2011年12月27日(火)、東電の国有化に向けて大きな動きがあった。

枝野経産大臣が東電の西澤社長、原子力損害賠償支援機構の下河辺運営委員長らと面談したのだ。

▼参考:東電、電気料金値上げーー報道の要点・差異まとめ

その結果報道がまっぷたつに割れている。

「実質国有化」と「一時国有化」の2つにだ。

報道の差異をまとめていく。

とりいそぎ、ざっと、「実質国有化」と「一時国有化」の違いもういちど。

●実質国有化・・・東電を破綻させず、銀行等の債権者を守る

●一時国有化・・・東電の破綻処理をし、銀行等の債権者に債権を放棄させる

天と地ほどに違う。だが、報道は割れている。

このエントリーでは、「実質国有化」と「一時国有化」に留意しながら、報道の差異をまとめていく。

最初に「実質国有化」を伝えたのは日本経済新聞だった。

東電、実質国有化へ 1兆円規模注入  :日本経済新聞

2011/12/27 19:27

枝野幸男経済産業相は27日夕、省内で東京電力の西沢俊夫社長や原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長らと面談した。経産相は機構と東 電に対し「(東電の)一時的な公的管理も含め、あらゆる可能性を排除しない中で(来春に東電と機構がまとめる)総合特別事業計画を検討していただきたい」 と語り、実質国有化の受け入れを選択肢に入れるよう求めた。

さらに「安定供給を錦の御旗として『値上げは電気事業者の権利である』というような考えは、まさかないと思いたいが、万が一にもそういう考えがあればぜひ改めていただきたい」と述べ、東電が電気料金の引き上げを目指していることをけん制した。

福島第1原子力発電所の事故処理を巡っては、被害者に対する賠償金支払いの迅速化や体制強化も指示した。

東電の西沢社長は公的管理の可能性に関して「大臣が言われた内容も含めて総合計画を策定したい」と応じた。〔日経QUICKニュース〕

その後、時事通信を始めとするメディアが、「一時国有化」という言葉で報じた。

時事ドットコム:東電に一時国有化要求=料金上げをけん制-経産相

枝野幸男経済産業相は27日、東京電力の西沢俊夫社長を経産省に呼び、福島第1原発事故の巨額の賠償支払いや事故処理に向け、東電と原子力損害 賠償支援機構が来年3月にまとめる総合特別事業計画について「一時的な公的管理を含めて、あらゆる可能性を排除しないで策定してほしい」と指示した。機構 からの公的資金の資本注入による一時国有化を事実上要求したものだ。

経産相は、迅速で確実な賠償金の支払いなどを実行するには、政府の一段の関与や同社の財務基盤強化が不可欠と判断した。

経産相はまた、「電気料金値上げは電力会社の権利という考え方は改めてほしい」として、東電が打ち出した値上げ方針をけん制。さらに、賠償業務の体制を1 万人以上に拡充することや、「分かりやすい新生東電の絵姿」を示すよう求めた。その上で「5年、10年後に信頼される東電を目指して抜本的に検討してほし い」と語った。(2011/12/27-21:38)

上記の2つの記事のどちらも、言葉がかぎかっこでくくられてはおらず、枝野大臣の発言であるという書き方にはなっていない。地の文で「実質国有化」「一時国有化」とつづっている。

各報道の差異を1つ1つ見ていく。

経産相 東電は公的管理含め検討を NHKニュース

国からの公的資金の投入によって、一時的に公的管理下に置かれることも含めて、あらゆる選択肢を検討するよう指示

NHKは「一時」か「実質」かを明確にしていない。「一時的な公的管理」という言葉を受けて、「一時的に公的管理下におかれる」というニュアンスで伝えているのでしょうか。

枝野大臣は、東京電力が検討している電気料金の値上げについて、「東京電力の信頼回復とセットだ」として、経営合理化の進捗(しんちょく)状況などを見極めたうえで、判断する考えを伝えました

「賠償が遅いという不満が多数、出ている。1万人以上の体制に増強して、迅速な賠償ができるようになることが認定の前提だ」

asahi.com(朝日新聞社):東電に「実質国有化」含め検討指示 枝野経産相 - 政治

2011年12月27日21時28分

東電に「実質国有化」の受け入れを迫ったものだ。

東電は経営の自主性を維持するため、(※原子力損害賠償支援機構(政府)からの)出資に難色を示している。

asahi.com(朝日新聞社):東電に一時国有化要求=料金上げをけん制―経産相 - 政治

2011年12月27日20時6分[時事通信]

