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先日、ベントが遅れたために13日の福島第一原発1号炉で水素爆発が起きた、ということが物議を醸しました。実は、このベントは、もともと設計段階では、ついていない機能だった、のです。そして、このベントが、ここ数日騒がれている重要な告発に関係してきている、のです。それは、次のエントリーで見ることが出来ます。

「福島第一原発の安全装置は8年前に外されていた」原口氏が衝撃の告発

原口一博議員は、以下のように述べています。

『原子力安全委員会の議事録を読むと、平成15年の自民党政権の時代に、ECCS(非常用炉心冷却装置)の中の冷却系の蒸発システムが取り外されていたんです。』

『なぜ、そんなことをしたんでしょうか。「ベントするから大丈夫」というんです。』

8年前、安全装置を取り外したばかりに、今回の福島事故の被害が大きくなったのではないか、と原口氏は主張している、のですが、実は、安全装置取り外しは、福島第一原発だけではなく、他の、多くの原発で行なわれて、います。



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つまり、先程のエントリーは、ベントをするから、「ECCS(非常用炉心冷却装置)の中の冷却系の蒸発システム(※以下、「蒸発系冷却システム」)」が必要がない、と判断した、ということになります。この冷却系蒸発システムについて原口氏は次のように記述しています。

『原発の冷却システムを作ってきた、佐賀大学元学長の上原先生が指摘しているように、蒸発系の冷却システムがあれば、電源喪失しても蒸気が出ている限り循環するので安全』

この記述からは、蒸発系冷却システムは、電源喪失した福島原発にとって、なくてはならないものだった、ということになります。

さて、ベントというのはどういうものかと申しますと。ベントは、皆さんご存知のとおり、原子炉格納容器の中の圧力を逃がす装置、です。図で説明するとこんな感じです。

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フラスコの形をしている原子炉格納容器の中の圧力が、高くなり、原子炉格納容器が破損する可能性が出るくらいになると、「ベント」を通じて、その圧力を外に逃がす、これを「ベントする」といいます。だがベントをすれば、中の放射能が外に漏れ、住民が被曝するおそれがある、のです。

これをめぐって、官邸と東電との間で一悶着あって、結局、ベントが遅れてしまい、1号炉が水素爆発し、続けて2号炉、3号炉も水素爆発することになった、わけです。

想定外のスリーマイル島事故を受け、急遽、設置されたベント

実はこの「ベント」は、そもそも設計段階では、存在していませんでした。最初から、原子炉に備わっていたわけではないのです。必要が生じ、あとで付けた、のです。

なぜこれを説明するかと申しますと、その理由が、原子力発電所の安全設計がいかにその場しのぎであるかを、示すことになるから、です。そして、先ほど申し上げた、蒸気系非常用炉心冷却装置を、福島原発以外の多くの原発でも外している可能性がある、と想像するからです。

先ほど、「ベント」は設計段階では付いていなかった、とわたくしは申し上げました。

1971年・・・1号機の営業運転を開始。

つまり、設計段階では、原子炉格納容器の外に圧力を逃すことなど誰も考えてもいなかったのです。これはどういう考え方で、ベントを付けていなかったといいますと、次のような考え方、です。

・原子炉格納容器が壊れるはずがない。

原子炉格納容器を設計する段階では、絶対に壊れるはずがない、という想定のもとで作られていたので、「壊れるはずがない」と思っていたわけ、です。ですが、ベントをつけた。さて、どうしてでしょうか。

それは、こういうこと、です。

・原子炉格納容器が壊れるかもしれない。

壊れるはずがなかった原子炉格納容器が、壊れる可能性があるとわかった、から、「ベント」をあわててつけた、のです。

なぜ原子炉は安全だとされてきたのか。皆さんも御存知だと思うのですが、5重の壁、で原子炉は守られている、と言うふうに電力会社は言ってきました。この5重の壁とはどんなものなのか、というと。

1つ目…燃料ペレット

2つ目…燃料被覆管

3つ目…原子炉圧力容器

4つ目…原子炉格納容器(フラスコ)

5つ目…原子炉建屋

です。

ですが、これらはほとんど壁の役目を果たさない、のです。

1つ目の燃料ペレットと2つ目の燃料被覆管は、しょっちゅう穴があきます。ので壁の役目を全く果たしません。

3つ目の原子炉圧力容器も、同様に壁の役目を果たしません。それは、圧力容器の図を見ていただくとおわかりいただけると思います。

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これが圧力容器です。下の方に細い棒がたくさん並んでます。これは、制御棒と呼ばれるもので、緊急停止の時に、上に差し込まれ、ます。つまり、圧力容器の底には、この沢山の制御棒が差し込まれるようの無数の穴があいている、のです。

こんなたくさんの穴が開いている容器が、強いとは言えない。実際、今回の福島原発の事故では、上から溶けた、熱い燃料棒が下に落ちて、この穴のたくさんあいた部分を溶かして下に落ちたと言われています。

