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東電と保安院の危機に対する認識のゆるさがまたもや露呈した。

簡単に説明すると。国は、チェルノブイリ原発事故をうけて、「緊急時対策支援システム(ERSS)」を設置した。この緊急時対策支援システムの非常用バッテリーを、福島原発事故時、接続していなかったというのだ。

3.11の地震直後から、福島第一原発のデータが、緊急時対策支援システムに送られなかった、つまり、原発の状態を把握できなかった、のは東電の不作為という過失によるところが大きいのではないか、ということだ。

そして、この事実を、東電と保安院は、公表せず隠蔽していたということになる。

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まずは、分かりやすい図を掲載した東京新聞の報道を引用する。

東京新聞:福島第一原発 非常電源を未接続:社会(TOKYO Web)

PK2012011902100106_size0 『東京電力福島第一原発の事故で、東電は十九日、福島第一の原子炉の情報を国の防災ネットワークにつなぐ緊急時対策支援システム(ERSS)の非常用バッテリーの接続を怠り、事故発生当初、一時情報が送れなくなっていたと発表した。情報は放射性物質の拡散を予測するシステム(SPEEDI)にも使われており、予測に影響を及ぼした可能性がある。東電は一連の経緯を政府事故調査・検証委員会に知らせていなかった。

原子炉の圧力や温度などの情報は東電のシステムを経由してERSSに送られる。東電によると、一昨年十一月に変換装置と非常用バッテリーを接続する工事の際、ケーブルが短かったため接続できず、四カ月間そのままにしていた。変換装置は構内の保安検査官室にあり、経済産業省原子力安全・保安院との間で工事の時期などを調整していたという。

ERSSに情報を送るシステムは、本来は1号機の電源を使う。予備に二種類の外部電源があり、非常用バッテリーを追加することになっていた。

福島第一原発は震災で外部電源を喪失。さらに津波による配電盤の浸水などにより、原子炉のデータを確認するシステムが機能しなくなった。非常用バッテリーが変換装置に接続されていれば、津波で被災するまでの約一時間、データを送れた可能性がある

政府事故調査・検証委員会は昨年末の中間報告で「(ERSSへの通信機器に)非常用電源が備え付けられていなかったため、装置が停止したと考えられる」と記していた。

東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「再工事の際に一時データ伝送が止まるので、時期を保安院と調整していた」と説明。保安院の担当者は「詳しい経緯を確認している」と話している。(※引用ここまで)』

わずか1時間の間だが、東電は送るべき原子炉関連のデータを、送れなかった。

それは、緊急時対策支援システムの非常用バッテリーを接続していなかったからだったという。かつて工事をした際に、ケーブルの長さが足りなかったことから、接続せず放置していたとのことだ。

以下、各報道からの差異をまとめていく。

原子炉データ送信装置、非常用電源未接続4カ月放置 事故時に機能せず (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

『非常用電源があれば地震後約2時間はデータを送信できた可能性が高い』

報道によって、データを送れなかった時間にばらつきがありますね。

『監視システムの根幹にかかわる事態で、東電の危機意識の低さが改めて問われそう

「問われそう」という適当な表現を使って当事者であることから逃れるのが、日本のマスメディアでございます。お前たちも自主的に問いなさい。

『地震により外部電源を喪失した昨年3月11日午後2時47分ごろにデータの送信が停止』

『ERSSを所管する経済産業省原子力安全・保安院は「非常用電源が接続されていればデータが受け取れた」と認めており、本震から余震で国の通信網がダウンする3月11日午後4時43分ごろまでの約2時間、本震直後のデータを生かすことができた可能性が高い。』

午後2時47分から午後4時43分まで、データを活かせなかったということになります。

『「電源ケーブルを手配しなければいけないという認識はあったが、3月11日までにつなげなかった。完全に忘れていたわけではない」(東電)』

受験に失敗した学生も同じことを言うでしょう。余りに稚拙な東電幹部の危機認識です。彼らにとっては、忘れていたこと全てが「完全に忘れていたわけではない」ということになります。

『保安院は「なぜ長いケーブルに取り換えなかったのか」と、東電の対応を疑問視』

保安院もまた「完全に忘れていたわけではない」のでしょう。疑問視するのは国民だけでけっこう。保安院という、いちおう規制する側が、疑問に思ってどうする。

『政府の事故調査・検証委員会は昨年12月に公表した中間報告で、MCについて「非常用電源やバッテリーが備え付けられていなかったため、装置が停止したと考えられる」としているが、非常用電源の不備ではなく、未接続が原因と判明』

中間報告では、「非常用電源やバッテリーが備え付けられていなかった」とされていたわけですね。つまり、政府の事故調査・検証委員会の検証能力が不足していた、ということも明らかになっているわけです。

