしゃべりしたりできる日常は恵まれている状況だと
 受けとめる寛容さを自ら持つことが大事なように思っている。

 今週末、私はたまたまだが、もう20年以上続けてきた、
 年1回の健康診断を予定している。

この記事へのトラックバックURL