※おそらく陸上自衛隊の人から的確なコメントがありましたので加筆掲載しました。(2011年12月25日20:46)
陸上自衛隊が除染のための「除染隊」を結成したが、3日後に解散した。来年度から福島県は除染に本腰を入れる流れのはずだ。
細野豪志原発担当大臣も「オンサイトからオフサイトへ」という発言をし、福島原発事故対応に注いでいた力を除染に移すという旨の発言をしている。
そして、不可解なのは、佐藤雄平知事が「事故収束宣言」に対して強い不快感を表明したのも関わらず、佐藤知事が「除染隊」の派遣を断った形になったことだ。
※僕は大変残念なことながら、陸上自衛隊についてエキスパートではありません。調べた上で書いていますが、誤りなどございましたらすみやかに訂正いたします。
まずは、正確な知識に基づいて、僕の意見への指摘をしてくださったコメントを紹介。
=====(追記。(2011年12月25日20:46))
コメントにて明晰な意見をいただきました。コメント主は「ZRの中の人」というお名前です。陸上・自衛隊のイニシャルだと僕は判断しています。
『原発事故が放射能との戦闘と言う状況は間違いないと思いますが、あくまでも現在の法令上、原発事故は戦争ではない。
>蛇足になるかもしれないが、福島原発事故後、多くの原発で非常事態に備えた訓練が行われている。そのうちの1つとして自衛隊と連動した訓練を行っていない。これについて不可解に感じる。これは推測だが、おそらく自衛隊が断っているわけではないだろう。
そもそも、原発事故対応は自衛隊の本来任務ではないので、原発事故後の放水作業とかあー言うのは実はイレギュラーな任務でもあったりします。
実際に、原発の警備は警察の所管なので、自衛隊はお呼びでないんですよね(個人的には原発の警備は陸自の任務にすべきと思うけど)
自衛隊の本来任務は、政府の命令に基づく「防衛戦争」、政府の命令又は自治体首長の要請に基づく「災害派遣」であって、政府が「原発事故収束宣言」を出せば、自衛隊としては活動する根拠を完全に失う。
元々、第7化学支援隊は、第9師団(第9化学防護隊?)の交代部隊として編成されたので「原発事故収束宣言」によって原発事故対応と言うイレギュラーな任務が終了する為、交代要員として編成された部隊は解散するのは筋として間違っていないと思える。
これは凄く個人的な意見だけれども、自衛隊の運用を考えた場合、自衛隊の化学防護部隊は極力、フクシマの除染には使うべきではないと思う。
隊員とて人間なので被曝できる上限は限られているので、フクシマの除染で無駄に被曝をしたが為に、今後、戦争や別の原発事故が起きた場合に際しての被曝出来る線量値を下げる事に繋がり得策ではない。
(そもそも、原発より2-30km圏を除染して「住めるようにする」と言う事は、狂気の沙汰にしか思えない。) 』
●原発の警備は警察の所管なので、自衛隊はお呼びでないんですよね(個人的には原発の警備は陸自の任務にすべきと思うけど)
●自衛隊の本来任務は、政府の命令に基づく「防衛戦争」、政府の命令又は自治体首長の要請に基づく「災害派遣」であって、政府が「原発事故収束宣言」を出せば、自衛隊としては活動する根拠を完全に失う。
この2点が、ポイントですね。
現行法の限界点がよくわかります。
さらに自衛隊が除染をすることについて問題提起もなされていますね。
●隊員とて人間なので被曝できる上限は限られているので、フクシマの除染で無駄に被曝をしたが為に、今後、戦争や別の原発事故が起きた場合に際しての被曝出来る線量値を下げる事に繋がり得策ではない。
万が一の新たな災害があることを念頭において、余力を残しておかなければいけないという考えのようです。ただ、この意見に対しては僕は不満も感じます。余力を残して置けるほどの余裕がこのくににはあるのか、という点です。これは、コメントへの反論ではなく、福島の除染の困難さへの僕なりの警戒から来ています。
頂いたコメントを読んだ僕の総合的な結論は、「オンサイトからオフサイトへ」つまり「事故対応から除染対応へ」という大号令の意味を持つ原発事故収束宣言が、かえって除染を立ち遅らせる可能性がある、ということです。
今はまだ「放射能災害」の真っ只中なのではないかというのが僕の考えなのですね。
コメントを受けた上で、やはり思うのは、佐藤雄平福島知事は、野田総理の「福島事故収束宣言」に強い不快感を示しながらも、結局のところ、「自衛隊の活動を終わらせる要請」を出したわけです。佐藤知事が「まだ放射能災害中だ」と主張して自衛隊の活動を継続させる主張をすることも出来たはずですが、彼は終わらせたわけです。
そこに僕は不満を感じるわけですけれども、その不満の理由の1つは、佐藤知事の政治決断の根拠が明確に伝わってきていない、ということにあります。そういう意味で、最初に書いたブログ記事に関して、少々知識が不足しているところはありますが、決定的に自分の考えが変わるところはありません。
