
原発ジャーナリストの樋口健二氏がリポーターを務めた、ドキュメンタリー「隠された被曝労働 ~日本の原発労働者~」("Nuclear Ginza")は、1995年にイギリスの公共テレビ局チャンネル4にて放映された。樋口氏がそれまでに日本国内で取材した原発被ばく労働者たちを改めてビデオカメラで切り取った作品だ。このドキュメンタリー番組が、YouTubeに3回に分けて掲載されて話題になっている。海外のメディアでなければこれを作れなかっただろう。その動画の印象的な部分を引用してまとめてみた。かなりショッキングな内容だ。
以下、ドキュメンタリーの文字おこしから、印象的な箇所を引用した。私たちは、物事を見るときにいくつも視点を持つべきだ。経済的な視点、政治的な視点、そして、当事者的な視点だ。引用した箇所は、それも当事者の視点で語られている。
テレビや新聞、有名なブロガーたちとは違った視点だ。そして、此等のどれよりも生々しいものだ。
【1】原発で働き被ばくした男が敗訴、など。
原発で働いていた岩佐氏の言葉。
岩佐「最初足にね、足が火傷したか虫さされかを、思わせるようなね、かぶれができて、なんか??水ぶくれができたようなね、症状が足には出、全身はだるい、放射線皮膚炎、リン性リンパ腺浮腫という診断が出たわけですよ。」
樋口「原発で何時間岩佐さん働いたんですか?」
岩佐「2時間半です」
僅かな時間の被曝で、症状が現れ、正式な診断結果が出たという。
次は、樋口氏のナレーション。作品中ところどころに挟まれ、シビアに原発を語る。
字幕「私は樋口健二」
字幕「20年前に出くわしたこういう話が」
字幕「私の人生を変えた」
字幕「見聞きしたことが初めは信じられなかった」
字幕「労働者が炉心近くまで入って被爆し」
字幕「放射線障害で病気になったり死ぬ人もいるなんて」
字幕「彼等は農民や漁民であり、大都市の『寄せ場』の労働者たちだ。」
字幕「調べてみると」
字幕「皆、自分自身に何が起きたのかわかっていなかった。」
樋口氏はこのドキュメンタリーとは違うところで(講演で)、原発を追いかけることになったきっかけを語っている。それは原発からお金を貰って泣き寝入りをせざるをえなかった労働者と会ったことだったという。正義漢が強かった樋口氏はその後30年をかけて原発を追いかけた。すごい執念だ。
原発会社は、放射線の管理教育がずさんだという。
樋口「放射線の管理教育ってのは、なされなかったのですか」
村居「全然なにも」
樋口「マスクはどうたんですか?」
村居「いやマスクもなにもしないですよ」
今、福島原発で同じことが起きていると報じられている。実際、今の福島第一原発で、マスクを付けていなかったせいで、高レベル汚染された水に足を踏み入れたというはなしも上がっている。また、原発内部は中が暑く防護服やマスクをつけてはいられない。
かつて行なわれた、上述に登場した岩佐氏が原発組織を相手に起こした裁判について、樋口氏は以下のように述べている。
字幕「岩佐さんは私が初めてあった被爆による患者でー」
字幕「その時、原子力業界を相手に裁判をおこすところだった。」
字幕「しかし、被爆量が立証できず、敗訴となった。」
字幕「彼が勝っていたら」
字幕「原発業界全体の計画が崩れ去っていただろう。」
原発業界の計画を進行させようと願っていたのは誰か。さらに詳細を知りたければ、下記のリンクから動画の全文書き起こしが読める。
(文字おこし記事・動画あり)
樋口健二・原発労働者ドキュメンタリー文字おこし(1)「隠された被曝労働〜日本の被曝労働者〜」
【2】原発で働き被曝した症状。彼等はなぜ原発で働くようになるか、など。
原発内部で被ばくした村井さんの生々しい供述。
村居:ぱっと見たら(線量計の)針が、いつもゼロのとこにいつもとまってますね。で、多少の入るところによって5ミリとか3ミリとか上がってるんですけどね、その時に、その…
村居:針がないんですよ。(※振り切れていたという意味)
原発会社は、被爆について次のように述べたという。
岩佐:中にはいって、被ばく、傷害はないかということをお尋ねしたらね、ありうると。被ばくの可能性は十分ありますと。その場合は、機械、工具は全部廃棄
処分にしてもらいますよと。いうふうな説明があったので、じゃあ、機械やここ工具、は被ばく、汚染するんであればね、人間に当然被ばくあるじゃないかと。
被ばくして、歯がなくなったという。
村居:でー、翌月の春頃から、なんせともかく、なんでもないご飯だけいれても歯がボロボロボロボロ欠けるんです。
樋口:ああ
村居:僕は全然は歯ありませんで、これ全部入れ歯ですから。全部入れてあるんです
樋口:今それを抜けるんですか? ちょっと抜いてみてください
他にも症状が出たという。
樋口:歯のことはこれでだいぶわかったんですけれどもね。そのあとほら、違う症状も出たっていう。
村居:はい、毛も抜けました
なぜ、原発内部で被爆させられてまで働く人が増えているのか。
字幕:しかし原発の老朽化で 修理も大規模になり
字幕:再びその数は増えている
字幕:このような人集めは 世間の目から隠されて来た。
字幕:労働者たちは相変わらず 手配師やヤクザの手中にある
計測器はしょっちゅうピーピーとなるらしい。
樋口:凄い放射能のところに行ったわけだねー。
男;そうです。放射能がー、もうー、ものすごかったですね。
樋口:マスクも外したでしょう、きっと、だからね。
男:外したと思いますけどね
樋口:苦しいからね。あのアランメーターってのが、ビービーってなったことありますか?
