43 AM)

福島原発事故がおきてからというもの、ラジオやテレビが忌野清志郎氏のある曲を「反原発ロック」と呼び、賞賛し、流し続けている。

忌野清志郎のRCサクセション、ならびに匿名のThe Timersの活動は反体制的だと言われがちだ。とくに「SUMMER TIME BLUES」や「LOVE ME TENDER」が反原発ソングの筆頭に挙げられる。だがそれは正確ではない。「SUMMER TIME BLUES」は、ハッキリと反原発を打ち出しているが、「LOVE ME TENDER」は、正確には反原発ではない。歌詞を正確に読んでみる。


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反原発ソング「SUMMER TIME BLUES」の強烈な反原発メッセージ

反原発ソング「SUMMER TIME BLUES(サマータイムブルース)」の強烈な反原発メッセージを確認する。今一度、素晴らしい曲を聞きながら歌詞を確認していく。ちょうどいいことに、掲載した動画は、1曲目は、「SUMMER TIME BLUES」、2曲目は、「LOVE ME TENDER(ラブ・ミー・テンダー)」と続けて演奏されている。まずは1曲目の「SUMMER TIME BLUES」の反原発的な箇所を引用していく。

「人気のないところでおよいだら 原子力発電所が立っていた
さっぱりわかんねえ なんのため 狭い日本のサマータイムブルース」

「熱い炎が先っちょまで出てる 東海地震もそこまで来てる だけどもまだまだ 増えていく 原子力発電所が立っていく さっぱりわかんねえ 誰のため」

「7個も建っている 原子力発電所がまだ増える
しらねえうちに 漏れていた 呆れたもんだなサマータイムブルース」

「それでもテレビは言っている 日本の原発は安全です
さっぱりわかんねえ 根拠がねえ!」

上記ライブ映像の曲末のセリフ部分のメッセージは歌詞以上にストレートだ

「電力は余ってる いらねえもういらねえ
電力は余ってる いらねえ欲しくねえ
電力は余ってる あぶねえあぶねえ
原子力は必要ねえ
必要がねえ
余ってるんだってよ 電力会社はもうけてる
あぶねえ あぶないぞー あぶねえぞー
癌になりたくねえ あぶねえー
俺は癌で死にたくねえー
あぶねえ あぶねえ 君も君も君も君も
子どもが欲しいなあ
ベトちゃんドクちゃんみたいじゃない子がいいなーときた
あぶねえぞ あぶねえ」

忌野氏が連呼し続けた「あぶねえ」が、実際に今、現実のものになってしまっている。途中、「ベトちゃんドクちゃんみたいじゃない子がいいなーときた」というセリフの意図が不明だ。ベトちゃんドクちゃんの奇形は原発の影響ではなく、枯葉剤の後遺症によるものだからだ。ひょっとすると当時このフレーズがメディアを騒がせたのだろうか。ご存じの方がいたらご教授願いたい。

この箇所を除けば、誰が聴いても反原発のメッセージを強く打ち出した曲だとわかる。

では、「LOVE ME TENDER」はどうだろうか

「LOVE ME TENDER」の歌詞には「原発」が一度も出てこない

皆さんの頭の中ではどのように記憶されてるか知らないが、この曲には「原発」という言葉が1つも出てこない。今度は、気分を変えて(他意はない)「THE TIMERS」のバージョンの「LOVE ME TENDER」を聞きながら歌詞を確認する。(※)は「RCサクセション」バージョンの歌詞だ。

「なにいってんだ ざけんじゃねえ 核などいらねえ」

「放射能は いらねえ牛乳も飲みてえ」

巧みな言葉で 一般庶民を 騙そうとしたが(※しても)

今度のことで バレちゃった その黒い腹(※ほんの少し バレてる その黒い腹)

お分かりのように「核」と「放射能」という言葉があるが、「原発」は出てこない。(※追記)とはいえ、太線で表記した部分は、プルトニウム型原発を暗に批判している。コメントにてこれは紛れもなく反原発ソングだという指摘を受けた。だが忌野氏は、これを表立って反原発ソングにしたくはなかったのか。(追記ここまで)先ほど掲載したRCサクセションのライブ動画では、「SUMMER TIME BLUES」に続けて「LOVE ME TENDER」が演奏されており、聴く側は、1曲目で「反原発ソングだ!」と頭の中が沸騰し興奮状態になるため、その後の「LOVE ME TENDER」まで反原発をイメージしてしまう。「SUMMER TIME BLUES」のサウンド、パフォーマンスがみるものの頭をいかれさせてしまうのか、当時のメディアも忌野清志郎を反原発ロックの申し子として騒ぎ立てた。