以上、僕が不足している知識を的確に補い、そして個人的な考えをもしっかり述べていらっしゃるように感じました。理解が大変深まりました。ありがとうございました。
=====(以下、僕の足りない知識で掲載したブログ記事。)
では、「除染隊」解散までの経緯を順番に追っておく。
まずは、陸自「除染隊」を派遣する事を知らせる報道だ。
▼12月13日準備:除染を後方支援 陸自第7師団 福島県に派遣へ:苫小牧民報社
来年1月から本格化する東京電力福島第1原発半径20キロの警戒区域内などでの除染作業に合わせ、陸上自衛隊第7師団(東千歳駐屯地)は今月下旬に、後方支援活動部隊を福島県に派遣することになった。作業は1月1日から開始する予定だ。警戒区域と計画的避難区域に入った車両などを洗い流す作業のほか、大気中の放射線量を測定するモニタリング調査などをするとみられる。
同師団指揮下の第7化学防護隊が中心となり、第11普通科連隊や第71戦車連隊、第7施設大隊などの隊員約70人と除染車など約30両が第7化学支援隊として派遣される。
26日に東千歳駐屯地を出発。苫小牧港からフェリーで現地に向かう。作業は1月1日から同31日までの予定となっている。
現在、宮城や福島、山形の東北3県を管轄する陸自第6師団が、警戒区域になる樽葉、富岡、浪江の3町と計画的避難区域の飯舘村に展開。来年1月から始まる本格的な除染活動の拠点を確保するため、900人体制で各役場と周辺の除染作業を実施している。
この「除染隊」派遣の目的は、福島県の住民の周りを除染するというよりは、先に福島入りしていた、20キロ圏内の警戒地域で除染活動をしている自衛隊の支援をするかたちだと、報道からは読み取れる。
▼12月20日編成式:放射線除染を後方支援 東千歳駐屯地で陸自第7師団、化学支援隊編成式:苫小牧民報社
『陸上自衛隊第7師団は19日、東京電力福島第1原発事故を受け、放射線の除染作業を後方支援する第7化学支援隊の編成式を司令部がある東千歳駐屯地で行った。』
『警戒区域内で、大気中の放射線量を測定するモニタリング調査のほか、車両の除染作業、一時帰宅する住民や他部隊のスクリーニング(放射線検査)を実施』
『現在活動中の第9師団(司令部・青森駐屯地)の交代要員としての派遣』(引用ここまで)
と編成式を行った。
だが、突然の解散となった。
▼12月23日解散:陸自第7師団の第7化学支援隊解散 原発事故収束受け派遣中止:苫小牧民報社
(2011年 12/23)
陸上自衛隊第7師団(司令部・東千歳駐屯地)は22日、福島県郡山市を拠点に放射能の除染作業を後方支援する部隊「第7化学支援隊」の派遣を中止し、隊を解散したと発表した。
政府が16日、東京電力福島第1原発の原子炉が冷温停止状態になったとして原発事故の収束を宣言。これを受け福島県は20日、防衛省に陸上自衛隊の撤収を要請していた。
第7化学支援隊は、第7化学防護隊を核に9部隊70人で構成し、19日に結成式をしていた。26日に現地に向け出発し、来年1月1日から活動する予定だった。
ここまでの経過をざっとまとめると。
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●先行して警戒区域を陸自が除染していた。
●12月13日、支援するための「除染隊(第7化学支援隊)」結成へ
●12月16日、野田総理、事故収束宣言。これに福島県知事・佐藤雄平が「実態を知っているのか」と強く抗議。
●12月19日、「第7化学支援隊」編成式
●12月20日、福島県知事・佐藤雄平、自衛隊に撤収を要請。
●12月23日、第7化学支援隊、解散。
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国・県の見事な連携による、陸自・除染隊つぶしが炸裂した、と僕は見ている。
今回の「第7化学支援隊」の中心組織「第7化学防護隊」の歴史を見てみよう。

阪神淡路大震災・中国遺棄化学弾回収作業などなど、大災害や国際的な化学弾回収などを行っていることがわかる。写真を掲載していない活動もあることだと思 う。つまり彼らは、プロ中のプロなのだ。こんなこと素人の僕よりも詳しい人がいるだろうから、その人にこのへんはお任せしたいと思う。
つまり、この化学防護隊が除染活動を続けることこそが、最も優れた除染活動だ。住民のボランティア除染活動や民間の除染活動とはスケールが違うように僕には思う。
だが、このプロフェッショナルな除染こそが、福島県にとって都合が悪いのだろうと見ている。
▼【原発】総理の「事故収束」に福島県知事が不快感(11/12/18) - YouTube
※なお奇しくもこれに関する報道は全て、ニュースサイト、Googleニュースから削除されている。
国の終息宣言に対して「実態を本当に知っているのか」と強く抗議した佐藤雄平氏が、返す刀で福島県での自衛隊の活動、とりわけ除染活動を終わらせたことに違和感を持つ人も多いだろう。
その理由は、福島県の支配が自衛隊までは届かないことにあると僕は傍観している。