『■ERSS チェルノブイリ原発事故などを受け、原子力事故が起きた際の国の対応を迅速化する目的で導入されたシステム。全原発55基の原子炉の圧力や周辺の放射線量などの状況を一元的に把握し、事故状況を予測することなどができる。これまでに国が155億円以上を投じ開発・運用してきた。昨年12月末には、24時間以上にわたってデータが表示されなくなるトラブルがあった。』

東電の低い安全意識露呈…拡散予測に影響も 福島原発、非常用の電源未接続 (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

『「(原子炉を監視する)ERSSは最も重要なシステムの一つ。事実であれば、東電の危機意識が麻痺(まひ)していたとしか言えない。深刻な人為ミスだ」(九州大の工藤和彦特任教授(原子力工学))』

まあ正論ですけれども、今回の隠蔽発覚以前に、年末に、全ての原発を監視する緊急時対策支援システム自体が26時間にわたって停止していたわけです。その原因はメモリー不足でした。

東電を始め、緊急時対策支援システムを運用する「原子力安全基盤機構」も危機意識が欠如しているわけです。つまりは、東電・保安院・原子力安全基盤機構など、原子力ムラ全般にわたって、脳みそのメモリーが欠如しているのです。

『非常用電源に差すはずのケーブルの接続先を誤っただけでなく、誤りに気付いた後も4カ月近く放置。ERSSを管理する原子力安全基盤機構から接続依頼があったが、東電は結果的に無視した形』

※この箇所の意味が不可解。「接続先を誤った」ではなく「接続しなかった」ではないのか?

とりあえず、原子力安全基盤機構(JNES)も、接続依頼をしつつ、いいぱなしで放置していたということですね。原子力ムラのひとたちは使えない人たちばかりです。

非常用電源が未接続 情報送れず NHKニュース

『「データを送る装置に予備の電源を接続することは自主的に提案したが、結果的に接続がうまくいかず、そのままにしてしまった。原子力安全・保安院と工事の時期を調整していたが、緊急性があるという認識はなかった」(東京電力)』

緊急時対策支援システムの非常用バッテリーは東電の自主的な提案だったのですね。言いだしっぺなのに、やっていなかった、ということになります。

東電と保安院はこの情報を共有していたということですね。

『「今後必要な情報が送れない事態にならないように全国の原発について、非常用電源の設置の徹底や伝送経路の多重化などを図りたい」(原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監)』

いつもことごとく役に立たないなあ、保安院は。どうすれば彼らの結果責任を問えるのでしょうかねえ。

時事ドットコム:非常電源外したまま放置=福島第1のデータ送信装置-東電、震災前に

『「送信装置へは福島第1原発1号機から電気が送られており、非常用電源は緊急性が高いとは思わなかった」(東電)』

でも東電は自ら非常用バッテリー設置を言い出したとのことですから、言ってることが矛盾だらけな気がします。

次は、動画の報道です。

「データ送信装置、非常用電源に接続せず」 News i - TBSの動画ニュースサイト

45)

33)

28)

『失念していた』とのことだが、『完全に忘れていたわけではない』とも発言している東電。

つまり、うっかり忘れてた、ということを取り繕うために頑張ってるわけです。

東日本大震災:福島第1原発事故 データ送信装置、非常電源外れ放置--事故前4カ月 - 毎日jp(毎日新聞)

『「伝送できなかったのは初期段階のデータで、SPEEDIへの影響は少ないと推定している。緊急性が高いと思っていなかった」(東電・松本)』

東日本大震災:福島第1原発事故 データ送信装置、非常電源外れ放置--事故前4カ月 - 毎日jp(毎日新聞)

『ERSSは、全国の原発の原子炉格納容器を監視して、事故の展開を予測する。国が155億円を投じて開発した』

以上、2012年1月19日16:10時点での報道の差異をまとめました。

ここまでまとめた感想は、以下のとおり。

各マスコミは一様に、今回発覚した、緊急時対策支援システムの非常用バッテリー不接続、において、もし接続していればSPEEDIに役立ったのではないか、という見解を発表しているが、僕はそうは見ていない。

なぜならば、データの信憑性に疑いがあった今回も、SPEEDIは米軍には伝えられたからだ。そして、国民には伝えられなかったわけだ。

その結果、米軍は逃げ、アメリカ国民は80キロ県外に逃げた。

要するに、日本政府は、日本国民よりもアメリカのことを恐れているということだ。

つまりSPEEDIは、アメリカ軍のために設置され、そして役立てられた、ということになる。始めから日本国民のために設置されたわけではなかった、と見たほうが結果的につじつまがあう。

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