明日への誓いも無しに死ぬ事等今の僕にはとても考えられないし常に死んでしまいたいという欲求もあるがそれに応える気は毛頭ない。全ては進むためのモノなのだから。-コオロギ イサト-
間違えそうな広い空がある大陸モスキート。間違えそうなというのはもちろん道を、だ。限りなく広い荒野がありそこには無数の王国や街、村が点在している。限りなく・・・。
★マサムネ第一話『ねこじゃらし』★
☆水の街グラン☆
一人の青年。名前は『ヤギュウ ジュウベイ』その隣には白髪の紳士『ヤギュウ セキシュウサイ』が凛として立っている。
「次の修行場所はここか」
「・・・そうです」
「この街にはどんな難題が俺を待っているのだろうな」
「・・・がんばりなされ」
「おう!」
彼らは街への一歩を踏み出した。
この世界では『冒険者』という職業がありその冒険者に選ばれたものは各地を回り修練を重ね年一回行われる『勇者王決定戦』での優勝を狙うのがこの世界で野望を持った者たちの目指すべき目標である。もちろんこのジュウベイも例外ではない。彼はセキシュウサイの弟子にして後継者、ヤギュウ新陰流の伝承者なのだ。名をなすことが己の誉れ。そして自分の存在を歴史に刻み付けるのが彼の目標なのだ。そして今日もまた・・・
「カザミ!早く来ないとおいていくぞ!」
彼の冒険は始まる。(私はカザミという彼の使い魔だ、彼の伝説を記録する役目にある)
「かぁー!」
(鴉である)
☆街中☆
「なかなか賑やかな街だな」
「・・・そうですな」
「まずは神殿へ行ってくるとするか」
この世界で冒険者は基本的に神殿で仕事をもらう事になっている。それは神殿が冒険者を総括しているからであり数限りなくある依頼もそれぞれの街や村にある神殿に届けられ各冒険者に振り分けられるからなのだ。つまりジュウベイが最初に神殿へ行くのは仕事をもらうためということなのだ。
「なるべく早く済むのを選ばないとな・・・」
「・・・飢え死にしてしまいますからな」
「かぁー・・・」
残り金は底をついていた。
☆神殿☆
グラン神殿は比較的小さく神官の数もそれほど多くはない。奉っている神も水の聖霊神『ウンディーネ』だけのようだ。世界には4つの聖霊がいる。火、水、土、風の四種類。大きい神殿で4つの聖霊全てが祭られているのだが小さい街や村だとこうして特性に合わせて聖霊を祭っているところが多いのである。私たちは神官長『ガフト』に謁見した。
「これはこれはよくこられた冒険者殿」
「あぁ、早速だが仕事の話をしていきたい」
「そ、そうですな。しかし今現在仕事と言えるようなものはないのです」
「・・・へっ?」
「この地方は水の聖霊神様のおかげで平和が保たれているから魔物退治等の依頼もなくて・・・」
「ま、まいったな・・・これじゃあ飢え死にしちまうよ」
「はて?神殿でよろしければ寝る場所と些細ですが食事もご用意しますよ?」
冒険者というのは神殿での適正試験を突破したものがなれるの。その際合格者には大錬金術師『ソラレス』が作ったロットナンバー入りのコインが渡される。これを見せれば神殿では寝る場所と食事を用意してくれる。つまり最低限の保証はされているはずなのだが・・・
「それでは修行にならんのでな、遠慮する」
こういう訳で私も苦労する日々がつづいているのです。
☆神殿前☆
「しかし・・・こまったな・・・他の町まで行くっていうのも無理そうだし・・・」
「・・・困りましたな」
「かぁー」
その時前方から大地を蹴り上げる音と土煙がこちらへやってきたのです。
「まままままままままままぁぁぁぁ!!!こまったわぁぁぁぁぁぁ!!!」
どーん。と跳ね飛ばされた私達。
「いったたたた・・・なんだぁ?今のは」
「・・・なんでしょうな?」
セキシュウサイは何があっても取り乱しません。
☆再び神殿☆
「ままままままぁぁぁぁ!!」
「まーまー落ち着いて・・・あっ!これは冒険者殿!良い所に!」
「へっ?」
なんだろうと見に来た事が幸運だったようです。
「こちらのご夫人が依頼したい事があると・・・」
「ままままま!あなたたち!依頼を受けてくださるの!?」
「あぁ、もちろんお任せあれ」
「それじゃあうちのムスクちゃんを探してきてくださる!?」
話によればこのまままオバサンの大事な家族であるムスクちゃんが昨日を最後に家に帰ってこないので探して連れ帰ってきてほしいとの事だった。
「引き受けてくださる!?」
「あぁもちろん、で?報酬は・・・」
「無事に保護してくれたなら500G差し上げるわ!」
「安いな・・・まぁ仕方ないか。そのムスクちゃんとやらの特徴は?」
「サラサラの毛」
「ふむ・・・サラサラの髪の毛・・・」
「すらっと伸びた手足」
「ふむ・・・ムスクちゃんって割には結構なお年頃なのかな」
「そして自慢の鍵尻尾」
「・・・尻尾?」
「尻尾」
「そ、それで?」
「にゃーって鳴き声が心に染み入るようで・・・」
「・・・猫!?」
つづく。