―秘境、入り口―

ティガ兄 「ラーの野郎は、前から気に食わなかった……」
ヴォルガノス 「…………」
ティガ兄 「あの時……先生を呼び出して、火山で襲ったとき、熔岩に突き落としときゃぁ良かったんだ」
ヴォルガノス 「ラージャンは普通じゃねぇって話ィ、聞いたことありやしてな……」
ティガ兄 「……」
ヴォルガノス 「ありゃ、ドドブラと砂ブラの子供ぅつう話だが……」
ティガ兄 「砂ブラ? まさか! 雪山と砂漠のモンスターじゃ、そもそも種族が違うだろ」
ヴォルガノス 「それでも突然変異で産まれることがあるってな。そんな話でさ」
ティガ兄 「第一砂ブラなんて、俺だって話に聞いただけで……本当にいるかどうかも……」
ヴォルガノス 「まぁ、そういったわけで、あいつはモンスターでありながら、モンスターを越えた力を持ってるんでさ」

ティガ兄 「ちぃっ。胸クソ悪ィ」
ヴォルガノス 「学生の頃からおかしいたぁ思ってたが、どうにも、興奮すると人格が変わったようになるとか」
ティガ兄 「……確かに。金色になると、妙に滑舌良くなるな……」
ヴォルガノス 「先生は平和主義者だが、敵になるってんなら、早めに叩いとくに越したこたぁねぇって訳で」
ティガ兄 「…………同感だ。ン? 先生達だ」
ヴォルガノス 「ドドとギザミもいやすぜ」
ティガ兄 「くそが……イラつく面ァしてやがる」

ドドブランゴ 「……では、人間の引渡しもせず、攻撃にも参加しないと、そう言うのか」
ディアブロス 「くどい。我らにはせんなきこと。おぬしらの意見も聞く余地などはない」
ショウグンギザミ 「…………キシェッ……おいぼれが…………話にならん…………」
ディアブロス亜種 「(ぐるるるる)」
ナナ・テスカトリ 「ドド様、何故ですか。人間達との争いは、ラオシャンロン様が……」
ドドブランゴ 「黙れ、愚女が」
ナナ・テスカトリ 「……!!」
ドドブランゴ 「……このたびの攻撃で、まだ分からないか。人間は、我らの住処を奪うことなど、なんとも思っておらぬ」
ナナ・テスカトリ 「ですが……」
ドドブランゴ 「ですが、何だ? 貴様には癒せるのか? 住処を、仲間を失った者の苦しみ悲しみ全てを……」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ドドブランゴ 「だから我らは、報復をするのだ……人間達に、我らの恐怖を与えるのだ……」

ドドブランゴ 「その何が悪い……砂漠の長よ、答えよ!」
ディアブロス 「笑止」
ドドブランゴ 「何!?」
ディアブロス 「雪山の長よ、悲しみだ、苦しみだとのたまうが……なら、それはお主らだけで勝手に取り組めばよいこと」
ドドブランゴ 「……!!」
ディアブロス 「我々は、知ったことではない」
ドドブランゴ 「…………モンスターの身でありながら、モンスターを支持せぬと申すか……」
ディアブロス 「同じことよ。知ったことではないというだけの話……」

ドドブランゴ 「……これ以上話しても無駄なようだな……」
ディアブロス 「…………」
ドドブランゴ 「我らの攻撃は、明朝予定通りに行う……しかし、その前に……」
ドドブランゴ 「貴様らが保護している人間を差し出せ……」
ドドブランゴ 「……差し出せぬというのならば、貴様らも人間と同じよ……」
ドドブランゴ 「奴らに組するものとして、実力行使に移らせてもらう…………」
ディアブロス 「…………」

ディアブロス 「話はそれだけか……」
ドドブランゴ 「…………」
ディアブロス 「……沢山の蟹と猿をはべらせよく言う……」
ディアブロス 「やるなら来んか……男らしくないぞ、雪山の主……」
ドドブランゴ 「! 貴様……」
ドドブランゴ 「……わしを愚弄するか…………!」
ディアブロス 「………………そちらの愚息に、我が弟子が少し世話になってな……」
ディアブロス 「何、来るというのならば、拒む理由もないというもの……」

