事故への対処が行なわれ続けている福島原発を「戦場」だと言った人物がいた。日本原子力技術協会最高顧問の石川迪夫氏だ。

皆さんどう思うだろうか。 筆者は正確ではないと思う。 正確には、福島原発を中心に戦場が広がっている、だ。福島第一原発は「最前線」だ。

石川迪夫氏が、「福島第一原発は戦場だ」と主張しているので、筆者は石川氏の主張を尊重して、福島原発事故を戦争に例えて考えてみる。


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太平洋戦争では、実際の戦場から離れた場所で疎開が行なわれた

実際の戦場は海外の各地と沖縄県だった。だが遠く離れた多くの場所で学童疎開が行なわれた。空襲の恐れがあったからだ。空襲が行なわれるおそれがあった場所は、空港など軍の施設があった場所だ。もちろん疎開したが、空襲は実際になかった場合もあった。

その時、空襲の可能性について科学的な根拠は国民に示されていない。爆弾の種類ごとに、威力はどれだけか、などという根拠は示されていない。とにかく空襲の恐れがあるということで疎開は行なわれた。

子どもの命を守るためだ。

福島原発事故では、疎開を行なわないように務めている。

今の福島原発を取り巻く状況はどうか。

実際の戦場は福島第一原発だ。しかし、実際の戦場の福島第一原発から、遠く離れた場所に放射性物質が飛散している。放射性物質による空襲は、遠く離れた飯舘村を襲い、実際に土壌からは規定値をはるかに超える放射性物質が検出されている。

石川迪夫氏は、どうしても、福島第一原発敷地内だけを戦場としたいようだが、事実は、違う。福島第一原発は最前線だ。放射性物質が飛散している以上、戦地は拡大し続ける。

母乳からヨウ素が検出された母親も出た。かわいそうだが、母親と幼児は、同じ空気を吸って、放射性物質を体内に取り込んで生きている。それに加え、幼児は母親の母乳からも放射性物質を摂取する。

そんな放射性物質の空襲状況の中、政府は断固として子どもを疎開させないでいる。

政府は、子どもの被ばく量の上限を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに上げた。上限が1ミリシーベルトのままでは被ばく上限を超える学校の児童を疎開させる必要が出てくる。政府は被爆量の上限を引き上げることで、福島の全小学校のこどもたちを疎開させないでいる。疎開させない理由は精神的な混乱を防ぐためだとしている。

子どもの「体の健康」と「精神の健康」、どちらを取るかの選択で、「精神の健康」を大切にすると国は主張したことになる。

だが、健全な精神は「健全な肉体」に宿る。

10年後、内部被ばくの影響により小児甲状腺癌になった子どもは、精神的に健康でいられるとは思えない。病気にならなかった子どもも、いつ自分の身に病魔が襲うのかを不安に生き続けることになる。

また、現在、被ばくし続けているという状況で子供たちが、何の心配もせずに精神的に健康に育つだろうか。

親は被ばくの上限を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに挙げたことを知っている。親の不安は子どもに伝染するだろう。子どもも、インターネットを用いて飯舘村のことを調べ、20ミリシーベルトに引き上げられたことを不審に思うだろう。

実際に、校庭の土を除去している今、それを見て子供たちが不安に思わないと考えるほうが不思議だ。またそれ以前に、子供たちは。福島原発で事故が起き、水素爆発で建家が吹っ飛んだことくらい知っている。ニュースやネットを見ればいつでも誰でも動画でそのショッキングな映像を見られる。

疎開をさせるれば子供たちの精神の混乱につながるというならば、すでに福島の子供たちに不安が広がっていることをどう説明するのか。 

政府の行いのどこにも道義的な正しさは見つからない。正義がない。

ついに、小佐古敏荘内閣参与が、20ミリシーベルトに息を唱えて、辞表を提出した。

NHK「かぶん」ブログ:NHK | 科学と文化のニュース | 官房参与が辞任・記者会見資料を全文掲載します

『緊急時迅速放射能予測ネットワークシステム(SPEEDI)によりなされるべきもの でありますが、それが法令等に定められている手順どおりに運用されていない。法令、指針等には放射能放出の線源項の決定が困難であることを前提にした定め があるが、この手順はとられず、その計算結果は使用できる環境下にありながらきちんと活用されなかった。また、公衆の被ばくの状況もSPEEDIにより迅 速に評価できるようになっているが、その結果も迅速に公表されていない。』

物騒な言い方をすると、政府は、予め空襲される場所を知りながらも、国民に伝えず、被害の大きさも伝えず、しかも疎開させず、空襲させ続けているということになる。

まさに、「被爆=被ばく」です。

いち早く、大地震の翌日の3月12日にメルトダウンの可能性を伝えた中村幸一郎審議官を更迭したことといい、今回の小佐古敏荘内閣参与の辞表の提出といい、住民サイドにたって発言する人を、菅内閣は大切にしません。

