おかあさんはレモンケーキが好きだという。
しかし、こどもの頃の記憶の中のレモンケーキに出会えずにさすらっている。
もっとチープな感じなの
こんなに甘くはなかった
レモンの酸味がきいていない
コーティングはレモン風味のホワイトチョコレートだったのに
さわるととけて指につく感じで
駅の売店でも売ってたのに
などと差違ばかり申し立てる。
ぼくにはそういいながらレモンケーキを食べ続ける理由を探しているように見える。
きっと「おかあさんのレモンケーキ」はおかあさんの頭のなかにしか存在しない幻想にちがいない。
人間はなにかを追求しながら生きることを良しとされているらしいので
おかあさんの 場合はそれがレモンケーキなんじゃないか?と思った。
でも、そんなにまでいうなら
ぼくにもひとつくらいくれればいいのに。
というのが率直な意見だ。