飛び立った鳥が弧を描き墜落していった、そんな情景しか頭に浮かばない。僕は今堕ちたのだ。暗く暗く深い暗黒へ。-コオロギ イサト-
間違えそうな広い空がある大陸モスキート。間違えそうなというのはもちろん道を、だ。限りなく広い荒野がありそこには無数の王国や街、村が点在している。限りなく・・・。
★マサムネ第一話『ねこじゃらし』★
☆街中☆12:00
「どうしたもんかな・・・」
「・・・そうですな」
「とりあえずは聞き込み・・・あっそこのひと!」
私達は依頼を受け猫探しをスタートした。ジュウベイは渋っていたが自分の腹の音がなによりの説得となった。
「こういう猫を見なかったかい?」
「いやー猫なんてそこら中にいるからねぇ・・・」
「鍵尻尾が特徴なんだけど」
「ちょっとわからないな」
聞けども聞けども行方はわからずじまい。ほとほと煮詰まってきたところに
「よぉ」
「・・・げっ」
「げっとはなんだげっとは」
「ここで何をしている」
「ふん・・・仕事さ」
現れたのは冒険者グイン。ジュウベイの行く所行く所になぜか現れては依頼の邪魔をする奴だ。・・・よく言えばライバルってことなのかな。
「まさか・・・今回も・・・」
「そういうこった!猫は俺が先に見つけさせてもらうぜ!」
「この・・・!いつもいつも同じ依頼を受けやがって!このストーカー野郎!」
「その方が優劣がつきやすいだろう?まぁせいぜいがんばるんだなー!」
とまぁこういう感じなのだ。
「酒場で聞き込んでみるか」
「・・・そうですな」
☆酒場☆
「いらっしゃい!」
酒場の中は昼間でも活気付いていた。今の時間帯は食堂としてやっているようだ。恰幅のいい女主人が元気欲迎えてくれた。
「あぁちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんだい?」
「こういう猫を知らないかな」
「ムスクちゃんならいつもうちにきて客から何かしらもらってでていってるよ」
「今日はきているかい?!」
「いや・・・今日は見てないねぇ、どうかしたのかい?」
「いや・・・実はこの猫がいなくなっててさ」
「そうなのかい・・・あぁそれならこの道をちょっと言った所にある『エスペランザ』っていうレストランのコックが可愛がってたみたいだよ、もしかしたらそこにいるんじゃないか?」
「おぉ!じゃあ早速いってみるよ!ありがとう」
「ちょっと!一杯ぐらいのんでいきなよ!」
「・・・す、すまん金がないんだ・・・」
「・・・しょうがないねぇ、あっちょっと待ってな」
そう言っておばさんはおにぎりを作ってくれた。
「依頼をこなしたらまた食べにくるんだよ!」
☆エスペランザ☆
上品な門構え、赤い絨毯、紛れもなく・・・ここは・・・高いレストランだ・・・!
「わぁ・・・」
「・・・高そうですな」
二人とも釘付けだ。
「当店に何か御用ですか?」
しばらく見つめていると入り口のところに立っていたボーイが話し掛けてきた。
「あ、あぁ!実はこういう猫を探しているんだ」
「それならうちのコックがよく話をしている猫かもしれませんな、少しお待ちを」
少ししてコックが来た。
「猫の事だって?」
「あぁそう、いなくなってしまったんで探してるんだ」
「んー・・・うちにも昨日から来てないなぁ」
「そうか・・・」
「ん・・・あっ!そういやぁうちで飯を食ったあといつも街の外に行ってたみたいだぜ」
「街の外?」
「あぁ、すぐそこの南門から出て行くんだ。・・・だがあっちの方角には裏切りの洞窟ぐらいしかないんだがなぁ」
「裏切りの洞窟?」
「昔冒険者のパーティの一人が魔物と手を組んでパーティを壊滅に追いやったあげく水の聖霊様を暴走させてこの地域を水害に陥れたっていうのがその洞窟名の由来さ、その後パーティの家族が仇をとって聖霊様も普通になってめでたしってなったんだがな」
「ふぅん・・・裏切りの洞窟ね」
どうやらそこに何かあるのは確かなようだ。
「ところで」
「ん?」
「その猫はいつも何を食べてたんだ?」
「店の残り物だが?」
「・・・一口もらえないだろうか!」
いよいよ空腹が極まってきているようです。
☆南門☆
「よう」
「グイン・・・」
「どうやら情報を掴んだようだな」
「ふん、それがどうした」
「その情報・・・いただくぜ!」
グインは剣を抜き決闘を示した。グインの剣はロングソード、冒険者の間で広く流通する両面刃の長剣だ。
「・・・ワンパターンな奴だ」
ジュウベイは腰に刺さった剣を抜き出す。それはヤギュウ新陰流に伝わるサムライスピリットを具現化した『刀』という剣とは少し違う形状のものだ。その名は
「行くぞ、マサムネ!」
つづく。