天野ナス。

ぼくは黒っぽい犬。じゅうにん家族。

2016年05月

image

散歩の途中でマルちゃんに会った。
ぼくは犬が苦手なのでおかあさんの後ろに隠れて話を聞いていた。
「この子はマルちゃん、マルチーズだからマルちゃん」 と
マルちゃんのおかあさんが言っていた。
しかしマルちゃんはキャバリアだ。

ぼくのおかあさんがマルチーズとキャバリアを見分けられないはずがないのに
おかあさんは「かわいいですね、マルちゃん」とこたえていた。

あの子はキャバリアだよね?とおかあさんに訊くと
「生死にかかわらない間違いは特に訂正しなくても良い場合が多い」 という。
笑いが取れそうな場合は訂正しても良い、とも言っていた。


ぼくはマルちゃんのおかあさんがどこかで恥をかきやしないかと
ちょっと心配になったけれど、おかあさんがそういうんだったら
マルちゃんはマルチーズということでもいいか、という結論に至った。

PB305684


初夏という季節がおとずれた。
木々の葉の緑が濃くなってくると昆虫たちが発生し始めた。
寒い時は虫に対する心配が少ないので園芸活動を謳歌していたおかあさんだけど
このところ下降気味だ。
それは暑いせいもあるけれど、むしろ昆虫大発生のせいだ。
ほとんどの昆虫には我慢できるおかあさんだけど、蛾と蝶に対する敵対心はすごい。

おかあさんは借金を申し込んでくる人や、鬱時の機嫌が悪いじじぃも大嫌いだが
そんなもの比べものにならないくらい「蛾」が嫌いだ。
前者が嫌いなのには、想像力がなさすぎるとか面倒くさいなどと理由づけができるが
「なぜ蛾が嫌いなのか」は何年考えても答えが出なくて、そんなところも含めて嫌いなのだそうだ。
とにかく人生で出会った瞬間から恐怖を抱かせる輩なのだそうだ。

蛾は存在するだけでおかあさんに損害や被害をあたえているようには見えないし
そもそもおかあさんのほうが何百倍も身体が大きく、絶対的に有利な立場に立っているわけなので
それを説明してあげても「でも無理」と不明な答えが返ってくる。

フォルムや彩色のうつくしさで蛾や蝶を採集する人、絵に描く人もいるよと言ってみた。
すこしチャレンジしてみたらしいが、「直視するのが無理」という。

蛾的にいって、このようにおかあさんを怖がらせるのは「正解」なんだろうか?
いきものの模様やフォルムは身を守るためのものときいたことがある。
そういった観点からは成功しているようにおもわれるが
おかあさんの場合、殺意をも抱くので、「大成功」というわけないはいかないようだ。

DSC_3870

うちでは女性チームはお酒に強く、男性は弱いか下戸だ。

最近はなぜだかあまり飲まないが、ぼくが生まれる前はモ二ちゃんやぽっちゅねえちゃんはおかあさんがビールを飲み始めると「わたくしもいただくわ」と所望して飲んでいたそうだ。
犬助おとうさんもお相伴にあずかり飲んでいたけれど、ある日飲みすぎて千鳥足のあと壁に手をついて苦悩のポーズをとってしまい、その後は「ぼくは結構です」というようになったそうだ。
ブチや助男先輩はそもそも下戸で飲めない。
ピバールにいたっては誰も勧めもしないからどうなんだかわからないけどのんでいるところをみたことがない。
ぼくは気味の悪いものには近づかないようにしているので飲まない。
じじぃはとても癖が悪い。
飲み始めると止めることができなくなるうえに、弱い。
モ二ちゃんにからんで「おとうさんなんか大嫌いですわ、格好の悪いのですもの。」と言われ軽蔑されている。
ぽっちゅねえちゃんがひとりでがんばって介抱している姿をときどき見かける。

image


ぼくが書いている「天野ナス。」もSNSの一つの機能である日記ブログにあたる。
そもそもSNSというのは自分をPRする道具なんだとおかあさんが言った。
ぼくをPRするとぼくにどんな良いことがあるのだろうか?
もし良いことがないとしたらぼくはなぜ日記ブログを書くのだろうか?


ぼくの知らない世の中のひとびとがぼくの写真を見て可愛いと感じたり、
このこはこんなことを思っているんだとか知ることは
ぼくにも、相手にとってもさして必要なこととは思えない。


でも、たとえばおかあさんが全然知らない外人であるボナールだのシスレーだのの絵を見に行ったり、テッド・ニュージェントやエアロスミスの音楽を聴きに行ったりして感心したりするのと似ているような気がする と、問うてみた。
「あのひとたちは絵を描いたり音楽を演奏したりして賃金を得ている労働者だから、ナスとは違うのでは?」との答えが返ってきた。
そういわれてみればそうだ。


ぼくは、ぼくがこんなに可愛かったり、たくさん考えていたりすることを
ぼくが忘れないために書きとめているのじゃないの?とおかあさんは言う。

おかあさんはみせてくれないけど、おかあさんもSNSをずっと前からやっているんだそうだ。
どんなことを書いているの?と聞いたら「概ね自慢話」だということだった。
「素敵な自分」を確認していないと不安なのだろうか?
ぼくたちを自慢したくなるのは、とてもよくわかるけど。

このページのトップヘ