さて、残りは2つです。

4つ目…原子炉格納容器(フラスコ)

5つ目…原子炉建屋

5つ目は、特に鋼鉄製の容器でもない、建物ですから、壊れます。実際に水素爆発で簡単に壊れてしまい、ました。

そして残るは、原子炉格納容器(フラスコ)です。この原子炉格納容器の安全性を脅かすある事故が起きました。スリーマイル島原発事故です。

1979年・・・スリーマイル島原発事故

スリーマイル事故では、圧力容器が、破られるぎりぎりで事故を収束できた。これは、ほんの少しミスがあれば、圧力容器が破損し、溶けた燃料が格納容器に流れ落ちることを意味します。これは大変危険なのです。格納容器内で水蒸気爆発が起きる可能性が出てきました。水蒸気爆発が起きれば、格納容器が大きく破損し、放射能が、勢い良く空中に放出されることになります。チェルノブイリ原発事故と同じように、です。

つまり、実質的には、原子炉格納容器だけの、1重の壁、になった、わけです

1つ目・・・原子炉格納容器

1つ目の壁が原子炉格納容器、となったわけですから、さすがに、余裕がなくなってきた、わけです。難攻不落と言われていた大阪城は、何重にも堀張り巡らされていたのですが、それを埋め立てられてしまい防御力が落ちた、というようなことになってしまった。これまでは、原子炉格納容器の前には、3つも壁があったのが、急に、なくなった、のです。

これまでは原子炉格納容器の機能は、次のようなものでした。

・原子炉圧容器・・・放射能を閉じ込める壁

それが、次のように変わってしまい、ました。

・原子炉圧力容器・・・壊れそうな壁

絶対壊れないとされていた壁が、ある日、壊れそうな壁、だとわかってしまった。大変にツンデレな壁、だとわかってしまった、のです。格納容器を守らなくてはいけないことになって、大変に困った電力会社はどうしたか、というと、

●ベントを取り付けた

のです。

ベントをして、原子炉格納容器内の圧力を外に逃せば、壊れることを防げる、いうふうに考えた、わけです。ですが、これは、周囲に大変な放射能を撒き散らす事を意味します。つまり、

●住民を被ばくさせても、ベントをして原子炉を守る

という、なんともちぐはぐな、安全設計になってしまった、わけです。

このベントを取り付けた時期は、私にはわかりません。ちょっとどなたか調べてみてください。1979年にスリーマイル島原発事故が起きたことから、それ以降です。余裕を持って1990年と想定します。

1990年(仮)・・・ベントを取り付けた。

として話を勧めます。

ベントを取り付けた時期と蒸発系冷却システムを外した時期にズレ?

さて、この記事の冒頭で書いたように、冷却系蒸発システムを外した時期は、平成15年、つまり2003年、です。

2003年・・・蒸発系冷却システムを外した

わけ、です。並べてみます。

1971年・・・1号機の営業運転を開始。

1979年・・・スリーマイル島原発事故

1990年(仮)・・・ベントを取り付けた。

2003年・・・蒸発系冷却システムを外した

おかしなことに気づきませんか。この記事の冒頭で書いたのですが、原口氏が次のように述べています。

『なぜ、そんなことをしたんでしょうか。「ベントするから大丈夫」というんです。』

冷却系蒸発システムを外したのは、「ベントするから大丈夫」という理由だったはずなのですが、

1990年(仮)・・・ベントを取り付けた。

2003年・・・蒸発系冷却システムを外した

この設定では13年の時差があります。「ベントするから大丈夫」なら、ベントを取り付けるのと同時に、蒸発系冷却システムを外せばいいはず、です。では、なぜ同時に行なわなかったのでしょうか。

この2003年という年は、東電はどのような時期だったのか。

2002年・・・東電福島原発のシュラウドのヒビ割れ他、大隠ぺいの謝罪会見

2002年・・・社長含め上層部クビ。新たに、勝俣恒久氏が社長に就任。

2003年・・・東電の全原発17基停止。

という大変な時期だった、のです。

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つまり、この「蒸発系冷却システムを外した」のは、今、福島事故への対処の指揮をとっている勝俣氏だった、わけです。これについては、今週号の週刊文春でフリージャーナリストの上杉隆氏の名前で詳しい記事が掲載されて、います。私も、週刊文春くらいは移動中の新幹線の中でビール片手に読む、わけです。週刊文春では、この決断が小泉政権下で、くだされた、と書き並べています。

