天野ナス。

ぼくは黒っぽい犬。じゅうにん家族。

カテゴリ: 年中行事。


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じじぃの換算だと4歳のぼくは人間でいうところの20歳なんだそうだ。
ということで、ぼくはめでたく成人したのだ大人なのだとじじぃは言う。
そう言うじじぃはじじぃのくせにまったく大人になっていない。

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夏休みになると毎年うちに「偽おかあさん」というのがやってくる。
外国という、日本ではないところから来るのだそうで
だいたい1~2か月うちで過ごす。

「偽おかあさん」はお母さんによく似ているが、似て非なるものだ。
性質はじじぃに似たところがあって昔の出来事を恩着せがましく言ったりする。
「離乳食を食べさせてあげたの誰だと思っているの?」とかだ。
その頃のぼくはやっと目が開いたばかりで誰が何してくれたとか全然覚えていないんですけど
離乳食を食べさせて下さったのならありがとうございます、と言っても
ぼくがとてつもなく人見知りでなつかないので悲しい顔をする。
それでも不屈の精神で「偽おかあさんだよ 偽おかあさんだよ」と迫りくる。

最初から「偽」だと公言してくるところなどは好感が持てるので
うーんそろそろなついてみようかな?と思う頃に夏が終わって「偽おかあさん」はまたどこか自分の家に帰っていく。

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この夏、ぼくは3歳になった。
ぼくたちは人間よりも早く成長するので、、、
(・・・といえば聞こえはいいが寿命が短いというのがほんとのところだろう。)
とにかく、3歳といえども人間のような不束者ではない。
生きていくための大抵のことは勉強済みだ。

じじぃの換算によるとぼくは少年から青年になりかわるあたりらしい。
しかしおかあさんはあいかわらずぼくのことを「黒あかちゃん」と呼んでいる。
おかあさんのためにぼくはもう少しの間、赤ちゃんでいてあげようと思った。

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ぼくたちが住んでいるところには季節というものがあって
それはだいたい4つに分けられている。
春 夏 秋 冬 だ。
ぼくは夏のはじめにうまれたので
「春」という季節は最後に経験した。
冬は寒い。寒いとけっこうつらい。
そんなかんじで四か月ほどすごすと
地面が暖かくなって落葉樹は緑を取り戻し草の芽が出てくる。
それからついに花盛りの時を迎える。
とくに、「桜」という木に花が咲くとあたりがざわめきだしてさらには浮かれだす。

花は好きだ。
おかあさんが植える草に咲く花を片っ端から食べて叱られる。
でも「桜」みたいに節操なくたくさん一気に咲くものはちょっとびっくりする。
それに「木の花」は高いところに咲くからぼくが見るためには首に負担がかかりすぎる。
というわけで、そんなに興味はないのだけれど
おとうさんや、とくにおかあさんは「花見」というものをしたがって
それにぼくたちを無理やり連れて行って無理やり写真を撮ってご満悦。
理解しがたいけど、おかあさんが喜ぶのならぼくは良いと思ってる。
まぁそんなふうに「春」というのが始まるわけです。

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じじぃやおかあさんや大方の人類が
年が変わったの新年だのとさわいでいた。
なにを右往左往しているのか
はたまた右往左往するのが楽しいのか。
どうやら、いちいちリセットして
また同じことをあたかも違ったことのようにやりたいらしい。
そのきもちが意味不明。

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