痛い痛い痛い、心に傷を負ってしまった。こりゃあまいったと家路につきながら涙を零す。ひびが入った。音をたてて世界を壊したい、せめて僕のまわりだけ壊れてくれと願うが夜の闇にも声をだして叫べない。月が見えるこの夜に僕をふみつぶしてくれと願う、願うだけ。月は光るだけで何もしてくれない。綺麗だけどひびは治らない。ぬくもりがほしい。あぁ今日あった女の子をむりやりにでも押し倒しておけばよかったかな?・・・違う、そういうのじゃない。僕はそんなんじゃない。形だけのモノなんて求めてないしいらない。なにがいるのか?・・・温もりだ。それは間違ってない。あぁ・・・なんて寂しいんだ。確実に僕は一人だ。何もそばにはいないし(幽霊なんてごめんだし)言葉だけでも傍においておきたいのに他人すらまわりにいない。そんなときに僕一人だけ喋って言葉をそばにおいておくのもいいが言葉を出すことがためらわれる。困った、非常に。
朝迄あと3時間。僕のやれるべきことは・・・なし。ないんです、なんにも。えぇないです!ないですよね!?僕は・・・僕は孤独なんだから・・・なにもすることはないですよね・・・?気がついたら言葉になってた僕の声。誰に喋りかけてるんだか。やばい、涙がでてきた。月だ・・・月のせい。嫌な事ばかり思い出される。実際にこれが嫌だなんてものは具体的にでてこないけれど抽象的な人間の想像力というものは実に恐ろしい。寂しい、寂しい月の夜。こよい貴方が恋しくてたまりません。あなたにメールをおくりましたが帰ってきませんでした、僕の心は壊れそうですよ?貴方は僕を愛してくれるんじゃなかったんですか・・・?またヒトリゴト。携帯と喋っててもしょうがないでしょう僕。
窓をあけて空を見上げました。また涙がでてきます。なんでこんなに涙が溢れてくるのかわからなくなってくるほどに涙がでてくるのです。もう嫌になっちゃうよハハハ。笑ってる余裕なんてありません!くそう!寂しいよ!誰か・・・誰か傍にいてくれ!
「誰か!」
「はい!?」
「・・・えっ?」
「な・・・なにか?」
隣の家の屋根に一人座ってました。暗くてよく見えないけれど声から男・・・若い男だとわかります。なんだよ、女の子じゃないのかよ。あっ僕まだまだ余裕あるやアハハ。
「いや・・・ごめんなさい」
「はぁ・・・あっもしかして・・・」
「・・・もしかして?」
「いや・・・寂しかったりします?」
なんということだろう、確信をつかれた。僕の目は開き瞳孔まで開いていたかもしれない。なんだよ・・・そういうのはわかっても・・・いっちゃあいけないもんじゃないのかよ・・・知らないけどさ。
「・・・寂しいですけど」
「あっ!やっぱり!」
なんで嬉しそうなんだよ。僕はずたずただ、死にたい願望まででてきてしまった、あぁほら死ぬ妄想が始まってしまったじゃないか。ビルの屋上から飛び降りて地上でぐちゃぐちゃになる妄想。
「あの・・・」
なんだよ・・・。
「僕も・・・寂しくてですね・・・」
へぇ・・・。
「そっちいってもいいですか?」
「えっ?」
「いや・・・話しにくいかなって」
「いや・・・別に・・・」
「いきますね!」
「いやいいです!」
「なんで!?」
「なんでって!嫌ですから!」
「そ・・・そうですか・・・」
「はぁ・・・」
しばらく黙っていた、お互いに。なんか・・・きまずい。これじゃあ僕が悪者みたいじゃないか。くそう・・・くそう・・・。
「・・・僕がそっちへいきます」
「えっ・・・あっはい!」
なんで嬉しそうなんだ。くそう。屋根に飛び移った。
「・・・どうも」
「どうも!」
「なにしてるんですかこんなところで」
「・・・わかるでしょう?あなたと同じですよ」
「僕はなんで空をみてたかわかりません」
「なぜ?」
「気がついたら空をみてました」
「僕もですよ」
「なぜ?」
「いや、寂しくて」
「寂しいと空を見ますか?」
「いや・・・空っていうか月ですけど・・・ってあなたも同じでしょう?」
「そう・・・ですね」
「月は綺麗ですよね」
「そうですね」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ぼく・・・ね・・・」
「はい?」
「あの月に踏み潰してもらいたいんです」
「・・・・・」
「・・・・・」
「な、なんとかいってください」
「いや、そうですかとしかいえませんし」
「それでも・・・じゃあそれを言ってほしかった」
「そうですか」
「えぇ」
「・・・・・」
「・・・・・」
僕も・・・いや・・・今はいいや。僕は。なんかもう・・・寂しくないし。寂しさなんかこんなものなんだろうな。
「まだ寂しいですか?」
「い、いえ」
「そうですか」
「はい!」
「じゃあ」
「・・・じゃあ」
僕は眠りにつく。少しだけ・・・またとか言った方がよかったのかと思いながら。