この状況を忌野清志郎氏は冷ややかに受け取り、アンサーソングを作っている。そのタイトルはズバリ、「君はLOVE ME TENDERを聴いたか?」だ。

「君はLOVE ME TENDERを聴いたか?」フルバージョンの全歌詞

この曲は、フルバージョンがCD化されていなかったが、最近になってニコニコ動画にフルバージョンが掲載され話題になっている。この曲がつくられた背景をwikipediaから引用する。

「ライブアルバム『コブラの悩み』には、同アルバム中唯一のスタジオ録音である「君は Love Me Tender を聴いたか?」がアルバムラストに曲の冒頭部分のみ収録されている。この曲は、発禁問題を引き起こした「Love Me Tender」に対するセルフ・アンサーソングであるが、核心部分を語ろうとする「あの歌は、反…」という歌詞のところで音声が途切れ終わっている。なお、1988年のクリスマス武道館ライブではこの曲がフルバージョンで披露された。内容は、「反原発ロック」などというレッテルを貼られた曲に対するシンパシーや、たかが一曲の歌ごときにレコード会社やマスコミなどの大企業が政治力まで使い圧力をかけてくることやことほどさように大騒ぎすることの愚かさ、日本の社会の未熟さを皮肉った内容となっている。結局フルバージョンはCD化されていない。

※wikipedia「RCサクセション」より引用。

それでは、動画を見ながら歌詞を読んでいく。詩は、動画を聞きながら筆者が書き起こしたもの

『「君はLOVE ME TENDERをきいたか?」作詞作曲 忌野清志郎

君はLOVEMETENDERをきいたかい 僕が日本語で歌ってる奴さ

あの歌は反原発の歌だって みんな言うけど

違う違う それは違うよ あれは反核の歌じゃないか

よくきいておくれよ 核は要らないって歌ったんだ

それとも原子力発電と核兵器は おんなじ物なのかい

発電所では 核兵器も作ることができるのかな

まさかまさか そんなひどいことしてるわけじゃないよね

灰色のベールのその中で またそんなコトしてるのかな

 

君は「LOVE ME TENDER」をきいたかい 僕のうたれた替え歌さ

あんなに小さな声で歌ったのに みんなに聞こえちゃったみたい

誤解誤解しないで 彼女へのLOVESONGなのに

反原発ロックなんて そんな音楽があるとは知らなかった

ただのロックじゃないか なんか変だな

レコード会社も、新聞もテレビも雑誌もFMも 馬鹿みたい

何を騒いでたの』

結論を言えば、忌野清志郎氏は、反原発ロックをやっていない。誰がつけたか知らない「反原発ロック」という音楽ジャンルにあきれ、「ただのロック」をいつものようにやっていること表現している。いつもの「ただのロック」の1つが、反原発メッセージの「SUMMER TIME BLURES」であり、また、反核の「LOVE ME TENDER」だ。騒いだ人々に対して「何を騒いでたの」と冷ややかな視線を送っている。とはいえ、詩の内容は、見事に反体制を貫いている。

『まさかまさか そんなひどいことしてるわけじゃないよね

灰色のベールのその中で またそんなコトしてるのかな』

当時もてはやされた原発に対する、庶民がもつ信用と、わずかに心の奥底でくすぶりつづける恐怖を見事に代弁している。筆者はこの曲が好きだ。このブログでも、筆者の「小さな声」を書き続けていく。

追記)この記事は、先日掲載した記事「反原発ソングまとめ!忌野清志郎・ブルーハーツ・佐野元春」」に寄せられた次のコメントがきっかけで書かせていただいた。この場を借りて感謝する。ありがとう。

1. 大麻頭
一言言わせて。
君はこのアンサーソングをちゃんと聴いたことがあるかい?
http://www.nicovideo.jp/watch/nm6427235

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