男:ええ、(なんどもうなづいて)あります。
今の福島第一原発で報じられていることが、特に珍しくなく、原発内部で起きているということだ。
さらに詳細を知りたければ、下記のリンクから動画の全文書き起こしが読める。
(文字おこし記事・動画あり)
樋口健二・原発労働者ドキュメンタリー文字おこし(2)「隠された被曝労働〜日本の被曝労働者〜」
【3】工具の被曝を気にするが、人間の被曝は気にしない原発企業など。
下記は、福井の漁師の言葉。福井には原発が15基あり、原発銀座と呼ばれている。
樋口:真ん中の機械がね。大変な事故を起こしたじゃない。どんな音だった?
男:ぐああああってきたじゃんすか、うなってきてよ、
男:で、あのー、水蒸気みてえのが、どぅわああああああああああああ、
言葉が素朴な分、事故がどれだけすごかったかが伝わる。
原発近くのお寺の住職の言葉。
住職:現在で29万人の人たちが放射線を浴びる労働をしていると、言われていますが、
住職:まあ例えばこの若狭地域で50人をこえる人たちが亡くなっていると、でも、これは全国の原発の中でということになると、この数はもっともっと大きいものがあると思います。
息子が被ばくして命を落とした親の言葉。
嶋橋:どんな病気でも、なくなるときには親は悲しいでしょう。だけども白血病で死ぬときのあの辛さを、ついて診てんのは、しのびないですねえ。
被曝労働者、岩佐氏の言葉。
岩佐:労働者はね…。品物か、工具のような扱いをして、使い捨て、切り捨て、なりふり構わないというのが代表だと思います。
原発の隠蔽体質について。
村居:今も行なわれていると思うんですよ、実際に。表に出るか出んかで。私らも3回も4回も経験あります。お金2千万もらったとか3千万もらったとかというて、もうやめたって言うて。ともかく金で口封じをしてるわけです。
最後に樋口氏は以下のような言葉でドキュメンタリーのラストを締めている。
字幕:そのころ私たちは
字幕:10年以内にこんな状況は 改善できると考えていたのだが、
字幕:反対に日本は原発を作り続け 状況はさらに悪化した。
字幕:被爆者は 体内に時限爆弾を抱えている。
字幕:癌の潜伏期間は約25年、
字幕:それは日本が原発を 作り続けてきたのと同じ歳月だ。
字幕:今こそ真実が明かされる時だ。
さらに詳細を知りたければ、下記のリンクから動画の全文書き起こしが読める。
(文字おこし記事・動画あり)
樋口健二・原発労働者ドキュメンタリー文字おこし(3)「隠された被曝労働〜日本の被曝労働者〜」
私たちは、知識や客観的判断を最も正しいものとする。だが、それだけでは理解し得ないものがある。恐怖のリアリティーだ。風向きで放射性物質がどのように拡散するかを図で見せられても、実感として伝わるものは少ない。だが、このドキュメンタリーは、原発が、これまでも、中で働く人達を当然のように被爆させ続けてきたことを示している。中でも、被爆の影響で歯が抜けていることを伝えた箇所にはゾッとする。
今、福島第一原発の中で働く人達を筆者は応援する。そして自らの臆病を嘆く。これを書いている私も、命が惜しいのだ。情けない。40万を積まれて中で働かないかと持ちかけられた人までいる。政府は、原発事故対応の長期化を発表した。つまり、長期にわたって、原発の中で働く人が被ばくし続けることになるということだ。
このドキュメンタリーが語ることを知れば、これから続く報道を受ければ、感じるものが少しでも変わるのではないか。少なくとも筆者はそう思っている。
30年の長きにわたり、原発で被ばくした労働者を追いかけ続けた、執念のジャーナリスト、樋口健二氏に尊敬の意を表する。
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