自衛隊は、国を守るという使命にもとづき、報道にあるようにモニタリングを始め、プライドをかけて本腰を入れて活動する、そういうことになると、福島県にとって都合の悪い情報が出た場合、福島県川がストップを掛けられず、メディアを通じて報道されることに繋がりかねない。
実際、原発事故直後多くの自衛隊からの情報がメディアを通じて国民にもたらされ た。私も知人(その息子が自衛隊幹部)を通じて、水素爆発を生で見ていた後方指揮の隊長からの強い警告を伝える情報を得ていた。
危険を知らせる情報でなくとも、作業活動がテレビで報じられることすら、望まれていないのかもしれない。
さらに、自衛隊による除染がうまくいかないという結果が続いた場合は、除染に関して言い訳すらできないということになる。
多くの人が言っているように福島原発事故は戦争になぞらえられる。僕も同意だ。除染活動もまさに放射能との戦争行為だと見る。自衛隊が派遣されるのも、放射能との戦争のためということになる。自衛隊の除染が続く限り、戦争状態であることということがはっきり浮き彫りになり、国内外に伝わり続けるだろう。
除染は、戦争ではないというごまかしのメッセージを作るために、除染が本格化する来年からは、自衛隊の関与をゼロにしたいのではないか。
「平和で楽しいお掃除気分の除染活動」という看板を掲げるために。
ただ、どちらにせよ、僕は20キロ圏内で、自衛隊が除染活動を行うことは今の時点では無駄だと思っている。
自衛隊が除染活動をしなければいけないのは、市民が息をして生活を営んでいる場所なのだと思う。
蛇足になるかもしれないが、福島原発事故後、多くの原発で非常事態に備えた訓練が行われている。そのうちの1つとして自衛隊と連動した訓練を行っていない。これについて不可解に感じる。これは推測だが、おそらく自衛隊が断っているわけではないだろう。自衛隊はむしろ訓練に参加し、自分たちの活動をPRしたいという意図があるはずだ。
そう考えると、電力会社や立地地域側が自衛隊へ協力を要請していないと推測できる。
この国にはまだ危機感がないようだ。
コメント
コメント一覧 (5)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B5%BA
佐藤雄平福島県知事は、まさしく鵺だと思います。
彼は現実を直視されるのを嫌い、現状のままの福島県が安全・安心であるとPRすることにご執心です。自衛隊の存在が不都合なのでしょう。
4号機が外国によるグローバルホークによる爆撃で破壊されたとしても、自衛隊に防衛出動はかからないのでしょうか?
福一施設内で戦車車両一台を展開し、瓦礫片づけを行ったことがありましたが、瓦礫片付けは災害派遣で行ったのでしょうか?
もしそうなら、自治体首長すなわち佐藤雄平知事による災害派遣要請があったのでしょうか?
そうでないなら、何に対する防衛出動だったのでしょうか?
佐藤は何かと(風評被害)(事前に連絡なしに)を言いたがる。
つまり、マズい情報は福島県で統制したいのだ。
これから除染活動が本格化するのに、自衛隊の特殊舞台が出てこないでどうする。
可能性の極めて低い科学兵器戦争や核戦争に備えるとか、馬鹿げた話はない。
今働かないでどうする。
まあ、放射線除染のスペシャリスト集団というのは眉唾もんだけどね。
警察や消防より格上の存在なのだから、もうちょっと頑張れよ、自衛隊。
>蛇足になるかもしれないが、福島原発事故後、多くの原発で非常事態に備えた訓練が行われている。そのうちの1つとして自衛隊と連動した訓練を行っていない。これについて不可解に感じる。これは推測だが、おそらく自衛隊が断っているわけではないだろう。
そもそも、原発事故対応は自衛隊の本来任務ではないので、原発事故後の放水作業とかあー言うのは実はイレギュラーな任務でもあったりします。
実際に、原発の警備は警察の所管なので、自衛隊はお呼びでないんですよね(個人的には原発の警備は陸自の任務にすべきと思うけど)
自衛隊の本来任務は、政府の命令に基づく「防衛戦争」
政府の命令又は自治体首長の要請に基づく「災害派遣」であって、
政府が「原発事故収束宣言」を出せば、自衛隊としては活動する根拠を完全に失う。
元々、第7化学支援隊は、第9師団(第9化学防護隊?)の交代部隊として編成されたので「原発事故収束宣言」によって原発事故対応と言うイレギュラーな任務が終了する為、交代要員として編成された部隊は解散するのは筋として間違っていないと思える。
これは凄く個人的な意見だけれども、自衛隊の運用を考えた場合、自衛隊の化学防護部隊は極力、フクシマの除染には使うべきではないと思う。
隊員とて人間なので被曝できる上限は限られているので、フクシマの除染で無駄に被曝をしたが為に、今後、戦争や別の原発事故が起きた場合に際しての被曝出来る線量値を下げる事に繋がり得策ではない。
(そもそも、原発より2-30km圏を除染して「住めるようにする」と言う事は、狂気の沙汰にしか思えない。)