ナナ・テスカトリ 「(駄目だわ……話を聞いてくださるような状況では……)」
ナナ・テスカトリ 「(……ラージャン君の姿が見えない……)」
ナナ・テスカトリ 「(せめてあの子だけでも、この不毛な争いから……)」
ナナ・テスカトリ 「……!!」
ナナ・テスカトリ 「(何? 地面が揺れてる……!!)」
ナナ・テスカトリ 「(地震!? こんな、砂漠の真ん中で……)」
ティガ兄 「! 先生危ねぇ!(バッ!!)」
ナナ・テスカトリ 「きゃぁ!(ズザァァッ)」
ヴォルガノス 「師匠!!」
ディアブロス 「!!(バッ)」
ディアブロス亜種 「……!(バッ)」

>ズゥゥゥゥン
ナナ・テスカトリ 「(な……何かが、私たちのいた場所に……突き刺さった……!!)」
ナナ・テスカトリ 「(ティガ兄君が、私を抱えて飛び退ってくれなかったら……)」
ナナ・テスカトリ 「(あ……あの……)」
ナナ・テスカトリ 「(あの巨大な足は……もしかして……)」
ナナ・テスカトリ 「(シェンガオレンの……!!!!)」

ディアブロス 「(ズザッ)」
ディアブロス亜種 「主、お下がりください」
シェンガオレン 「(ズズズズズズ)」
ディアブロス亜種 「…………地中を移動してきたか、ヤド無しカニが……!」
ディアブロス 「今更、ヤドを壊され、気が触れた男の封印を解いて、どうするというのだ……?」
シェンガオレン 「キシェ…………シャァァ!!」
ティガ兄 「な……何て大きさだ……」
ヴォルガノス 「それに、目の色が完璧おかしい……ったく、面倒なことに……」

シェンガオレン 「痛ェェエエェ……痛ぇぇぇええぇヨォォォ」
ショウグンギザミ 「父上…………もうじき……痛みは晴れます…………人間に恨みを晴らし…………」
ショウグンギザミ 「そして……ラオシャンロンの頭を、新たなヤドとすれば…………」
ナナ・テスカトリ 「! 何ということを!! あなた方、ご自分の仰っていることが……」
シェンガオレン 「痛ぇぇぇえよぉぉぉぉ!!(ブゥン)」
ティガ兄 「先生、早く逃げろ!(ドン!)」
ナナ・テスカトリ 「きゃ……ティガ兄君!!」
ティガ兄 「(ドズッ)ガッ………………!!!」
ティガ兄 「…………(ズゥゥゥン)」

ナナ・テスカトリ 「そ……そんな! そんないきなり!!」
シェンガオレン 「ブェァァァァアァ(バシャァァァ!!)」
ディアブロス亜種 「くっ……溶解液を……! これでは近づけない……!!」
ディアブロス亜種 「奴め……本気で、人間に組するモンスターごと、人を叩くつもりか……!!」
ディアブロス 「…………」
シェンガオレン 「キャラァァ!!(ブゥゥゥン)」
ディアブロス 「(スッ)…………(ガキィィィンッ)」
ドドブランゴ 「!!」
ディアブロス 「…………えげつがない……だらしもない……一度負けた負けカニが、今更何をほざく……」
シェンガオレン 「痛ェェえええ! 背中が痛ぇぇよぉぉぉ!(ブゥゥゥン)」
ディアブロス亜種 「……(ガキィィィン!)」
ナナ・テスカトリ 「(あの大きな足を、跳ね返した……!!)」
シェンガオレン 「キシャァァア!!」

ディアブロス 「大方……ラオの監視の目が緩んだのを見て連れ出したようだが……ヤドのないカニは、所詮カニよ……」
ショウグンギザミ 「我が父を……愚弄するか…………!!!」
シェンガオレン 「シャァァ! シャァァ!!(ブン! ブン!)」
ディアブロス 「(ガキィィン! ガキィィィン!) ……ッ!」
ディアブロス亜種 「主!」
ドドブランゴ 「ふん……老体でよくやる……しかし……」
ラージャン 「………………(スッ)」
ナナ・テスカトリ 「!!」
ドドブランゴ 「行け」
ラージャン 「……(シュッ)」

ディアブロス 「(ガキィィン)……!!」
ラージャン 「(ヒュッ)…………(バチバチ)」
ナナ・テスカトリ 「いけない! 駄目、ラージャン君!!」
ラージャン 「……!(ピクッ)」
ディアブロス亜種 「主!(ドドドッ)」
ラージャン 「(ブワッ)」
ディアブロス 「な……(早い……)」
ディアブロス 「(それに気の量が……爆発的に……)」
ヴォルガノス 「師匠!!(ラージャンが、金色に……)」