多くの人が主張していますが、内閣に正常な判断能力はありません。内閣のものさしは狂っている。

いやな胸騒ぎがする。

疎開させない理由は2つある

今、放射性物質を恐れて子供たちを疎開させれば、精神的に混乱させる、という理屈はおかしい。

確かに、精神は一時的に混乱するかもしれない。だがそれをいうならば、太平洋戦争で疎開した子供たちも混乱していたことになるし、今現在、津波の被 害を受けて避難している子供たちも精神的に混乱しているだろう。なぜ特別に、福島県の子供たちだけ、わざわざ被ばく量の上限を大幅に上げてまで疎開させないのか。

1つの理由は、原発が安全だという建前を守ることだ。

これまで原発は、絶対安全という建前で作られてきた。まだその建前は生きている。なぜか。今回の原発事故を津波のせいにしたがっているからだ。東電は津波の被害のせいで事故が起きたとして、一定額以上は国が保証することを求めている。経団連もそうだ。

彼等の主張が通れば今回の原発事故は津波のせいになる。そして原発は安全だとみなされるように事を運ぼうとするだろう。

疎開をさせれば、安全ではないと認めることになり、反原発の動きを強めてしまうことになる。だから、疎開をさせない。

2つ目の理由は、被ばくの影響の調査のためだ。

被ばくの実態を調査するためには、子供たちをまとめておかなくてはいけない。全国各地に散らばってしまえば、10年後の被ばく調査が難しくなる。つまり、福島にまとめておかなくてはいけない理由は、人体への影響を調査していく必要があるからだ。

考えるだけでも恐ろしいことだが、そう考えられない理由もない。

このブログでは繰り返し述べているが、チェルノブイリ事故の安全宣言を出したのも、福島原発事故の事実上の安全宣言を出したのも、ある同じ機関の理事長を経験した人物だ。

その機関は、放射線影響研究所。

2大原発事故、福島とチェルノブイリの安全宣言は「放射線影響研究所」理事長2人が発表している:ざまあみやがれい!

チェルノブイリ事故の安全宣言を出したのは、重松逸造氏。福島原発事故の事実上の安全宣言を出したのは長瀧重信氏だ。 2人とも放射線影響研究所の理事長を務めた人物だ。

放射線影響研究所は、広島・長崎の原爆の人体への影響を調べるためにアメリカが日本に作った機関が元となっている。その調査結果は、水爆や原発の開発に利用された。

福島の子供たちも、間違いなく、今後、長い年月をかけて被ばくの影響を調査されることになる。それが医学の進歩につながるからいいことだ、と放射線影響研究所を始めとした各機関関係者が考えていても不思議ではない。

医学界では、人体実験が禁止されている以上、実際に被ばくした人体だけが、医学的な資料となる。つまり、今、福島の子供たちは、チェルノブイリ事故の被ばく者に続く貴重な最新の資料だ。これは医学という特殊な性質を持つ学問では当然のことなのです。

だから筆者はいつも繰り返して言う。子どもを被ばくさせ、医学に貢献させたいならば福島に残ればよい。嫌ならば福島を離れればよい。

IAEAを始め世界の各機関は、福島の子供たちが被ばくすることを悲しんだりしない。それどころか、貴重なデータが得られると期待して、その日を待っているだろう。

福島の母親の皆さん。子どもは長い目で母親を評価します。母親を恨むこともあれど、子どもは母親をなんとか好意的に理解しようと務めます。それは、大人の皆さんは知っているのではないですか。オトナになる前は、皆、子どもを経験しているはずです。

福島を離れて、たとえ生活に苦しんだとしても、たとえ苦労をして育てなくてはいけなかったとしても、子どもは母親を理解しようと務めます。成長すれば、なぜ疎開しなくてはいけなかったかを考え、母親の行動の意味を考えるでしょう。

だから、福島を離れ孤立することを恐れることはない。孤立しても子供はあなたの味方です。

村のしがらみや会社のしがらみで福島を離れられないという心中は察します。だが筆者は嫌われても構わないのでいいますが、もしあなたの子どもが被ばくで大きな病気になってしまった時、あなたは誰のせいにするのですか。村や会社のせいにしても、村や会社が子どもの病気を治してくれるのですか。死んだら生き返らせてくれるのですか。

いえ、その時、母親は、自分自身のせいにするでしょう。想像するだけで辛い出来事です。

内部被ばくは医学的にまだ証明できていません。

福島小児被ばく線量、20ミリシーベルトに引き上げーーだが内部被ばくの人体への影響は医学的に証明されていない

だからこそ、20ミリシーベルトをめぐって学者たちの見解はわかれ、テレビの中では学者やタレントたちが最もらしいことを発言しています。彼等は科学的に結論が出ないことを知った上で、責任を政府のせいにしてばかりです。

だから、この問題に限って、科学や理論を元にして考えるのは筆者はやめます。時間が経過すればするほど、子供たちの被ばく量は蓄積されます。

感情に訴えるという卑怯な方法で、筆者は、福島のお母さんたちに、逃げろと伝え続けます。

逃げることで、内部被ばくの心配はずっと少なくなります。

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