機構からの公的資金の資本注入による一時国有化を事実上要求したものだ。

朝日新聞でも、2つの報道が出ている。一時国有化の記事は時事通信のものを掲載している。実質国有化の記事は朝日の記事だ。(こういう紙面づくりはどうかと思う)

枝野経産相:東電に公的管理の検討を要請-料金値上げ方針を批判 - Bloomberg

(枝野大臣は)「安定供給を錦の御旗として、値上げは電気事業者の権利であるというような考えはまさかないと思いたい。万が一にもそういうお考えであるなら、改めて頂きたい」と述べ、値上げを巡る西沢氏のこれまでの発言に釘を刺した。

西沢氏は会談後に記者団に対し「要請を踏まえて、今後総合特別事業計画を策定したい」と述べるにとどめ、公的管理の受け入れについては明言を避けた。電気料金の値上げについては理解を得る努力をしたいと語った。

一時も実質も使われていなかった。

東電社長に実質国有化の検討指示 経産相、 値上げの動きけん制 - 47NEWS(よんななニュース)

時事通信の記事を記載してあるだけ。記事本文には、「実質国有化」も「一時国有化」も言及されていない。それなのにどうしてこんなタイトルになるのか。

東電に一時国有化を要請 経産相、値上げも牽制 - MSN産経ニュース

支援機構を通じた公的資金の注入による実質的な国有化を迫ったものだ。

タイトルでは「一時国有化」と本文では「実質的な国有化」という言葉をつかっている。

東電は原発停止による燃料費増大などで平成25年3月期にも債務超過に陥る可能性/このため、政府は1兆円規模の公的資金の投入を検討

値上げについて「消費者の理解を得られるよう全力を傾ける」(西澤社長)

(枝野大臣は)賠償業務の人員を1万人以上に拡充することを求めた

訂正:東電は一時的な公的管理含めあらゆる可能性排除せず検討を=経産相 | ビジネスニュース | Reuters

「一時国有化」も「実質国有化」も触れられず

経産相、東電に「一時的な公的管理検討も」 : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

支援機構は福島第一原子力発電所の廃炉費用などが経営不安の要因となっている東電に1兆円を出資し、東電が発行する3分の2以上の株式を取得する形で事実上国有化する方向で調整に入っている。

「事実上国有化」という新しい言葉が出てきたけれども、これは「実質国有化」と同じ意味だろう。具体的に支援機構の株式取得についてふられている。

「一時国有化」の検討を指示 東電社長に枝野大臣

(枝野大臣は)一時的に国有化されることも含めて幅広く検討するよう指示

一時国有化という言葉を使いながらも、あくまで可能性の一つとして、というニュアンスで報じています。

東京電力は、国に対して新たに6900億円の追加支援を要請しました。認可されれば、賠償支援の総額は1兆6000億円に膨らむ

東電国有化、不可避に 枝野氏、値上げにもノー突きつけ - MSN産経ニュース

会見後の報道ですね。「一時」も「実質」にも触れられていません。

西沢俊夫社長は枝野経産相との会談後、「合理化や料金面も含めいろんな手がある」と述べたが、国有化回避の余地は乏しい。

来年4月から2割程度の値上げを検討している企業向けの電気料金は、東電にとって「残された最後のカード」(幹部)

(東電が)公的資金を拒否した上で(電気料金値上げを)強行すれば、政府との関係は決定的に悪化する

早期実施を表明した家庭向け料金は認可が必要で、実現は絶望的

政府が水面下で調整している金融機関からの追加融資も、公的資金注入が前提となりつつある。

東電の総合特別事業計画を共同でまとめる原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長は記者団に「大臣が(公的管理という)言葉を使った事実を正面から受け止める」と述べた。東電の外堀は完全に埋められつつある。