そして、重大な事実が述べられています。

2001年・・・浜岡原発の蒸発系冷却システムで水素爆発。配管破断。

2002年・・・浜岡原発、蒸発系冷却システム、削除。

頼りにしていた、蒸気凝縮系冷却装置が使いものにならないとわかった、わけ、です。東電は浜岡原発の処置にならって、

2003年・・・福島原発、蒸発系冷却システム、削除

をおこなった、のです。

これについて、小出裕章氏は次のように述べています。

『原子炉を止めても”残留熱”という崩壊熱は続きますから、原子炉の中の水は沸騰する。沸騰すると圧力が上がってきますので、それを外に導いて凝縮させて冷却するという蒸気凝縮系のシステムは必要なのです。もともと必要があるから付けた機能を、削除するなんて通常は考えられないことです。設備を増強し、安全を期すというなら分かるが、事故の恐れがあるから外すというのは本末転倒。当時からなんでそんなことをするのかと不思議に思っていました』(週刊文春6月9日号26Pより引用)

さて、当然、同じシステムを使っていれば、他の原子炉でも、同じように蒸発系冷却システムが削除されているだろう、と思い、調べてみたところ、想像通りの結果が得られた。

安全システム、の取り外しは、福島、浜岡、東海第二、女川、で行なわれたと定例会議議事録に記述あり

58)

これについて、「20030217第10回原子力安全委員会定例会議速記録」から該当する部分を引用していきます。

50)

『もう1点は、2から6号共通でございますが、残留熱除去系の蒸気凝縮系の機能を削除するものでございます。この工事につきましては、一昨年、中部電力の浜岡1号で余熱除去系の蒸気凝縮系配管が破断するというトラブルがございまして、この対策工事でございます。既に浜岡1号、東海第二、女川発電所で、それぞれ許可を受けまして、工事を行っております。

「残留除去系の蒸気凝縮系の機能」というのが、原口氏が告発した、「ECCS(非常用炉心冷却装置)の中の冷却系の蒸発システム」に当たります。福島第一原発の2号炉から6号炉においてこの、「ECCS(非常用炉心冷却装置)の中の冷却系の蒸発システム」を削除することが記述されています。

この時点ですでに、浜岡1号原発(中部電力)、東海第二原発(日本原子力発電)、女川原発(東北電力)、そして福島第一原発(東電)にて、工事が済んでいることがわかります。原子炉の安全を守るべくして備え付けられた機能が、使いものにならないと判明し、あっさり削除されている、と読み取れます。

『工期につきましては、4ページに一覧で載せてございます(※下図)が、各プラントの定期検査等に合わせまして工事を行うということでございまして、最も完成がおくれるものとしては4号、5号が平成17年工事を終わるという予定』

14)

『蒸気凝縮機能の削除につきましては、5プラント分合わせまして、約10億円ということを考えてございます。資金は自己資金等で調達する予定でございます。』
2号から6号の残留熱除去系の蒸気凝縮機能の削除。これにつきましては、先ほど申しましたが、浜岡1号でトラブルがありました配管を撤去するということでございます。この機能は、機能的には安全上必須の設備ではないということで、例えばこれがなくなった後でも、主蒸気逃し安全弁を使うことによりまして、原子炉の崩壊熱等を問題なく除去することができるということで、今回削除するということでございます。「機能の削除」と書いてございますが、これは実際配管を取る話ではございませんで、機能を削除するということで、閉止栓をするという工事でございます。』

主蒸気逃し安全弁、というのはベントのことです。ここにいたるまでの出来事を順番に並べると次のようになります。

【1】中部電力の浜岡1号で余熱除去系の蒸気凝縮系配管が破断トラブルで同機能を削除

【2】東電も、同機能を削除

【3】上記の機能がなくなった後でも、主蒸気逃し安全弁を使うことで、原子炉の崩壊熱等を問題なく除去できる。という理由の後付け。

ここまでくると、まったく苦しい言い訳のようにしか思えないのですが、すんなり認められているところに、恐ろしさを感じてしまいます。

「全く問題なく除去できる」は狂気です。外部に放射性物質をまき散らすことは、大問題、です。

30)

蒸気凝縮系を撤去いたしましても、これにかわる機能といたしましては、逃がし安全弁が働くことによりまして、原子炉の崩壊熱を除去することは可能でございます。また、原子炉の水位の確保につきましては、原子炉隔離時冷却系を起動させることによりまして確保することが可能でございます。』

あくまで、原子炉を守ることのみ考えられています。このように、原子炉の安全を確保することばかりで、一切住民へのベントによるリスクについて言及されていない、のです。

資料を含め、詳しく知りたい方は「20030217第10回原子力安全委員会定例会議」を御覧いただければ、と思います。

福島は、蒸発系冷却システムがなかったからか、事故を食い止めることは出来ませんでした。浜岡、女川、東海第二、のかく原発の安全システムには問題がないのでしょうか。蒸発系冷却システムに代わる何かの安全装置などは備わっているのでしょうか。それとも、現在でもシビアアクシデントがあれば、とりあえずベントすればOK、という対策なのでしょうか。どなたか追求していただきたいものです。

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