ラージャン 「ギャォォォォ!!(バチバチバチバチバチ)」
ディアブロス 「ガァァァ!」
ディアブロス亜種 「グ……アァァ!!!」
ディアブロス 「…………(ズゥゥン)」
ディアブロス亜種 「………………(ズゥゥン)」
ラージャン 「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」
ヴォルガノス 「(な……何てこった……)」
ヴォルガノス 「(師匠とバトラーに、雷が落ちた…………)」
ラージャン 「はぁ……はぁ……(ガクッ)」

ヴォルガノス 「……ッ! しまった! シェンが……!!」
シェンガオレン 「ギャハハハハ! 痛ぇぇぇよぉぉぉぉ!!(ブゥゥゥゥン)」
ナナ・テスカトリ 「!!」
>ドズゥゥゥゥン
ヴォルガノス 「ぐぁぁぁ!!」
ナナ・テスカトリ 「きゃぁぁあああ!!」
ヴォルガノス 「………………(ズゥゥゥン)」
ナナ・テスカトリ 「………………(ズゥゥゥン)」

シェンガオレン 「ケヒュ…………ケヒュ…………」
ショウグンギザミ 「……もうじき……もうじき新しいヤドが手に入ります……父上……」
ドドブランゴ 「………………戻れ、ラーよ」
ラージャン 「…………(シュバッ)」
ドドブランゴ 「…………」
ディアブロス 「………………」
ドドブランゴ 「よし、者ども……ディアブロスの巣を漁れ……」
ブランゴ達 「キキィ!!」
ラージャン 「はぁ…………はぁ………………」
ラージャン 「せ…………先生…………」
ナナ・テスカトリ 「………………」

―砂漠、火山近く―

ドスガレオス 「(ブハァ!)……ッ、やっと抜けた!!」
ドスガレオス 「(しかし、途中で何か地震みたいな音を聞いたが……)」
ドスガレオス 「(また、火山が崩れたのかね……)」
女児 「はぁ……はぁ……」
ドスガレオス 「おっと、まだ死んでないみたいだな」
女児 「うん……ありがとう……」
ドスガレオス 「ここからは、砂を泳ぐから、俺の背中に登って、ヒレを掴んでな」
女児 「わかった……(よじよじ)」

ドスガレオス 「ん~~~~、綺麗な星空だ!」
女児 「…………」
ドスガレオス 「……(そういや、目が見えなくなってたんだっけか)」
ドスガレオス 「(人間も、俺らと同じように……)」
ドスガレオス 「(心細くなったりすんのかね)」
ドスガレオス 「? あれは……」
ドスガレオス 「!! テオの旦那に……バサルっち!」
女児 「……バサル君?」
ドスガレオス 「おーい! 何してんですかい~~!!」

テオ・テスカトル 「ドスガレオス君ではないか!(ズザザザザッ)」
ドスガレオス 「おっす旦那。こんばんはです。奥さん探しっすか?」
テオ・テスカトル 「その通りだ。そういう君は……」
女児 「…………」
テオ・テスカトル 「そうか……この子を先に連れ出したのだな」
女児 「こ……こんばんは…………」
テオ・テスカトル 「……?」
テオ・テスカトル 「(目の焦点が合っていない……)」
テオ・テスカトル 「(見えていないのか……?)」

バサルモス 「あぁぁ!! 女児!! 良かった!!」
女児 「その声は、バサル君!」
ドスガレオス 「バサルっち、久しぶりだなー!!」
バサルモス 「ドスガレ!? 何でこんなとこにいるの!?」
クック 「女児!? 女児じゃないか!!(バサァッ)」
キリン 「女児ちゃん!?」

女児 「(あれ……)」
女児 「(おじさんと、お姉ちゃんの声が聞こえる……)」
女児 「(見えないよ……何も、見えないよ……)」
女児 「(聞き違い……?)」
クック 「女児!!」
女児 「(おじさんの声……)」
女児 「(おじさんの羽のにおい……)」
女児 「(見えない……見えないけど……)」

女児 「(おじさんが、そこにいるの……?)」
女児 「(おねえちゃんも……)」
女児 「(おじいちゃん……わたし……)」
女児 「(想像してもいいの……?)」
女児 「(むかえに……)」
女児 「(わたしを、むかえに…………)」
クック 「女児! 探したぞ!!(バサァ!!)」
キリン 「女児ちゃん、良かった……心配したのよ……」
女児 「おじさん……おねえちゃん……?」

クック 「女児、どうした? 私だ。クックだ!」
女児 「おじさん…………(ふらふら)」
女児 「…………ッ(ゆらっ)」
クック 「あ……ッ!!(がしっ)」
女児 「……!!」
女児 「これ…………おじさんの羽だぁ…………」
女児 「………………」
女児 「おじさん!!」



次回へ続く!