経産相「公的管理検討を」 東電社長に要請  :日本経済新聞

「実質国有化」という言葉を用いています。

東電は自己資本が脆弱だが、機構の出資には慎重。実質国有化で国の関与が強まれば、経営の自由度が失われるからだ

以上が、夜明け前の報道です。

ここから、夜が明けてからの報道です。

東電公的資金投入巡り調整続く NHKニュース

NHKは、引き続き「一時国有化」にも「実質国有化」にも言及せず慎重な姿勢です。

東京電力と政府側は、28日、枝野大臣の指示の内容を協議することにしています

総合特別事業計画の策定に向け、公的資金の投入や電気料金の値上げ幅を巡って調整が続く見通し

「東電に「実質国有化含めて検討」を指示」 News i - TBSの動画ニュースサイト

「実質的な国有化」という言葉で報じています。

財務基盤の強化のため実質的な国有化も含めて検討した上で、総合特別事業計画を策定するよう指示

「実質的な国有化も含めて」というフレーズは、これまでの報道ではありませんでした。やや慎重な報道です。

公的資金による資本注入を受け入れる、実質的な国有化も含めて検討するよう指示

重ねて「実質的な国有化」という言葉を用いています。

経産相「東電は公的管理も含め検討を」 - 主要ニュース - ニュース - 電気新聞

※「実質国有化」にも「一時国有化」にも言及せず。

西澤社長が「電気事業者の権利」と発言したことを問題視

機構側は「大変厳しい内容を含む話についてしっかりと受け止める。あらゆる可能性、選択肢を排除せずに総合計画を策定する」(下河辺運営委員長)、「賠償の迅速化、体制強化について、さらにモニタリングを強化したい」(杉山理事長)と発言

西澤社長は、賠償の遅れについて「5つの約束に基づいて全力を挙げて改善を図っている。機構、国、自治体の協力・指導を仰ぎながら体制強化を進めたい」

面談終了後、取材に応じた下河辺運営委員長は、枝野経産相が「公的管理」に言及したことについて「それは大臣の考えだが、機構としては今日の段階でその言葉を明確に使ったという事実は正面から受け止めて検討を進める」とした。規制部門の値上げについては「3月までにはなかなか難しいのではないか。大臣の受け止めは厳しいと思う」との見方

「大口も家庭用も皆さまの理解を得ることが大前提。当社の状況をしっかり説明していく」(西澤社長)

東京新聞:枝野経産相 東電に国有化検討指示:経済(TOKYO Web)

「ゼロから再出発する、という謙虚な構えで計画策定に取り組んでほしい」(枝野)

(枝野大臣は)賠償金支払いが遅れているため、一万人を超える体制に賠償要員を増員し迅速に対応するよう、あらためて要請

ホットストック:東電<9501.T>売り先行、経産相が国有化を示唆 | マネーニュース | 株式市場 | Reuters

大幅な希薄化など既存株主の権利き損の可能性があらためて嫌気されている。

枝野経産相は同日の記者会見で、「一時的な公的管理」が、政府と電力会社が設立した「原子力損害賠償支援機構」を通じた国による東電への出資を意味するかとの質問に対し、「選択肢の可能性として申し上げたもので、あらゆる選択肢の中の一つで、それ以上のことを申し上げる段階ではない。機構と東電で真摯に協議してほしい」と語った。

「国有化」検討、東電の財務基盤強化 : 金融ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

※実質国有化という言葉を用いている。

枝野経済産業相が東京電力を「一時的な公的管理」に置くことで事実上、国有化することを示唆したのは、東電の財務基盤の弱体化が避けられないとの判断がある。

料金値上げと原発再稼働が実現しなければ、13年3月期には債務超過になる可能性

今回の申請で機構の資金支援が見込めるため債務超過は回避できる。しかし、火力発電の燃料費は今年度で約8300億円増加する。大口契約者向けの電気料金を来年度2割程度値上げしても全部はまかなえない

東電は家庭向け電気料金の値上げも表明しているが、枝野経産相は、「新しい東電に対する信頼回復とセット」でなければならないと慎重だ。原発再稼働の時期も不透明で、巨額の廃炉費用も重い負担となる。

すでに政府の支援なしでは東電の経営はなりたたなくなっている。経産相の指示を受け、支援機構は東電への出資による実質国有化に向けた調整を急ぐが、電力の安定供給と賠償、廃炉を担える「新生東電」の姿は見えない。

取り急ぎここまで。

報道によって「一時国有化」と「実質国有化」という言葉に違いがあるのは明らかだ。そしてそれを伝えるニュアンスも微妙に違う。どちらの言葉を用いているかに確固たる根拠がないことがおわかりいただけたと思う。メディア側の世論誘導という願望を感じる。

僕が求めたいのは「一時国有化」だ。銀行や株主などの債権者は、東電への債権を放棄すべきだと思う。それが東電のこれまでの無責任な経営にお金を用意した人間たちの責任だと思う。

引き続きまとめていきます。

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